スイッチの入れ方

(社会システムの変え方を考えます)

 

1)表と裏

 

政治資金規正法は、利権の問題です。

 

利権は、政治資金を寄付することで、企業がキャッシュバックを受けるシステムで、官僚の天下りも、このシステムに組み込まれています。

 

利権のシステムは、市場経済ではなく、中抜き経済になります。

 

この場合、経済は、市場経済と中抜き経済で構成されます。

 

経済=市場経済 + 中抜き経済

 

公正取引委員会は、「労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針」を出しています。

 

労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針

https://www.jftc.go.jp/dk/guideline/unyoukijun/romuhitenka.html

 

中小企業庁は、「【改訂版】中小企業・小規模事業者の価格交渉ハンドブック」を出しています。

 

【改訂版】中小企業・小規模事業者の価格交渉ハンドブック

https://www.chusho.meti.go.jp/keiei/torihiki/pamflet/kakaku_kosho_handbook.pdf

 

これは、中小企業のビジネスは、市場経済ではなく、中抜き経済で出来ていることを示しています。

 

中小企業のビジネスが、市場原理に従っていれば、公正取引委員会は、「労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針」を出す必要はありません。



労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針」は、公正取引委員会は、市場メカニズムの代替をして、公平性を期する試みですが、行政指導は、市場メカニズムの代りにはなりません。市場メカニズムは非常に広範囲にダイナミックに機能するので、行政指導で対応可能な部分は、問題のごく一部、恐らく5%未満に止まるはずです。

 

中抜き経済の代表は、ギャングに見られるような裏経済です。どの国にも、市場経済(表経済)と中抜き経済(裏経済)がありますが、裏経済が表経済を凌ぐと、努力する人は、馬鹿をみる社会になってしまい、誰も努力しなくなります。

 

政治利権では、輸出は増やせません。これは、政治利権では、国際競争力をつけることができないからです。

 

アベノミクスは、政治利権で、円安を起こせば、国際競争力をつけることができるという間違った推論をしていました。

 

発展途上国の通貨は、ドルに対して安いです。その結果、労賃が安くなり、価格競争で有利になっている部分もあります。

 

しかし、ドルに対して通貨が安く、その結果、労賃が安くなっている国は、多数あります。それらの国が、かつての日本のように、輸出競争力が高い訳ではありません。

 

高い輸出競争力の原因は、通貨安だけでなく、製品の品質、技術革新を反映した新製品の投入が考えられます。これらの実現には、人材の育成やDXの進展が欠かせません。

 

人材の育成やDXの進展(レイオフと高度人材の労働市場実現)をしないで、通貨安だけを進めれば、日本は、発展途上国に逆戻りします。これが現状です。

 

政治利権は、昔から日本にはあります。しかし、最近の日本では、表経済は縮小しています。

 

問題解決には、表経済の比率をあげて、努力する人は、馬鹿をみない社会にする必要があります。

 

クアクアレリ・シモンズ(QS)が発表した世界大学ランキング2025年版が、発表されました。

 

木村正人氏の要約は以下です。

日本勢はトップ100校に東京大学32位(昨年28位)、京都大学50位(昨年46位)、東京工業大学84位(昨年91位)、大阪大学86位(昨年80位)の4校が入っています。

 

アジア勢で唯一トップ10校入りを果たしたシンガポール国立大学は教員の国際化度は100、学生の国際化度は88.9と極めて高いです。13年連続で首位を守ったマサチューセッツ工科大学でも教員の国際化度は99.3、学生の国際化度は86.8を超えています。

<< 引用文献

世界大学ランキング、日本勢は「東大・京大」含む63%が順位落とす...米英独とともに「ワースト4」に 2024/06/05 Newsweek  木村正人

https://www.newsweekjapan.jp/kimura/2024/06/634.php

 

QS World University Rankings 2025: Top global universities 

https://www.topuniversities.com/world-university-rankings

>>

これから、日本の大学のランキングを上げるには、年功型雇用をやめて、国立大学の教員をレイオフして、国際人材市場で、大学教員をゼロから募集すれば良いことがわかります。

 

現在の日本の大学は、中抜き市場になっていて、市場原理が働きません。文部科学省の審議会は、国際人材市場で、大学教員を募集するつもりはありません。これは、中抜き市場の日本の大学には、天下りポストがあるので、審議会は利権の維持に専念しているためと思われます。

 

教育は、その国の将来を反映しています。国際的に開かれた世界中から優秀な学生を募集できる魅力のある大学のない国の将来は、底が見えています。

 

中抜き経済(裏経済)から、市場経済(表経済)に、誰かが、どこかでスイッチを入れる必要があります。

 

これは、シンガポールでは、30年まえから出来ていることが、日本では、まだできていないことを意味します。

 

シンガポール国立大学」は、1905年の創立なので、高等教育政策の転換点を追跡することは困難です。

 

1991年に設立された「シンガポール南洋理工大学(NTUシンガポール)」は、14位「北京大学」に続いて、アジアの大学では、第3位につけています。

 

1991年頃に大学教育政策の転換があったと思われます。

 

シンガポールで出来ているスイッチの切り替えが、日本では利権が、優先してできない状態にある点が問題です。

 

もちろん、年功型雇用が、切り替えの障害になっていることは言うまでもありません。

 

2023年の合計特殊出生率が1.20と過去最低を更新したことに関して、政府は、「少子化の進行は危機的な状況だ。若年人口が急激に減少する30年代に入るまでの6年間がラストチャンスだ。この期間に、少子化傾向にどう歯止めを打つかが極めて重要だ」といいます。

 

政府は、2024年6月7日に成立した少子化対策関連法などを通じて、「前例のない規模で少子化対策の強化に取り組んでいく」と強調しています。

 

しかし、少子化対策関連法は、財源を社会保険料に上乗せしています。若年世帯の未婚者の負担が増加しています。

 

政府は、若年層に不利な年功型雇用を継続するつもりです。

 

年金は積み立て方式でなければ、若年層から高齢者への所得移転が生じます。

 

これは、年功型雇用とセットになって、世代間の格差を拡大しています。

年金は、憲法の財産権(人権)に基づけば、積み立て方式に切り替える必要があります。

 

この問題は、年金制度が始まった1970年頃から、50年間放置されています。

 

少子化問題は、30年以上前から起こっています。

 

この後に、及んで「この期間に、少子化傾向にどう歯止めを打つかが極めて重要だ」と発言することは正気ではありません。

 

「6年間がラストチャンスだ」と言いながら、まだ、解決策が提案できていないのです。

 

これから、少子化対策のスイッチはまだ入っていないことがわかります。

 

これから、スイッチを探して入れると言っているのですから、30年前と何も変わっていません。

 

解決策が提案できていないのであれば、できるだけ早くリタイアしてもらって、世代交代をすべきです。

 

こうした発言をする人は、60代から70代の老人です。

 

次の選挙では、老人の候補者と2世の候補者に、投票しない運動を考えるべきです。

 

2世の候補者は、1世の候補者が、少子化問題をここまでこじらせた責任をとるべきであると考えます。




2)切り替えスイッチが入るとき

 

以上のように、日本経済では、市場経済(表経済)を中抜き経済(裏経済)を圧倒して、努力する人が、馬鹿を見る経済になっています。

 

ところが、例外として、市場経済へのスイッチの切り替えが進んでいる分野があります。

 

株式の持ち合いの解消です。

 

加谷 珪一氏の解説を引用します。(筆者要約)

 

国内市場において、株式の持ち合い解消が進んでいる。30年以上も前から指摘され続けてきた問題であり、遅きに失した感もあるが、解消が進むこと自体は前向きにとらえてよいだろう。



企業が相互に株式の取得を行った場合、それぞれが相互の大株主ということになり、互いに議決権を行使しない方が双方の経営陣にとって得をする状況になってしまう。そうなると株式会社でありながら、株主総会を通じた企業のガバナンスが成立しなくなり、経営陣はいくらでも自分たちに都合のよい経営ができることになってしまう。

 

このため、諸外国では株式持ち合いは禁止されており、そのような企業には投資をしない原則である。

 

日本の場合、経営陣の保身のために原則を無視して、相互に株式を持ち合う慣行が続けられてきた。

 

海外の投資家は日本市場を避けるため、資金投入が不足して、資本効率も低いままであった。ウォーレン・バフェット氏が、最近まで、日本企業に投資しなかった最大の理由は、日本企業の不透明性にある。

 

金融庁東京証券取引所は2015年、コーポレートガバナンスコード(企業統治指針)を策定し、上場企業に対して政策株の保有理由を説明するよう求めた。2019年からは有価証券報告書で持ち合いの有無についての記載も義務付けられるようになった。官主導で持ち合い解消が進められる形になった。

 

一連の改革は外国人投資家の日本に対する見方を根本的に変えている。

 

このところ日本株は顕著な上昇の最大の理由は円安による日本円の価値低下ではあるが、外国人投資家が日本市場に積極的に参入していることも、株価上昇の原動力のひとつとなっている。

<< 引用文献

日本の株式市場が外国人投資家に「避けられてきた」根本的な原因 2024/05/29 現代ビジネス 加谷 珪一

https://gendai.media/articles/-/130763

>>

 

大学の場合、年功型雇用の教授会では、教授陣はいくらでも自分たちに都合のよい経営ができます。

 

これは、株式持ち合いに対応しています。

 

過去の大学の移転計画に対して、教授が引越しをしたくないので、反対することも起こっています。

 

年功型雇用の教授会が、「日本の大学のランキングを上げるには、年功型雇用をやめて、国立大学の教員をレイオフして、国際人材市場で、大学教員をゼロから募集する」ことに、賛成するとは思われません。

 

しかし、このスイッチを入れなければ、日本の高等教育の没落は止まりません。

 

こう考えると、2015年以降、金融庁東京証券取引所が、、コーポレートガバナンスコード(企業統治指針)を策定し、株式持ち合いの禁止に、進んでいることは、驚くべきことです。

 

どうして、金融庁東京証券取引所は、スイッチの切り替えができたのでしょうか。

 

原因は、よくわかりません。

 

誰かが、この問題を分析してくれると嬉しいのですが。

 

以下は、推測です。

 

第1は、天下りの利権は少ないと思われます。

 

金融庁東京証券取引所は、業界団体などの特定の企業の名前をつけていないポストには天下りできるかもしれませんが、個別の企業には、天下りがしにくい可能性があります。

 

第2は、黒船が来ている可能性です。新NISAで、資金が海外に流出しました。その大きさは、円安の元凶になるスケールではありません。

 

しかし、金融庁東京証券取引所は、株式の持ち合いの結果、資金流失が起こり始めているというデータを持っていて、これに対して予防的に活動している可能性があります。

 

3)付録:クアクアレリ・シモンズ(QS)世界大学ランキング2025年版

 

QS世界大学ランキング2025年版について、補足しておきます。

 

2025年版で、ベトナムから6校がトップ1400に入っています。

 

495位     ズイタン大学(南中部沿岸地方ダナン市)

711ー720位  トンドゥックタン大学(ホーチミン市)

851ー900位  ベトナム国家大学ハノイ校(ハノイ市):

901ー950位  ベトナム国家大学ホーチミン市校(ホーチミン市)

1201ー1400位 ハノイ工科大学(ハノイ市)

1201ー1400位 フエ大学(北中部地方トゥアティエン・フエ省)

 

495位のズイタン大学は、539位の一橋大学よりも、上に来ています。

 

一橋大学のランクがあまり高くない理由は、エンジニアリングを持っていないからです。

 

エンジニアリング学部のない大学のランキングは、低くなります。

 

大学のランキングは、国際労働市場で、ジョブを得る場合に、効いてきます。

 

一橋大学よりも、ズイタン大学の卒業証書の方が、国際労働市場で、ジョブを得る場合には、有利になっています。より高い給与を提示するジョブを得る可能性が高くなります。



地方の国立大学は、ランキングにすらはいっていません。

 

495位のズイタン大学より、上位の大学は、13校あります。

 

今のトレンドで行けば、今後、ベトナムの大学の順位は上がり、日本の大学の順位は下がります。

 

QS世界大学ランキングでは、トップ100位以内に、注目が集まりますが、卒業生の数や、今後の国力を考えると、100位以下の大学のレベルアップが課題になります。

 

トップ100位以内の大学の高度人材は、今後、国外に流出して、国際労働市場で働く可能性が高いです。この流出人材を除外すれば、今後、日本の高等教育を習得した人材の数と質は、ベトナムの高等教育を習得した人材の数と質に劣る可能性が高くなります。

 

日本の大学の順位

 

32 The University of Tokyo

50 Kyoto University

84 Tokyo Institute of Technology (Tokyo Tech)

86 Osaka University

107 Tohoku University

152 Nagoya University

167 Kyushu University

173 Hokkaido University

181 Waseda University

188 Keio University

377 University of Tsukuba

465 Kobe University

474 Hiroshima University

539 Hitotsubashi University

641-650 Ritsumeikan University

661-670 Tokyo Medical and Dental University (TMDU)

751-760 Tokyo University of Science 東京理科大学

771-780 Chiba University

851-900 Nagasaki University

851-900 Okayama University

851-900 Tokyo University of Agriculture and Technology

901-950 Kanazawa University

901-950 Osaka Metropolitan University

901-950 Ritsumeikan Asia Pacific University

901-950 Yokohama City University

951-1000 Kumamoto University

951-1000  Niigata University

951-1000  Sophia University

1001-1200 Gifu University

1001-1200 Gunma University

1001-1200 International Christian University

1001-1200 Kagoshima University

1001-1200 Kyushu Institute of Technology

1001-1200  Shinshu University

1001-1200  Tokushima University

1001-1200 Tokyo Metropolitan University

1001-1200 Yokohama National University

1201-1400 Aoyama Gakuin University

1201-1400 Doshisha University

1201-1400 Kindai University (Kinki University)

1201-1400 Kyoto Institute of Technology

1201-1400 Meiji University

1201-1400 Nagoya Institute of Technology (NIT)

1201-1400 Rikkyo University

1201-1400 Saitama University

1201-1400  Tokai University

1201-1400  Yamaguchi University

1401+ Kwansei Gakuin University

1401+ Shibaura Institute of Technology