ミームの研究(19)マイナンバーカードの病理

マイナンバーカードには、セキュリティがありません)

 

1)ミームの課題

 

マイナンバーカードは科学のミームでつくられていません。

 

デジタル庁には、科学のミームはありません。

 

なので、全ての議論は空回りになります。

 

マイナンバーカードには、目的と評価関数がありません。

 

この時点で、議論は無意味です。

 

しかし、セキュリティの議論がまったくないので、最低限の留意事項を書いておきます。

 

2)口座の紐つけ

 

マイナンバーカードを口座に、紐つけることができます。

 

納税の簡略化をするのであれば、必須の条件になります。

 

しかし、デジタル納税システムが先にないと効果がありません。

 

また、この紐つけ情報には、セキュリティの設定がありません。

 

現在の通帳やキャッシュカードには、番号が記載されていないものを選べます。

 

しかし、マイナンバーカードには、番号が書かれています。

 

つまり、紐つけした時点で、セキュリティが低下します。

 

紙の媒体であれば、物理的に近くにいる人しか、情報にアクセスできません。

 

インターネットが繋がっていれば、デジタル情報は、どこからでもアクセス可能です。

 

したがって、アクセスの制限が必要になります。

 

マイナンバーカードには、アクセス制限が設定されていません。

 

マイナンバーカードの個人情報には、誰が、どのレベルまでアクセスできるのかというルールがありません。

 

マイナンバーカードのシステムをつくるために、マイナンバーカードのデータが必要になります。スタートでは、ダミーデータを使いますが、どこかの時点で、本物のデータを使う必要があります。

 

このシステムの開発や維持管理をする人は、どこまで、個人情報にアクセスできるのでしょうか。

 

個人名のデータ以外には、アクセスできている可能性があります。また、維持管理をする人の全員が、個人情報にアクセスする必要はありません。個人情報にアクセスできる権限のある人は何人いて、どのように選抜されているのでしょうか。

 

政府は、「子ども・子育て支援金」創設は、財源確保のため公的医療保険料に上乗せして徴収する計画です。これは、国会審議なしに増税可能ですので、増税よりたちの悪い憲法違反です。

 

政府は、本音(実質増税)は無視して、建前で押し切る計画です。

 

政府は、マイナンバーカードに、保険証を紐つけて、保険証を廃止する計画です。

 

マイナンバーカードに、保険証を紐つければ便利になるというのは建前です。

 

本音(実体)は、読みとり機のエラーが出て使いものになりません。

 

マイナンバーカードは、スマホでも代用が可能です。

 

しかし、政府は、ハードウェアのカードにこだわっています。

 

政府のDXには、評価関数も、効果の計測もありません。

 

政府の本音は、DXではなく、政治献金に対するキャッシュバックにあると思われます。

 

DXシステムをつくるには、科学のミームで、デザイン思考する必要があります。

 

3)順番の問題

 

マイナンバーカードを口座に、紐つける場合、システムは、段階的に普及させる必要があります。

 

政治献金の口座を議員のマイナンバーカードに紐づければ、パーティ券問題は解消できます。

 

医者は、新しい治療法をテストする場合に、最初に自分の身体でテストすることがあります。

 

旅客機の設計者は、最初のテスト飛行に同乗する慣習があります。

 

これは、旅客機がテスト飛行で墜落した場合に、設計者の責任を明確にする工夫です。

 

国会議員は、マイナンバーカードを政治献金に紐つけていませんので、今の方法は、順番が間違っていると思われます。

ミームの研究(18)中抜き原理のミーム

(中抜き原理が、市場原理に勝てる可能性はありません)

 

1)中抜き原理

 

政治家、官僚、経営者の中には、中抜き原理(中抜き経済)で、市場原理を抑えることが可能であると考えている人がいます。

 

あるいは、中抜き原理のミームによって、市場原理が見えなくなっています。

 

東芝が人員削減計画に入っています。

 

2024年4月17日に、東芝は国内の従業員を数千人規模で削減する検討に入りました。本社の間接部門などを中心に人員削減を行ない、人件費の軽減を図ります。削減計画は、5月中旬までに取りまとめる中期経営計画に盛り込みます。インフラやエネルギー、デジタル分野など成長が見込まれる分野に経営資源を集中します。東芝の国内従業員は約7万人です(2023年3月末時点)。

<< 引用文献

東芝、数千人規模で人員削減へ 5月中旬までに中期経営計画 2024/-4/17 共同通信

https://news.yahoo.co.jp/articles/9aaedc3d7b2b18d5d23b6f186bcead54210ce1c8

>>

 

東芝は、日本国内の投資ファンドである日本産業パートナーズ(JIP)が設立した特定目的会社である「TBJH株式会社」(後のTBJH合同会社)による非上場化を前提としたTOB形式での買収案の受け入れて、2024年12月20日をもって株式上場を廃止しています。

 

現在の東芝の経営幹部の過半数は、JIPから派遣されています。

 

ここでは、上場廃止までの経営を「市場経済と中抜き経済」の視点で振り返ってみます。

 

東芝は製品の製造からサービスに至るまでの間に、多岐に渡る子会社や関連会社を形成していて、東芝グループの中核に位置する巨大企業です。東芝はかつてテレビや家電製品、携帯電話、パソコンなど消費者向け製品でも事業展開していましたが、現在はコンスーマ商品から撤退し電子部品(HDDなど)・原子炉・重電機・軍事機器・鉄道車両など、企業間取引による重工業分野へ重点的に事業展開をしています。

 

冷蔵庫・洗濯機・掃除機・電子レンジ・炊飯器など、家電製品の国産化第1号の製品が多く白物家電の日本におけるパイオニアでした。しかし2015年の粉飾決算による経営不振発覚を契機に、主力事業の白物家電事業、テレビ、パソコン事業、医療機器事業、メモリ事業を中国企業などに売却し、社会インフラを中心とするメーカーに転換しました。

 

2024年現在でも、家電量販店にいけば、東芝ブランドの家電製品を見ることができますが、これは、中国企業の生産です。

 

白物家電事業、テレビ、パソコン事業及び医療機器事業、メモリ事業を中国企業などに売却する以前から、東芝では、黒字部門の利益を赤字部門に補填していました。

 

市場原理に基づく経営をするのであれば、黒字部門の利益は、黒字部門の製品開発費や、新規事業の立ち上げにまわして、赤字部門は整理することになります。

 

しかし、東芝は、赤字部門の維持のために、黒字部門の利益をつけ回していました。つまり、販売実績に関係なく、部門にポストがあれば、給与を払うために利益をつけ回しをしていました。これは、経営が中抜き原理で行なわれていたことになります。

 

2015年の粉飾決算による経営不振以降も、黒字部門を売却して、利益が薄い、または、赤字の部門を残しています。経営方針は、市場原理ではなく、中抜き原理に基づいています。

 

中抜き原理で経営をすれば、利益をあげられる部門はなくなります。

 

利益を生みだせる人材は流出してしまいます。

 

2021年4月7日、イギリスの投資ファンド・CVC キャピタル・パートナーズからの買収が提案されていることが報じられました。

 

株価がさがって、資産価値より低くなれば、買収する価値があります。投資ファンドが買収を計画したことは、経営再建の道筋がついていることを意味しません。

 

 東芝は、2024年5月中旬までに、5000人規模で人員を削減する計画を中期経営計画に盛り込む予定です。

 

中抜き原理では、市場原理に勝つことはできません。

 

2)中抜き原理のミーム

 

ここで、東芝の例をあげた理由は、東芝の経営を改善すべきであるという主旨ではありません。

 

中抜き原理は、法度制度のミームが原因で起こっています。年功型雇用は、ポストに給与がつくので中抜き原理でできています。

 

ジョブ型雇用では、経営者の責任は、機会費用で評価されます。悪い経営者の責任は、良い経営者であればあげられた利益と悪い経営によってあげられた実際の利益の差額になります。

 

大阪万博が最終的に赤字になった場合、赤字の補填は経営者の責任になります。万博を中止した場合と、万博を実施した場合の赤字の差が、経営者の責任であり、経営者はその金額を補填する責任があります。ここでいう経営者には、府知事も含まれます。

 

責任を市場原理でとれば、もしも、赤字のリスクが高ければ、経営者になり手がいなくなり、万博は中止になります。

 

赤字のリスクが低ければ、経営者は、赤字の場合に、補填をする保険契約を保険会社と結ぶことができます。この保険料が、経営者の給与より、安ければ、保険会社は、万博は黒字になる確率が高いと評価していることになります。

 

保険会社が、万博は赤字になる確率が高いと評価していれば、保険料は高額になり、経営者の給与では支払れなくなるので、経営者のなり手はいなくなります。

 

その場合には、万博は自動的に中止になります。

 

これが市場原理です。

 

経営責任といって、賞与を返還しても、万博が赤字でも、給与は残ります。この場合には、経営者には、万博を中止する理由がありません。

 

オリンピックと同じように万博が中止になった場合に、税金を投入すべきではありません。

 

税金の投入は、消費税の造税、社会保険料の値上げ、年金の切り下げ、医療費の補助の切り下げに繋がります。

 

おそらく、市場原理の経営責任を導入していれば、万博の費用が当初見込みより大きくなった時点で、経営者のなり手がいなくなっていたと思われます。

 

中抜き原理は、法度制度のミームが生み出しています。

 

法度制度のミームがなくなるのは、年功型雇用がなくなり、春闘がなくなった時です。

 

問題は、ミームの入れ替えにあります。

 

3)デジタル赤字

 

みずほ銀行のチーフマーケット・エコノミストの唐鎌大輔氏は、デジタル赤字を次のように推計しています。(筆者要約)

 

デジタル関連収支は、通信・コンピューター・情報サービス、専門・経営コンサルティングサービス、知的財産権等使用料(除く研究開発ライセンス等使用料・産業財産権等使用料)の三つを合計しています。

 

2023年時点のデジタル関連収支赤字は約5.5兆円と過去最大を更新し、過去最大の黒字を更新した旅行収支黒字の約3.6兆円を優に食いつぶしていまする。観光産業という「肉体労働で稼いだ外貨」は、今や「頭脳労働で生み出されたデジタルサービス」への支払いに消えています。

 

デジタル関連収支は米国が1114億ドル、英国が692億ドル、欧州共同体(EU、除くアイルランド)が332億ドルの黒字で、米国・英国・EUの3強の様相です。

 

EU内では、フィンランドが95億ドルの黒字、ドイツが102億ドルの赤字、フランスが24億ドルの赤字、オランダが8億ドルの赤字です。

 

これに対して、日本は364億ドルの赤字で、OECDで最も大きな赤字です。

 

除外したアイルランドのデジタル関連収支は、480億ドルの黒字です。

 

アイルランドを含めた場合、EUのデジタル関連収支は812億ドルの黒字となり、英国の692億ドルを超えます。

 

通信・コンピューター・情報サービスに限れば、アイルランドは1940億ドルの黒字で、これは米国の12倍、英国の8倍に相当します。

<<

コラム:OECⅮで最大のデジタル赤字国・日本、欧米の背中遠く=唐鎌大輔氏 2024/04/18 ロイター

https://jp.reuters.com/opinion/forex-forum/XV2SBVGD3BPXDEHTTWHAZ33G2I-2024-04-16/

 >>

 

日本が経済成長しない原因は、デジタル社会へのレジームシフトに取り残されているからです。

 

政府は、デジタル人材が不足するといいますが、アイルランドの人口は512万人に過ぎません。

 

デジタル人材数は、不足していません。

 

日本では、市場原理がないので、高度人材が仕事が出来る場がありません。

 

どうして、日本のデジタル赤字が364億ドルのOECD最大になっているかと言えば、法度制度のミームに原因があります。

 

東芝は、人材の確保が困難になっています。

 

高度人材が、東芝を選ぶ理由を考えることは困難です。

 

しかし、同じ問題は、日本国にもあてはまります。

 

中抜き経済の日本から、高度人材の流出は止まりません。

 

マイナンバーカード問題は、日本には、高度人材の働く場がないことを明確にしめしています。

 

エストニアのような電子政府を作るロードマップがないのですから、日本の生産性があがるはずはありません。つまり、この国には、高度人材に高い給与をはらう企業は少ないことがわかります。

 

しかし、法度制度のミームで動いている政府には、中抜き経済でしか、現象が見えなくなっています。

ミームの研究(17)穴とバケツ

(穴とバケツを取り違えては、問題は解決できません)

 

1)日本丸の現状

 

2024年の日本丸(日本経済)の状況は悲惨です。

 

IMD(国際経営開発研究所:International Institute for Management Development)は、「世界競争力年鑑(World Competitiveness Yearbook)」の2023年版を6月20日に公表しました。日本の競争力総合順位は過去最低の35位でした。



アジア・太平洋地域の順位は以下です。

 

4位 シンガポール

6位 台湾

7位 香港

21位 中国

24位 オーストラリア

27位 マレーシア

28位 韓国

30位 タイ

31位 ニュージーランド

34位 インドネシア

35位 日本

 

<< 引用文献

IMD「世界競争力年鑑」2023年版からみる日本の競争力 第1回:データ解説編 2023/10/24 MRI

https://www.mri.co.jp/knowledge/insight/20231024.html

>>

 

スイスに拠点を置くビジネススクール・IMD(International Institute for Management Development) が2023年9月21日、「世界人材ランキング2023」を発表しました。

 

調査対象の64カ国・地域のうち、日本は過去最低だった2022年調査から、さらに2ランク後退し43位という厳しい結果となった。2005年の調査開始以降で過去最悪の順位でした。

 

<< 引用文献

世界人材ランキング、日本は“過去最悪43位”に転落…「管理職の国際経験」は64カ国で最下位 2023/09/21 Business insider

https://www.businessinsider.jp/post-275601 

>>

 

ビジネススクールINSEAD(インシアード)が7日発表した2023年版の「世界人材競争力指数」で、日本は134カ国中26位と、調査を始めた13年以来で初めて上位25カ国から脱落しました。韓国が日本を逆転して24位でした。

<< 引用文献

人材競争力、日本25位内から脱落 仏調査で韓国が逆転 2023/11/07 日本経済新聞

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM074QB0X01C23A1000000/

 

The Global Talent Competitiveness Index 2023

https://www.insead.edu/system/files/2023-11/gtci-2023-report.pdf

>>

 

これらのランキングをオリンピックのメダルの国別順位と見るべきではありません。

 

因果モデルで考えれば、国際競争力のある企業が活躍して、貿易黒字を生み出すことで、経済が成長します。内需も大切ですが、日本は資源がないので、貿易赤字になって、貿易黒字で、外貨を稼げなくなると経済が止まります。

 

因果モデルで考えれば、競争力は、将来の経済成長や貿易黒字の原因になります。

 

たとえば、競争力の順位でみれば、「4位 シンガポール、6位 台湾、7位 香港、21位 中国、24位 オーストラリア、27位 マレーシア、28位 韓国、30位 タイ、31位 ニュージーランド、34位 インドネシア」の企業と日本企業が競争になった場合に、日本企業が勝ち残れる可能性が低いことを意味します。

 

競争力は、国別なので、企業単位でみれば、バラツキがあります。企業競争力の順位は、国のランクとはずれます。半導体などの電気製品では、日本企業は、既に、台湾、中国、韓国の企業に勝てなくなっています。

 

競争力の順位は、この競合企業のリストに、今後、マレーシア、タイ、インドネシアの企業が参入する可能性が高いことを示しています。

 

今回は、引用しませんが、競争力ランキングに似たものに大学ランキングがあります。教育の結果、人材が育成できて、その人材が、競争力ランキングに反映されます。

 

こうした因果モデルで考えれば、大学のランキングが下がり続ければ、10年以上のタイムラグで、競争力ランキングが低下し、更に、5年程度のライムラグで、企業経営の結果に反映されます。

 

日本丸は、フナ底の穴があいて、沈みかけているように見えます。

 

株価や企業利益は、因果モデルの結果です。

 

入手可能なデータには、因果モデルの原因のデータと因果モデルの結果のデータがあります。

 

科学は、因果モデルを使うので、データの中から、原因に相当する部分を抽出します。

 

原因が変化すれば、結果は変化します。

 

因果モデルで考えれば、日本経済は中期的には悪くなると予測できます。

 

それを止めるには、原因である人材の育成、生産性の向上を図るしか方法がありません。

 

政府は、ゾンビ企業に、補助や支援をしています。

 

しかし、ゾンビ企業は、生産性が低いためゾンビになったのです。

 

ゾンビ企業に税金を投入すれば、税金が無駄になるだけでなく、生産性の向上が阻害されて、日本の競争力を低下させます。

 

IMD「世界競争力年鑑」の日本の競争力は、毎年低下していますが、これは、政府のゾンビ企業の保護政策が効果を発揮した結果でもあります。

 

人材の育成では、2000年頃、分数のできない大学生が問題になりました。つまり、日本の大学の人材育成には問題があるという指摘です。

 

しかし、大学改革は、放置され、政府は、定員割れ赤字の大学(ゾンビ大学)に対して、補助を続けています。

 

政策は、十分すぎる効果をあげています。

 

2)バケツの話

 

フナ底に穴のあいた船は、沈み始めます。

 

この時に、バケツで水を汲みだしても、沈没をさけることはできません。

 

前節の例でいえば、フナ底の穴は、人材の育成と生産性の向上になります。

 

問題が発生した場合に、問題を解決するためには、次の条件が必要です。

 

第1に、原因をさがして、原因の対策を講ずるべきです、

 

第2に、対策の効果を量的に評価すべきです。

 

第3に、複数の対策が考えられる場合には、対策の費用対効果を考えて、効率的な対策を選択すべきです。

 

第4に、複数の対策が同時並行で行われる場合には、総合的な効果を評価すべきです。

 

第5に、対策の評価を行う利害関係のない第3者組織があるべきです。

 

3)穴を塞がない理由

 

フナ底にあいた穴を塞ぐと不都合があります。

 

フナ底にあいた穴を塞ぐと、バケツが売れなくなります。

 

バケツの製造会社が、政治献金をしていた場合、利権の政治では、建前の目的は、日本丸の沈没を回避することですが、本音の目的は、補助金(税金)でバケツを購入して、バケツの販売数をふやすことです。

 

バケツが売れなくなると困る(選挙で当選できなくなる)ので、フナ底の穴の話はタブーです。

 

科学のミームでは、フナ底の穴を塞ぐ(人材の育成、生産性の向上を図る)ことが目的であり、人材と生産性に評価関数が設定されます。

 

政治家は、法度制度(権威)のミームで行動しています。

 

学歴詐称問題が発生する原因は、政治権力の根源(ミーム)が権威にあるためです。

 

政府は、問題があれば、審議会に丸投げしますが、審議会もまた、法度制度(権威)のミームで行動しています。

 

法度制度(権威)のミームは、科学のミームではなく、経験主義のミームでもあります。

 

ゆとり教育の時の審議会のメンバーが、「自分の経験では、2方程式が必要になったことはない」と主張しました。その結果、円周率は、3になってしまいました。

 

「自分の経験では」は、経験主義で、科学のミームではありません。

 

審議会の検討事項は、フナ底の穴を塞ぐことではなく、バケツの購入になっています。

 

審議会の議論は、補助金で、何色のバケツを購入すべきかというレベルの議論です。

 

マイナンバーカードは、バケツに過ぎません。

 

マイナンバーカードで、フナ底の穴を塞ぐ(生産性の向上を図る)ことができるのであれば、生産性の向上に対する効果が説明できるはずです。

 

フナ底の穴を塞ぐことは一度にできないのであれば、ロードマップが示されているはずです。

 

恐らく、マイナンバーカードは、バケツの1種に過ぎないと思われます。

 

マイナンバーカードの目的が、フナ底の穴を塞ぐ(生産性の向上を図る)ことにあるのであれば、マイナンバーカードによって、日本の生産性が何時までに、外国の生産性を上回るのかというロードマップが必須です。

 

マイナンバーカードによる生産性の向上効果が、海外のDXシステムより劣る場合、日本企業には、競争力がなくなります。

 

日本経済が、市場原理に基づいていれば、「日本の生産性が、海外の生産性を上回る」ことは、輸出の必須条件です。

 

政府は、この点が、気にならないので、政府の政策は、中抜き経済を目指していることがわかります。

 

問題の原因はミームにあります。

 

ミームの違う人とは相互理解は不可能です。

 

問題解決には、科学のミームが必要です。

 

六所の花桃~つくば市とその周辺の風景写真案内(1268)

 


六所の花桃です。

 

花桃は、大仏周辺、逆川沿い、茅葺き小屋周辺にあります。

 

写真1 六所の花桃

 

 

写真2 六所の花桃

 

 

 

 

 

ミームの研究(16)トレンドと因果

(科学の基本は因果モデルです)

1)バーナンキ氏の発言

 

ロイターは次のように伝えています。(筆者要約)

 米連邦準備理事会(FRB)のバーナンキ元議長は2024年4月12日、英イングランド銀行BOE中央銀行)への提言書を公表し、対話手法を全面的に見直すとともに、経済予測については「決定的に時代遅れ」になっている技術を改めるべきだとの考えを示しました。

 

英国は2022年にインフレ率が41年ぶりの水準まで上昇し、BOEは利上げが後手に回ったとの批判を浴びました。バーナンキ氏は、2023年にBOEの経済予測方法などを改善するための提言を委託されていました。

 

提言書は、BOEがより多くの経済シナリオを公表し、金利については市場予想への依存を減らすといった改善案を示しました。ただ金利見通しについては、FRBの「ドットチャート」のような独自予測の発表を推奨せず、こうした大胆な選択肢についてはさらなる検討が必要だとしました。

 

バーナンキ氏は「BOEの予測精度はこの数年で著しく悪化したが、他の中銀や英国の他の予測機関でも予測の確度は英中銀と同程度に悪化している」と言いました。予想を外したのは「極めてまれな状況」によるものであり、「恐らく避けられなかっただろう」と言いました。

 

最大の問題は中銀の予測システムに「重大な欠陥」があり、職員が代替的な経済シナリオを作ることが難しかったためだと分析しました。

 

その上で、BOEは「四半期インフレ報告」で長年採用してきた確率分布図(ファンチャート)を廃止し、代わりにリスクをより明確に評価し、経済が予想通りに動かなかった場合に、どのような金利変更の可能性があるか、その変更がどのような影響を与えるかを示す代替的なシナリオを公表すべきだとしました。

<< 引用文献

英中銀に経済予測の抜本的改革を提言、バーナンキFRB議長 2024/04/15  ロイター David Milliken

https://jp.reuters.com/markets/japan/funds/UJ5SHKOJWNL3JDWSHKD7XQEICA-2024-04-15/

>>

 

BOEは、確率分布図(ファンチャート)を使用してきました。ファンチャートは、時系列解析(トレンドモデル)であって、因果モデルではありません。

 

科学の基本は、因果モデルなので、トレンドモデルは、厳密には、科学のモデルではありません。

 

少なくとも、因果モデルではないトレンドモデルは、科学の水準の検証はできません。

 

バーナンキ氏は、「ファンチャートを廃止し、経済が予想通り(トレンドどおり)に動かなかった場合の金利変更の可能性と影響を示す代替的なシナリオを公表すべきだと言います。

 

FRBの「ドットチャート」は、複数の専門家の予測を、個人名を伏せて、ドットで表示します。この専門家の予測には、経済が予想通り(トレンドどおり)に動かなかった場合のシナリオも含まれますので、トレンドモデルよりは、因果モデルに近い予測になります。

 

2)トレンドモデルの呪縛

 

人間には、過去の経験に従って行動する認知バイアスがあります。これは経験主義のミームです。

 

カーネマンは、「ファスト アンド スロー」で、人間には、思考のファスト回路を利用するバイアスがあると言いました。

 

ファスト回路は、過去の経験を繰り返すヒューリスティックな思考回路です。

 

トレンドモデルは、ファスト回路に対応しています。

 

銀行や証券会社は、金融商品をすすめるときに、過去10年の実績を使います。

 

これはトレンドモデルです。

 

バブル崩壊以降、中期的には、株価はあがり続けています。

 

つまり、どの金融商品も、トレンドでみれば、過去20年の実績はプラスです。

 

ある金融商品が、他の金融商品より優れている点を評価するためには、手数料を引いたあとのネットの投資金額の増加率で評価する必要があります。

 

一つのアイデアでは、ネットの金融資産の増加率(リターン)が大きな商品が良い商品です。

 

しかし、母集団を小さくとれば、ネットの金融資産の増加率が大きな商品は簡単に見つかります。母集団の小さな金融商品は、変動が大きくなります。

 

つまり、ハイリスク、ハイリターンの金融商品になります。

 

このリスクが、第2のアイデアです。

 

母集団を極端に大きくとれば、インデックス商品になります。この場合、期待される利回りは、市場平均とほぼ同じになります。

 

インデックス商品は、基本的には、ローリスク、ローリターンです。ただし、インデックス商品の手数料は、母集団の小さな商品より手数料が安いので、ネットのリターンが、ハイリスク商品より高くなることもあります。

 

インデックス商品は、基本的には、ローリスク、ローリターンですが、株式市場がバブルになっている場合には、ハイリスク商品になります。

 

金融商品を販売する場合には、本来であれば、リスクとリターンの情報を公開すべきです。しかし、そのようなデータは公開されていません。(注1)

 

アメリカの投資ファンドの中には、S&Pの平均と比べて、上回っている部分(ネットのリターン)の実績を示しているファンドもあります。

 

そのようなファンドの割合は、30%以下といわれていますので、S&Pの平均と比べた実績を提示しているファンドは強気なファンドです。

 

ソロス氏は、株価の上昇フェーズでは、株価は上がりつづけるという認知バイアスがあるといいます。

 

トレンドは因果モデルではないので、科学的には、原因の大きな変化がない場合に限って有効な推論に過ぎません。

 

政府は、過去に成功した高齢の実業家や学者を重用していますが、過去の成功のノウハウは、成功の原因の大きな変化がない場合に限って有効です。

 

ジームシフトが起こっている場合には、経験主義は必ず失敗します。

 

注1:

 

リスクは、情報に基づいて計算します。ハイリスク、ハイリターン、あるいは、ローリスク、ローリターンという表現は、情報の問題を無視しています。

 

モデル(リスク評価)は、データ(情報)に依存するという視点は、データサイエンスの基礎です。

 

3)失われた30年

 

失われた30年という表現は、トレンドモデルに基づいています。

 

高度成長期と安定経済成長期のトレンドを考えれば、日本経済は成長するはずであるという経験主語のミームの先入観です。

 

そして、過去の経済データから、帰納法で原因を探索する人が多くいます。

 

バブル崩壊以降、経済のレジームシフトが起こりました。

 

経済成長を推進する大きな原因は、ITの科学技術です。

 

つまり、経済成功の原因は、ITの科学技術に大きく変化しました。

 

経済のレジームシフトが起こっている場合、トレンドモデルは無効です。

 

失われた30年という問題設定はナンセンスです。

 

失われた30年という問題設定が行われる原因には、経験主義のミームがあります。

 

そこには、科学のミームはありません。

 

科学のミームで因果モデルを考えれば、バブル崩壊以降、経済成長の大きな原因は、ITの科学技術を使った劇的な生産性の向上にあります。これは、アブダクションによる仮説です。

 

厳密には、仮説は検証すべきですが、生産性の向上が余りに大きいので、検証するまでもなく、自明に思われます。

 

ITの進展に比べれば、他の原因は、生産性に、取るに足らない影響しか与えていないと思われます。

 

バブル以降、日本経済が成長せず、国際競争力が失われた原因は、ITの進展に取り残されたことが原因であると考えれば、失われた30年は、日本の選択によって起こった必然的な結果です。

 

労働生産性の変化や、ITレベルのデータは、この仮説を支持しています。



4)シーシュポスの神話

 

帰納法で、経営データをもとに、GAFAMの労働者ひとり当たりの生産性が従来の産業の10倍あると解析している人もいます。

 

しかし、デザイン思考で考えれば、劇的な生産性の向上が得られることは、GAFAMが経営の設計段階でわかっていたことです。

 

日本の教育では、教師は、毎年同じ授業を繰り返しています。

 

新入生のレベルは、毎年同じなので、4年間の大学教育を終了しても、到達できるスキルレベルは同じです。これは、シーシュポスの神話になっています。

 

授業の内容を学生に教える代わりに、教師は、プログラムを作ります。

 

最初のプログラムは幼稚で、とても、学生には及びません。

 

しかし、プログラムは、毎年、進歩しています。

 

プログラムの作成は、シーシュポスの神話ではありません。

 

近年、プログラムは進歩して、プログラムが学習してプログラムを作ることが出来るようになりました。これがAIです。AIは知識を自己増殖しています。

 

大学の教員は、プログラムや、AIが作れる人材を育成すれば、知識を習得する授業を学生に教える必要がなくなります。

 

AIが作れる人材は、知識を習得した専門家の100倍以上の生産性があります。

 

知識を習得した専門家を100人クビにして、AIが作れる人材を1人雇えば、同じ生産が可能です。

 

AIが作れる人材の給与は、クビにした知識を習得した専門家の100人に相当しますが、そこまでの給与を払わなくとも、人材を確保できるので、高い利益率が得られます。

 

大学の講座定員は、従来の専門家100人を養成するコースを廃止して、代わりに、AIが作れる人材を1人養成するコースを作れば足ります。

 

知識を習得した専門家の100人は、クビになりますが、実際には、これは、他の企業で起こっています。

 

アマゾンの進出で、小売業界の再編が起こった原因は、ここにあります。

 

アマゾンの進出による小売業界の再編は、経済のレジームシフトの例です。

 

小売業界の再編のでは、大規模なレイオフが起こりました。

 

経済のレジームシフトを受け入れれば、大規模なレイオフが起こります。

 

大規模なレイオフを避けて、経済のレジームシフトを受け入れないという選択は可能です。

 

しかし、その選択は、大きな副作用を伴います。

 

企業の成長や、国の経済成長が出来ません。

 

海外の企業や国は、経済のレジームシフトをすすめる中で、特定の企業と国だけが、経済のレジームシフトを受け入れない場合には、経済的な競争力が失われ、貿易赤字になり、外貨を獲得できなくなります。

 

日本のように、資源のない国では、外貨が獲得できなくなれば、モノが輸入できなくなり、生存に関わります。

 

これは、食料自給率よりはるかに深刻な問題を引き起こします。

 

つまり、将来を考えれば、生存を諦めるか、レイオフを受け入れるかの2択しかありません。

 

このレイオフの影響の大きさは、アマゾンによる小売業の再編と同じスケールになると考えられます。

 

もちろん、この場合、レイオフされた人の再雇用の問題があります。

 

しかし、再雇用問題を優先して、経済のレジームシフトを先延ばしにすれば、外貨が獲得できなくなり、国民が、生存できなくなります。

 

日本のデジタル貿易の赤字は、レジームシフト問題が、既に、生存問題レベルになっていることを示しています。



5)人口予測の課題

 

社人研が、人口予測をだしています。

 

このモデルは、バーナンキ氏流に言えば、「決定的に時代遅れ」になっている技術です。

 

人口予測は、因果モデルとトレンドモデルで構成されています。

 

人口予測が重要な理由は、一見するとトレンドモデルに見えますが、モデルの大半は、因果モデルになっている点にあります。

 

人口モデルの基本は、コホートモデルです。

 

コホートモデルでは、既に生まれている人の将来の予測は因果モデルになります。

 

これから生まれる人のモデルは因果モデルにはなりません。

 

今後の出生数をトレンドで評価できるためには、原因の大きな変化がない場合に限ります。

 

出生数や出生率が大きく変化する場合には、原因の大きな変化があると推定できます。

 

簡単に言えば、出生率が大きく低下している場合には、トレンドモデルを使うべきではありません。(注2)

 

推定がトレンドレンジの外挿になっている場合には、トレンドモデルを使うべきではありません。

 

出生数については、因果モデルを使うべきです。

 

さて、コホートモデルでは、既に生まれている人の将来の予測は因果モデルになります。

 

生産年齢人口を18歳以上とすれば、18年後までの、将来の人口予測は因果モデルになります。

 

2040年の生産延齢の労働人口は確定しています。

 

外国人の労働者の導入が検討されないうちに、円安になって、困難になっています。

 

外国人の労働者の導入可能な速度には、限界があります。

 

ドイツはかなり急速な拡大をして、問題を引き起こしました。

 

この点を考えれば、少子化の問題を解決できる速度で、外国人の労働者の導入はできません。

 

ただし、労働者数が問題にならない高度人材については、この限りではありません。

 

いずれにしても、既に生まれている人のコホートをつかった予測と、これから生まれる人のコホートをつかった予測の間には、確度の差がありますので、区別して発表すべきです。

 

社人研が、人口予測には権威があるので、社人研の人口予測を未来予測のように扱う人がいます。

 

しかし、社人研の人口予測をつかって、帰納法で推論しても、問題解決はできません。

 

人口減少と生産性の相対的低下の2つの問題があります。

 

コホートが確定した人口減少は、受け入れるしか方法がないので、問題ではありません。

 

人口問題で解決可能な部分は、出生数の部分だけです。

 

生産性の相対的低下の問題は、デジタル社会へのレジームシフトを起こせば、解決が可能です。

 

出生数の改善は、長期的に効果がありますが、短期、中期的には、デジタル社会へのレジームシフトが遥かに影響の大きな課題です。

 

その場合、国際的な競争力の視点からすれば、デジタル社会へのレジームシフトは、外国よりも先に進む必要があります。

 

経験主義のミームが、問題を見えなくしています。

 

デジタル社会へのレジームシフトには、経験主義のミームが、科学のミームに置き替わる必要があります。

 

敗戦時と同じくらいの社会変化を通過せずに、それを実現することは困難と思われます。





注2:

 

この推論は、ソロス氏の株価が大きく変動するときには、市場均衡モデルがあてはまらないという推論にヒントを得ています。



ミームの研究(15)オートパイロットと科学のミーム

(科学の方法のオートパイロットについて説明します)



1)オートパイロット

 

船と飛行機には、目的地を設定すれば、自動運転するオートパイロットがあります。

 

自動車のオートパイロット(自動運転)開発中ですが、障害物が多いため、まだ、完成していません。

 

しかし、カーナビをみれば、オートパイロットに必要な条件がわかります。

 

自動運転では、目的地に到達する精度だけでなく、ルールの選択が問題になります。

 

距離最短、時間最短、費用最短の条件が異なれば、ルートは異なります。

 

データサイエンスでは、このような条件を評価関数にとります。

 

データサイエンスでは、対象とするデータを設定して、評価関数の値が最小または、最大になるアルゴリズムを探索します。

 

たとえば、画像認識の場合には、猫の写真を猫と判定する精度が評価関数になります。

 

この評価関数に対して、学習用の画像データセットと検証(評価関数の値の測定)用のデータセットを準備します。

 

AIは、幾つかのアルゴリズムで構成されたソフトウェアで、プログラムコードから作られます。

 

ソフトウェアは、アルゴリズムによって、データから自動的にパラメータを求めます(学習)。

 

いったん、パラメータが決まれば、そのパラメータをつかって、ソフトウェアは推論をします。

 

ソフトウェアのパラメータ決定(学習)と、そのパラメータを使った推論は、オートパイロットと同じように、全て自動で行います。

 

Aiが期待される機能を実現したか、否かは、評価関数の値で判断します。

 

画像認識の場合には、人間の画像認識の正答率は、95%であることがわかっていますので、AIの正答率が、95%を越えれば、人間以上の性能が実現できたことになります。

 

オートパイロットとAIに共通する点は、データの準備と評価関数の設定です。

 

GPSを使った位置データが利用可能になった結果、オートパイロットが実現できました。

 

GPSのデータが利用可能になる前の自動車の運転には、カーナビはありませんでした。

 

自動車の運転は、紙の地図に基づいて行い、ランドマークや大きな交差点で、一旦停止して、位置を確認していました。

 

その時代には、GPSデータを使って、随時、位置を確認することはできませんでした。



2)経済政策のオートパイロット

 

経済政策を行なう場合、経済データを紙媒体であつめて、集計すると時間遅れが生じます。

 

一昔前のインドの人口統計は、調査を始めてから、集計が終るまでに3年かかっていました。

 

この場合には、経済政策にオートパイロットを使うことはできません。

 

エストニアでは、殆どのデータは、リアルタイムで、入手が可能です。

 

この場合には、経済政策にオートパイロットを使うことができます。

 

経済政策にオートパイロットをつかう場合の評価関数は、生産性と貧困の解消です。

 

この2つの値をモニタリングして、変化を追跡すれば、経済政策の評価が可能です。

 

たとえば、日本が、エストニアレベルの電子政府になっていたとします。

 

北海道、東北、関東といった地方ごとに、異なった経済政策を実施して、評価関数を見れば、どの経済政策が、もっとも効果的かを判断できます。

 

この場合の経済政策とは、アルゴリズムを指します。

 

貧困の解消の評価は、ジニ係数でも可能ですが、重要な点は、貧困層が生活可能な収入を得ているかという点です。

 

イギリスの場合には、家計の所得分布の下位から20%の値を使っています。

 

日本では、全く意味のない平均値をつかっていますが。これは、統計学の誤用法になります。

 

家計調査のデータは、全世帯のサンプルになっていますが、給与所得のデータは、企業規模が、雇用者は30人以上、または、100人以上になっていて、30人未満の小規模企業の統計データはありません。

 

春闘は、大規模企業が高い賃上げで、中小企業は低いといいますが、雇用者数が、30人未満のデータが落ちています。

 

雇用者数が、30人未満のデータは、アンケートで収集することは困難ですが、それを切り捨ててしまえば、サンプルデータは母集団を代表しなくなります。

 

統計学では、サンプリングバイアスは可能な限り補正しないと、データは使えないと判断します。

 

雇用者数が、30人未満のデータについても、補正が必須です。

 

雇用者数が、30人未満のデータを入れれば、平均賃金が上がるとは思われませんので、賃金実態は、政府の公表より小さいと思われます。

 

要するに、政府のデータの採り方では、大学の統計学の単位すら取得できないのです。

 

政府の経済対策は、評価関数を無視しています。

 

評価関数を無視できる利点は、利権を温存できることです。

 

経済政策のオートパイロットが実現すれば、政治家が、政治判断と称して、利権を優先することができなくなります。

 

これでは、政治家が困るので、政治家は、電子政府と経済政策のオートパイロットを阻止しています。

 

科学は、利権の敵なので、政治判断を振りまわしています。

 

3)もうひとつのオートパイロ

 

電子政府のデータを使ったオートパイロットは、GPSを使ったオートパイロットと同様に、科学技術の成果です。

 

一方、経済学者は、経済には、より原始的なオートパイロットがあると考えています。

 

それは市場経済です。

 

市場経済は、万能ではありませんが、オートパイロットと同じように、随時軌道修正を行なっています。

 

その典型は、株式市場です。

 

その逆は、統制価格です。

 

統制価格の問題点は、第1に、オートパイロットと同じように、随時軌道修正ができないこと、第2に、中抜き経済になることです。

 

市場がなければ、価格の随時軌道修正ができません。

 

これは、自動車の運転でいえば、紙の地図を使っていた時代の方法です。

 

円安になったことを受けて、統制価格の改訂をしていますが、改訂をした頃には、円ドルレートは動いています。

 

市場経済も使わない、電子政府のオートパイロットも使わなければ、古くなった統制価格がのこり、需給のバランスは崩れます。

 

その原因を放置して、2025年問題のように原因を外部に押しつけても問題は解決しません。

 

2025年問題の原因は、市場経済を無視した統制価格(非市場経済)にあります。

 

4)科学の欠如

 

ある経済政策のブレーンの人は、少子化の原因は、若年層、特に、単身世帯の貧困にあると、データをもとに、帰納法で説明しています。

 

しかし、経済政策の評価関数は、生産性(経済成長)と貧困解消です。

 

この2つの評価関数を計測して、経済政策を制御しなければ、問題解決はできません。

 

帰納法で、問題を指摘しても、問題が解決する訳ではありません。



猫の画像認識のAIでいえば、猫の画像が認識できないのは、ソフトウェアのアルゴリズムの評価関数が悪いからだという主張にすぎません。



データサイエンスの分野で、このような主張をしても、誰も、見向きもしません。

 

データサイエンスでは、評価関数の設定なしには、研究はスタートしません。

 

デザイン思考の問題解決の科学のアプローチからすれば、評価関数なしに、アルゴリズムの評価はできません。

 

日本の経済政策は、科学の方法を使っていませんので、効果が出ると考える理由はないのです。

ミームの研究(14)デザインの力

ミームの変化を考えます)

 

1)問題解決の方法

 

ミームのモデルでは、人間の行動はミームに支配されています。

 

脇田晴子氏と水林章氏は、特攻は、法度制度のミームに原因があると考えました。

 

つまり、特攻が再び起こらないためには、法度制度のミームを取り除く必要があります。

 

脇田晴子氏は、法度制度のミームを取り除く方法を提案せずに亡くなりました。

 

水林章氏は、法度制度のミームは日本語に組み込まれていると考え、フランス語で、解決方法を検討しています。

 

それでは、どうすれば、法度制度のミームを取り除くことが可能でしょうか。

 

2)公民権運動

 

例によって、日本語版のウィキペディアは、法度制度のミームで書かれているので、使いものになりません。英語版のウィキペディアのCivil rights movementには次のように書かれています。

公民権運動は、米国で 1954 年から 1968 年にかけて、合法化された人種隔離、差別、権利剥奪を廃止する社会運動およびキャンペーンでした。この運動の起源は19 世紀後半のレコンストラクション時代にあり、現代的なルーツは 1940 年代にありましたが、この運動が法制化で最大の成果を挙げたのは、長年にわたる直接行動と草の根の抗議活動を経て 1960 年代でした。社会運動の大規模な非暴力抵抗運動と市民的不服従運動により、最終的にはすべてのアメリカ人の公民権が連邦法で新たに保護されることになりました。

 

アフリカ系アメリカ人が追求した法的戦略の頂点に達した1954年、最高裁判所は、米国で人種隔離と差別を合法としていた法律の根幹を違憲として無効にしました。

 

つまり、公民権運動とは、「アフリカ系アメリカ人が追求した法的戦略」であり、憲法違反の法律の改訂を求める運動でした。

 

公民権運動には、法律を改訂するためには、何が必要になるかのヒントがあります。

 

日本では、性差別の解消のために新しい法律が追加されていますが、性差別を温存した古い法律が残っています。

 

アメリカの公民権運動では、人種隔離と差別を合法としていた法律は違憲で、全て改訂されています。

 

パーティ券問題では、裏金を使った議員は、グレーも含めれば、脱税をしています。少なくとも、脱税していないという証拠を提示した議員はいません。

 

政治資金規正法は、議員が採決して、骨抜きになっています。

 

しかし、公民権運動にみるように、憲法違反の法律は、改正すべきです。

 

政治資金規正法を、議員が作成して採決することは、三権分立に反します。

 

政治資金規正法は、議員とは利害関係のない第3者機関が作成することができます。

 

この第3者機関が、政治資金規正法の改正案を、例えば、A、B、Cと3つ作成して、選挙の時に、国民投票で、採決することは可能です。

 

公民権運動は、Civil rights movementでした。

 

「movement」は権限とは関係がありません。

 

最高裁は、国会ではありませんので、法律を作ることはできません。

 

しかし、最高裁は、政治資金規正法の改正において、三権の分立の確保を要請することができます。

 

最高裁が、指示待ち人間でなければ、法律の順守以外に、法と正義の確保のために必要な要請をだすべきであると考えられます。

 

同様の問題は、学会、税理士などの業界にもあります。

 

現在の法律が、憲法に照らして問題があると感じれば、関係者は、法律を改訂する要請を社会的に公開することができます。

 

ここで議論していることは、法律の内容ではなく、法律はどのような手順でデザインされるべきかという課題です。



3)法律とミーム

 

法律は、人々がそれにしたがって活動しなければならないミームです。

 

憲法は、適用範囲が広い大きなミームですが、個別法は、適用範囲の狭い小さなミームです。

 

法律は最初は、ミームではありませんが、法律の順守を繰り返えすと、その部分のニューロンのネットワークが強化されてミームになります。

 

「悪法もまた法なり」は、法度制度が生み出した間違ったメッセージです。

 

これは、ニューロンのネットワークが強化から考えると大きな問題です。

 

問題は、悪法を改正する方法にあります。

 

憲法(人権)のミームが機能していれば、憲法違反の法度制度や年功型雇用はありえません。



現実には、法度制度のミームが、個別法のミームを介して、生き残っています。

 

これは、公民権運動の前のアメリカに似ています。



水林章氏は、法度制度のミームは日本語に組み込まれていると考えました。

 

しかし、筆者には、法度制度のミームは、個別法に組み込まれているように見えます。



ミームが問題発生の原因である場合、ミームの変更なしに、問題を解決することはできません。

 

法度制度のミームにとらわれた人は、すぐに解決策をだせと要求します。

 

思考が、過去の成功事例をコピーする帰納法に、とらわれています。

 

この思考ルートでは、法律の改正は、解決手法にあがってきません。

 

法度制度のミームにとらわれた人は、科学の因果モデルで思考することができません。

 

推論は、科学的に破綻しています。

 

今回のパーティ券問題では、政治資金規正法違反を裁判に訴えたり、国税庁に調査要求をした人がいました。

 

これは、進歩ではありますが、政治資金規正法憲法違反である限り、その効果は限定的です。

 

現在の政治資金規正法というミームはまともではありません。

 

問題解決には、ミームの変更が必要です。

 

ミームの変更は、個別法や憲法レベルのこともありますが、人権思想や法度制度といった憲法より更に、強力で広範囲なものもあります。



デザイン思考は、ミームの変更が出来るという点で、非常に強力な思考法です。