CNNによると、中東オマーンの首都マスカットで、ウォーターフロント開発が計画されているそうです。
概要は、以下です。
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ザハ・ハディド・アーキテクツ(ZHA)の設計で、総面積330haのアル・クワイア・マスカット・ダウンタウン・アンド・ウォーターフロント開発が計画されています。
総工費は、13億ドル(約2000億円)で、ウォーターフロントには、居住地区、マリーナ、文化地区、多くの運河沿い遊歩道、政府庁舎地区などを含みます。2024年末に着工予定で、完成すれば6万人以上が居住する見込みです。
ZHAの副所長で建築家のパオロ・ジリ氏はCNNに対し、オマーンの住宅・都市計画省に提出した模型を仕上げるのに約1年を費やしたと語りました。
ジリ氏は、「車とフェンスをすべて取り除き、家族や新世代の若者を引き付ける多くの機能を備えた住宅・都市計画省のキャンパスを建設するというのがこの設計のビジョンだ」と言います。
ZHAは、日陰や受動冷却を提供して歩行を奨励するとともに、サイクリングの安全性を高めるインフラを導入するとしています。また現地の太陽光発電を最大限に活用し、自生植物種の保存・復元も行います。
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<<引用文献
オマーンが大規模なウォーターフロント開発計画、総工費2000億円 2024/05/26 CNN
https://www.cnn.co.jp/style/architecture/35218567.html
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大阪万博の建設費用は、2350億円と見積もられています。大阪万博会場の面積は、159haです。
ウォーターフロント計画にくらべれば、大阪万博会場の面積当たりの建設費用は、約2倍です。
ウォーターフロント計画は、仮設ではなく、継続して使用する建築です。
大阪万博の建築は、仮設で、博覧会期間が終了すると取り壊します。
2350億円には、取り壊し費用が含まれているのかもしれません。
ウォーターフロント計画は、ZHAが、全体を設計しています。
ZHAの副所長のジリ氏は、1年かけて、模型を仕上げています。
ウォーターフロント計画で建設される建物は、模型に含まれている建物です。
大阪万博には、全体の設計者がいません。
日経新聞によれば、2025年大阪万博の開催は、2018年11月24日に決定しています。
<< 引用文献
2025年 大阪万博が決定、55年ぶり 2018/11/24 日経新聞
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO38137170U8A121C1SHA000/
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日経新聞には、経済産業省の作成した会場のイメージ図が載っています。
このイメージ図は、設計事務所が作成したものではありません。
それから、4年後の2022年に、協会は、会場模型を公開しています。
中心部の樹木が並ぶ広場「静けさの森」や、1周が約2キロになるリング状の「大屋根」、大阪府市や経済団体で出展する地元館「大阪パビリオン」などを配しています。
協会の高林一樹会場整備部長は「建物のデザインが決定しているものは精密に表現した。会場の雰囲気を身近に感じてもらえれば」と話しました。
これは、かなり異様です。
一般には、設計では最初に、コンセプトがあり、コンセプトを実現するために、ブロックの構成や交通手段や、建物が組み込まれます。
個別の建物の配置は、全体のコンセプトの中で、説明されます。
しかし、2022年の模型には、コンセプトの説明はありません。
<< 引用文献
大阪・関西万博 最新の会場模型を公開 2022/10/21
https://www.expo2025.or.jp/news/news-20221021-02/
万博会場千分の一サイズでお披露目 運営団体が模型制作 2022/10/21 産経新聞
https://www.sankei.com/article/20221021-22PDVGSBHROAPJ7ZT4NZ32KXNM/
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後に、1周が約2キロになるリング状の「大屋根」は、木造の伝統建築技術の利用を目指していると説明されました。実際には、ボルトを多用していますが、説明上は、そうなっています。
2025年万博のテーマは「いのち輝く未来社会のデザイン」として、採択されています。
博覧会協会は、「2025年大阪・関西万博がめざすもの」に、次をあげています。
持続可能な開発目標(SDGs)達成への貢献
日本の国家戦略Society5.0の実現
博覧会協会は、「2025年大阪・関西万博で実現すること」に、次をあげています。
最先端技術など世界の英知が結集し新たなアイデアを創造発信
国内外から投資拡大
交流活性化によるイノベーション創出
地域経済の活性化や中小企業の活性化
豊かな日本文化の発信のチャンス
「2025年大阪・関西万博がめざすもの」と「2025年大阪・関西万博で実現すること」は、「いのち輝く未来社会のデザイン」とは、関係がありません。
「未来社会のデザイン」に、国家戦略をもちこむことは、全体主義です。
2018年の採択時に、日経新聞は次のように説明しています。
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2025年万博のテーマは「いのち輝く未来社会のデザイン」。人工知能(AI)や仮想現実(VR)などを体験できる「最先端技術の実験場」にするコンセプトを掲げる。
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人工知能(AI)や仮想現実(VR)などを体験できる「最先端技術の実験場」にするコンセプトに、万博が採択されたものの、日本は、人工知能(AI)や仮想現実(VR)では、全く世界レベルについていけなくなったように見えます。
2025年に大阪万博にいっても、ChatGPTに勝てるような人工知能(AI)はないと思います。
2025年に大阪万博にいっても、Appleのヘッドセットに勝てるような仮想現実(VR)はないと思います。
博覧会協会は、Keyは、「Society 5.0」 であるといいます。そして次のように説明しています。
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日本の国家戦略「Society 5.0」 とは、サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する、
人間中心の社会です。狩猟社会、農耕社会、工業社会、情報社会に続く、新たな社会を指します。
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スイスの国際経営開発研究所(IMD)は毎年、世界各国のデジタル競争力を評価し、「IMD World Digital Competitiveness Ranking(IMD世界デジタル競争力ランキング)」を発表しています。
2023年に、日本は2022年調査から3つランクを下げた32位となり、2017年の調査開始以来過去最低となりました。
リチャード・カッツ氏は次のように整理しています。
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政府はDXなどという聞こえのいいスローガンを掲げるだけで、デジタル分野の専門人材不足の状況を改善するためにほとんど何もしていない。
日本は27の富裕国の中で、科学や工学の分野でのキャリアを目指す優秀な学生の割合が最下位となっている。
日本は、STEM(科学、技術、工学、数学)コースを専攻した大学卒業生の割合が22位である。
デジタル分野に1円投資するごとに企業が得られる利益の大きさを示す「デジタルアジリティ」において、日本が63カ国中63位というのも当然のことである。
デジタル分野の専門人材不足の問題は高校から始まっており、教師自身のITスキル、こうしたテーマを教える能力、教師を養成するためのリソース、さらには十分な機器やオンライン学習プラットフォームといった重要な分野で、日本はOECDの中で最下位に位置している。
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<< 引用文献
27カ国中最下位…日本がIT人材足りない根本理由 2023/05/02 東洋経済 リチャード・カッツ
https://toyokeizai.net/articles/-/669331?display=b
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日本の現状は、デジタル赤字から抜け出す手順が見えないことです。
デジタル赤字は、今後拡大すると予想されています。
万博の「最先端技術の実験場」は、夢のまた夢です。
2000億円は、地道にウォーターフロント開発計画を使うべきだった気がします。