NHKのキャンペーン

NHKが、雇用政策に市場主義を持ち込む派遣法改正が、当たり前の生活ができる「中流」がなくなった原因であったというキャンペーンをはっています。

 

2点だけ指摘しておきます。

 

1)カッツ氏や国連の「グローバル・コンパクト」は、正規・非正規、ジェンダーによる賃金差別という人権問題を第1に取り上げています。問題は、派遣法改正ではなく、人権差別にあるという主張が、国際標準です。ここでは、賃金が仕事ではなく、ポストにつくことは、人権侵害です。正規、非正規のポストで賃金が違うのは違法です。天下りをしたり、天下りを受け入れることも、賃金が仕事ではなく、ポストにつくので、人権侵害になります。NHKは、国連の「グローバル・コンパクト」に署名していないのかもしれませんが、人権侵害の放置は問題です。

 

2)NHKは、退職後、天下りをした労働省のOBにインタビューしています。NHKは官僚の天下りを受け入れています。筆者は、ここでは、天下りの是非をといませんが、天下りをした人や、天下りを受け入れている組織は、この問題にたいして、利益相反の関係にあります。つまり、このキャンペーンは、中立ではないので、行うべきではありません。

 

言い換えれば、天下りをしたOBには、人権問題の解消よりも、鉄のトライアングルの天下りポストの確保を優先する動機があります。天下りを優先して、人権問題の解消を放置することは、日本では合法ですが、倫理的問題を抱えています。

 

貧困問題は、経済成長の停滞問題と利益の配分問題から構成されます。岸田首相は、「成長から配分へ」と言いましたが、「成長」と「配分」の2つの要素の積になります。「成長」の基本は、生産性の向上であり、猫理論で解決できます。「配分」の基本は、市場原理と社会保障です。市場原理以外の配分は、公平ではなく、人権問題を抱えています。同一労働同一賃金でないことは、労働市場がないことを意味します。下請け企業の仕事は、親企業に従属していて、市場がないため、価格決定権がありません。つまり、市場を通じた利益の配分機構が機能していません。大企業の従業員の賃金が高く、中小企業の従業員の賃金が低いことは、市場による利益の配分が機能していないことを意味しています。これは、人権問題です。

 

推測すると今回のキャンペーンの趣旨は、以前の「強欲資本主義」キャンペーンと同様に、鉄のトライアングルの維持にあると思われます。NHKは、大企業に属し、鉄のトライアングルで、搾取をする側に属します。市場原理が働けば、NHKの従業員と幹部の収入が減ります。市場原理が働けば、NHKは、BBCのように、民間企業になり、受信料は無くなります。NHKは、これを阻止するために、キャンペーンをはる動機があります。これが、利益相反の内容です。