企業のコロナウイルス接種の問題

コロナウイルスのワクチン接種を政府は企業に依頼しています。

しかしながら、この措置は、非常に多くの問題を抱えています。

大きな問題点は、2つあります。

第1は、計画性のなさです。企業に依頼するにしても、ここまできて、急に要請するのは、計画性の欠如になります。ウイルスが広まってから1年以上たっていますから、今頃になって、要請するのはどうかしています。

第2は、医療や社会保障を企業にゆだねるのは、憲法の精神に反するという点です。憲法は、次のように定めています。


第25条. 第1項 すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。 第2項 国は、すべての生活部面について、社会福祉社会保障及び公衆衛生の向上. 及び増進に努めなければならない。


つまり、医療や社会保障を、企業にゆだねるのは、正規社員と、非正規社員の差別につながり、憲法の精神に反します(注1)。まして、今回は、コロナウイルスですから、大企業の社員が優先的にワクチン接種ができるような差別を許容するので、あれば、国は、第2項を順守していないことになります。

これからは、技術革新の速度が速くなり、企業の入れ替わりが早くなります。つまり、社会保障を企業任せにすることはできなくなります。ワクチン接種を企業任せにすることは、こうした、時代の流れに、逆行しています。

6月6日の日本経済新聞の第1面には、次の3つの記事がのっています。

  • ワクチン接種を企業が行う。

  • 世界的にみて、日本は、学びなおしが最も少ない国である。

  • 生保が、地銀の株式を売却。

この3つに、共通する問題は、地銀のような技術革新のない企業はつぶれること、一方では、給与が出来高払いでないため学びなおしが進まないこと、ワクチン接種では大企業依存があることです。

ちょっと、わかりにくいですが、逆に考えて、米国のように、学びなおしがあり、企業が技術革新にともなってダイナミックに入れ替わる社会であれば、この3つの記事はありえません。

つまり、この3つの記事は、大企業のような親方日の丸企業が残存しているので、ワクチン接種を請け負っているが、社内では、学びなおしをしても給与が増えないため、誰も学びなおしをせず、技術革新に取り残されて、地銀のように企業が傾いていく状態を反映しています。政府は、ベースアップを支持していますが、ベースアップは、長くいれば給与が上がりますから、学びなおしを否定しています。ベースアップは、非常識で、知識が古くなれば、べースダウンして、学びなおせば、給与が戻るのが普通の国です。

同じ日の3つの一面に記事が、水面下でつながっていますから、危機的な状況と思われます。

注1:今回は、接種企業の非正規社員も対象ですが、ここでいいたいことは、勤めている企業によって医療水準に差が出ることを憲法は是認していないということです。健康診断などでは、正規と非正規に差があることは多いですし、医師を自前で準備できない企業は手を上げられません。国ができないと、できそうな大企業に押し付けて、それをだれも批判しないのは、かなり、危ない状態です。