1)解題
9月7日投稿の「中国のEVの生産過剰輸出問題(1) 」の続きです。
最初に、「生産過剰輸出問題」の解題をしておきます。
工業都市で、人手不足対策に、外国人労働者を導入している都市があります。
この外国人労働者が必要になるという推論は、帰納法によっています。
今まで、日本人労働者で、生産してきたので、今後もモノを作れば売れるという前提があります。
しかし、今後は、作っても売れない可能性があります。
考えられる原因は、2つです。
第1は、AIを使った自動工場です。自動工場であれば、メンテナンス要員以外の労働者は、不要になります。
第2は、部品価格の高騰です。
生産過剰輸出問題は、この第2に関係します。
パナソニックは、2008年にレンズ交換式カメラの市場に参入しました。
2008年頃、交換レンズの部品である高屈折レンズや非球面レンズは、高価でした。パナソニックは、CDプレーヤーなどの家電製品用に、こうした特殊レンズを量産していたので、非常に安価に、交換レンズを販売することができました。2025年の現代、日本の家電メーカーは、輸出競争力を失っています。CDプレーヤーなどの家電製品は、ほとんど作っていません。テレビについては、部品の液晶を作っている日本のメーカーはほとんどなくなりました。
つまり、2025年現在、パナソニックが、特殊レンズを量産しているため、交換レンズの部品を非常に安価に供給できるという条件は失われています。減価償却の終わった工場が引き続き使える間は、交換レンズの部品を非常に安価に供給できるかもしれませんが、その先は、価格維持が困難になります。
一方、中国の家電メーカーは、生産過剰輸出による価格競争をしかけて、世界市場で大きなシェアを獲得しています。
カメラのレンズについていえば、監視カメラなどの工業用カメラについては、日本企業は、中国企業との価格競争にまけて、シェアがなくなりました。
デジタルカメラのレンズに比べれば、工業用カメラのレンズの生産数は、桁違いに多いです。つまり、工業用カメラのレンズの生産をもっていれば、その施設を転用してデジタルカメラのレンズを安価に生産することができます。
2025年現在、日本のカメラメーカーの純正交換レンズの価格を1とすれば、日本の交換レンズメーカー(サードパーティ)のレンズの価格は半額、中国のレンズメーカーの価格は、4分の1です。また、日本のカメラメーカーとレンズメーカーのレンズには、海外生産が多くあります。海外生産でも、中国製のレンズほど安価にできない理由は、部品の原価の違いにあると思われます。
レンズの性能評価は、利害関係者が行ったものが多く、客観評価は少ないです。
また、何を基準に評価するかで、順位もかわります。
撮影した写真をみて、どのレンズをつかって撮影したかがわかるかというチューリングテストのような基準で考えれば、特殊な撮影条件をのぞけば、上記の3種類のレンズの性能は、ほぼ同じです。
恐らく、日本のカメラメーカーとレンズメーカーにも淘汰の時代がくると思われます。
太陽光発電パネルと液晶と工業用カメラについては、生産過剰輸出問題(実質的なダンピング)があった可能性が高いです。
太陽光発電パネルの日本のメーカーは、既になくなっています。
つまり、これから、太陽光発電パネルに、相殺関税やダンピング関税をつかっても、効果はありません。
これは、政府の生産過剰輸出問題が不十分で、太陽光発電パネルについては、既に、「手遅れ」になってしまったことを示しています。
液晶、EV用の電池についても、生産過剰輸出問題が疑われます。
5年以内に、外国人労働者の働く場(日本にある工場)がなくなる問題が発生すると思います。
過去の歴史をみれば、中国は、生産過剰輸出によって、世界のシェアを拡大してきました。
日本政府は、現在もこの問題に対して無防備であると思います。
EV用の電池について生産過剰輸出問題があり、この問題が、自動車の生産過剰問題を引きおこし、「手遅れ」になる可能性があります。
政府は、半導体の製造に膨大な税金を投入していますが、この方式では、オランダ病がおきるので、半導体の国産という問題解決は不可能です。
太陽光パネル製造には、膨大な税金がつぎ込まれ、オランダ病になって技術優位を失ったところに、中国製品の生産過剰輸出問題があって、産業が消滅しています。
半導体製造は、オランダ病に突き進んでいます。一方では、生産過剰輸出問題に対する政府の体系的な取り組みはありません。
2)本文
引き続き、第3国の問題をGeminiに聞きました。
データ
タイ
日本車のシェアは、2010年は、92.3%、2023年は、78%、2025年前半では 70.6%に。
2023年には、中国メーカーは 約11% の市場シェアを獲得(前年の倍増)。
EV販売では、中国ブランドが圧倒的で、EV市場の 約80% を占め、日本ブランドは 1%未満。
2025年第一四半期(Q1)では、中国ブランドの市場シェアが 約10% に急増し、日本勢は 85.6% に減少(前年 Q1 は91.7%)。
V全体の割合:約4.9%(2025年第1四半期)、2023年の1.7%から上昇。
そのうち**中国ブランドが90%**を占める圧倒的優位。
質問
前回の中国EVの過剰生産輸出問題で、欧米は、WTOのルールに基づく相殺関税やダンピング関税を実施していること、日本は、まだそこまで、中国製のEVの輸入が拡大していないが、事前に調査が可能なことを教えてもらいました。
関連する質問です。タイとインドネシアなどには日本の自動車メーカーと中国のEVメーカーの組み立て工場があります。中国のEVメーカーの組み立て工場では、過剰生産によりダンピングに近い価格で、中国から部品を取り寄せて、EVを組み立てることができます。一方、日本の自動車メーカーの組み立て工場では、ダンピングに近い価格で、部品を納入することはできません。その結果、日本メーカーの組み立て工場と日本メーカーの自動車は、その国からなくなります。
この問題に対して、WTOルールでは、日本の自動車メーカーができる対抗策はありますか。それとも、タイやインドネシアなどの受入国が過剰生産による格安部品であっても、安価であれば、問題がないと判断すれば、WTOのマターではなくなりますか。
解答
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タイやインドネシアなど、第三国における部品のダンピング問題は、日本の自動車メーカーが直接対抗することは非常に難しいです。 WTOルールでは、日本のような輸出国ではなく、輸入国(この場合はタイやインドネシア)が貿易救済措置を講じることが原則とされているからです。
WTOルールと対抗策
WTOのルールでは、不当な貿易慣行(ダンピングや補助金)による損害を受けた国内産業が、その国の政府に救済措置を求めることができます。この場合、タイやインドネシアで損害を受けているのは、現地の組み立て工場を持つ日本の自動車メーカーの現地法人や、現地の部品サプライヤーです。彼らが、自国(タイやインドネシア)の政府に、中国製部品に対するアンチダンピング関税や相殺関税の適用を働きかけることが、WTOルールに基づく主な対抗策となります。
なぜ日本のメーカーが直接動けないのか
- 輸入国の主権: 関税を課す権限は、輸入国であるタイやインドネシアの政府にあります。日本政府や日本の自動車メーカーが、他国の関税政策に直接介入することはできません。
- 「国内産業への損害」の定義: WTOルールにおける「損害」は、関税を課す国の「国内産業」に生じたものである必要があります。このケースでは、タイやインドネシアの自動車産業が損害を受けていると見なされるため、日本の国内産業への損害として主張するのは困難です。
受入国の判断が重要
ご指摘の通り、この問題は最終的にタイやインドネシアなどの受入国がどう判断するかにかかっています。もし、安価な中国製EVが国民にとって利益になると判断し、国内の自動車産業への影響を軽視すれば、関税措置はとられない可能性が高いです。
- 安価なEVの普及: 消費者にとっては、より安価なEVが手に入るというメリットがあります。
- EV市場の拡大: EVの普及を加速させたいという政府の思惑があれば、安価な輸入品を歓迎する可能性があります。
しかし、タイやインドネシアも、自国の自動車産業(特に部品サプライヤー)が雇用や技術力を失うことには強い懸念を持っています。そのため、日本のメーカーの現地法人や現地の部品メーカーが、中国からの部品輸入が不当な競争をもたらしていると、自国政府に強く訴えることができれば、政府が貿易救済措置の調査を開始する可能性は十分にあります。
まとめると、日本メーカーは直接的な関税措置を講じることはできませんが、現地の事業体を通じて、受入国政府に働きかけることが、WTOルールに沿った有効な対抗策となります。タイやインドネシアなどで、中国の過剰生産による安価な部品が、日本の自動車メーカーの現地法人に損害を与えている問題は、その国が独自に調査し、関税措置をとる必要があります。
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第3国の問題は、非常に難しいようです。過剰生産問題に対して、現在のWTOルールには、制度的な欠陥があるようにも思われます。現在のルールでは、過去の太陽光発電パネルで、過剰生産問題があったことがメモリーに残りません。犯罪でいえば再犯に相当する概念はありません。
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