1)はじめに
マイクロフォーサーズ(MFT)についての文章を整理してたら、パナソニックの不祥事についてのニュースがはいっていました。
このテーマには、次の特徴があります。
1:日本の技術力低下の問題
2:ブランド価値の問題
3:倫理と責任に問題
現時点では、筆者の頭の整理が出来ていない部分があります。
問題は、パナソニックは、カメラの新製品の商品説明に、そのカメラで撮影していない写真を使用した点にあります。
「注意事項」として、「画像・イラストは効果を説明するためのイメージです」と説明されているので、問題がないという人もいます。
しかし、違法でなければ良いという主張は、商品やメーカーのブランド価値を無視しています。
過去20年の間に、カメラやレンズの製造を、国内工場から、海外工場に移転した日本のカメラメーカーが多くあります。
これは、ブランド価値を著しく損ねていますが、カメラメーカーが、その点を気にしているようには見えません。
筆者は、日本の家電メーカーが輸出競争力をうしなった原因のひとつは、この点にあると考えています。
先進国の日本の人件費は、途上国より高いです。しかし、品質は高いです。
生産を海外の工場に移した場合、製造コストは安くなります。しかし、品質は悪くなります。
市場原理に従えば、海外生産品は、品質は悪くなるが、価格も安くなるはずです。
しかし、日本のメーカーは、生産を海外に移転しても、価格改訂をしません。
そうすると、海外の購入者は、割高な製品を購入させられたと感じて、ブランド価値が失われます。
日本メーカーの白物家電は、全滅しました。これは、同じ中国で製造している製品であれば、割高な日本のメーカーの製品を購入する理由はないからです。
家電製品では、不要な機能を追加して価格を高くした製品をつくって、売れなくて自滅しています。日本の白物家電メーカーのブランドは、中国の家電メーカーに販売されて、中国の家電メーカーは、安価で基本性能のよい製品をつくって、世界市場でのシェアを獲得しています。
日本の白物家電メーカーが工場を中国に移した時に、どうして、中国の家電メーカーと同じ価格帯で、競争力のある製品を開発できなかったのでしょうか。
この問題がクリアできなければ、今後、日本のカメラメーカーのブランドが中国のメーカーに買収されて、デジタルカメラは、主流が中国製になる日は近いと思います。
なお、カメラのレンズでは、他のレンズで撮影した写真が、サンプルに混入されているといううわさが今までもありました。
とくに、中国製の1本1万円未満のレンズについては、うわさが多かったです。
2)経緯
経緯の要点を書きます。
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家電メーカー大手「パナソニック」が新たに発売したミラーレス一眼カメラ「DC-S9」は、2024年5月23日にプレスリリースが出て、6月20日発売と発表されました。
サイトでは、「進化したリアルタイム認識AFにより、動きのある被写体の撮影で自動的にピントが合います」とPRしている。
サイトの製品の特長についての紹介では、小犬が走っているときの一瞬の表情を画像で紹介している。この画像は、アメリカの有料素材サイト「Shutterstock」で販売されているフォトグラファー提供のものでした。
サイトでは、最後に、「注意事項」として、「画像・イラストは効果を説明するためのイメージです」と説明されてはいます。
27日ごろになって、写真愛好者らから、サイトで使われているいくつかの画像について。使用料を支払えば写真素材が利用できるストックフォトのサービスを使っているのではないかという疑問が出ました。
パナソニックは、素材サイトからの使用を取材に認め、「誤解を与える画像使用であったことを、深くお詫び申し上げます」と謝罪しました。
5月29日現在では、個別の写真に、S9で撮影されていない旨追記されています。
明らかに他社のカメラで撮影した画像は、差し替えられています。
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<< 引用文献
「LUMIX」製品サイトの画像、ストックフォト使用に批判 パナソニックは謝罪「誤解を与える画像使用だった」 2024/05/29 J-Cast News
https://www.j-cast.com/2024/05/28484705.html?p=all
LUMIX S9 の商品 WEB サイトの画像について
https://panasonic.jp/content/dam/panasonic/jp/ja/dc/pdf/about_S9_site.pdf
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同社の他のカメラやレンズでも次々にストックフォトの使用が確認されていると言っている人もいます。
「DC-G100DW レンズの紹介、プロ機とされるS1の作例にもストックフォトが使われているようです。
3)海外の評価
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パナソニックにとってさらに悪いニュースは、同社の社長による最新の声明と、レビュー担当者に影響を与えようとするマーケティング部門の報告書 に加えて、パナソニックは最新のLumix S9カメラキャンペーンでストックフォトを使用していると非難されていることです。写真の1つは、ニコンのアンバサダーがニコンのカメラで撮影したもののようです。現在、この問題はLumix Japanでのみ確認されていますが、他の国でも同様のプロモーションが行われている可能性があります。要約すると、Lumix S9の製品ページの写真の一部はストックフォトであり、カメラの画面画像は合成のようです。
更新:ルミックスジャパンはこの問題について謝罪しました。PDF 文書には謝罪文が含まれており、ルミックス サイトのコンテンツを見直すと記載されています。ただし、PDF 文書は非常に簡潔 (会社名やその他の詳細が欠落) であり、公式リリースとして適切な形式ではないというさらなる批判を招いています。
また、この画像はLUMIX G VARIO 12-32mmレンズの紹介の一部ですが、右側の女の子の写真はCanon EOS 5DsRとTAMRON 150-600mm G2レンズで撮影されたようです。キャプションには、この写真がLumixのカメラとレンズで撮影されたことが示唆されています。これは、日本の景品表示法違反とみなされる可能性があります。
<< 引用文献
パナソニック「LUMIX S9」製品ページの作例に他社機で撮影されたストックフォトの画像が使用されている?[内容更新2] 2024/05/28 デジカメInfo
https://digicame-info.com/2024/05/lumix-s9s9.html
More bad news for Panasonic: Lumix S9 product page controversy and the use of stock photos *UPDATED* 2024/05/28 Photo Rumors
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朝日新聞は、パナソニックが中期戦略目標を達成できず、久住社長が「危機的状況」と呼んでいると報じています。
久住社長は、5月20日に、2026年度までに成長性の乏しい「課題事業」をなくすとして、「事業譲渡、撤退も視野に入れて抜本的に手を打つ」と表明。「課題事業」については具体名を明らかにしない一方、「苦しい」事業の例として、家電・テレビと空調の一部などを挙げていた。
<< 引用文献
パナソニックHD、中期戦略は未達成に 楠見社長「危機的状況」 2024/05/22 朝日新聞
https://www.asahi.com/articles/ASS5P3W6KS5PPLFA008M.html?iref=pc_ss_date_article
Dclifeはさらにこう書いている。
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5月17日に開催された「パナソニックグループ戦略説明会」では、事業部別でマイナス成長もしくはROICがWACC+3%に満たない場合 " 課題事業 " と位置づけ、ROICの改善もしくは " 事業譲渡 " あるいは " 撤退 " を含めて抜本的な手を打っていくと語っています。
日本経済新聞を見ると " プロジェクター事業売却 " の記事が掲載されています。読売新聞の記事を見てみると、家電フルラインアップ戦略は当面維持するとしています。
<<引用文献
パナソニック 2026年度までに成長性の乏しい事業は事業譲渡・撤退を視野 2024/05/23 デジカメライフ
https://dclife.jp/camera_news/article/panasonic/2024/0523_02.html
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2023年12月に、パナソニックは業務用AV事業をパナソニック エンタテインメント&コミュニケーションズに移管しています。
つまり、業務用AV事業は、デジカメ事業とは切り離されています。
2024年2月パナソニックのマイクロフォーサーズ用交換レンズ「LUMIX G 14mm F2.5 II ASPH.」が生産完了品になりました。
海外では、「パナソニックが理由もなく素晴らしいシンプルな14mm 2.5レンズを廃止したとき、彼らがm43で終わりを迎えると分かりました」といっている人もいます。
14mm/F2.5 II(38千円) の代替レンズは、SUMMILUX 15mm/F1.7(50千円)です。つまり、安価な製品を製造中止にして、利益の出る高価な製品にシフトを図っています。
4)まとめ
問題は、白物家電の時の失敗が繰り返されているように見える点です。
原因は、わかりませんが、ジョブ型雇用をしていた場合を想定すれば、次のようになります。
中国のメーカーと同じ価格帯で、競争力のある製品を開発することは可能です。これは、非効率は人的資源をレイオフできるので可能になります。
現在のパナソニックは、課題事業 "は、ROICの改善、 " 事業譲渡 "、 " 撤退 "の何れかをするといっています。
ROIC(投下資本利益率) : 出資者や銀行などの債権者から調達したお金(投下資本)に対して利益を出しているかを表した財務指標です。
つまり、目的であって、手段ではありません。経営改善をする手段がなければ、ROICの改善は、ROICの改善はできません。
日本では、解雇規制があるために、レイオフはできません。その結果、希望退職者を募ることになります。以前であれば、追い出し部屋といったブラックな手法もあったようですが、最近では、この手法は困難になっています。
つまり、ジョブ型雇用では、レイオフによって、生産性の低い人材を、生産性の高い人材に、随時入れ替えているわけですが、レイオフの代替手段は、課題事業 "の " 事業譲渡 "、または、 " 撤退 "、あるいは、希望退職者の募集になります。
希望退職者を募集すれば、優秀な人材から先に流出します。
結局、問題解決には、解雇規制にかからない、任期付き採用、個人事業主など、年功型でない雇用形態を拡充するしかありません。
ジョブ型雇用であれば、「カメラメーカーが自社の商品紹介で他の写真を使う」というブランド価値を破壊することはおきません。その場合には、直ぐに、解雇になるからです。場合によっては、損害賠償の裁判を起こされる可能性もあります。