1)警護の検証・見直し結果
安倍晋三元首相銃撃事件について、8月25日に3つの動きがありました。
(1)安倍晋三元首相銃撃事件で警察庁が8月25日に公表した警護の検証・見直し結果は、銃撃を許した安倍氏の後方に警護担当や交通整理の制服警察官が適切に配置されていれば容疑者の接近を阻止できた可能性が高いと結論付けました。
(2)警察庁の中村格長官が8月25日、辞職する意向を明らかにしました。
(3)奈良県警の鬼塚友章本部長は8月25日、県警本部で記者会見し「重大かつ深刻な事態を招き、責任の重さを痛感している」と述べ、辞職する考えを明らかにした。
(1)は、データサイエンスで得られた結果ではありません。このレポートは、警護を対象にしており、他の要素(例えば加害者の恨み)などについては触れていません。
しかし、一部のマスコミでは、安倍晋三元首相銃撃事件の主な原因は、警護の欠陥にあったと伝えています。
警察庁の中村格長官は、辞任の直接の理由を明らかにしていませんが、辞任に合わせて作られた警護の検証・見直し結果という印象もあります。
2)アーキテクチャの問題
警護の検証・見直し結果のより大きな問題点は、警護のアーキテクチャについて明確に述べていないことです。「安倍氏の後方に警護担当や交通整理の制服警察官が適切に配置されていれば容疑者の接近を阻止できた」とう表現には、アーキテクチャが感じられません。
警護のアーキテクチャは、次のレイヤーになると思います。
(1)場所、時間の選択
(2)待機自動車の位置
(3)バリアフィールドの設定
(4)不審者のチャックとブロック、荷物検査
バリアフィールドは少なくとも2重か、3重に設定されているはずです。
バリアフィールドはレイヤー構造をしていて、第1のレイヤーが突破されても、第2のレイヤーでブロックする、第2が突破されても、第3のレイヤーでブロックすることが基本です。
これは昔の城郭の堀が、3重になっているのと同じ仕組みです。
もちろん、移動中など、レイヤー構造を維持することが困難な場合はあります。
しかし、今回は、静止していましたので、バリアフィールドの設定はできたはずです。
不審者のチェック、銃などの危険物のブロックについても、同様に、アーキテクチャを組めたはずです。
3)問題解決とアーキテクチャ
今回の課題は、警護のレベルを確保して、危険を排除することでした。
問題を解決する可能性のあるアーキテクチャは複数あります。
その中のどのアーキテクチャを採用するかの選択は、問題解決を大きく左右します。
今回の警護では、要人、警察官、地形・建物、危険人物、聴衆など複数の要素が連動しながら、動いています。このような場合には、アーキテクチャを適切に組む必要があります。
警護の警察官の人数は有限です。危険人物と思われる人数が、警察官の数より少ない場合は、マンツーマンで監視すればよいのかも知れませんが、危険人物と思われる人数が、警察官の数より多い場合には、このアーキテクチャでは破綻してしまいます。
警察庁も警護のアーキテクチャを組んでいるとは思いますが、警護の見直し・検証結果からは、アークテクチャが見えないので、気にはなります。