(経済現象のミームモデルを提案します)
1)カジノにて
カジノの新しい顧客が入ってきました。
胴元は、顧客の行動を分析します。
顧客は、大きく2つに分類できます。
第1の顧客は、統計学を理解していてリスク評価のできる合理的なギャンブラーです。
カジノでは、期待値を計算すれば、利益をあげることができないので、このタイプの顧客が来ることはまれです。
このタイプの顧客は利益をあげることを狙っているのではなく、損失を最小に止めて、カジノはどんな所か見にきていると思われます。
第2の顧客は、自分はカジノで勝つ方法を知っていると考える不合理なギャンブラーです。
このような顧客は、統計学のリスクを無視して、かけます。
このような顧客は、カジノにとって理想的な顧客です。
多くの顧客は、この2種類の顧客の中間に位置しています。
カジノでは、お金が動き、経済行為が行なわれています。
カジノでは、誰が、どれだけ賭けるかを予測することはできません。
カジノは、経済合理性に反した経済行為が行なわれるからです。
カジノでは、どのような経済行為が行なわれるかを予測することはできません。
ただし、経済合理性からの逸脱は、統計的に計算でき、経験的にはあるレンジに分布することが多いことがわかっています。
2)日経平均
目の前のディスプレイの日経平均の株価チャートを考えます。
株価チャートを分析して、これから、株価があがるか、下がるかを予測しようとする人がいます。
これは、帰納法です。
カジノでは、「統計学を理解していてリスク評価のできる合理的なギャンブラー」と「自分はカジノで勝つ方法を知っていると考える不合理なギャンブラー」を想定しました。
前者は、科学のミームに従って意思決定するギャンブラーであり、後者は、非科学的なミームに従って意思決定するギャンブラーです。
同様に、科学のミームに従って意思決定する経営者と、非科学的なミームに従って意思決定する経営者を想定することができます。
後者の意思決定には、経済合理性がなく、市場原理をもとに構築した経済学 (効率的市場仮説)はあてはまりません。
非科学的なミームをいくつか分類して、ミームの種類ごとに経営者を分ければ、意思決定を予測することができるかも知れません。
これが、経済のミームモデルです。
モデルは仮説なので、必ず検証しながら使う必要があります。
筆者は、労働市場がないこと、系列取引にみるように、中間財の市場の存在も怪しいので、日本では、市場原理をもとに構築した経済学の適用範囲は狭いと考えます。
アベノミクスの問題点は、次の通りです。
(P1)効率的市場仮説を無条件に使っている。
(P2)相関と因果を取り違えている。このため、付加価値(労働生産性)、高度人材の無視になっている。
(P3)仮説やモデルをエビデンスに基づいて、確認、修正する作業が行なわれていない。
以上の3点は、統計学やデータサイエンスの基本的なリテラシーの欠如であり、科学の無視です。
3)ソロス氏の見解
英語版のウィキペディアによると、ソロス氏は、次のように考えています。
<
ソロス氏の著作は、個人の偏見が市場取引に入り込み、経済の基礎を変える可能性があるという再帰性の概念に重点を置いています。ソロス氏は、市場が「均衡に近い」状態にあるか、「均衡から遠い」状態にあるかに応じて、市場には異なる原則が適用されると主張する。彼は、市場が急速に上昇または下落しているときは、通常、均衡ではなく不均衡が特徴であり、従来の市場の経済理論 (「効率的市場仮説」) はこうした状況には当てはまらない、と主張しています。
>
「個人の偏見が市場取引に入り込み、経済の基礎を変える可能性がある」という偏見が、ミームに相当します。
カジノの例のように、経済合理性に基づかない意思決定をしている顧客は、カジノにとって、よいカモになります。
ところで、2013年、アベノミクスの量的緩和政策による円安相場で、ソロス氏は10億ドルの利益を得ました。また同年にクォンタム・ファンドは、55億ドルもの利益を上げました。これはヘッジファンド史上最高額です。
アベノミクスは、政府の偏見が市場取引に入り込み、経済合理性に反する政策を行なった可能性があります。
ソロス氏とクォンタム・ファンドは、アベノミクスの量的緩和政策による円安相場で、大きな利益をあげました。
経済取引は、プラスマイナスゼロのゼロサムゲームです。
2013年の時点で、ソロス氏は、10億ドルとクォンタム・ファンドは、55億ドルに見合う損失は、日銀、言い換えれば、日本国民の税金によって賄われたと考えてよいと思います。
基軸通貨のドルを基準に考えれば、円安は、日本の貯蓄の減額になるので、辻褄が合います。