限界国家日本(14)AA層の脱出

1)AA層の変化

 

国外転出時課税制度によって、AA層(A層の中の富裕層)の国外脱失が始まっています。

 

「2040年の東京限界説」が前提とするトレンドデータ(シナリオ1)は、「納税者が逃げない」前提の計算です。AA層が流出するシナリオ2では、以下の「負のレバレッジ」が働きます。

  1. 「片道切符」の急増:戻らない日本人

多くの人は、海外移住を「一時的な留学や駐在」と混同しています。しかし、実は、<「日本に見切りをつけた永住者」>が激増しています。

  • 海外在留邦人のうち、「永住者」の割合は過去最高を更新し続けています(約57.5万人、前年比3%増)。
  • 「いつか帰ってくる日本人」ではなく、「二度と戻らないと決めた日本人」が過去20年で倍増しています。
    • 2004年: 約29万人
    • 2024年: 約57万人(20年間で約2倍に)
  • つまり、日本は 「旅行で行きたい国」から「住みたくない国」に変わりました。頭の良い人たちはすでに行動を終えています。
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  1. 「才能の安売り」:ITエンジニアの残酷な比較

 

「日本は技術立国だ」という古い演繹エンジンは間違いです。具体的な年収格差を提示します。

 

職種:シニアエンジニア

日本(東京)

米国(シリコンバレー

シンガポール

平均年収

約800万〜1,200万円

約3,500万〜5,500万円

約1,800万〜3,000万円

手取り額の推移

社会保険料増で減少傾向

昇給率が物価高を上回る

低税率により手元に残る

 

  •  日本のトップエンジニアの給料は、米国の「新卒」や「中堅」にも及びません。
  • 「日本で頑張れば報われる」という考えはあてはまりません。「日本にいるだけで生涯賃金が数億円損をする」と理解すべきです。
  1. 「富の流出」:100万ドル以上の資産家の動向

 

AA層の中でも特に「資産」を持つ層の動向です。

  • ヘンリー&パートナーズの調査等によると、日本は「富裕層の純流出」が起きる国に転じつつあります。
  •  日本の富裕層の約21.5%(約5人に1人)が将来的に海外移住を検討中です。
  • その理由の1位は、 「子供の教育環境」と「資産の防衛(重税からの回避)」です。
  • 「金持ちから税金を取ればいい」という考えは、「課税される前に、課税対象(金持ち)が物理的に消滅する」という状態を考えると不可能です。

 

  1. なぜ「シナリオ2」で崩壊が10年早まるのか?

 

トレンドデータ(シナリオ1)は、「納税者が逃げない」前提の計算です。AA層が流出するシナリオ2では、以下の「負のレバレッジ」が働きます。

  1. 税収の絶壁: 日本の所得税の約半分は、上位数%の高額納税者が納めています。彼らが1割流出するだけで、自治体の予算は数千億円単位で吹き飛びます。
  2. 「管理職」の不在: 現場を回すB層をマネジメントし、外貨を稼ぐ仕組みを作るAA層がいなくなれば、B層の雇用そのものが消滅します。
  3. インフラ維持の限界: 維持費を払う「富」が先に消えるため、2040年に予定されていた水道・道路の崩壊が、2030年代前半に前倒しされます。

まとめ

 

「沈みゆく船の1等客室(AA層)は、すでに救命ボートを下ろして脱出を始めています。3等客室(B層)にいる私たちが、『船は大きいから大丈夫だ』とテレビを見ている間に、救命ボートはすべてなくなります。

2)日本経済の技術開発のエンジン

AA層は、2つで出来ています。1番目のAA層は、資産の持ち主です。2番目のAA層は高度人材です。この2番目のAA層(高度人材)が、技術開発の主役になります。

ここでは、日米の高度人材の層を比較するための代替指数(プロキシ)とその比を推定します。

脳に優しい説明をすれば、自動車の比喩が使えます。

「自動車(経済)」「エンジン(高度人材)」「ガソリン(インフレ/流動性)」という比喩を使うと、複雑なマクロ経済の構造(供給側の制約と需要側の刺激)を視覚的に理解することができます。

高度人材の層を比較するための代替指数(プロキシ)とは、日本とアメリカのエンジンの馬力を比較するイメージになります。

  1. 「エンジンの馬力」を測るための代替指数(プロキシ)

 

高度人材の層(馬力)を単一の数値で測ることは難しいため、以下の3つの多角的な指標を「馬力の代替指数」として採用します。

  1. デジタル・IT人材数: 現代経済(第4次産業革命)におけるエンジンの基幹部品。
  2. トップクラスの研究開発力(高被引用論文数): エンジンの「燃焼効率(イノベーション)」を決定する力。
  3. スタートアップのエコシステム価値(ユニコーン企業数): 新しいエンジンを組み上げる「設計力」。
  1. 日米の「馬力」比較と比の推定

 

最新の統計データ(2023〜2024年時点)に基づき、アメリカを「1」とした場合の日本の比率を推定します。

 

指標(プロキシ)

アメリカ (US)

日本 (JP)

推定比 (JP:US)

高度IT・ソフトウェア人材数

約 440万人

約 130万人

1 : 3.4

トップ1%論文数(科学技術指標)

世界1位(約 4,000本)

世界13位(約 300本)

1 : 13.3

ユニコーン企業数(未上場10億ドル企業)

約 650社

約 10〜15社

1 : 50.0

博士号取得者数(STEM分野/年)

約 40,000人

約 6,000人

1 : 6.6

 

  1. 推定結果:馬力(高度人材)の比

 

上記の指標を総合的に判断すると、単純な「労働力人口」の差(約1:2.7)以上に、エンジンの出力性能には大きな開きがあります。

  • 絶対的な馬力の比: 日本のエンジンを 1 とすると、アメリカのエンジンは 5 〜 10 程度の出力があると言えます。
  • パワーウェイトレシオ(人口あたりの馬力):
    • 日本の「重量(1.2億人)」に対する「馬力」の密度は、アメリカの「重量(3.4億人)」に対する密度よりも大幅に低くなっています。
    • 具体的には、人口1人あたりの高度人材供給能力において、アメリカは日本の約2倍〜4倍の効率を持っていると推定されます。

結論としての比率:

日本の自動車のエンジンの馬力を P(JP)、アメリカを P(US) とすると、

P(JP)  ≒  0.15 x P(US) 

(※イノベーションやデジタル化に特化した「現代型エンジン」の性能比較において)

  1. 比喩の補足:ガソリン(インフレ)の限界

 

この比喩をさらに深めると、以下のことが言えます。

  • オーバーヒートのリスク: 小さいエンジン(高度人材不足)の車に、無理やり大量のガソリン(過度なインフレ・通貨供給)を流し込むと、速度が出る前にエンジンが焼き付き(供給制約による悪性インフレ)、車体が壊れてしまいます。
  • トランスミッションの問題: 日本はエンジンの馬力自体もさることながら、それをタイヤに伝える「労働流動性」や「制度」というトランスミッションの摩擦係数も高いため、さらに加速しにくい構造にあります。

まとめ

日本が、科学技術立国になったり、日本製のAIが、世界の中心で活躍することはありません。

日本経済のエンジンの馬力は、アメリカ経済のエンジンの馬力の15%に過ぎません。

このことから、現状は、軽自動車(日本)とレーシングカー(アメリカ)のレースになっていることがわかります。

この状況で、政府が技術開発予算を投入することは、軽自動車にガソリンをつぎ込めば、レーシングカーにも勝てると言う主張になります。これは、根拠のない精神論です。

日本の科学技術の開発能力(高度人材)については、日本経済のエンジンは軽自動車クラスであるという「事実の隠蔽」がおきています。これが、2026年1月の日本経済は、太平洋戦争で言えば 「1944年(昭和19年)後半:サイパン陥落以降」 の状況に近いと推測できる理由です。

注意:

日本企業でも、活動の中心が海外にある企業は、この制約を受けません。これは、太平洋戦争時点とは大きく異なる点です。