見えてきたスノーの限界

(スノーの限界が見えてきました)

 

1)スノーの限界

 

1959年に、スノーは、「2つの文化と科学革命」の中で、「人文的文化と科学的文化の間には越えられないギャップがある。エンジニア教育が必須だ」と言いました。

 

これに、パースの「ブリーフの固定化法」の中の「ブリーフの固定化は、科学の方法を行うべきだ」という主張と合わせれば、科学教育(エンジニア教育)なしには、科学技術立国ができないことに対応します。

 

アメリカのSAT試験では、国語(英語)と数学が必須です。アメリカで育てば、国語(英語)の試験の点数が、0点になる可能性は低いです。つまり、SAT試験では、第1に、数学の成績が評価されます。最近のアメリカの高等学校のカリキュラムには、統計学(データサイエンスの基礎)が含まれていますので、統計学が全くできない学生は、SAT試験では、不利になります。

 

アメリカの高等学校の教育には、「文系」と「理系」の区別はありません。

 

SAT試験は、数学によって、論理的に考えることの出来る学生を選抜します。

 

データサイエンスは、エビデンスに基づきます。データサイエンスでは、エビデンスに基づかない教養や哲学等の形而上学は、無効であると否定されています。

 

科学の問題は、数学をつかって、論理的に詰めなければ、解決できません。

 

英語は、単語を100個知っているより、1000個知っている方がの能力が高くなります。

単語を、1000個知っているより、3000個知っている方が能力が高くなります。

 

数学の能力は、このように段階的にグレード評価できません。

 

ある数学の問題を解く能力は、解くことができるか、解けないかの2つの状態量しかもちません。

 

そして、人文的文化を如何に磨いても、数学の問題は解けるようになりません。

 

数学の問題を解くには、教養や哲学等の形而上学ではなく、数学を学習する以外に方法がありません。

 

ここでは、「数学の問題を解くには、数学を学習する以外に方法がない」ことを、「スノーの限界」と呼ぶことにします。

 

2)スノーの限界の無視

 

2-1)生成AIガイド

 

8月15日の日経新聞によると、東京商工会議所は、中小企業が生成AIを活用するためのガイドブックを発行したそうです。

 

東商の担当者は、「入門ガイドは可能な限り平易な言葉で分かり易くまとめてあり、効果的な導入に役立ててもらいたい」と説明しています。

 

これから、このガイドブックには、数学や数式が出てこないことがわかります。

 

これは、明らかに、「スノーの限界」を無視しています。

 

つまり、実効性は期待できません。

 

2-2)三井住友銀行

 

8月15日の日経新聞によると、三井住友銀行は、9000人の正社員全員にレベル1の、6500人にレベル2の、900人にレベル3の、リスキリングを行う計画です。

 

そのために、2023年から2025年の3年間に、毎年10億円(総額30億円)を投入する計画です。これは、大手都市銀行では、一番先進的な試みのようです。

 

レベルの説明は以下です。

 

レベル1:

ITパスポートレベル、システム要求定義に意見をいえる。

 

レベル2:

1億円未満のシステム導入案件の指揮や簡単なプログラミング、障害対応ができる。

専門的なプログラミングスキルがなくてもソフト開発ができる「ローコード」を扱うスキルも身につける。

 

レベル3:

より専門的な知見を持ち、大規模な案件の指揮ができる。

 

これも、明らかに、「スノーの限界」を無視していますので、確実に失敗します。

 

「専門的なプログラミングスキルがなくてもソフト開発ができる『ローコード』」は、数学を学習せずに、数学の問題を解くアプローチなので、必ず失敗します。

 

プログラムを書く能力は、「ローコード」に任せることができます。しかし、プログラムを読む能力を省略することはできません。

 

「システム導入案件の指揮」や、「大規模な案件の指揮」は、プログラムが読めなければ始まりません。

 

プログラムは、数億行に及ぶこともありますので、全部を読める人はいません。

 

数億行に及ぶブログラムの中から、大切なチェックポイントを見出して、そこを、重点的に読む必要があります。モジュール構成、パラメータに引き渡し、エラーリカバリーなどがポイントになりますが、プログラミング(プログラムを書くこと)は、こうした点を学習する近道です。

 

これは、英文を読んでいるだけでなく、英作文をすることで、英文の問題点が見えやすくなるのと同じことです。

 

3)まとめ

 

「スノーの限界」が越えられないのであれば、ジョブ型雇用で、科学的文化をもった人材を雇用する必要があります。余剰人材は、どこかの時点で調整せざるをえなくなります。

 

8月12日の日経新聞は、PayPayの特許出願数は、2021年に3メガバンクの2.5倍に達したと伝えています。

 

つまり、メガバンクのリスキリングでは間に合いません。

 

8月9日のPRESIDENTに、堀江貴文氏は、次のように書いています。(筆者要約)

 

 

超低金利により、融資金利と預金金利の「利ざや」は減益している。それでもネット銀行は、コストを抑えることができる。

 

多くの実店舗と人員を抱えているメガバンクや地銀など店舗型銀行はコストを抑えられない。その結果、駅前の一等地などを中心に店舗型銀行は、店舗の統廃合や移転を進めている。

 

超低金利に加え、地方経済の停滞も銀行経営の逼迫に追い打ちをかける。しかし、雇用規制のある日本では、リストラもしづらい。

 

今後、背に腹は代えられなくなった銀行が悪魔に魂を売って、折に触れて手数料の高い運用商品を勧めてくるだろう。

 

もはや店舗型銀行の存在自体がリスクだ。近づかないにかぎる。

 

経済評論家の山崎元さんが「手数料が0.5%を超える運用商品はすべてゴミだと思え」と言っていた。同感だ。そして、このルールに従うと、銀行の窓口で販売されている運用商品に買うべきものはなにひとつないことになる。むしろ買ってはいけないものしかない。

 

私たちにできる対策としては、ネット銀行にお金を置いておくことだろう。

 

 

雇用規制は、銀行だけでなく、銀行の正社員のリスキリングを妨げます。

 

3メガバンクに働く人が、本当にリスキリングに成功すれば、その人はより給与が高く、将来性のある他の企業に転職してしまいます。

 

つまり、メガバンクのリスキリングは、DX対策にはなりません。

 

これは、労働市場を前提とすれば、当然の帰結です。

 

この程度の演繹的推論が出来ない人が幹部に多いのか、幹部はわかっているが逃げ切れる思っているのかは不明です。

 

引用文献

 

悪魔に魂を売った輩が私たちの資産を狙っている…ホリエモンが「絶対買うな」という商品、「行くな」という場所  2023/08/09 PRESIDENT 堀江 貴文

https://president.jp/articles/-/72222