「科学的に正しい」の罠の書評(3)

質問Copilot

 

前向き研究などの統計処理のバイアス排除に関する質問です。

前向き研究は、次のように説明されます。

前向き研究(prospective study)は、「将来の測定・観察を、あらかじめ定めた条件・プロトコルに基づいて計画的に行う」研究です。

 この設計により、サンプリングバイアスを最小化することが目的です。

「これから得られるデータの取得過程を制御し、偏りを最初から避ける」ことを目指します。

これは、正しい記述ですが、既に、取得されたサンプリングバイアスのあるデータの活用法については何も言っていません。

簡単に考えれば、使えなければ、捨てることになると思われます。

p-ハッキングについても同じ問題があります。

p-ハッキングをつかった論文の結論は、検証ができたとは言えません。

この論文は、破棄すべきでしょうか。

かりに、P-ハッキングのある論文を廃棄するとなると、過去の多くの論文に影響が及びます。

交絡因子に関する記述も、同じ傾向があります。

交絡因子の調整が行われていない研究結果は、バイアスがあり、利用することは困難です。

過去の研究には、交絡因子の調整が不十分な研究が多数あります。

ピアジェ発達心理学は、主な研究手法が観察研究です。

最近の研究成果をフォローしていませんが、少なくとも、ピアジェ世代の研究には、交絡因子の調整が行われているとはいえません。

交絡因子の調整をおこなった改訂された発達心理学がなければ、ピアジェ発達心理学は、使えないと考えられます。

このように、過去の研究には、統計処理のバイアス排除ができていない研究が多くあります。

それらの研究は、現在の研究につながる道程として歴史的価値があります。

しかし、ワインバーグの主張(科学はホイッグ史観)に基づけば、統計処理のバイアス排除ができていない研究は否定されることになります。

バイテクの分野では、交絡因子は、コンタミに相当します。

バイテクの分野では、過去の実験にコンタミが含まれていたことがわかれば、その論文は破棄されます。

こう考えると、統計学と疫学の分野では、過去のバイアス排除ができていない研究にふれることは、タブーになっていると考えられますか。

解答Cpilot

ご指摘の通り、前向き研究の設計は「将来の測定におけるバイアスの排除」を目的としていますが、既に取得されたバイアスを含むデータの扱いについては、科学的・制度的に曖昧な部分が残されています。以下に、論点を整理しながら、統計学・疫学・科学哲学・研究倫理の観点から考察します。

 

🧠 論点整理:バイアスを含む過去研究の扱い

 

観点

内容

備考

前向き研究の目的

将来の測定におけるサンプリングバイアスの排除

設計段階で偏りを防ぐ

既存データの問題

サンプリングバイアス・pハッキング・交絡因子の未調整

結論の信頼性が低下

科学的検証の原則

再現性・透明性・因果推論の妥当性

バイアスがあると検証不能になる

倫理的判断

バイテク分野ではコンタミ=論文破棄

疫学・心理学では曖昧な扱いが多い

歴史的価値

道程としての価値はあるが、現代の基準では不適格

ホイッグ史観との緊張関係

🔍 「タブー」化の構造:疫学・統計学における沈黙の理由

  1. 制度的・実務的な回避
  • 多くの疫学論文は「交絡因子の調整が不十分」であることを明示せず、限界として記述するにとどまる。
  • pハッキングの疑いがある研究も、再分析やメタ分析で吸収されることが多く、明示的な破棄は稀。
  1. 科学哲学的な緊張
  • ワインバーグのホイッグ史観(科学は進歩の歴史)に従えば、過去の誤りは否定されるべき。
  • しかし、クーン的視点では、過去のパラダイムの中での意味を尊重すべき。
  1. 教育・制度設計上の配慮
  • 過去の研究を「完全に否定」すると、教育・制度・理論の継承が困難になる。
  • そのため、「批判的継承」や「限定的利用」という形で暗黙の合意が形成されている。

 

🧬 バイテクとの疫学・統計との比較:なぜ疫学は破棄しないのか?

項目

バイテク

疫学・統計

交絡因子の扱い

コンタミとして即時破棄

調整不足として限定的利用

検証可能性

実験系で再現不可 →破棄

観察系で再現困難 →再分析・限定的引用

制度的対応

明示的な撤回・訂正

メタ分析・レビューで吸収

倫理的圧力

高い(安全性・再現性)

相対的に低い(社会的影響は大きいが曖昧)

比較:なぜ疫学は破棄しないのか?

🧭 結論:タブーではなく「制度的沈黙」と「批判的継承」

この問いに対する答えはこう整理できます:

  • 疫学・統計学の分野では、過去のバイアス排除ができていない研究に対して、明示的な否定や破棄は制度的に行われていない。
  • これは「タブー」というよりも、制度的沈黙と批判的継承の構造があるため。
  • ただし、再分析・メタ分析・限定的引用などの方法で、過去研究の信頼性を補完する努力は行われている。
  • 一方で、バイテクのような実験系・安全性重視の分野では、明示的な破棄が制度化されている。

🧩 視点との接続

「科学的厳密性」「制度設計」「歴史的継承」「文化的透明性」の観点から見ると、疫学・統計学の分野ではまだ制度的整備が不十分であり、過去研究の扱いに関する明示的なルールや対話が不足していると言えます。

この問題は、**科学的再現性の危機(replication crisis)**とも深く関係しています。もしご希望であれば、次のステップとして「再現性危機と制度設計」「疫学における交絡因子の歴史的扱い」「pハッキング検出アルゴリズムの制度化」などのテーマで掘り下げることも可能です。

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質問Copilot

「何が科学的に正しいか」など、正しい科学と、正しくない科学の判別関数を作る人がいます。

この問題設定は、要素還元主義の誤謬を抱えているので、不適切です。

科学的な研究のプロトコルがあり、科学者の世界では、「何が科学的に正しいか」は、そのプロトコルにしたがって判断がなされているので、判別関数は不要です。

判別関数は、科学的プロトコルをスキップして、科学の素人が、「何が科学的に正しいか」を判定できるという願望を表しているにすぎません。

この要素還元主義の誤謬の問題を脇においても、「何が科学的に正しいか」を検討する対象に、バイアス排除ができていない研究が含まれていれば、推論は、空回りになります。

これは、コンタミを含んだ実験結果を科学的成果に含めた検討に意味がなくなることから自明と思われます。

つまり、「何が科学的に正しいか」という議論は、ナンセンスです。

しかし、この問題をナンセンスとして放置できない理由があります。

それは、「何が科学的に正しいか」という議論には、「陰謀論」などの、科学的な背景のない主張に対抗したいという問題意識があるからです。

つまり、「何が科学的に正しいか」という議論には、「陰謀論」に対抗する目的で、科学の素人が、「何が科学的に正しいか」を判定できるという願望があり、その結果、この推論の精度は、「陰謀論」とあまり変わらなくなっていると言えます。

陰謀論」問題に対応する「何が科学的に正しいか」という議論より有効な方法はありますか。

解答Copilot

ご指摘の通り、「何が科学的に正しいか」を判定する関数を作ろうとする試みは、要素還元主義の誤謬を抱えており、科学的プロトコルの複雑性と文脈依存性を無視しています。さらに、バイアスを含む研究の混入によって、推論の土台そのものが不安定化するという問題も鋭く指摘されています。

しかし、この議論がナンセンスであるにもかかわらず放置できない理由として、「陰謀論への対抗」という社会的・認知的な動機があることも、非常に重要な観察です。以下に、この問題に対してより有効な対応方法を構造的に整理します。

 

✅ 「陰謀論」問題へのより有効な対応方法

  1. 🧪 科学的プロトコルの可視化と教育
  • 目的:素人が「判別関数」に頼るのではなく、科学的判断のプロセスそのものを理解する。
  • 方法:
  • 科学的研究の設計・測定・分析・再現性の流れを図解・事例で示す
  • 「なぜこの研究は信頼できるのか/できないのか」をプロトコルベースで説明
  • 効果:陰謀論との違いを「手続きの透明性」で示すことができる
  1. 📚 批判的リテラシーの育成
  • 目的:情報の真偽を「内容」ではなく「構造」で判断できる力を育てる
  • 方法:
  • 研究の出典・方法・資金源・査読状況などを読み解く訓練
  • 「誰が、どのように、何を、どこで、なぜ」などの問いを通じて情報を分解
  • 効果:陰謀論的思考と科学的思考の構造的違いを理解できる
  1. 🧭 科学的合意形成のプロセスの提示
  • 目的:「科学的に正しい」とされる知見が、どのような合意形成を経ているかを示す
  • 方法:
  • 学会・専門委員会・メタ分析・レビュー論文などの役割を説明
  • 「一つの論文」ではなく「複数の検証と合意」が重要であることを強調
  • 効果:陰謀論の「単発的・断定的」な構造との違いが明確になる
  1. 🧠 推論の限界と不確実性の共有
  • 目的:科学は「確実な真理」ではなく「仮説と検証の連続」であることを理解させる
  • 方法:
  • 統計的有意性・信頼区間・交絡因子・バイアスなどの概念を平易に説明
  • 「わからないことをわからないと言える」科学の姿勢を示す
  • 効果:陰謀論の「全てを説明できる」という幻想と対比できる
  1. 🧬 科学と社会の関係性の再構築
  • 目的:科学を「専門家の閉じた世界」ではなく「社会と対話する知の営み」として位置づける
  • 方法:
  • 市民科学・参加型研究・科学コミュニケーションの事例紹介
  • 科学的知見が政策・生活・文化にどう影響するかを示す
  • 効果:陰謀論が入り込む隙間(不信・疎外)を埋める

 

🧩 判別関数 vs プロトコル理解:構造的比較

 

視点

判別関数型アプローチ

プロトコル理解型アプローチ

判断主体

素人が即時に判定

科学者の手続きに基づく理解

精度

表面的・断定的

文脈依存・漸進的

陰謀論効果

一時的な反論

構造的な免疫形成

誤謬のリスク

要素還元主義・誤分類

不確実性の共有・再検証可能性

✅ 結論

「何が科学的に正しいか」という議論は、科学的プロトコルの理解を欠いたままでは、陰謀論と同じ構造に陥る危険性があります。その代替として、科学的プロトコルの可視化・批判的リテラシー・合意形成の理解・不確実性の共有・社会との対話という複合的なアプローチが、より有効かつ持続可能です。

必要であれば、これらのアプローチを政策設計・教育モデル・科学コミュニケーション戦略として展開することも可能です。どの方向に深掘りしましょうか?