2025年の大阪・関西万博は、新技術が空き箱かも知れない

2021/12/23のNHKで、「万博に向け『空飛ぶクルマ』実現を 政府がアクションプラン案」というニュースを聞いて、気がめいってきました。

ニュースの趣旨は、「政府は『未来社会の実験場』と位置づける2025年の大阪・関西万博に向けて、各省庁が取り組む『アクションプラン』の案をまとめ」たので、その紹介ということです。

つまり、「2025年の大阪・関西万博」の目玉の出し物を述べています。

1)空飛ぶクルマ

ドローンなどの技術を応用し、ヒトやモノを乗せて電動で飛行する「空飛ぶクルマ」を実現するため、経済産業省が再来年度・2023年度から2年間、実証実験を行ったうえで、万博会場で実演する。

2)AIを活用した翻訳技術

2024年度まで研究開発を行う総務省の事業。

3)フードテック

豆など植物由来の原材料で作る代替肉など、フードとテクノロジーを合わせた造語「フードテック」の普及に取り組む農林水産省の事業。

1)については、DIGITAL SHIFT TIMESは、「2023年に事業化、2025年に万博でサービス開始。その後、一般販売も開始される。実現のための大きな課題は各国の法整備をはじめ、山積み」と2021年10月にまとめています。

空飛ぶクルマは、eVTOL(イーブイトール=electric Vertical Take-Off and Landing)というらしいです。

  • 2021/12/21のGlobe+によると、以下のようです。

ドイツのベンチャー企業ボロコプターは、シンガポールで2023~2024年の内に『空のタクシー』を事業化する計画です。

  • 2021/09/25のAviation Wireによると、以下のようです。

英国のベンチャーバーティカル・エアロスペースは、2021年9月に大手商社の丸紅との提携を発表し、提携に伴い、丸紅から最大200機の予約を条件付きで獲得したようです。2021/09の時点で、バーティカル・エアロスペースは、アメリカン航空AAL/AA)やヴァージン アトランティック航空(VIR/VS)、航空機リース会社のアボロンなどから今回の契約も含めて1350機、約54億ドル(約5930億円)の条件付き予約を獲得しているようです。

量産型のVA-X4は2024年にEASAから承認を取得予定で、パイロット1人を含む5人が搭乗でき、航続距離は100マイル(約161キロ)超、最大速度は202mph(約325キロ)となる見込みで、東京駅と成田空港を約14分で移動できるそうです。

英国の新電力最大手Ovoの経営者として知られるフィッツパトリック氏は、バーティカル・エアロスペースの筆頭株主でもあり、バーティカル・エアロスペースが2021年後半にSPACのBroadstone Acquisition Corp.との合併を完了した結果、10億ドル以上の資産を持つビリオネアになったと推定されています。

  • 2021/12/23のFNNプライムオンラインによると、以下のようです。

2014年創業の中国のEHANG(イーハン)は、2018年に、二人乗りドローン「EHang216」を発売し、すでに世界で150機以上が売れています。機体はカーボン製で、重量は400 キロ、乗員の重量の上限は160キロです。卵形の機体のまわりに、8組16個のプロペラがついていて、16個のプロペラはすべて独立したモーターで制御、バッテリーも複数を搭載し、仮にプロペラが3個止まっても安全に着陸できそうです。

EHang216は、2021年6月には岡山県でも日本で初めて、屋外の試験飛行を成功させています。EHang216は、日本を含む各国で2万回以上のテストを重ねていて、中国では現在航空当局に機体の耐空証明の申請中で、耐空証明が得られ次第、料金を取って客を乗せる商用飛行の認可を目指しています。徐CSOは1022年中にも商用段階に入る計画です。

  • NHKによれば、以下です。

大阪での事業化を目指しているのは2018年創業のスカイドライブ(本社・東京)です。2020年8月、有人の試験飛行に成功し、2021年10月29日に安全性の証明取得の申請が、国土交通省に受理さています。

しかし、この開発スピードでは、全く勝負になりません。

EHang216の徐CSOが、競争相手と考えているのは、欧米のベンチャーであり、日本企業は、相手にされていません。

という訳で、2025年には、1)のeVTOLは、日本以外では、実用化段階にあり、新技術ではなくなっているはずです。

2)と3)が、新技術かどうか、怪しいことは、言うまでもありません。

岸田首相は、経団連の審議員会に出席し、企業経営者に対し、来年1月にスタートする春闘での賃金引き上げに協力を求め、「賃上げを通じた分配はコストではなく未来への投資だ。デフレ脱却、成長の観点からも企業がそろって賃上げすることが重要だ」と述べたようです。

eVTOLで競争できるようにするためには、「賃上げ」は効果がありません。フィッツパトリック氏のように、ベンチャーで起業したり、エンジェルになって、お金持ちになるルートのない日本は、途上国になっています。

最近、シリコンバレー以上に、ベンチャーが集積しているカナダでは、650社のAIスタートアップがひしめいていて、政府は、AI立国カナダの国家戦略を立ています。

2019/09/11の第4次安倍第2次改造内閣において、ハンコ議員連盟会長の竹本直一氏(就任当時78歳)が、IT政策担当大臣と科学技術政策担当、宇宙政策担当、クールジャパン戦略担当になりました。

一方、カナダのトルドー首相は、就任時43歳、現在49歳です。 内閣も政治家も、日本と比べると信じられないほど若く、アメリカと比べても若くなっています。閣僚の男女比も5:5です。暦本純一氏は、カナダには、「政治は40代、50代がやるもの」というコンセンサスがあるといっています。

カナダは、トルドー首相の下で、2018/2に「イノベーションスーパークラスター戦略(Innovation Superclusters Initiative)」を発表しています。

日本のデジタル庁では、全く勝負になりません。

このままだと、2025年の大阪・関西万博は、本当にやるんですかと、聞きたくなります。

  • 650社のAIスタートアップひしめくAI立国カナダの国家戦略を知り、日本の将来が心配  2020/07/03 あおけん

https://note.com/matrix11/n/ndf0a974f8fde

https://touch-base.net/toronto-waterloo-montreal-investment-webinar-report/

https://newspicks.com/news/5673658/body/

  • 首相、企業に賃上げの協力要請 「コストではなく未来への投資」 2021/12/23 KYODO

https://news.yahoo.co.jp/articles/981c98134728ad9bb997a599802089b501f1228d

  • 万博に向け「空飛ぶクルマ」実現を 政府がアクションプラン案 2021/12/23 NHK

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20211223/k10013399881000.html

  • 万博で「空飛ぶクルマ」実現へ 大阪の湾岸部で実証実験 2021/10/22 朝日新聞

https://www.asahi.com/articles/ASPBQ6714PBQPLFA001.html

  • 25年万博で実用化目指す「空飛ぶクルマ」…実証実験始まる 2021/10/21 読売新聞

https://www.yomiuri.co.jp/science/20211022-OYT1T50098/

  • 「空飛ぶクルマ」、2025年大阪万博で実現へ。社会実装までの道のりに迫る 2021/10/21 DIGITAL SHIFT TIMES

https://digital-shift.jp/startup_technology/211021

  • SFが現実に?!中国の「空飛ぶクルマ」に乗ってみた! 2021/12/23 FNNプライムオンライン

https://news.yahoo.co.jp/articles/96ba9c2a943801923436508c7eb21468a49d937d

  • 「空飛ぶタクシー」いつ実用化? 世界で開発競争、25年大阪万博が一つの節目に 2021/12/21 Globe+

https://news.yahoo.co.jp/articles/78c731ece99648c87bf3a3d450f8b3b1210b2cfb 

  • 丸紅、英eVTOLを200機予約 東京駅-成田空港14分 2021/09/25 Aviation Wire Tadayuki YOSHIKAWA

https://www.aviationwire.jp/archives/235422

  • 英国のeVTOL「バーティカル・エアロスペース」が年内SPAC上場へ 2021/06/15

https://forbesjapan.com/articles/detail/41832