1)TICADは有効か
TICAD9は次の概要です。
<
石破首相は21日、横浜市で開催中の「第9回アフリカ開発会議」(TICAD9)で、日本とアフリカの経済連携を強化するため、産学官による検討委員会を設置すると表明した。アフリカ諸国を対象に、今後3年間で30万人の人材育成を実施し、経済の多角化を支援する方針も打ち出した。
人材育成に関しては、首相は「AI(人工知能)を含むデジタル関連産業など新しい分野の人材育成は、成長を加速させる土台の一つとなる」と指摘した。東大と国際協力機構(JICA)はアフリカの各大学と連携し、今後3年間で3万人のAI人材を育成し、アフリカでの起業や現地企業での雇用につなげることを目指す。
>
<<
日本とアフリカの経済連携強化、産学官による検討委設置を石破首相表明…3年間で人材育成30万人 2025/08/22 読売新聞
https://news.yahoo.co.jp/articles/bf10d6c02851666d051336785c789fbf5c955b07
>>
前回、エンジニア養成の面で、TCARD9は不適切であると指摘しました。
筆者は、その時に、日本が、経済・技術先進国であるというロールモデルは、破綻していると言いました。
遠藤誉氏が、数字を出しているので、数字を検討してみます。
<<
アフリカ開発「日中米露比較」を通した評価表 日本はなぜ対アフリカ交易が成長しないのか 2025/08/22 中国グローバル問題研究所 遠藤誉
>>
Copilotに次のように聞きました。
Q:日本、アメリカ、中国、ロシアの対アフリカ貿易額を教えてください。
<
こちらが2024年時点での、日本・アメリカ・中国・ロシアの対アフリカ貿易額(輸出入合計)の比較です:
|
国・地域 |
貿易額(2024年) |
世界全体に占める割合 |
|---|---|---|
|
🇨🇳 中国 |
約2,121億ドル |
約15.7% |
|
🇮🇳 インド |
約699億ドル |
約5.2% |
|
🇺🇸 アメリカ |
約624億ドル |
約4.6% |
|
🇯🇵 日本 |
約189億ドル |
約1.4% |
|
🇷🇺 ロシア |
約159億ドル |
約1.2% |
※アフリカ全体の貿易総額は約13,531億ドル
>
なぜか、依頼しないインドも入っています。
遠藤誉氏のデータと並べてみます。
2024年、日米中露の対アフリカ貿易額(億ドル)
|
国・地域 |
貿易額(2024年) Copilot |
貿易額(2024年) 遠藤 |
|---|---|---|
|
🇨🇳 中国 |
2121 |
2957 |
|
🇮🇳 インド |
699 |
|
|
🇺🇸 アメリカ |
624 |
716 |
|
🇯🇵 日本 |
189 |
177 |
|
🇷🇺 ロシア |
159 |
481 |
ロシアの評価は大きく異なりますが、全体としては、同じ傾向です。
「日中米露の対アフリカ貿易額推移」を遠藤氏のデータではなく、Copiotの結果で表示します。
Q:日中米露の対アフリカ貿易額の推移を教えてください。
<
対アフリカ貿易額推移(1990〜2025年・5年ごと/単位:億ドル)
|
年 |
🇨🇳 中国 |
🇺🇸 アメリカ |
🇯🇵 日本 |
🇷🇺 ロシア |
|---|---|---|---|---|
|
1990 |
約60 |
約100 |
約80 |
約50(旧ソ連含む) |
|
1995 |
約80 |
約110 |
約90 |
約55 |
|
2000 |
約100 |
約120 |
約100 |
約60 |
|
2005 |
約400 |
約700 |
約150 |
約80 |
|
2010 |
約1,270 |
約850 |
約200 |
約100 |
|
2015 |
約1,790 |
約620 |
約180 |
約120 |
|
2020 |
約1,760 |
約560 |
約170 |
約140 |
|
2025 |
約2,426(推定) |
約640(推定) |
約190(推定) |
約193(推定) |

>
グラフのタイトルと軸の名称が表示されていませんが、傾向はよくわかります。
トッド氏は、「西洋の敗北」のなかで、2001年の中国のWTO参加が、世界のグローバル化の動きを決定づけたといいます。
TICADは、1993年に提唱されています。図をみれば、TICADが機能した時期は、2000年までで、2005年以降は、中国の影響が強くなって、機能不全になっていることがわかります。
要するに、アフリカ諸国は、日本には、技術とお金がない事を理解しています。
トッド氏は、ヨーロッパの「ヨーロッパの社会と技術は優れている」と「ヨーロッパの民主主義は優れている」ことを前提とした、ヨーロッパの外交は破綻しているといいます。
この言葉は、日本にもあてはまると言えます。
2)追記
TICAD8(2022年)は3年間で官民総額300億ドル規模(約4兆円)の資金を投入することを決めました。
TICAD9では、官民投資の目標額は示していないようです。
中国のアフリカに対する2024年の投資額は、約327億ドル(建設契約約217億ドル+新規直接投資約110億ドル)です。
中国のアフリカに対する2024年前半の投資額は、約200億ドル(建設契約約152億ドル+新規直接投資約48億ドル)です。
中国のアフリカに対する2025年前半の投資額は、約390億ドル(建設契約約305億ドル+新規直接投資約85億ドル)です。
次の毎日新聞の記事では、2025年前半は、前年同期の5倍になっていますが、数字が合いません。
<
中国経済の減速で陰りも見えていた巨大経済圏構想「一帯一路」が今年に入って反転し、勢いを取り戻している。研究機関の報告書は2025年上半期の新規投資及び建設契約の総額が1240億ドル(約18兆4000億円)で過去最大規模の水準に達したと分析した。
オーストラリアのグリフィス大と中国の復旦大の研究機関が7月に発表した報告書によると、25年上半期の一帯一路関連の投資規模は24年の1年間分(1220億ドル)を既に上回った。
地域別に見ると、首位はアフリカが390億ドル(約5兆8000億円)で前年同期の5倍に急拡大した。200億ドル(約3兆円)規模のナイジェリアのガス開発プロジェクトなど大規模案件が押し上げた形だ。
着実に伸びているのはエネルギーや金属・鉱物の資源関連で、全体の6割近くを占めた。米国に対抗し、重要資源の供給網を強化するためとみられる。
また、テクノロジー関連が成長分野となっており、太陽光や水素などグリーンエネルギー技術に加え、電気自動車(EV)、電池のような製造業の投資も伸びている。これらは、停滞する国内経済の新たなけん引役として中国政府が期待する産業だ。
一方、これまで一帯一路の代名詞となってきた交通インフラは全体の約7%の規模にとどまり、その割合は、ピークだった18年の28%と比べて大きく縮小した。
>
<<
中国「一帯一路」に再び勢い 交通より資源へ、習指導部の戦略 2025/08/24 毎日新聞
https://news.yahoo.co.jp/articles/4ee37d69769eb56674f605183e9f1eb590e2cf35
>>
中国のアフリカに対する2024年の投資額は、約12.4億ドル(建設契約1億ドル+新規直接投資11.4億ドル)です。
建設契約のデータは非公表ですが、推定1〜2億ドル未満です。
日本のアフリカに対する2025年前半の投資額は、約15億ドル(建設契約約2億ドル+新規直接投資約13億ドル)です。
2025年前半を基準にすれば、簡単に言えば、建設契約は、中国の0.7%、新規直接投資は、中国の15%、総額は中国の3.8%です。
新規直接投資は民間中心ですから。政府の関与は不要になります。