変わるリスクと変わらないリスク

日本は変わらないといわれていますので、変わるリスクについて考えてみます。

変わらないリスク

IT業界では、変わらないことは、技術革新に遅れてしまって、ほぼ100%アウト(業界からの退出)になるので、変わらないことが最大のリスクであるといわれます。変わっても、生き残れるかは、分からないのですが、それでも、変わらないよりはマシという見解です。

株式会社でも30年前に起業して30年以上続いている会社は企業した会社の一部にすぎません。IT企業の場合には、浮き沈みが更に激しいと思われます。株式を購入する場合には、会社が消滅するリスクを計算して、それまでの配当で元が取れるかという計算になります。(つぶれる前に高値で売り逃げする方法もありますが、それは、産業を育ている意味の本来の投資ではないので、考えないことにします。)

変わるリスク

逆に、変わることにリスクはないでしょうか。

企業が変わるということは、恐らく次の2つの側面を持っています。

  • 新規分野に投資する(投資に対するリターンが低下します)

  • 現行分野の人員の一部を縮小し、新分野に移転する(人的資源の総和が一定とします)

変わる場合には、この2つ要因がありますから、業績(売り上げ、利益率)は一時的に低下します。

この点で、徹底している企業がアマゾンで、もうけはクラウドサービスでとって、小売りは、技術革新のために、当面は利益を出さない方針を今まで一貫して続けています。変わらない部分はゼロでよいという方針です。アマゾンのインパクトが大きいのは、変わる対象が、ITではなく、小売りという従来の業界であったことです。

クリスチャンセンは、「イノベーションのジレンマ」と呼びましたが、それば、一本足打法で、企業のある分野の利益に占める割合が非常に大きな場合の特殊な例とおもいます。ジレンマまでいかなくても、新分野参入や新技術回開発には、維持的な業績悪化は必須になります。

もしも、現在の業績を一時的にでも下げてはいけないとなると、変わることはできません。つまり、変わることは、簡単にいえば、現在の業績ではなく、将来の業績を判断基準に行動することです。

これは、現在のコロナウィルス対応を見ていても難しいです。感染者数が少ない時点で、感染者数が増えた場合の対処をしないと間に合わなくなります。しかし、マスコミはその日の感染者数(現在の業績)のことしかいいません。

あるいは、2020年の東京大学の卒業生の就職人気ランキングを見ても同じです。トップは大手銀行でした。銀行は、将来の業績を考えれば、最も厳しい業界になることは必須です。結局、学生は将来の業績を判断基準に行動できていません。

切り替えの時期

結局、今後の世界は、IT化の拡大によって大きく変動していきます。したがって、大まかにみれば、変わることのリスクに大きな変化はなくとも、変わらないことのリスクは増大していきます。

問題は、次に集約されると思われます。

  1. 変えるの時期とコストの設計

  2. 変えることが可能な企業文化の形成

2.については、既にふれたので、1.を補足しておきます。変わるときに利用する技術は、時間がたつと、普及してより安価になります。抽象的ですと分かりにくいと思いますので、デジカメの例を示します。現在のまともなスマホのカメラは、20年前の高価なフィルムカメラよりもきれいな写真が撮れます。これは、図書館で古い写真集を見れば確認できます。しかし、あなたが、ネットで、写真を掲載して商品を売ろうとしたら、、同業者の写真よりきれいという優位性がないとうれません。スマホでは、同業者と同じですから無理です。しかし、そのために、高級カメラを購入したら赤字になってしまいます。WEBやスマホで見るには、大きな解像度はいりません。経済的に見合う機材で、現在のスマホの写真をどのレベルまで改善するかは、決して簡単な問題ではありません。おそらく、1.ができるためには、このように製造過程に関する技術革新に熟知している必要があります。しかしながら、日本では、こうした知識は、全く評価されません。コロナの接触スマホアプリのココアを見ていると、失敗の最大の原因はここにあると思います。