1)洗脳識別フィルター
世の中は、有識者(権威者、利害関係者)の発言に満ち溢れています。
何か、問題がある報道では、マスコミは有識者の発言を引用します。
有識者の発言では、多くの場合、根拠となるデータは明示されません。
明らかにデータが不足している場合には、科学的に正しいコメントは、「データがないので、わからない」になります。
そのような科学的な発言をする有識者がいるかも知れませんが、少なくともマスコミには出てきません。
根拠となるデータがない場合にも、マスコミが有識者の発言を引用することは、マスコミは、洗脳をしていることになります。
有識者の発言を<根拠となるデータがある場合を「妥当(OK)」、根拠となるデータがない場合を「洗脳」>に区分するフィルタをつくることができます。
頭の中でこのフィルタをつくって、テレビを見ながら、画面の端に、「妥当(OK)」、または、「洗脳」のマークがついていると考えながら、番組をみないと、洗脳を回避できません。
このフィルターは、ファクトチェック以前の問題(より本質的)です。
洗脳を回避するより精度の高い「洗脳識別フィルター」は、「データー>推論ー>結論」のステップを頭に描くことになります。
データについては、ファクトチェックをします。
推論については、理論の根拠をチェックします。
結論については、「問い」と比較をして、問題のすり替えになっていないか、評価関数の値(目標値との残差)をチェックします。
これらの処理を瞬時に頭の中で行うことで、「洗脳識別フィルター」が出来あがります。
おそらく、もうすぐ、AIが、「洗脳識別フィルター」のサービスをしてくれると思います。
アドインをオンにしておけば、画面の端に、洗脳リスクスコアを表示するようなソフトウェアです。
現在のファクトチェックは、「洗脳識別フィルター」に比べると、レベルが低すぎて使えません。
2)有識者.VS.AI
政府は、審議会の答申に従って予算を配分します。
今まで、素人の庶民は、有識者会議や審議会の答申に、モノをいうこと(クリティカル・シンキング)は出来ませんでした。
生成AIは、このハードルを簡単にクリアしてしまいました。
審議会の答申に対する疑問を、AIに聞けば、AIは答えてくれます。
例をあげます。以下は、ChtGPTの解答の一部ですが、この要約レベルであれば、どのAIでも、ほぼ同じ解答になると思われます。
背景:
2019年に策定された「AI戦略2019」では、以下の育成目標が掲げられました:
年間約50万人の大学・高専生に「リテラシー教育」レベル(初級レベルのAI・数理・データサイエンス知識)を提供。
そのうち約25万人を、「応用基礎教育」レベル(専門分野でAIを応用できる基礎力)として成長させることを目指す。
「AI戦略2022」においても、同じ目標値(初級50万人/年・応用基礎25万人/年)が継続されています。
(ここでは、未来人材ビジョン(2022)の「AI専門人材10万人育成(2030年目標)」は、対象外にしています。AI専門人材10万人についても、同様の検討が可能です)
質問:
「AII 戦略2019」のAIの基礎知識を持つ人材を2025年までに年間25万人育てる目標は達成されましたか。
解答(ChatGPT):
数値としての評価や報告がないため、現段階では「未達成」と見ておくのが妥当です。
3)追加例
質問
日銀は、2013年以降、大規模金融緩和によって、インフレをおこすという政策目標を掲げました。この目標は達成されましたか。
解答(ChatGPT)
一時的に数値目標は達成されたが、本来の意味での“持続的な物価上昇”という政策目標は未達成と評価されます。
質問
政府は、岸田政権以来、賃上げと景気の好循環を実現する目標を掲げました。
賃上げと景気の好循環は、実現しましたか。
解答(ChatGPT)
まとめ:好循環の実現度は?
- 部分的成功あり:名目賃金は上昇し、消費も回復傾向を見せています。
- しかし本質的課題あり:インフレに打ち勝つ実質的な所得向上と、生活実感を伴う好循環は未だ定着していません。
- 今後に向けて:重要なのは「物価上昇を上回る構造的賃上げ」が定着し、それが家計・投資・景気を支える好循環として持続することです。
質問
「賃上げと景気の好循環」政策には、「物価上昇を上回る構造的賃上げ」を実現するメカニズムが含まれていますか。
解答(ChatGPT)
結論:制度的な“構造改革”よりは、“奨励と期待”に近い政策設計
岸田政権の「賃上げ政策」は、主に税制インセンティブや政労使の合意形成に依拠しており、企業や市場に自発的な行動変容を促すものです。
つまり、賃上げは政府が“強制”する構造的な仕組みではなく、経済界の「善意」「見通し」「社会的責任」への期待に依存している側面が強いです。
そのため、現状では**「構造的」賃上げを持続的に起こす仕組みとは言い難い**のが実情です。
まとめ(要点)
「物価上昇を上回る構造的賃上げ」の実現メカニズムは政策内に一部存在する。
ただし、それらは制度的・強制的な仕組みではなく、民間の自発性に依存。
真の「好循環」には、労働市場改革、教育改革、収益構造改革など、より深い構造的施策が必要。
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コメント
筆者が、「労働市場改革、教育改革、収益構造改革など、より深い構造的施策が必要」といっても、読者は、権威ではない筆者の主張に疑問を抱きます。
一方、有識者は、「労働市場改革、教育改革、収益構造改革など、より深い構造的施策が必要」とは言わず、「賃上げと景気の好循環」が大事だといいます。
これが、今までの構図です。
しかし、権威ではない筆者でも、<「賃上げと景気の好循環」政策には、「物価上昇を上回る構造的賃上げ」を実現するメカニズムが含まれていますか>と質問することはできます。
これは、クリティカルシンキングです。
次のステップは、読者が、ChatGPTの「労働市場改革、教育改革、収益構造改革など、より深い構造的施策が必要」という主張と、有識者の「賃上げと景気の好循環」が大事という主張のどちらを選ぶかというステージになります。
この選択は、読者の自由ですが、ChatGPTは、わからない事があれば、答えてくれます。この要素を配慮する必要がありますかと聞けば、配慮が必要な場合には、提案を修正してくれます。
ChatGPTの提案は、腑に落ちないことはありません。
優劣の勝負はついていると思います。
4)質問テンプレート
クリティカルな質問を加えることで、答申・戦略の問題点を整理することが可能になります。
AIをつかった政策の問題点を整理するクリティカルな質問は、テンプレートを作成しておけば、簡単にできます。
テンプレートの例
この計画は達成されましたか。
この計画は、エビデンスまたは、ファクトに基づいていますか?
この計画には、改善すべき点がありますか?
この計幾は、実装可能ですか?
この計画には、ロードマップがありますか?
この計画には、実装のための下位計画がありますか?
達成時期を設定した根拠は何ですか?また、計画の達成ができる確率はいくらですか?
諸外国の対策(政策)と比べて、この計画に問題がありますか?
この計画の政策評価は可能ですか?
この計画には、前向き研究による政策評価のためのデータ取得計画が含まれていますか。
この計画には、エラーリカバリーループが含まれていますか?
この計画は、利用可能なリソーズ(人材、予算)に対して、整合性がありますか?
この計画は、サイロ化(縦割り)の問題を抱えていますか?
この計画のコスト・ベネフィットはいくらですか?この計画より、優先すべき計画が考えられますか?
などなど。
さらに、大くくりで考えれば、テンプレート(チェックポイント)を並べておいて、「以上のチェックポイントで判断した場合、大きな問題が見つかりますか」とまとめて、質問する方法(大くくりの質問方式)もできます。
「大くくりの質問方式」は、非常に効率的です。
国会答弁もこの方式を使えば、効率化が可能になります。