「海綿城市（Sponge city）」の何が問題か（１）

１）Sponge city

筆者は、Sponge Cityという単語は知りませんでした。

最近のマスコミでは、「スポンジ都市」と訳すようですが、日経サイエンスとブルームバーグ「スポンジシティ」、徐と朝廣は、「海綿都市」と訳しています。

英語のWikiの「Sponge city」の末尾には、次の様に書かれています。

See also

Green infrastructure for stormwater management/Low-impact development (North America)

Nature-based solutions (European Union)

Water-sensitive urban design (Australia)

つまり、「Sponge City」は、「Green infrastructure for stormwater management」、「Low-impact development」、「Nature-based solutions 」、「Water-sensitive urban design」と同じ意味であることを指します。

City、 infrastructure、urban designの単語から分るように、これは、都市計画のフレームワークです。フレームを流域に広がると、Natural flood managementになります。

Wikiの「Green infrastructure for stormwater management」、「Low-impact development」、「Nature-based solutions 」、「Water-sensitive urban design」の中では、「Nature-based solutions 」のみに、「自然に基づく解決策」という日本語版がありますが、ここには、洪水の話はでてきませんので、全く別の内容が書かれています。

つまり、Natural flood managementに相当する日本語のWikはありません。

ガンの治療法で、標準治療は、現在のベストの治療法です。

洪水対策の世界標準の治療法は、Natural flood managementや、Green infrastructure for stormwater managemenです。

つまり、用語は違いますが、Sponge cityは、現在の世界標準の洪水対策法です。

2023年には、日本でも、線状降水帯で、洪水が多発しましした。線状降水帯が、ダムのある山岳部ではなく、平地に止まった場合、ダムには、洪水防止効果はありません。この場合でも、Sponge cityには効果があります。Green infrastructureの建設費は、コンクリートのインフラの数分の1です。業界が潤わない、Green infrastructureは鉄のトライアングルにとっては、不都合な真実になっていて、日本では、封印されています。Green infrastructureを使えば、生態系が回復するので、水産資源も回復します。とはいえ、省庁の縦割りは、他の省庁の利権には、口を挟まないルールなので、環境省も水産庁も、国土交通省には、何もいいません。

こうして、日本の生態学は世界とは隔絶しています。

参考までに、以下に、Wikiの和訳を載せます。

自動翻訳なので、文章が一部おかしいですが、今回は手を入れていません。

２）持続可能な排水システム（Wiki英語版）

持続可能な排水システム( SuDS、 SUDS、または持続可能な都市排水システムとも呼ばれる)は、現代の排水システムを自然の水プロセスと整合させることを目的とした水管理実践の集合であり、より大規模なグリーンインフラストラクチャ戦略の推進。 SuDS の取り組みにより、都市の排水システムは、高潮の越流、土壌浸透、生物ろ過などの自然の水循環の要素とより適合するようになります。これらの取り組みは、人類の発展が地球に与えた、または与える可能性のある影響を軽減することを期待しています。自然の水循環、特に地表流出と水質汚染の傾向。

SuDS は、都市開発が自然環境にどのような影響を与えるかについての理解や、気候変動と持続可能性への関心が高まるにつれて、ここ数十年で人気が高まっています。SuDS では、都市の排水システムを自然の排水システムまたは敷地にできるだけ効率的かつ迅速に統合するために、自然の地形を模倣した建築コンポーネントを使用することがよくあります。SUDS インフラストラクチャは、ニューカッスル・アポン・タインのBlue-Green Citiesデモンストレーションプロジェクトの大部分を占めています

背景

従来の都市排水システムは、処理能力、瓦礫による損傷や閉塞、飲料水の汚染など、さまざまな要因によって制限されています。これらの問題の多くは、従来の排水システムを完全にバイパスし、雨水をできるだけ早く自然の水源または小川に戻すことで、SuDS システムによって解決されます。都市化の進行により、突然の雨の後に鉄砲水が増加するという問題が発生しています。植生地域がコンクリート、アスファルト、または屋根付きの構造物に置き換えられ、表面が不浸透性になると、その地域は雨水を吸収する能力を失います。この雨は代わりに地表水排水システムに誘導され、しばしば排水システムに過負荷を与え、洪水を引き起こします。

すべての持続可能な排水システムの目標は、降雨を利用して特定の場所の水源を補充することです。これらの水源は、多くの場合、地下水面の下、近くの小川、湖、または他の同様の淡水源にあります。たとえば、サイトが未固結の帯水層の上にある場合、SuDS は表層に降るすべての雨をできるだけ早く地下の帯水層に導くことを目指します。これを達成するために、SuDS はさまざまな形式の浸透層を使用して、水が捕捉されたり、別の場所にリダイレクトされたりしないようにします。多くの場合、これらの層には土壌や植生が含まれますが、人工材料の場合もあります。

SuDS ソリューションのパラダイムは、管理が容易で、エネルギー入力 (太陽光などの環境源を除く) をほとんどまたはまったく必要とせず、使用に耐性があり、環境的にも美的にも魅力的なシステムである必要があります。このタイプのシステムの例としては、盆地（雨が降っていないときはほとんどの時間乾燥している浅い景観の窪み）、雨の庭（低木または草本が植えられた浅い景観の窪み）、沼地（通常は乾燥している浅い、底の広い溝）があります。）、濾過排水路（砂利で満たされた溝排水路）、生物保持池（栽培培地の下に砂利および/または砂の濾過層がある浅い窪み）、葦原およびその他の湿地野生生物の生息地を提供するとともに、汚れた水を収集、貯蔵、ろ過する生息地。

SuDS についてよくある誤解は、SuDS が開発現場の洪水を軽減するというものです。実際、SuDS は、あるサイトの地表水排水システムが他のサイトに与える影響を軽減するように設計されています。例えば、下水道の氾濫は多くの場所で問題になっています。土地の上に舗装したり建物を建てたりすると、鉄砲水が発生する可能性があります。これは、下水道に流入する流れがその容量を超えてオーバーフローしたときに発生します。SuDS システムは、敷地からの排出を最小限に抑えるか排除して影響を軽減することを目的としており、すべての開発現場に SuDS が組み込まれていれば都市下水道の氾濫はそれほど問題ではなくなるだろうという考えです。従来の都市部の雨水排水システムとは異なり、SuDS は地下水の水質の保護と向上にも役立ちます。

コストの削減

グリーンインフラストラクチャは、多くの場合、従来型の水管理戦略よりも安価です。フィラデルフィアは、新しいグリーンインフラ計画には 25 年間で 12 億ドルの費用がかかることが判明しました。これに対し、グレーのインフラには 60 億ドルかかると考えられます。グリーンインフラストラクチャの導入にかかる費用は、トンネルを掘ったりパイプを設置したりするよりも、排水コストに対処するために雨庭を植えることにより少なくて済むことが多い。しかし、たとえ安くないとしても、グリーンインフラストラクチャは長期的には良好な効果をもたらします。緑化屋根は通常の屋根の 2 倍の寿命があり、透水性舗装は維持費が低いため、長期的な投資に適しています。アイオワ州ウェストユニオンの町従来のアスファルトの代わりに透水性舗装を使用することで、1 つの駐車場の耐用年数にわたって 250 万ドルを節約できると判断しました。グリーンインフラストラクチャーはまた、飲料用に川や湖から取水される水の質を改善し、場合によっては浄化と処理に関連するコストを 25% 以上削減します。また、屋上緑化は冷暖房費を削減し、最大 15% のエネルギー節約につながります。

３）海綿城市（中国語版）

スポンジシティとは比喩であり、都市に治水・氾濫防止を構築し、生態学的・環境保護機能を備えた新しい都市モデルであり、都市が水を吸収し、貯め、浸透させ、浄化できるスポンジのようなものであることを意味する。雨が降ったときは、溜まった雨水を「絞って」利用することができます。一般に、スポンジシティには「浸透、貯留、貯蔵、浄化、利用、排水」という 6 つの主要な対策があり、その建設方法には、都市本来の生態系の保護、生態系の修復と修復、および影響の少ない開発。

「海綿都市」という用語は、最初に中国本土の学者によって提案され、後に中国本土と台湾の当局者によって指導概念として採用されました。関連する国際用語としては、北米発祥の「ローインパクト開発」があります。どちらも、その場所の水文学的特徴は開発の前後で本質的に変化していないことを強調しています。この 2 つを同一視する人もいますが[3]、「スポンジシティ」は特定の技術的手段ではなく、都市レベルでの全体的な建設コンセプトと手法を重視していると指摘する学者もいます。「スポンジシティ建設のための技術ガイドライン - 低影響開発のための雨水システムの構築（試行）」では、スポンジシティ建設アプローチの側面として低影響開発を挙げています。

「スポンジシティ」とは、グリーンインフラ建設、低炭素都市開発、スマートシティ形成の推進を革新的に表現したもので、現代のグリーン新技術と社会、環境、人文などの要素を有機的に組み合わせたものです。

背景

スポンジシティに関連した影響の少ない開発は北米で以前に提案されていたが、「スポンジシティ」という用語自体は、頻繁に起こる都市洪水や水不足に対応して中国本土で最初に提案されたものである[6] 。都市計画や水利整備など。

中国本土では都市化のプロセスが加速しており、都市の集積が進んでおり、都市施設の建設により下層の表面が硬化している。降雨の 70% ～ 80% が地表流出を形成し、雨水のわずか 20% ～ 30% が地表流出となる。都市部の海を眺めながらの氾濫、雨後の干ばつ、干ばつと洪水の急速な反転は、水生態系の悪化、水資源の不足、水環境の汚染などの問題も引き起こしました。水不足、水質汚濁、洪水、水棲環境の喪失などのさまざまな水危機は、系統的かつ総合的な問題であり、計画的な解決が求められており、このような背景から「スポンジシティ」理論が提唱され注目を集めた。

論争

スポンジシティという概念が誕生して以来、政府や国民に広く受け入れられてきましたが、依然として議論の余地があり、特に毎年雨季になると未だに浸水に悩まされる都市もあります。大量の建設工事は効果がないと考えられています。

たとえば、2021 年 7 月に河南省の洪水が発生した後、一部の国民やメディアは、海綿都市のパイロット都市である鄭州がなぜ深刻な浸水に見舞われたのか疑問を抱きました。これに関して、関連分野の専門家は、スポンジシティは中程度の強度の雨にしか対処できず、激しい暴風雨には対処できないと説明した。鄭州海綿城の建設中、都市部で設計された大雨強度の再来周期は50年に1回、その他の地域では20年に1回であるが、今回の大雨の再来周期はそれを超えている。千年に一度、設計された耐えられる能力をはるかに超えます。華南都市研究協会の会長で中国都市計画協会の会員でもある胡剛氏は、スポンジ都市に加えて、特に深いトンネルでの浸水を根本的に解決するには、より完全な排水システムを構築する必要があると考えている。国連人間居住計画のプログラムメンバーであり、国務院対外専門家局の計画専門家であるラオ・ジレン氏は、スポンジシティは「バケツ都市」ではなく、その機能は水を排出するのではなく吸収することであると信じている。「1000年に一度の洪水を防ぐ都市を建設することは不可能だ。999年間は有用なインフラがほとんどなかった。」

４）Sponge city（英語版）

スポンジシティは、洪水管理、生態系インフラと排水システムの強化のための新しい都市建設モデルであり、2000 年初頭に中国の研究者によって提案され、 2014 年に都市主義政策として中国共産党(CCP) と国務院によって受け入れられました。雨水を吸収、捕捉して洪水を軽減するために利用することで、都市部の洪水、水資源不足、都市部のヒートアイランド現象を緩和し、生態環境と生物多様性を改善することができます。貯めた雨水は灌漑用に再利用可能そして家庭用。これは、都市規模およびそれを超えた規模での持続可能な排水システムの形態です。スポンジシティの政策は、自然の景観を利用して水を捕集、貯蔵、浄化する一連の自然ベースのソリューションです。このコンセプトは、特にモンスーン世界における気候変動への適応に関する古代の知恵からインスピレーションを得ています。

「スポンジシティは、さまざまな名前で呼ばれる世界的な運動の一部です。ヨーロッパではグリーンインフラ、米国では低影響の開発、オーストラリアでは水に配慮した都市設計、ペルーでは自然インフラ、カナダでは自然ベースのソリューションなどです。人々が堤防、水路、アスファルトで水を閉じ込め、できるだけ早く土地から排出する産業管理とは対照的に、これらの新しいアプローチは、湿地や氾濫原などの場所に滞留する水の自然な傾向を回復しようとしています。」

歴史

中華人民共和国はスポンジシティ構想を採用したが、その主な動機は治水システムや雨水管理システムという従来の灰色のインフラストラクチャーの失敗であり、初期から中国の高レベル当局に送られた書簡や提案を通じた中国の環境保護都市主義者のたゆまぬ努力のおかげである。この概念は 2000 年初頭から発表され、実践されていましたが、中国当局がスポンジを受け入れ、都市構想を策定し、全国政策とするきっかけとなったのは、79 人の死者を出した 2012 年 7 月 21 日の北京洪水でした。2015年、中国は16の地区で試験的取り組みを開始したと報じられた。この取り組みは、アジアの洪水問題を解決するための代替案を提示します。中国はこの取り組みで洪水を抑制しようとしている。同国は都市部の80％で雨水の70％を採取し再利用する計画だ。スポンジシティの構築には必ずしも巨額の投資が必要というわけではありません。しかし、そのような事実は、誤解を招くメディアや、地方自治体や請負業者、プロではないデザイナーによって、実際には何の関係もないファッショナブルなブランドやスローガンとして「スポンジシティ」が頻繁に悪用されてきたという事実により、広く誤解されています。この自然ベースのソリューションを使用してください。自然をベースにしたスポンジシティを実現する際の主な障害は、灰色のインフラストラクチャーエンジニアリング、観賞用の園芸、従来の都市計画の通常通りの精神と、これらの時代遅れの都市主義の慣行を擁護するために確立された規範システムです。しかし、スポンジシティに資金を提供することも課題であった。

中国で成功を収めた後、このスポンジシティモデルは、ベルリンやロサンゼルスのような大都市だけでなく、ダッカやケニアなどの気候にさらされた地域も誘致するようになりました。

背景

都市化は都市インフラの建設を促進します。しかし、水インフラの過剰な利用と開発は、水不足、汚染、水生態系サービスの全体的な劣化につながる可能性があります。また、非科学的な建築計画は多数の建物を生み出し、同時に都市の緑地、排水、雨水の収集能力を制限します。その結果、雨の排出は現代の都市の要件を満たすことができず、都市に水の生態や水環境に関して多くの問題を引き起こしています。

一方、建物、道路、公共広場などの強度の高い人工建造物は、下部パッドの過度の硬化を引き起こし、元の自然の基礎と水文学的特性を変化させます。このため、表面流量は 10% から 60% に増加しますが、浸透は大幅に減少し、さらにはゼロになります。住宅都市農村開発省が 2010 年に実施した調査によると、2008 年から 2010 年の間に全国 351 都市のうち 62% が洪水に見舞われました。この期間中に 137 の都市が 3 回以上洪水に見舞われました。この頻繁な都市洪水により、水生態系と都市生態インフラの重要性を認識する人が増えています。高速排出というシンプルなコンセプト、伝統的な雑排水管理モデルは、急速な都市化における雨水のジレンマに対処するのにもはや役に立ちません。このような広範な都市水問題に対処するため、中国は都市洪水管理と水生態系サービスをますます重視しており、スポンジシティの構想を精力的に推進している。

設計原則

スポンジシティの哲学は、水を水源に分配して保持し、水が水源から離れるときに速度を落とし、水を自然にきれいにし、水が溜まったときにシンクの水に適応することです。これは、従来の解決策とはまったく対照的です。グレーなインフラストラクチャーとは、大きな貯水池を使って水を集中させて蓄積し、パイプや排水溝によって流れを加速し、最後にはより高く強力な防潮壁やダムによって水と戦うことです。スポンジシティの理論は、「自然に基づく」、「発生源管理」、「地域適応」、自然の保護、自然からの学習、都市の生態学的空間の可能な限りの保存、生物多様性の回復、美しい景観の創造という基本原則を強調しています。環境。これらはすべて、自然吸収、自然浸透、自然浄化を実現することで実現します。これらの原則は、何千年にもわたって中国全土で実践されてきた長年の知恵と戦略から来ており、当時は水は灰色のインフラストラクチャと戦うのではなく、水との関わりやその周りでの取り組みが必要でした。自然生態学的背景（地形や地形など）の浸透効果、植生や湿地の水質浄化効果、自然手段と人工手段の組み合わせにより、都市は雨水を吸収および放出することができます。都市の緑地と都市の水域（建設された湿地、雨庭、緑の屋根、凹んだ緑地、芝生の溝、生態公園）は、中心的な「海綿体」です。

このようなシステムの開発には、元の都市生態系の保護、生態系の回復、および低影響の開発という 3 つの主な側面があります。

保護は、川、湖、溝など、市のもともと生態学的に敏感な地域に重点を置いています。自然の植生、土壌、微生物を使用して、水生環境を徐々に処理し、損傷した都市生態系を回復します。

回復策には、生態学的パッチの特定、生態学的回廊の構築、パッチ間の接続の強化、ネットワークの形成、水生生態環境を回復するための青と緑の線の引き分けなどが含まれます。

都市の道路、都市の緑地、都市の水系、住宅地、および特定の建物には、生態学的パッチを保護し、貯留能力を維持し、発生源管理を強化し、さまざまな規模の生態学的スポンジを形成するために、必須の措置が適用されます。

しかし、スポンジシティ政策は、過去数十年間の急速な都市化により、改修開発よりも新築建設においてより頻繁に実施されてきました。アモイの楊坊住宅街と上海の蘭港公園は、この傾向を示す 2 つの新しい開発です。

引用文献

巨額予算だけを吸い込んで水害には役に立たなかった習近平主導の防災プロジェクト「海綿城市」、壮大な手抜きの実態 2023/09/07 現代ビジネス　北村豊

https://gendai.media/articles/-/115790?imp=0

中国500年の治水に代わる新しい「海綿城市」構想とは？2020/09/07 Courrie（ブルームバーグ）　

https://courrier.jp/news/archives/211262/

都市洪水を防ぐ　中国「海綿城市」日経サイエンス　2019-03

https://www.nikkei-science.com/201903_092.html