1)トランプ氏とゼレンスキー氏の会談
トランプ氏とゼレンスキー氏の会談の内容が明らかになりました。
要点を箇条書きに整理しておきます。
<
P1:ロシアとウクライナの戦況は、どちらが有利か
トランプ氏:
それは言いたくない。私はここに…これは私の戦争ではない。これはジョー・バイデン前大統領の戦争だ。彼は現在のこの事態に大きく関与し、我々はこれを終わらせたいと思っている。全ての人にとっていい形で終わらせたい。ウクライナの人たちは信じられないほど苦しみを味わってきた。
トランプ氏:
まず最初に言いたいのは、今は何も提供していないということだ。武器を売っている。以前、バイデン政権下では3000億ドルをはるかに超える金額だったと思う。彼は腐敗した政治家で、賢い人ではなかった。率直に言って、もし(2020年の大統領)選挙で正しい結果が出ていれば、もし私が大統領だったら、この戦争は決して起こらなかった。そして彼はとても喜んでいただろう。
ゼレンスキー氏:
まず、我々は今、アメリカから武器を購入することができ、この計画と機会に感謝している。費用を負担してくれるヨーロッパにも感謝している。また、NATOプログラム、資金を調達できるプログラムがいくつかある。これらは戦争や防衛とは別。これは、我が国の軍隊を強化し、ウクライナ軍を再武装させるための「安全の保証」の一部にもなる。これは非常に重要な問題で、例えば防空システムなど、再武装にどれだけの資金が必要かによる。
>
<<
【全訳】トランプ大統領とゼレンスキー大統領のやりとり全文 ロシア含む3者会談への言及も…アメリカ・ウクライナ首脳会談 2025/08/19 FNN
https://news.yahoo.co.jp/articles/7b2e4a522db8bb6ad288f06f9a9fcf4a27b37d19?page=1
>>
P1について、トランプ氏はあえて言いませんでしたが、ロシア有利です。
マスコミは、「どちらが有利か」と聞いていますが、聞くこと自体が、ファクトを無視しています。
Frobsは、ロシアの人口が減少しているといいますが、ウクライナの比ではありません。
<<
減り続けるロシアの人口、極めて深刻な状況に 国家統計局は統計の公表を中止 2025/08/20 Frobs
https://news.yahoo.co.jp/articles/f694f97e3ce98a2886d225ee56d0ddb0ebc76a6e
>>
マスコミは、ファクトを無視して、「ロシアは弱い、ロシアは負ける」という主張を繰りかえしています。
P2:アメリカはウクライナから手を引いています。アメリカの活動は、ヨーロッパの武器購入に応じているだけです。
2)トランプ大統領とゼレンスキー大統領とヨーロッパ首脳会談
2-1)会談以前
会談前に、マクロン大統領の発言が伝わっています。
<
マクロン氏は17日、米首都ワシントンで開催される米ウクライナ首脳会談を前に、ウォロディミル・ゼレンスキー大統領を含む欧州の指導者らと電話会談を行った。
電話会談後にマクロン氏は、欧州の指導者たちはドナルド・トランプ米大統領に対してウクライナの安全保障をどこまで支持するのかをたずねる予定だと述べた。
「我々の意志は、ヨーロッパとウクライナの間で統一戦線を示すことだ」と述べた。
ウクライナの領土についてウクライナ抜きで議論することができないのと同様に、「ヨーロッパの安全保障についても我々抜きで議論することはできない」とし、欧州の指導者は今後もウクライナ危機に関する会合に参加すべきだとの認識を示した。
>
<<
欧州とウクライナは共同戦線 マクロン氏 2025/08/18 AFP
https://www.afpbb.com/articles/-/3593699?cx_part=related_yahoo
>>
これは、EUは、ウクライナをNATO参加に準ずる扱いをすると読めます。
トッド氏の分析では、NATOは、ロシアという外敵がなければ、分解してしまうので、共通の敵を求めていることになります。
NATO軍のウクライナへの派遣は、非エリート層の反対で実現が出来ません。
ヨーロッパは、引き続き、アメリカの武器を購入して、ウクライナに送り続けるのでしょうか。ウクライナの人口が減少しているので、この方法には限界がきています。
2-3)会談
会談の一部を引用します。
<
アラスカでの(米露)首脳会談は、困難ではあっても、平和は手の届くところにあるという私の信念を強固なものにした。プーチン大統領が、ロシアが、ウクライナの「安全の保証」を受け入れることに同意したことは、非常に重要な一歩だと思う。これは我々が検討すべき重要な点の一つであり、このテーブルでも誰が何をするのかといった点について検討していくつもりだ。基本的に私は、ウクライナに対する将来のいかなる侵略も抑止できる合意を、我々が団結して達成できると楽観的だ。私は実際には侵略は起こらないと考えている。むしろ、その認識は大げさに評価されているというか、かなり過大に評価されていると思うが、いずれ明らかになるだろう。
ヨーロッパ諸国が多くの負担をすることになるが、我々は彼らを支援し、非常に安全な状態にする。また、「領土交換」の可能性についても議論する必要がある。現在の戦線、戦闘地帯…戦線はかなり明白でとても悲しいが…それをよくみて考慮し、プーチン大統領と交渉しなければならない。
また、ウクライナ大統領とも先ほどみなさんも会ったと思うが、できるだけ早く、3者会談の実現を目指す。あなた(ゼレンスキー氏)とプーチン大統領は、何らかの解決策を見つけられると感じている。
>
<<
【全訳】トランプ大統領とゼレンスキー大統領やヨーロッパ首脳らも交えた会談のやりとり全文 2025/08/20 FNN
https://www.fnn.jp/articles/-/919197
>>
ポイントは、ウクライナの「安全の保証」です。
アメリカは、資金面では手を引いています。
また、バイデン氏が副大統領だった時代を含めて、アメリカによるウクライナの「安全の保証」は、空手形でした。
したがって、アメリカが、ウクライナの「安全の保証」を担保することはありません。
残された方法は、ヨーロッパが、NATO抜きで、ウクライナの「安全の保証」をするか、ロシアが提案するウクライナの「安全の保証」しかありません。
トランプ氏は、「現在の戦線、戦闘地帯…戦線はかなり明白でとても悲しいが…それをよくみて考慮し、プーチン大統領と交渉しなければならない」といいます。
これは、ウクライナは、NATOに加盟することはないというプーチン氏の要求を呑むことをさしています。
結局、ヨーロッパ首脳は何もいっていません。逆にいえば、この会談の趣旨は、「ウクライナはNATOに加盟することはない」ことを、ヨーロッパ首脳に確認したのではないでしょうか。
この条件がなければ、プーチン氏は、3者会談には応じません。
プーチン氏は、繰り返し、ウクライナのNATOに加盟リスクが高まったことが、ウクライナ戦争の原因であると主張しています。
もしも、ヨーロッパ首脳が、「ウクライナはNATOに加盟することはない」を確認したのであれば、会談前のマクロン氏の発言は、腰砕けになっています。
トッド氏の分析では、軍事力でウクライナは、ロシアに勝てず、ウクライナ戦争は、ロシアの勝利または、ロシア主導の和平案への収束で終わります。
次のステップは、制御不能な、NATOとEUの解体が進むことになります。