支離滅裂な御用学者

「円安によって日本人は豊かになる」という破綻した論理を展開している御用学者やエコノミストがいます。

 

この論理が間違いであることを理解するためには、分数がわかれば、経済学知識はいりません。

 

1)2つのフェーズと前提の整理

 

円安が進行していくフェーズと円安で、安定しているフェーズの経済的なメカニズムは異なります。

 

この2つを区別する必要があります。

 

以下では、簡単な円安で安定しているフェーズを考えます。

 

次に、円ドルレートは、経済の実態できまります。

 

為替介入や金利差によって、人工的に円ドルレートを作ることはできません。

 

生産性が高ければ、円高になり、生産性が低くなれば、円安になります。

 

金融緩和(円安誘導)論者は、生産性に関係なく、経済成長ができるという因果を無視した推論(でたらめ)を主張しています。

 

2)検討

 

以上のように、検討の前提が破綻しているのですが、ここでは、先に進みます。

 

あるエコノミストは、最近の円安について、次のような発言をしています。

 

 輸入品の円の購買力は40%目減りしているが、日本企業が供給する製品やサービスが40%以上割安であり、価格競争力が高まっている。大幅な円安は日本の企業利益を過去最高水準に押し上げ、日本企業の対外的な価格競争力を強めている。

 

通貨単位を切り替えるデノミがあります。

 

デノミはラベルの貼替ですので、経済的な変化なしに、実行できます。

 

仮に、1円を2円に置き換えるデノミを実行したと仮定します。

 

この場合、大幅な円安になりますが、経済の実態は何も変わりません。

 

輸入品の円あたりの購買力は50%目減りします。同じ量の輸入を行なうためには、2倍の円を支払うことになります。従って、日本企業が供給する製品やサービスの円価格は200%の倍額になります。もちろん、ドル建てであれば、価格に変化はありません。

 

デノミであれば、所得の数字は2倍になりますが、貨幣価値が半分になっているので、実質の生活に変化はありません。

 

デノミで発生した円安は、経済的に中立に変化を生み出しません。

 

デノミの円安と今回の円安の一番の違いは、給与や貯蓄の価値が減った点です。

 

デノミの円安では、給与は2倍になりますが、今回の円安では、給与は据え置き(半額近くに目減り)です。

 

その結果、生活ができなくなっています。

 

野口悠紀雄氏の分析では、円安の影響は次の3点です。

 

第1は、見かけの円の数字が増えたことで、<粗利益増加の3分の1程度は、(この)輸出の増加によるもの>としています。

 

粗利益増加の3分の2の原因は次の点です。

 

第2に、インフレがおさまって輸入価格が下落したにもかかわらず、企業は売上げ価格の引き下げをせず、国内物価を上昇させ、企業の粗利益が増加した。また、輸入物価が下がったにもかかわらず、企業は値下げをしなかったことの影響が大きい。

 

第3は、賃金の抑制です。法人企業統計の数字を見る限り、2023年の春闘での賃上げ率はそれによる人件費の増加は確認できない。このために、企業の利益が増えた。つまり、労働分配率が低下した結果、企業の利益が増えた。

 

<<引用文献

日本人は「賃金停滞」の本質をわかっていない  2024/06/23 東洋経済 野口 悠紀雄

https://toyokeizai.net/articles/-/765120

>>

 

ここでは、定常状態をみていますので、第2は、無視しています。

 

第1と第3は、考察した通りになっています。

 

政府は、10月からも、電気代の補助をします。

 

これは、今までの賃金で、普通の生活ができないことを意味しています。

 

その原因は、政府の円安政策にあります。

 

「円安によって日本人は豊かになる」のであれば、電気代の補助は不要になるはずです。

 

こうした現実を、無視して空論がまかり通れば、カルトまでの距離は短いです。

 

3)展望

 

円安の効果は経済成長ではなく、所得移転にあります。

 

真面目に働いて、経済成長を支えるよりも、所得移転によって利益が得られるようになれば、誰も働かなくなります。(注1)

 

真面目に働けば、利益が得られるシステムを市場原理といい、資本主義の基幹をなすシステムです。

 

所得移転によって利益が得られるのは、社会主義の中抜き経済です。

 

円安が起こった原因は、日本企業が、社会主義の中抜き経済で経営しているからです。

 

中抜き経済では、DXは意味がありませんので、国際競争力は失われています。

 

東京都知事選挙の公約は、補助金のオンパレードで、市場経済の否定(中抜き経済)です。

 

現在の日本の政治のルーツは、美濃部都知事の弱者優先政策(ファノンの橋の哲学)にあります。ファノンは経済学者ではありませんが、経済理論はレーニンを踏襲しています。

 

つまり、現在の日本の政治は、社会主義に中抜き経済でできていて、資本主義ではありません。ゴルバチョフは、日本は、最も成功した社会主義国であるといいました。もちろん、社会主義経済は、持続不可能なので、日本経済は、国債の積み上げと、世代間所得移転によって辻褄をあわせています。後者は、少子化の原因になりました。

 

「円安によって日本人は豊かになる」は、「社会主義になれば、豊かになる」と同列の中抜き経済のプロパガンダにすぎません。

 

ここで、社会主義化が進んでしまうと、鄧小平のような市場経済の復活を図る政治家が出ない限り、経済成長はできません。

 

2024年現在、日本より中国の方が、市場経済が進んでいます。つまり、日本経済は、中国経済には、勝てません。

 

注1:

ふるさと減税も、所得移転システム(中抜き経済)です。政府あげて、真面目に働くと馬鹿をみると宣伝してます。