コロナウィルスのデータサイエンス(その25)

緊急事態宣言

緊急事態宣言がやっと発令されることになりました。

時事通信は、西浦先生の試算の影響が大きかったと報道しています。


時事通信

安倍首相、新型コロナ感染者急増に危機感 緊急宣言へ慎重論押し切る

関係者によると、首相の態度に変化の兆しが見えたのは今月3日。「厳格な外出制限で人と人の接触を8割減らせば、感染者数は減少に転じる」との西浦博北海道大教授の試算が報じられ、首相は強い関心を示した。

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20200407-00000023-jij-pol


時事通信には、具体的な内容は書かれていません。

日本経済新聞には、図がのっていて、もう少し詳しいですが、試算結果そのもののURLは書かかれていません。


日本経済新聞「欧米に近い外出制限を」 北大教授、感染者試算で提言 西浦博氏 2020/4/3 11:07 (2020/4/3 12:12更新)

新型コロナウイルスの感染者が都市部を中心に急増するなか、「早急に欧米に近い外出制限をしなければ、爆発的な感染者の急増(オーバーシュート)を防げない」との試算を北海道大学の西浦博教授がまとめた。東京都では感染経路不明の患者が急増しており、現状のままでは1日数千人の感染者が出るとした。人の接触を8割減にできれば減少に転じるとしている。

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO57610560T00C20A4MM0000/


西浦先生は、4月3日項にはテレビにも出演して、同じ図で説明していました。

結果的には、1週間弱発令が遅れたと思います。

問題点は、つぎだったと思います。

  • 試算結果を基本的なデータサイエンスのリテラシィのない人に納得してもらうことは困難です。その結果、手順、パラメータ、データを無視した結果が独り歩きします。この3つは、未だに公開されていませんが、公開すべしという意見も少数です。国会では、非常事態なのに、サイエンスを無視した演技が行われています。マスコミも視聴率を稼ぐために無批判で、それを放送しています。

  • 行政組織では、リテラシーの有無にかかわらず、上司が偉いことになっています。上司が理解できないのは部下の説明が悪いことになります。一般に、データサイエンスのリテラシーのある上司は少ないので、上司の好きな都合のいいデータのみをかき集めることが習慣化しています。これは、白書を見れば、一目瞭然です。また、そうなるとリテラシーがあると逆に出世できないので、リテラシー欠如の再生産が行われます。

  • 専門家会議の提言はが4月1日なので、専門家会議の中での西浦先生の立ち位置は難しかったと思われます。本来であれば、4月1日の提言に「現状のままでは1日数千人の感染者が出るとした。人の接触を8割減にできれば減少に転じる」とかかれるべきでした。4月1日には、試算が終了していない場合でも、「新しいい追加データによる試算の結果」を反映すべきと書くことは出来ます。また、持ち回り会議を行っているのですから、4月3日にメール会議で、改訂版の提言をだすことも可能でした。そうならなかったのでは、厚生労働省の意向と思われます。

  • 依然として、政策には一貫性がありません。PCRは、治療には効果がありませんが、感染拡大を抑える上では効果があります。でうから、医療機関の負担にならない範囲で、PCRを増やすべきであることは、明白です。「安倍総理PCR検査体制「1日2万件」への倍増を明言」という記事は、過去のマスクの増産の記事と並べるとむなしく感じられます。