1)認知科学の問題
経済学者の主張は、認知科学を無視しているので、実現することはありません。
2)合理的期待形成仮説
合理的期待形成仮説は,現在だけでなく将来の市場条件,とくに均衡市場価格について,人々がその客観的確率分布を正確に知っていて,その数学的平均値に等しくなるように期待を形成し,最適化の行動を行うという前提を仮定します。
これはカーネマンの行動経済学(認知科学)でいうと、「システム2(熟慮・計算)が本来担うべき膨大な情報処理を、あたかもシステム1(直感・即時的)のようなゼロコストかつ無意識のレベルで完遂している」と仮定しています。合理的期待形成仮説の標準的な解釈には、このような「荒唐無稽さ」があります。
3)木内登英氏の主張
経済専門家の木内登英氏は次のようにいいます。
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労働生産性向上には、企業の設備投資の拡大が必要であり、またそのためには、将来に向けた成長期待の上昇が欠かせない。それに寄与するのが、少子化対策、外国人材活用、東京一極集中是正、インバウンド戦略などの政府の成長戦略だ。さらに、労働市場改革を通じて成長産業に労働力を移動させることも、生産性及び成長率を向上させる。
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【衆院選の焦点④】成長戦略で日本経済の将来を語れ 2026/01/19 NRI 木内登英
https://www.nri.com/jp/media/column/kiuchi/20260129.html
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ここには、労働生産性向上のための生産検討(システム2)が、あたかも、短期的な経済政策(システム1)と同じレベルの難易度でできるという誤認があります。
あるいは、次の記事も同じ問題を抱えています。
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【衆院選の焦点⑥】社会保険料の引き下げは社会保障制度の抜本見直しと一体で議論せよ 2026/01/30 NRI 木内登英
https://www.nri.com/jp/media/column/kiuchi/20260130.html
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4)野口悠紀雄氏の主張
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短期効果と中長期効果を区別する必要
強調すべきは、「短期効果」と「中長期効果」を明確に区別する必要があることだ。
消費税減税は「物価水準」を一度だけ動かすことはあっても、「物価上昇率」を持続的に引き下げる政策とはなりえない。
消費税率引下げ政策の最大の問題は、現在の物価高騰メカニズムに何も手を付けていないことだ。だから、税率引き下げ直後には物価水準は下がるが、いずれ物価は上昇してしまう。問題は何も解決されていないことになる。
消費税減税に物価対策としての期待が集まること自体は理解できる。しかし、その結果として本当に取り組むべき物価対策がなおざりにされるとすれば、それは大きな問題だ。
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そもそも消費税を減税しても持続的な物価対策にはならない~総選挙で各党が競い合って公約にしたけれど 2026/01/30 現代ビジネス 野口悠紀雄
https://gendai.media/articles/-/163271?page=3
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野口悠紀雄氏は明記していませんが、「短期効果と中長期効果」という表現には、この2つがパラレルに論じることができるという暗黙の了解があります。
しかし、カーネマン流に言えば、この2つは、短期効果(システム1)と中長期効果(システム2)になります。
パラレルに議論することはできません。
システム2を起動させるためには、システム1を封印する必要があります。
5)戦略と戦術
戦術と戦略の議論に対応させれば、次になります。
戦略:中長期効果(システム2)
戦術:短期効果(システム1)
つまり、「戦術:短期効果」を封印しないと、議論はスタートしません。
6)消費税12%の議論
「戦略:中長期効果(システム2)」には、消費税を12%にする議論があります。
消費税があがっても、それで、最低限の生活が保証されるのであれば、受け入れる人もいると思われます。
しかし、政府は、マクロ経済スライドによって、最低限の生活の保証を外しています。
これは、消費税があがっても、それで、最低限の生活が保証されることはないという明確なシグナルになります。
このシグナルを発すれば、消費税に反対する人が増えることは当然です。
つまり、マクロ経済スライドは、戦術を戦略に優先しています。
マクロ経済スライドは、将来のことはわかりませんというメッセージになっています。
このような認知科学を無視した議論では、先に進むことはできません。