チェックリストと新しい資本主義~2030年のヒストリアンとビジョナリスト

(チェックリストは、問題解決とビジョン管理の有効な方法です)

 

1)チェックリスト

 

2022/05/03の日経新聞の1面に「空洞化する卒業証書」というタイトルで、卒業証書は学力を保障しない。七五三と言われるように、高校生の7割、中学生の5割、小学生の3割が授業についていけない。日本の義務教育は3月末に学年が終わると、子供の理解度に関係なく進級させる「履修主義」をとっているといいます。

 

「 算数ができない大学生」の著者の岡部恒治らが、算数を中心とした学力低下を指摘したのは2001年で、20年も前のことです。

 

 

本書のテーマは、「変わらない日本」を変えるためのスタート地点につく方法を考えることです。

 

問題は、「履修主義」ではなく、なぜ、20年間、七五三が、変わらなかったかです。

 

どこの国でも、行政や教育は、PDCAのような、エビデンスに基づくフィードバックをして、政策の改善を行います。教育は、必ず、テストによって効果を検証し、理解ができていない場合には、単位がとれません。エビデンスに基づかない「履修主義」を使っている国はありません。これは、予算執行も同じで、効果測定をします。つまり、問題は、教育ではなく、エビデンスに基づかない行政にあります。

 

エビデンスに基づかないからといって、日本では、独裁国家のように、政策が思いつきで変わることはありあません。つまり、エビデンス以外の評価基準があって、暴走を防いでいます。筆者は、その評価基準は、ヒストリアンであることだと考えています。非科学的であり、不合理であっても、過去と同じ方法を踏襲する限りは、非難されることがありません。新しいことをして失敗すると、非難されますが、従前の方法を踏襲する限り非難されません。

 

こうすると「変わらない日本」から抜け出せなくなります。

 

今までの方法は、七五三なら許容できるものではありません。新しい試みは、何が正解かはわかりません。しかし、新しい方法を試さなければ、問題は永久に解決できません。

 

正解はわかりませんので、何種類かの方法を試して、継続したエビデンスデータをもとに、有望な方法を絞り込み、改善していく必要があります。

もちろん、こうした改善をする主体は、教育行政であって、マスコミではありません。

 

それでは、マスコミには何ができるのでしょうか。

 

20年たっても、依然として、七五三であるという記事をかくことしかできないのでしょうか。

 

そんなことはないと思います。

 

カーネマンは、「ノイズ」で、チェックリストの利用をすすめています。

 

七五三の問題解決のためのチェックリストをつくって公開し、毎年、到達度評価をすることができます。

 

もちろん、PDCAからすれば、チェックリストを作って、解決すべき問題の管理をするのは、本来は行政の仕事です。しかし、現時点では、解決すべき問題点のチェックリストを作っている思われる行政部局はほとんどありません。

 

防災計画などでは、安全性については、古くからチェックリストがあり、その手法が使われていますが、生態系や環境配慮については、十分なチェックリストがありません。これは、カーボンニュートラルを考えれば、確かめられます。つまり、チェックリストがあっても、ヒストリアンの範囲に止まっています。

 

こうした状況では、マスコミやNPOが、チェックリストを作成して公表することで、「変わらない日本」から抜け出すきっかけを作ることができます。

 

この手法は、人権団体が行っている手法でもあります。

 

2)新しい資本主義とハルツ改革

 

6月には、新しい資本主義のプロトコルが公開される予定になっています。

 

日本では、俗に、同調圧力といって、批判することは好まれません。

 

英語圏では、問題解決には、クリティカルシンキングが必須ということで、積極的に、批判的にものごとを見直すトレーニングを大々的におこなっていますので、おおきな違いがあります。

 

しかし、批判することをさけても、問題が解決すれば、よいのですが、実態は、七五三のように、20年たっても問題が解決しない「変わらない日本」だらけになっています。

 

新しい資本主義のプロトコルが公開されてから、ものを申すのが問題である場合、事前に、チェックリストを提示する方法があります。こうすれば、批判は、プロトコルの作成方法に対するものであって、内容に対するものではないことが明確になります。

 

筆者は、新しい資本主義には、各段の関心はありませんが、「変わらない日本」に対する解決策が、新しい資本主義に含まれているとすれば、ジョブマーケットの作成手法が書かれていなければなりません。

つまり、この点は、筆者のチェックリストになります。

 

それでは、ジョブマーケットの作成手法には、具体的には、どのような内容が書かれていれば、及第と考えられるでしょうか。

 

解答のサンプルは、ドイツのハルツ改革にあります。

 

ともかく、「変わらない日本」から抜け出すのであれば、ハルツ改革と同レベルのビジョンとプロトコルが必要だと考えます。






引用文献

 

岡部恒治, 戸瀬信之, 西村和雄 編 算数ができない大学生 : 理系学生も学力崩壊 2001.4 東洋経済新報社 

 

ドイツの労働政策 2018 リクルートワークス研究所 グローバルセンター The Europe Japan Centre

https://www.works-i.com/research/university/item/181225_wu_germany.pdf

 

分かれるハルツ改革の評価―実施から10年 2012/10

https://www.jil.go.jp/foreign/jihou/2012_10/german_01.html



ドイツ・ハルツ改革の功罪 2014/10 モニカ・ゾンマー

https://www.jil.go.jp/foreign/labor_system/2014_10/german_01.html