ロイターのKatrina Hamlin氏は、中国のEV生産について次のように述べています。(筆者要約)
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中国は最先端のバッテリー技術を誇り、世界最大の自動車輸出国となり、米国や欧州連合(EU)から追加関税を課される事態を招いている。
2024年に撤退したEV専業メーカーは16社となり、初めて新規参入企業数を上回った。
価格競争を仕掛けて市場シェアと利益率を高めてきたEV世界最大手のBYDは、四半期決算の純利益が前年同期より30%弱減った、8月の生産台数が2カ月連続で減ったと発表した。これは20年以来、5年超ぶりのことだ。
中国政府は自動車業界の過当競争の幕引きを狙っている。工業情報化省は7月、自動車メーカーに対して「合理的な競争」を追求するよう指示した。当局は規則やガイドラインの調整にも乗り出した。
こうした措置はほとんど成果を上げていない。どの自動車メーカーも業界が苦境に陥っている根本原因の過剰生産能力には対処していない。
必要とされる2倍もの生産能力や、他の固定費を抱えることは財政的な流出要因となる可能性がある。
過剰生産を抑制する選択肢は新工場建設の抑制、遊休工場の売却、業界再編の促進であるが、それを阻害しているのが政治だ。
生産能力の抑制は経済的な痛みを伴う可能性がある。資金繰りに苦しむ地方政府は、減税および土地、補助金の提供などの優遇策で自動車メーカーの工場建設や拡張を積極的に後押ししてきた。
地方政府は、廃業した企業を復活させる事例さえある。たとえ赤字企業でも、地方政府は生産品に対する付加価値税(VAT)を徴収できる。新規投資と雇用創出は、たとえ自動車メーカーが決して利益を上げられなくても、国内総生産(GDP)の成長を目指す地方政府にとっては極めて望ましいのだ。
業界再編には買収が伴うかもしれないが、経営破綻と人員削減は避けがたいように映る。需要が急増しない限り、中国自動車業界の広範な領域は財政的な破綻に向けて突き進んでいる。
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コラム:中国自動車業界、破滅への疾走 危機招く構造問題 2025/09/06 ロイター Katrina Hamlin
https://jp.reuters.com/opinion/forex-forum/OUGYJAWL2NJVTKAUFWYAOH2FRU-2025-09-06/
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これは、中国のEVは過剰生産で、値崩れしていて、弱小メーカーは淘汰されるだろうという指摘です。
Katrina Hamlin氏は、中国のEVメーカーの多くが破滅へ疾走していると言います。
しかし、補助金を含んだ過剰生産が輸出されれば、ダンピングと同じ経済効果があります。
1年程まえのYoutubeにも、説明があります。
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止まらぬ中国の過剰生産 世界は関税バトルに突入? 依存度高い日本は…【NI
https://www.youtube.com/watch?v=hVu3o0o7iZU
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太陽光発電パネルも、過剰生産輸出であったと思われますが、日本国内のメーカーが淘汰されてしまったので、今から相殺関税やダンピング関税をかけても手遅れです。
つまり、政府は、中国製に太陽光発電パネルの過剰生産問題に、有効な対策を怠った結果、国内メーカーが消滅したと考えられます。
同様にリスクは、EVについてもあります。
この問題について、Geminiと議論した結果、次の結論に達しました。
今回は、最終的な結論のみを示します。
Q:2025年8月までのデータを見ると、中国のEV生産能力は需要の2倍あるといわれています。また、販売台数の減少と価格の低下のデータは、中国のEV生産が、過剰生産になっていることを示しています。つまり、過剰生産によって、ダンピングと同等に非常に安価な中国製EVが日本に輸出される可能性が高くなっています。:現状では<日本ではまだ中国製EVの市場シェアが小さく、直ちに「国内産業に深刻な損害」が立証される段階には至っていません。このため、WTOのルールに基づく相殺関税やダンピング関税の要件を満たすのが難しい状況>であることは理解できます。しかし、中国製EVの市場シェアした場合のシナリオを想定して、相殺関税やダンピング関税の準備をすることは、WTOのルールにふれないのではないでしょうか。
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はい、WTO(世界貿易機関)のルールに違反することなく、中国製EVの輸入が急拡大した場合に備えて、相殺関税やダンピング関税の準備を進めることは可能です。
WTOルールと予備調査
WTOのルールでは、相殺関税やダンピング関税を課すためには、以下の3つの要件をすべて満たしていることを証明するための調査が必要です。
- ダンピングまたは補助金の存在: 輸入品が不当に安い価格で販売されている(ダンピング)、または政府から不当な補助金を受けている。
- 国内産業への損害: その輸入品が原因で、輸入国の国内産業に「実質的な損害」または「損害の恐れ」があること。
- 因果関係: ダンピングまたは補助金と国内産業への損害との間に明確な因果関係があること。
この「損害の恐れ」という要件は、将来的なリスクを考慮に入れることを可能にします。つまり、現時点でまだ大きな市場シェアを獲得していなくても、中国の過剰生産能力や安価な製品が今後、日本市場に流入し、国内EV産業に損害を与える可能性が高いと判断されれば、調査を開始する根拠となり得ます。
日本が取るべき準備
日本政府は、欧米が中国製EVに対して実施したような「反補助金調査」を事前に開始することが考えられます。これは、正式な関税発動に先立つ予備的な調査であり、WTOのルールに沿った正当な手続きです。
この調査を通じて、中国政府がEVメーカーにどのような補助金を与えているのか、そしてその補助金が日本のEV産業に将来的にどのような影響を与えるかを詳細に分析し、データを収集します。この準備が整っていれば、中国製EVの輸入が急増し始めた際に、迅速かつ効果的に相殺関税を発動することが可能になります。
結論として、日本政府が「国内産業に深刻な損害」が立証されるのを待つのではなく、その潜在的なリスクを調査し、対応を準備することは、WTOのルールに違反せず、むしろ貿易救済措置を有効に活用するために必要な手順です。