筑波実験植物園(2)~つくば市とその周辺の風景写真案内(72)

花のクローズアップ

風景写真は広角レンズで、F8-11でぼかさないで撮影することが鉄則です。フイルム時代の本には、F16まで絞ると書いてありますが、

  • デジタルではF8-11を超えると回析の影響がでる

  • レンズの設計技術が向上して、開放近くの解像度が向上した

ために、F8かF11で十分と思われます。ISOはぶれない限りは、一般には小さい方が良いので、特に、風景写真に特別な配慮はいりません。

これにたいして、花の撮影は、混乱を極めています。

  • 風景写真と同じようにくっきりさせるか、ポートレートのようにボケを狙うか

  • 普通のレンズ(画角)でとるか、拡大(マクロ)でとるか

などがケースバイケースです。さらに、最近では、フォーカス合成もできます。

お勧めレンズも、ググったら以下のように幅がありました。

  • マクロレンズ(90-105㎜)

  • 30-50㎜

  • 70-200㎜

  • クローズアップレンズ

  • エクステンションチューブ

ここでは、換算50㎜でボケを狙って撮影してみました。

 

写真1は、クレマチスです。被写体深度が浅いため、左の花では焦点が合っていますが、右ではあっていません。よく見たら、左の花の花びらには、虫が食べた跡があります。この見落としはミスです。左の花の上側が切れているのもミスです。レンズ補正をかけたら、切れがより大きくなりました。この場合には、余裕をもって、花が入るアングルにすべきです。フード写真で、お皿が切れるように拡大するのが良いという主張がありますが、筆者のコンポジションは、絵画からきているので、この意見には、組しません。また、広めに撮影しておけば、画角を狭くすることは、トリミングで、どうにでもなりますが、逆は不可能なので、余裕をもって広く撮影すべきと思います。

 

写真2はdarktableのライトテーブルで焦点を表示したものです。左の花に焦点があっていますが、右にはあっていません。

写真1,2のクレマチスは、平面的なので、被写体深度が浅くても問題がないと思ったのですが、成功していません。2つのメインの花以外がボケるという意図は成功していますが、右の花の焦点が甘くなっていて、これは、失敗と思います。

 

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写真1 クレマチス (4/3,F1.4,1/2500sec,25mm[50mm] ,ISO200)

 

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写真2 クレマチス:焦点  (4/3,F1.4,1/2500sec,25mm[50mm] ,ISO200)

写真3は別のクレマチスです。今度は、手前の花に焦点があって、背後は少しづつボケていくことを期待して撮影しています。

しかしながら、この構図では、葉の存在感が強すぎて、花が引き立たなくなっています。

写真4では、焦点をチェックしています。これから、花の右にある葉にも焦点があっていることがわかります。

花を撮影する場合には、周辺の葉の扱いを配慮する必要があることが確認できます。

写真5では。darktableでカラールックップテーブルを使って、葉の部分の色の明度と彩度を落としています。

 

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写真3 クレマチス (4/3,F1.4,1/400sec,25mm[50mm],ISO100)

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写真4 クレマチス:焦点  (4/3,F1.4,1/400sec,25mm[50mm],ISO100)

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写真5 クレマチス:カラールックアップテーブル  (4/3,F1.4,1/400sec,25mm[50mm],ISO100)

写真6は同じクレマチスAPSーCのカメラで撮影したものです。4/3のF1.4のボケはフルサイズ換算F2.8になりますが、APS-CのF1.8のボケはフルサイズの換算F2.7になります。ですので、ボケのレベルは同じになると思われます。背景はボケていますが、花のポイントがはっきりしません。

なお、シャッター速度は1/4000secです。

写真7で焦点を確認すると、花ではなくて、花の下の一番手前の葉に焦点があっています。

ということで、これは、失敗写真です。

写真6を引用した理由は、写真3と花の色を比較するためです。写真6はニコンのカメラで、ニコンのレンズをつかっています。ニコンのカメラは、時々、黄色が強くなるといわれていますが、概ね、現物に忠実な色を再現します。これに対して、青が強調されるメーカーが多いです。これは、風景写真では空を青くしたいためと思われますが、オリンパス、キャノン、フジフィルムのカメラには、その傾向が見られます。写真3は、オリンパスのPL-6に、パナライカのレンズをつけています。この組せでは、オリンパスのレンズを付けた場合より、青がさらに強調されます。パラライカのレンズは、色を実際より鮮やかに写す傾向があります。写真3の色は、現実とは異なり、実施の色は、写真6に近くなります。しかし、見ていて印象的な色は、写真3の方であると感じられます。この辺りが、割リ切れないところです。

パナライカのレンズは、m4/3のフルサイズ換算50㎜F.14です。ライカのフルサイズ用50㎜F1.4 レンズは評価の高いレンズですが、サイズが大きく、重いだけでなく、パナライカm4/3の10倍のお値段なので、アマチュアには手の出ない製品です。ですので、気分はライカで、パナライカのこのレンズをPLー6で使うと、カメラとのバランスもよく、使いやすいです。このレンズを上級機種のEM1-MKIIにつけたところ、焦点を合わせるときに、大きな音がして、壊れそうになりました。最近のこのレンズには、焦点モータ改善した改良型が出ましたので、音がするまま使い続けると壊れるからではないかと思っています。EM1-MKIIでは焦点合わせの速度が調整できますので、このレンズの古いタイプを使うのであれば、速度設定を遅くすべきでしょう。

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写真6 クレマチス (APS-C,F1.8,1/4000sec,35mm[50mm],ISO100)

 

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写真7 クレマチス:焦点 (APS-C,F1.8,1/4000sec,35mm[50mm],ISO100)

最後に、バラ園の写真ですが、柵の中に入らないで、撮影可能は蕾は、写真8,9にとったものだでした。管理の方が作業をしていましたので、柵の中に入るのは、気が引けたので、この蕾を撮影しました。

写真7,8共に、darktableで焦点の位置を確認しました。焦点は、蕾の先端にあっています。周囲に葉がない場合には問題が起こりにくいようです。

写真8はニコンAPS-Cカメラで撮影しました。

写真9は4/3のPL-6で撮影しました。

どちらも、蕾の愕の部分はボケています。ボケは、4/3のほうがきれいに感じられます。

ただし、どちらも、蕾全体に焦点が合うように、もう少し、絞って、被写体深度を大きくした方がよかったかもしれまません。

写真8,9はバラの花が色飽和していて、くっきりしていないように見えたので、darktableでコントラストイコライザーをかけてあります。

写真10,11がコントラストイコライザーをかける前の画像です。コントラストイコライザーをかけると、蕾はくっりするのですが、背景のボケが汚くなっています。ボケを使う写真では、マスクを使わないコントラストイコライザイーは使うべきでと思われます。

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写真8 バラ (APS-C,F1.8,1/2500sec,35mm[50mm,]ISO100)

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写真9 バラ (4/3,F1.4,1/4000sec,25mm[50mm],ISO100)

 

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写真10 バラ (APS-C,F1.8,1/2500sec,35mm[50mm,]ISO100) コントラストイコライザーなし

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写真11 バラ (4/3,F1.4,1/4000sec,25mm[50mm],ISO100) コントラストイコライザーなし

まとめ

4/3でボケないので、ともかく最大にボケの出る条件で撮影すればよいと思ったのですが、ぼかしすぎると、背景だけでなく、対象もボケてしまって、上手くいきませんでした。

換算50㎜で、換算F2.8の場合には、被写体深度が浅すぎて、花をぼかして撮影することは難しかったです。

広角の場合よりは被写体深度がまだ深かったですが。50㎜で撮影するのであれば、F値をもう少し絞る必要があります。