日本のAI人材育成計画

1)中国とインドとロシア

中国はAIの開発に非常に力を入れている国で、国家戦略としてAIの発展を掲げています。中国政府は、AI分野に関する技術開発や人材育成の政策を積極的に推進しており、多くの大学や専門機関がAI関連のカリキュラムを提供しています。

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インドは「IndiaAIミッション」と呼ばれるAI国家戦略を持っています。

 インドのAI国家戦略「IndiaAIミッション」の概要

 

 目的とビジョン

インドをAI分野のグローバルリーダーに押し上げること

AIを社会の隅々まで浸透させ、経済成長と国民生活の向上を同時に実現

米国・中国に次ぐ「第3のAI大国」を目指す

 戦略の柱(7要素)

コンピューティング能力(GPU設置など)

データアクセスと整備

人材育成(AIアンバサダー制度など)

研究開発支援

資本投資

アルゴリズム開発

社会実装(医療・農業・教育など)

主な施策

  • 1.7兆円規模の予算を投入
  • 17,000台のGPU設置によるAIインフラ整備
  • Googleなどとの官民連携によるAI人材育成・スタートアップ支援
  • 多言語対応(ヒンディー語など)による情報格差の解消

ガバナンスと倫理

  • 公平性・説明責任・プライバシー保護などを重視
  • 小規模オープンソースモデル vs 商用クローズドモデルの選択を議論中

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ロシア

ロシアは、「2030年までのAI国家戦略」(2019年策定、2024年改訂)において、AIは「技術的主権」の柱とされ、以下のような目標が設定されています。

 

  • 年間AI関連サービス量:120億→600億ルーブルへ増加
  • AI関連大学卒業者数:3,000→15,500人へ拡大
  • AIによるGDP貢献:2030年までに11.2兆ルーブル
  • AI導入率(優先セクター):12%→95%へ引き上げ

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インドの17,000台のGPU設置によるAIインフラ整備には、度肝を抜かれました。東京大学の松尾研究室は、計算機リソーズが豊富と言われているので、GPUを多数持っていると思いますが、日本国内で、GPUを自由に使える研究室は少ないと思います。

2030年までに、4カ国はAI人材の数を大幅に増加させると予測されており、AI開発における競争が激化することが予想されます。

ChatGPTによる2025年現在と2030年予測のAI人材養成数は以下です。

 

国/年

2025年 養成人数

2030年 予測 養成人数

中国

50,000〜70,000人

100,000人以上

インド

20,000〜30,000人

50,000〜60,000人

ロシア

5,000〜10,000人

15,000人以上

日本

10,000〜15,000人

30,000人以上

 

ただし、日本については、AI開発人材という区分の統計データがないため、2025年と2030年の数字の信頼性はとても低いです。

 

2)2030年に向けたAI国家戦略と人材供給計画の比較

 

Copliotと相談して、間違いを訂正してもらいながら、「2030年に向けたAI国家戦略と人材供給計画の比較」の表を作りました。

 

2030年に向けたAI国家戦略と人材供給計画の比較

 

AI国家戦略名・開始年

2030年の達成目標

AI人材供給計画

制度的特徴・補足

🇨🇳 中国

次世代人工知能発展計画(2017)

世界トップのAI技術・応用力を持つ「AI強国」へ。関連産業規模10兆元(約170兆円)

高度AI人材を数百万人規模で育成。大学・研究機関でAI学科を拡充

国家主導型。軍民融合・地方政府との連携が強く、産業政策色が濃厚

🇮🇳 インド

IndiaAIミッション(2024)

グローバルAIリーダーとして、社会実装と包摂的成長を達成

AI関連学科の卒業者数を数十万人規模に拡大。GPUインフラ・オンライン教育・産業連携

技術民主化志向。多言語対応・地方包摂・官民協働が特徴

🇷🇺 ロシア

国家AI戦略(2019)

AI技術の主権確保と産業競争力強化。軍事・安全保障分野への応用も重視

AI関連学科卒業者を3,000人→15,500人へ拡大(2030年目標)

基礎科学重視。政府主導だが民間連携は限定的。倫理・透明性の議論は遅れ気味

🇯🇵 日本

AI戦略2019+未来人材ビジョン(2022)

社会課題解決と産業競争力強化。AI専門人材10万人育成(2030年目標)

応用基礎IT人材を年間25万人育成。AI専門人材は大学・大学院・企業研修で拡充

技術中立性・倫理重視。人的資本政策は量より質を志向。統計分類が不明瞭でEBPM困難

 

3)日本の計画をめぐって

 

ChatGPTの2030年の日本のAI技術者の予測養成人数は、3万人以上でした。

 

一方、上の表の中の日本の「AI専門人材10万人育成(2030年目標)」は、さらに大きいです。

 

この10万人について、ChatGPTと議論した要点は以下です。

 

質問

概数でいえば、2023年の日本の大学の工学系卒業生は、9.5万人、電子情報系の卒業生が4万人です。「AI専門人材 10万人」を実現するためには、日本の大学を大改革する必要があると思われます。そのような計画はありますか。

 

解答イメージ(ChatGTP)

日本の大学でAI専門人材を10万人育成するためには、現行の教育システムに大規模な改革が必要です。具体的には、AI設計・開発に特化したカリキュラムの強化や、産業界との連携を強化することが重要です。また、国内の教育体制だけでは足りない部分を外国からの人材の受け入れや、国際的な共同プログラムなどで補完する必要があるでしょう。

 

質問

インドは、IndiaAIミッション(2024)で、中国は、次世代人工知能発展計画(2017)で、具体的なロードマップを策定しています。日本には、インドのIndiaAIミッション(2024)と中国の次世代人工知能発展計画(2017)に相当するロードマップはないと考えてよいですか。

 

解答イメージ(ChatGTP)

現時点で、日本にはインドの「IndiaAIミッション(2024)」や中国の「次世代人工知能発展計画(2017)」に相当するような、包括的で長期的なAIロードマップが存在しないのが現実です。日本政府はAI戦略や未来人材ビジョンなどを発表していますが、これらはまだ個別の政策にとどまっており、インドや中国のように国家全体での一貫したロードマップや戦略的な指針を策定する必要があります。

したがって、今後、日本もより包括的なAI戦略と長期的なロードマップを策定し、具体的な数値目標や施策を掲げて、AI強国を目指すための政策を進めることが求められます。

 

質問

入学から卒業までのタイムラグを考慮すると2030年に10万人のAI専門人材を供給するという目標が達成できる確率は低いと考えてよいですか。

 

解答イメージ(ChatGPT)

タイムラグを考慮すると、2030年に10万人のAI専門人材を供給するという目標を達成する確率は、現時点では非常に低いと言えます。これは、教育体制の強化、産業界との連携、国際的な競争力の確保など、さまざまな要因に依存するためです。

ただし、積極的な政策変更や教育改革、企業との連携強化が進めば、目標達成の可能性は高まりますが、今後の数年間での教育システムの大規模な変革が必須となります。

 

質問

人口変化がトレンドで予測でき、戦争や金融危機は起きないという前提で、以上のAI技術者の養成予測を踏まえて、2030年から2040年の日本の予想経済成長率をインドと中国と比較してください。

 

解答イメージ(ChatGPT)

2030年から2040年の日本の経済成長率は、インドや中国を大きく下回る可能性が高いです。その理由として、以下が挙げられます:

  1. 人口減少と高齢化に伴う労働力の縮小。

  2. AI専門人材の不足による技術革新の遅れ。

  3. 国際競争力の低下(特に中国やインドの台頭による)。

  4. 生産性向上が遅れる可能性

これらを考慮すると、日本の経済成長率は今後、インドや中国の急速な成長に比べて相対的に低い水準に留まると予想されます。

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4)破綻国家論

ウクライナの人口は、1991年の約5,200万人が、2021年の4,200万人以下(実質は3,800万人程度とも言われる)に減少しました。2024年は、戦争・避難により3,000万人台に突入したとの推計もあります。

1991年から、2021年の人口減少では、教育の質と現実の労働市場が乖離(高学歴でも職がない)によって、優秀な人材は卒業と同時に国外に進学・就職する傾向が強まりました。

 

高学歴者・専門職人材が「将来性のない母国」を見限り、流出し、「教育は脱出の手段」と化し、国内に人材が定着しない悪循環になりました。

 

遠藤誉氏は、「土日の韓国通い」による裏切りによって、韓国への日本の半導体技術不正流出が、1990年代初期からあったといいます。

 

遠藤誉氏は、ある技術者の事例をあげています。

その人は元東芝の社員で、非常に高度な半導体技術の持ち主だった。しかし半導体部門が次々に閉鎖され、上級技術者もリストラの対象となって、すでに「もしもし」と声がかかるようになっていた。解雇は時間の問題だった。そういった人たちのリストを韓国は手にしていた。そこで水面下でこっそりと近づき、甘い誘いを始めたのだ。

 金曜日の夜になると東京からソウルに飛び、土曜と日曜日の2日間をかけて、たっぷりとその半導体技術者が持っている技術をサムスン電子に授ける。日曜日の最終フライトで東京に戻り、月曜日の朝には何食わぬ顔をして出社する。

 

 土日の2日間だけで、東芝における月収分相当の謝礼を現金で支給してくれた。領収書なしだ。

 

「行かないはずがないだろう」と、その人は言った。

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<遠藤誉が斬る>韓国への日本技術不正流出――90年代初期からあった「土日の韓国通い」による裏切り 2014/03/17 RedChina

https://www.recordchina.co.jp/b85013-s0-c60-d0053.html

 

日本の半導体はなぜ沈んでしまったのか?2018/12/24 遠藤誉

https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/5a17047a06205818c82f75f4d10f7572b0d46978

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この技術者の行動を「裏切り」や「不正」と批判することは可能です。

 

しかし、<半導体部門が次々に閉鎖され、上級技術者もリストラの対象となって、すでに「もしもし」と声がかかるようになっていた>は、ウクライナの例でいえば、「高学歴でも職がない」に相当します。その場合には、<高学歴者・専門職人材が「将来性のない母国」を見限り、流出>が起きます。

 

最近では、日本の大学院を卒業したAI技術者が、GAFAMに就職しています。これは、給与が高いからという説明がなされることが多いです。しかし、高度なAI技術をもっていても、教育の質と現実の労働市場が乖離して国内には、技術を活かすポストがないと解釈することも可能です。

 

半導体技術やAI技術は、技術の陳腐化が速いので、最新技術を身に着けた段階で、出来るだけ速く、技術への教育投資を回収しないと、赤字になります。年功型雇用は、ハイリスク・ローリターンになります。

 

高度技術人材についてみれば、日本は、人材流出の止まらない破綻国家になっています。

 

2030年に、インドのAI産業の規模が拡大すれば、日本からインドへの高度人材流出が起きると予想できます。