2)混迷の時代へ
問題は、標準ズームです。
LUMIX G VARIO 14-45mm/F3.5-5.6は、製造中止になり、2011年に、LUMIX G VARIO 14-42mm/F3.5-5.6に置き換わりますが、このレンズは単体では販売されておらず、カメラ本体とのセットでのみ提供されているため、価格は不明です。
重量は、65g重くなっています。サイズは、60mm×60mmが、67x75mmと大きくなっています。 14-45mmに比べて、明らかな性能低下がみられます。性能の差は、MTFでも確認できます。レンズは、更新すれば、サイズが小さくなり、性能が良くなるのが普通ですから、これは異様です。
LUMIX G VARIO 14-45mm/F3.5-5.6は製造原価が高すぎたので、レンズを切り替えたかったという噂もあります。
2015年にII型がでます。14-45㎜に比べて、サイズは、60mm×60mmが、56x49mmに、重量は、200gが、110gにかわりました。価格は、¥35,000が、¥30,000なので、ほぼ据え置きです。
I型に比べれば、性能は各段によくなっています。
しかし、14-45mmには、性能は及ばないと思います。
レンズは、大きく、重くすれば、性能を上げることができます。
レンズを、小さく、軽くして、性能を上げることは至難です。
14-45mmの重量200gは、2008年に出したバランスの最適解でした。
ここでは、重量200gの標準ズームのバランスが最適という思想は、失われています。
なお、この頃、より小型のズームが発売されていますが、ここでは扱いません。
理由は、画質が良くないことと、作り込み不足があると思われるからです。
多くのレンズのMTFは計算上のものです。レンズの設計ソフトを使えば、MTFをある範囲に納めることができます。
レンズを設計するには、実際には、試作品をテストして、設計の修正を繰り返す作り込みが必要になります。LEICAブランドのレンズは、LEICAと調整していますので、かなり、作り込みに手間をかけています。
この作り込みのコストは不明ですが、CANONは、マウントが変わると古い設計のレンズを微調整して、グレードアップして、発売していますので、大きそうです。
パナソニックの場合も、標準ズーム以外は、2009年頃に設計したレンズのバージョンアップを繰り返していますので、作り込みのコストはかなり大きいと思われます。
さて、2016年に、LUMIX G VARIO 12-60mm/F3.5-5.6 が出ます。
14-45mmと比べてみます。
サイズは、60x60mmが、66x71mmに、 重量は、200gが210gに、価格は、 ¥35,000が、¥68,000になっています。
重量については、重量200gの標準ズームのバランスが最適という思想の正統な後継レンズです。サイズは、少し大きくなっています。望遠側の画角が伸びているので、やむを得ないと思われます。しかし、価格が2倍になっています、
価格の問題は、ありますが、2011年に途絶えてしまった重量200gの標準ズームのバランスが最適という思想が、2016年に復活したことを評価します。
2017に、LEICA DG VARIO-ELMARIT 12-60mm / F2.8-4.0が、発売されます。
14-45mmと比べてみます。
サイズは、60x60mmが、68x85mmに、 重量は、200gが320gに、価格は、 ¥35,000が、¥125,000になっています。
LEICAブランドで人気のあるレンズですが、LEICAブランドでなくとも、サイズが、68x85mmで、重量が320gあれば、性能の良いレンズをつくることは可能です。
¥125,000だせば、フルサイズでも、シグマやタムロンの良いレンズが購入できます。
こう考えると、2008年の「重量200gの標準ズームのバランスが最適」という判断は現在でも通用する気がします。
LEICA DG VARIO-ELMARIT 12-60mm / F2.8-4や、オリンパスの12-100mmF4は良く写ります。しかし、大きくて重いです。使ってみて、これは、MFTの設計思想ではないと感じます。
スマホで写真を撮る人が増えています。これを、カメラの性能がスマホの性能に負けたからであるという人もいます。
しかし、写真の99%は、WEBで見られています。解像度は、1000x1000ピクセルで十分です。トリミングを考えても、1600万画素で、十分です。
GANREFを見ても、安価なレンズで良い写真が撮られています。必要以上の高性能にコストをかけることは馬鹿げています。iPhoneも、多くのユーザーは、13で満足しています。
同じコストで、性能が上がることは歓迎されますが、より多くのコストを払って、高性能を必要としている人は少ないはずです。
MFTの設計思想は、現在でも有効であると考えます。
ただし、残念ながら、設計思想を実現するカメラやレンズが減ってきています。