1)ルーカス批判
最初に、ウィキペディアで、ルーカス批判の内容を確認します。
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日本語版ウィキペディア
ルーカス批判(ルーカスひはん、英: Lucas critique)は、ロバート・ルーカスのマクロ経済の政策決定に関する論文にちなんで名付けられたものであり、経済政策を変化させることによる効果の予測を全面的に過去のデータ、特に集合体データで観測された関係性に基づいて行うことは現実的でないと論ずるものである。または、期待(または経済法則)が自己言及性を持つのだという指摘だと言うこともできる。
英語版ウィキペディア
ルーカス批判は、歴史的データ、特に高度に集約された歴史的データに見られる関係性だけに基づいて経済政策の変更の影響を予測しようとするのはナイーブすぎると主張する。より正式には、消費関数などのケインズモデルの意思決定ルールは、政府の政策変数の変化に対して不変であるという意味で構造的であるとは考えられないと述べている。これは、アメリカの経済学者ロバート・ルーカスのマクロ経済政策立案に関する研究にちなんで名付けられた。
ルーカス批判は、1970年代にマクロ経済理論においてミクロ基礎を確立しようとする試みへと向かったパラダイムシフトを代表するものとして、経済思想史上重要な意味を持つ。
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2)グレンジャー因果性批判
パールの「因果推論の科学」の第1章には、次のような「グレンジャー因果性」と計量経済学批判があります。
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しかし、因果関係という概念(それ自体は称賛に値する考えである)を数学化しようとする試みにおいて、哲学者たちは、彼らが知る唯一の不確実性を扱う言語、すなわち確率という言語にあまりにも安易に固執しすぎてしまった。彼らはこの10年ほどでこの失策をほぼ克服したが、残念ながら、計量経済学では今でも同様の考えが「グレンジャー因果性」や「ベクトル自己相関」といった名前で追求されている。
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問題は、この計量経済学批判が具体的に何を批判しているかという理解です。
筆者は、この部分の指摘は、「相関では、交絡因子が排除ができない」問題を扱っていると勘違いしていました。
しかし、そうではないと考えられます。
それでは、何を批判したかが今回のテーマです。
3)グレンジャー因果性とは
ヒュームは、原因と結果の間には、タイムラグがあると主張しました。
これから、現象が波でモデル化できれば、波の伝播速度のベクトルを計測すれば、因果の方向がわかるというアイデア(グレンジャー因果性)が導かれます。
グレンジャー因果性は「前後関係(precedence)」、またはグレンジャー自身が1977年に主張したように「時間的な関連(temporally related)」と説明されます。
つまり、現象が発生したあとで、因果の方向のマークを付ける方法です。
この方法では、事前に因果の方向を予測することはできません。
経済成長とインフレの関係を、「因果推論の科学」では、「経済成長ー>インフレ」で、モデル化します。この判断は、主観ですが、「経済成長ー>インフレ」と「インフレー>経済成長」のどちらかを選べといわれれば、前者を選ぶ人が多いでしょう。
VARモデルなどの経済モデルでは、「経済成長<ー>インフレ」という相互関係があると考えます。これは、「経済成長ー>インフレ」と「インフレー>経済成長」がスイッチする、グレンジャー因果性の波のイメージで考えれば、波の伝播の方向が切り替わることに対応しています。
4)ウィキペディアの問題点
ウィキペディアの説明では、ルーカスは、「消費関数などのケインズモデルの意思決定ルールは、経済政策の変更の影響の予測には使えない」といっています。
それでは、経済政策の変更の影響の予測にはどのようなモデルを使えばよいのでしょうか。
ウィキペディアの説明では、ルーカスは、経済政策の変更の影響の予測にはどのようなモデルを使うべきであるといったという記述はありません。
しかし、Copilotに聞くと、ルーカスは、経済政策の変更の影響の予測に使うべきモデルを明示していたといいます。
経済政策の変更の影響の予測に使うべきモデルとは、どのようなモデルでしょうか。