反町の森公園
「ソリマチノモリコウエン」とよみます。
公式の情報は以下です。
https://www.city.tsukuba.lg.jp/shisetsu/kouensports/kouen/1002819.html
桜が、きれいなようですが、今年はここまでは、回れませんでした。
写真1は「反町の森公園」の晩夏の写真です。
宅地開発をすると、河川に対する洪水の流入量が増えてしまいますので、これを防止するために、洪水調整池をつくることが法律で義務づけられています。洪水調整池は、開発デベロッパーの所有になりますが、最近では、管理の問題もあり、自治体に移管されていることもあります。この公園は洪水調整池ですが、つくば市に属しています。
洪水調整池は、洪水の時の余分な水をため込んで河川に流さない目的で建設されますので、次の特徴があります。
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通常時は、池の水は流れていない。
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通常時の池の貯水量は少ない。
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池を囲んで、貯水スペース(窪地)があり、池は貯水スペースの最下部にある。
文章だけではわかりにくいので、写真を引用して説明します。
写真では、下方に池に水面が写っていますが、これは洪水でないときの状態です。正面に土手(堤防、堤)がみえます。洪水の時には、この堤防の一番上の線(天端といいます)近くまで水がたまります。つまり、洪水調整池のの「調整池」とは、写真に見えている池のことではなく、その上にたまる水のことを差します。
過去にしめした写真では、科学万博記念公園の池も洪水調整池の一部になります。
洪水は、主に台風により引き起こされるので夏から秋は洪水調整池を空にしておく必要があります。
一方、北条大池は灌漑用の農業ため池なので、夏は主に、水田に用水を配るために、水が多くあり、池の水面は堤防のの一番上の線近くにあります。また、水は流れています。
公園の景観としては当たり前ですが、水が豊かにある農業用ため池の方がきれいになります。
洪水調整池は、通常時は、池を完全に空にしておいても洪水調整機能には問題がありません。
池を空にしておけばその分だけ、調整できる容量は大きくなります。
ただし、あまり池が小さいと、景観面が悪く、水質も悪くなりやすいです。
洪水調整池の公園は、景観面では、制約が多く、良い景観は期待できにくいです。
洪水調整池か、農業用ため池かを判定するには、このように池の形状でわかります。
見分けるもうひとつの方法は、航空写真を使います。農業用のため池は、古くからあり、洪水調整池は、新設です。国土地理院のHPで過去の航空写真をみれば、古くからある池は確認できます。
地理院地図
反町の森公園の写真
案内看板
次の説明のために、写真2に案内看板を示します。
小林治人
つくば市内には有名な建築家の立てた、建築が多数あります。研究学園都市の移転が、高度成長後の1978年で、そのあと、バブルがありました。この時期に建てられた建築が多数あるのです。しかし、現在は、維持管理するらままならない状況になりつつあります。つくば市は、人口が増加しているという恵まれた位置にありますが、それでも、多くの建築は、「兵どものが夢のあと」になりつつあります。このブログでは、公園だけでなく建築も紹介しようとは思いますが、今後のことを予測すると、日本国の将来を先取りしているところがあり、心穏やかには、紹介できない建築が多数あります。これが、公園の紹介が先行している理由でもあります。
公園については、造園家がわかっている事例は、建築家に比べればすくないです。とくに、ネットの検索で造園家を探し出すことは、困難です。
池付きの公園は次の5つに分けられます。
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ゼロから公園設計の中で池を設計増築した公園
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洪水調整池を囲んで設計した公園
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古くからある農業用ため池を活用する形で整備された公園
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排水不良の沼地を活用する形で整備された公園
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道路等の開発による池の移転を利用した公園
1と4、5は少ないです。造園家がだれであるか明示できるのは、主に1と2に限られると思われます。
「反町の森公園」は造園家がわかる事例で、少なくとも建物部分は、小林治人氏が設計しています。全体の設計を担当したのかはわかりませんでした。
小林治人氏は、”特別公開講義「ランドスケープデザインの半世紀」の紹介”によれば、次のような経歴の造園の大家のようです。筆者は造園は素人なので、詳しいことはわかりません。
1960・70年代からの自然地形を活かしたリゾート地の開発、大阪万博、JICAの専門家派遣による海外プロジェクトに始まり、1980年代の造園設計事務所連合の拡大、大規模公園整備事業や国際協働、IFLAの第一副会長としての活動。 1990年代は、造園設計事務所連合が現在のCLAとなり会員が200社を超え、2000年代に入り、公共事業としての公園緑地整備事業の激減のなか、海外で活動された中国のプロジェクトやノルウェーのベルゲン大学との両国交友庭園の設計。
世代としては、活躍の中心は1960から2000年頃で、日本が開発中心で活気があった時代です。「環境・設景論:文化としての公園づくり」に見るように、小林氏の視点は文化にあるようです。
生態学の世界では、1990年頃から、河川生態学が進んで、水辺環境の環境整備に必要な科学的な知見がまとまっています。基本的な知見は「Stream Restoration」に、設計法は、「Stream Restoration Design (National Engineering Handbook 654)」にまとめられています。これは、小林氏の世代のあとになりますので、こうした知見を参照していただけないのもやむを得ないとは思います。
「反町の森公園」に限りませんが、洪水調整池は、水質がわるく、夏にはフロックが浮いていて、近寄りたくないところが多いです。そうなる理由は、環境配慮が欠けているからで、どうすべきかは、上記の文献を見ればわかります。
写真1の不思議な塔は、案内看板をみると休憩所のようです。筆者は、この塔に上って、不安になって直ぐに下りてしまいました。なぜかというと、水辺に大きな塔がたっていると、写真3のよううな洪水樋門を連想してしまうからです。管理者に無断で、樋門にのぼったような感じで、誰かに注意されそうな気がしました。もちろん、この塔は単なる休憩所なのですが。
洪水樋門の写真
以下出典
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B0%8F%E6%9E%97%E6%B2%BB%E4%BA%BA
環境・設景論:文化としての公園づくり
特別公開講義「ランドスケープデザインの半世紀」の紹介
https://www.kyoto-art.ac.jp/t-blog/?p=90458
Stream Restoration
https://www.nrcs.usda.gov/wps/portal/nrcs/main/national/water/manage/restoration/
Stream Restoration Design (National Engineering Handbook 654)