トッド氏の正義論(4)

1)アンカレッジの首脳会談

 

アンカレッジの首脳会談が終わりました。

 

「西洋の敗北」の主張は、変更が必要になったでしょうか。

 

2)会談の報道

 

会談の報道を引用します。

トランプ米大統領は15日、米アラスカ州アンカレジで行ったロシアのプーチン大統領との会談で「大きな進展」があったとの認識を示した。

 

会談後の共同記者会見で「われわれが合意した点はたくさんある。いくつかの大きな問題についてはそこまで至らなかったが、一定の前進はあった」などと語った。

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トランプ米大統領プーチン氏との会談で「大きな進展」2025/08/16 ロイター 

https://jp.reuters.com/world/ukraine/N6FLMB2LHRNVBOO4YKZMIFHVGQ-2025-08-15/

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ロシアのプーチン大統領は15日、トランプ米大統領との共同会見で、良好で直接的な関係を築いたと述べた。プーチン氏は、ウクライナ紛争を終わらせることに対し真摯な関心があると語った。

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プーチン大統領ウクライナ紛争終結に「真摯な関心」 米大統領と会談 2025/08/15 ロイター

https://jp.reuters.com/world/us/BTCZRSBZGBP47DE2QP7FFMJCKU-2025-08-15/

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ロシア大統領府は、プーチン大統領とトランプ米大統領の会談が終了したと発表した。

プーチン氏の特使、ドミトリエフ・ロシア直接投資基金(RDIF)総裁はロシアの国営テレビで、会談は「驚くほど」順調だったと語った。

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米ロ首脳会談終了、ロシア大統領府が発表 2025/08/16 ロイター

https://jp.reuters.com/world/ukraine/IUHB6NQ6X5PWZNIM2YDFI7GUMI-2025-08-15/

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ロシアのプーチン大統領は、トランプ米大統領との次の会談はモスクワで行われる可能性があると述べた。

アラスカ州で行った会談後、プーチン氏は「次はモスクワで」と英語でトランプ氏に呼びかけた。

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「次はモスクワで」とプーチン氏、会談後にトランプ氏に呼びかけ 2025/08/16 ロイター

https://jp.reuters.com/world/ukraine/4BRNJ7ITIFNGHOD42MTGGGC5XA-2025-08-15/

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ロシアのプーチン大統領は15日、米石油大手エクソンモービル(XOM.N), opens new tabを含む外国企業がロシア極東の石油・天然ガス開発事業「サハリン1」の権益を回復することを可能にする大統領令に署名した。

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プーチン氏、米エクソン含む外国勢の「サハリン1」権益回復を許可 大統領令署名 2025/08/16 ロイター

https://jp.reuters.com/markets/commodities/HQJ5THZRDVOKLNVAOGS5RECXOA-2025-08-15/

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会談後の共同記者会見が、ばらばらに行われています。合意文書ができなかったためと思われます。

 

会談は、パラグラフの論理に従っておこなわれたはずです。

 

3)考察

 

パラグラフの論理は、次の構造をしています。

 

ファクト(データ)+推論=推論結果

 

この公式をアメリカとロシアに当てはめれば、次のようになります。

 

ファクト(アメリカ)+推論(アメリカ)=>推論結果(アメリカ)

 

ファクト(ロシア)+推論(ロシア)=>推論結果(ロシア)

 

この構造では、「推論結果(アメリカ)=推論結果(ロシア)」が停戦の条件になります。

 

そのためには、ファクトと推論の違いを点検して間違いを修正する必要があります。

 

今回の会談では、ファクト(アメリカ)とファクト(ロシア)の付合わせが行われたと思われます。

 

例えば、ドンパスは。ウクライナか、ロシアかというファクトについては、バックデータを元に、事実認識の確認が行われます。このとき、共通の認識が得られなかったファクトについては、バックデータを追加して、次の会談のテーマに残します。

 

<ドミトリエフ・ロシア直接投資基金(RDIF)総裁はロシアの国営テレビで、会談は「驚くほど」順調だった>と語ったことは、ファクトの認識の合意ができた事項が多かったという意味です。

 

プーチン大統領、米石油大手エクソンモービル(XOM.N), opens new tabを含む外国企業がロシア極東の石油・天然ガス開発事業「サハリン1」の権益を回復することを可能にする大統領令に署名>しました。

 

このニュースから想定されるファクトの認識の合意は以下です。

 

C1:経済制裁には、期待したプラス効果がなく、逆にマイナスの効果が多いので、緩和すべきである。

 

C2:関税政策には、ほどほどの効果以上は期待できない。

 

トランプ関税政策の要点は、以下です。

 

P1:貿易赤字の主体は、中国、カナダ、メキシコです。この3者については、まだ、合意が出来ていません。

 

カナダのカーニー首相は2025年9月18日にメキシコを訪問し、シェインバウム大統領と米関税措置を巡る両国間の関係強化について協議する。関係筋が8月15日、明らかにした。

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カナダ首相、9月にメキシコ訪問 関税巡り関係強化へ=関係筋 2025/08/16 ロイター

https://jp.reuters.com/world/us/CB36ROIUB5P3ZPM23CF6KW25CY-2025-08-15/

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カナダは、メキシコと協調を図っています。

 

中国を含むBRICKSは、協調を図っています。

 

トランプ関税を強化すれば、アメリカ包囲網ができてしまいます。

 

第2は、ドルの価値をどこまで落とすべきかです。

 

ドルの価値が落ちれば、資金逃避がおきます。

 

貿易赤字は減少するかもしれませんが、アメリカ経済は、落ち込みます。

 

資産運用する人にとっては、安全な通貨が関心事です。

 

トッド氏は、リーマンショックで、ユーロが安全通貨でないことが露呈したといいます。

 

ドイツ経済は安定していますが、マルクはなくなったので、ヨーロッパには、安全通貨はありません。

 

円は、大規模金融緩和によって、安全通貨でなくなりました。

 

反事実で考えれば、2013年に、日本が次の政策をしていた場合には、日本経済が成長していたと思われます。

 

R1:適切な金利政策

 

R2:FDIを拡大する海外企業の導入

 

R2:年功型雇用を廃止した高度人材の労働市場の確立

 

2025年時点で、日本の企業と労働市場が解放され、円が安全通貨であれば、資金流入が起きて、円は、基軸通貨に近づいていたはずです。

 

トッド氏は、人間の行動は、宗教と家族制度の影響を強くうけると考えています。

 

海外の中央銀行が金融緩和政策に走ったときに、その政策をコピーしても、「宗教と家族制度が異なる日本では。同じことが起きるはずはない」と考えます。

 

大規模金融緩和政策は、最初から失敗することがわかっていたことになります。

 

4)弁護士的メンタリティ

 

トッド氏は、「西洋の敗北」(p.304)で、次のように言います。

アメリカ側で戦争を指導しているのは、弁護士的メンタリティなのである。だからこそウクライナで砲弾が不足しているのだ。

 

アンカレッジ会談に合わせて、弁護士的メンタリティが活動しています。

 

一部を引用します。

トランプ米大統領はこのほど、対ロシア制裁の発動期限を突如として前倒しし、ロシアの原油輸出についてこれまでで最も厳しい制裁の早急導入をちらつかせた。市場はこれまでのところトランプ氏の「脅し」を本気とは受け取っていない。しかし制裁の規模は大きく、投資家はこの重大なテールリスクを織り込み始める必要があるかもしれない。

 

28日にスコットランドでスターマー英首相と並んで会見したトランプ氏は、ロシアが10-12日以内にウクライナとの停戦に合意しなければ追加制裁を科すと表明。14日に示した50日以内の猶予期間を大幅に短縮した。

追加制裁はロシアからの輸入品に100%の関税をかけ、ロシア産原油などを購入する第三国に「二次制裁」を科すもので、ロシア産原油の最大の顧客はインドと中国だ。

 

国際エネルギー機関(IEA)によると、ロシアの原油輸出は日量468万バレルで、これは世界需要の約4.5%に相当する。石油製品も日量250万バレルを輸出しており、米国の追加制裁が発動されれば世界の石油供給は混乱に陥るだろう。

 

トランプ氏が今回の「脅し」を本当に実行するかどうかは誰にも分からない。

(中略)

 

<鈍器のような手段>

 

次の疑問は「比較的実績の少ない、鈍器のような金融兵器」である二次関税が効果的かどうかという点だが、答えはおそらく「イエス」だ。

 

ロシアの主要顧客の1つであるインドは6月のロシア産原油の輸入が日量150万バレルで、海上輸送分では最大の輸入国となった。しかしインドは現在、米国との間で緊迫した貿易協議を進めており、政府は対米関係の悪化を望んでいない。そのため、間違いなくより高価になる、別のエネルギー源へとシフトし、ロシアを見限る公算が大きい。

 

一方、中国は6月にパイプラインと海上輸送を通じてロシア産原油を日量約200万バレル輸入した。既にいくつもの米関税に直面し、ロシアとの関係を戦略的と見なしていることから、購買パターンを変える可能性は低い。

 

だが、たとえ中国がロシア産原油の購入を続けても、インドがロシア産の購入を停止すればロシアの財政は打撃を受ける。中国がロシア産を買い叩く可能性が高いためだ。

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コラム:原油市場の「時限爆弾」、トランプ氏の対ロシア制裁期限前倒し 2025/07/30 ロイター 

https://jp.reuters.com/opinion/forex-forum/CKJCF5PUGNOWHMCNCNSDEN7RUU-2025-07-30/

 

15日に米アラスカ州プーチン氏と会談するトランプ米大統領は、ロシアの銀行や企業に対する制裁撤廃を提案し、ウクライナでの停戦を受け入れさせようとする可能性がある。しかし、米国に足並みをそろえて欧州も制裁解除に動かない限りプーチン氏が得られる見返りは大きくならないため、トランプ氏はむしろ「ムチ」に力点を置く必要があるのではないか。

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コラム:トランプ氏、ロシアに差し出す「アメ」は効き目薄いか 2025/08/14 ロイター Neil Unmack

https://jp.reuters.com/opinion/breakingviews/LVSPH3YX2FJ5RN5BHFVKIGIX3M-2025-08-14/

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米国は、ロシアのプーチン大統領ウクライナとの停戦を受け入れるのに難色を示した場合、圧力をかける選択肢として、ロシア石油大手のロスネフチとルクオイルに制裁を科すことを検討している。ブルームバーグが15日、関係筋の話として報じた。

ロイターは独自にこの報道を確認できていない。

 

米ロ首脳はこの日、米アラスカ州のアンカレッジで会談を行っている。

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米、停戦合意圧力にロスネフチとルクオイルへの制裁検討=報道 2025/08/16 ロイター

https://jp.reuters.com/markets/commodities/RFG4MBYCCNMVNIVATZJUCVVOBI-2025-08-15/

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5)アンカレッジ会談の結論

 

以上のように、アンカレッジ会談の結果をうけて、「西洋の敗北」に、修正すべき点はありません。

 

トッド氏は、経済的利益は、イデオロギーに優先すると主張します。

 

ウクライナ戦争の停戦を、イデオロギーで判断することはできません。

 

現在、EUは、イデオロギー経済的利益に優先させて、自ら、経済破壊をすすめています。これは、「西洋の敗北」の一部です。

 

おそらく、「経済的利益が、イデオロギーに優先する」を認めることは、「西洋の敗北」を認めることになります。

EUは、敗北を認めたくないと思われます。

 

現在、EUにあるのは、エリート主義ではなく、ポピュリズム主義です。

 

EUは、既に、失われた民主主義というイデオロギー固執しています。

 

イデオロギー経済的利益に優先させて、経済破壊をすすめれば、西欧は、先進国から脱落します。

 

ドイツは残ると思われますが、イギリスとフランスは、持たないと思われます。

 

ロシアのプーチン大統領は共同記者会見で、ウクライナ和平プロセスの進展をウクライナや欧州が妨げないことを期待していると述べた。

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和平プロセス妨害なしを期待とプーチン氏 2025/08/16 KYODO

https://news.yahoo.co.jp/articles/9dafa2b9254e7bcf30ae259b92d6c6b935998c0c

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このことから、トランプ大統領が弁護士的メンタリティを持たずに、交渉していることがわかります。

 

6)追記

 

幾つかの情報が追加されています。

 

トッド氏は、イベント毎のコメントは発していません。

 

トッド氏が参考にしたジョン・ ミアシャイマーは、イベント毎に、情報を発信していますので、引用します。

 

ロシアに、大ロシアを復活させる意図があるかが論点になっていますが、トッド氏とミアシャイマー氏は、大ロシア復活はあり得ないという点で意見が一致しています。

 

2つの記事は、専門家のディベートになっています。長くなるので、ここでは、ミアシャイマー氏の発言のみを引用しています。ディベートでは、ファクトの見解について、意見の一致と相違が点検されています。

 

日本のマスコミの素人のコメンテーターの議論とは、レベルが違います。

 

日本のマスコミの議論は、段落の論理(共感の論理)で視聴率をあげることを目的としていると思われます。



6-1)Democracy Now

 

Democracy Nowの記事の一部です。

 

改変はしてませんが、全文ではありません。

 

コピーライトの説明は、以下です。

 

このプログラムのオリジナルコンテンツは、クリエイティブ・コモンズ 表示-非営利-改変禁止 3.0 米国ライセンスに基づきます。

 

ジョン・ ミアシャイマー:ああ、これは明らかに代理戦争であり、アメリカとロシアがほぼ戦争状態にあることは疑いようがありません。だからこそ、プーチン大統領トランプ大統領が会談し、合意の大まかな枠組みを詰めようとするのは理にかなっているのです。しかし問題は、このゲームには他に二つのプレーヤー、ウクライナとヨーロッパがいるということです。つまり、フアン、たとえプーチン大統領トランプ大統領が何らかの合意に達したとしても、合意の枠組みを定めるには、ウクライナとヨーロッパ諸国にその合意を説明しなければなりません。そして、もしトランプ大統領がロシアに便宜を図るために必要な譲歩をしたとしても、問題はウクライナ、ヨーロッパ、そして実のところアメリカの国家安全保障体制の大部分が、プーチン大統領がまとめた合意を受け入れるはずがないということです。だからこそ、この合意は最終的に戦場で決着することになるのです。

 

ジョン・ ミアシャイマー:エイミー、私がこの戦争の原因について説明する前に、戦争の原因についてどう考えるかが、実際に紛争を解決する見通しについてどう考えるかに大きく影響するということを理解することが非常に重要だと思います。

 

さて、マットは基本的に、戦争の主因はプーチン大統領の壮大な野望にあると主張しています。彼はソ連の復活、大ロシアの創設などを望んでおり、ウクライナを征服してロシアに併合することに興味を持っていた、と。しかし、私はそうは思いません。そのような主張を裏付ける証拠はほとんどないと考えています。

 

そして、この事態を引き起こしたのはNATOウクライナへの拡大であったことは、実に明白だと思います。実際、圧倒的な証拠があると思います。プーチン大統領は、2008年4月にNATOウクライナNATO加盟を初めて発表した際、これを存亡の危機と捉え、決して許さないと明言しました。そして、2022年2月24日の侵攻は、主にNATOの拡大への恐怖によって引き起こされたのです。

 

つまり、プーチン大統領NATOの拡大、そしてNATO加盟国のウクライナを、実存的脅威と見ているということです。そして、それを実存的脅威と見ているからこそ、妥協するつもりはないのです。多くの人は、アラスカでトランプ大統領ができることは、領土交換や停戦などといった合意をまとめ、ロシア側があれこれ妥協してくれるだろうと考えています。しかし、それは違います。ロシアは最初から自らの要求を表明しており、少しも揺らぎません。彼らが揺らぎを見せないのは、NATO加盟国のウクライナを実存的脅威と見ているからです。

 

一方、私たち西側諸国はそうは考えていません。トランプ氏、つまりプーチン氏はただ攻撃的で、望みの全ては叶わなかったが、彼と何らかの合意を築けると考えていました。しかし、それは現実を正確に描写しているとは思えません。繰り返しますが、ウクライナは中立国でなければならないということを理解していただきたいと思います。ウクライナNATOに加盟できません。西側諸国がウクライナに安全保障を保証することはできません。しかし、私たちはそれを受け入れることを拒否し、ウクライナ人もそれを受け入れることを拒否しています。だからこそ、私たちは今、行き詰まりに陥っているのです。

 

エイミー・ グッドマン:まずはミアシャイマー教授にお伺いしたいのですが、先日ギャラップ社の世論調査が発表されました。ウクライナ戦争勃発から3年以上が経過した現在、勝利まで戦闘を続けることを支持するウクライナ国民の支持率は過去最低を記録しています。7月初旬に実施されたギャラップ社の最新のウクライナ世論調査では、交渉による早期終結を支持する回答が69%で、勝利まで戦闘を続けることを支持する回答は24%でした。2022年の状況に戻りましょう。ウクライナでは、4分の3にあたる73%が勝利まで戦闘を続けることに賛成しています。教授、そしてマット・ダス氏、ご回答をお願いします。

 

ジョン・ ミアシャイマーウクライナの国家体制における戦争への熱意が薄れているのは、驚くべきことではないと思います。彼らは甚大な犠牲を被っています。ロシアは戦場で勝利を収めており、ウクライナ自身も、あるいは西側諸国もウクライナの救援に協力できる見込みはありません。ですから、明らかに、ウクライナ社会の底辺層では、戦争への支持が薄れ始めているのです。

 

問題は、エリート層において、ロシアとの合意に前向きな姿勢を示す証拠が全くないことです。繰り返しますが、ロシア側はここで強硬な交渉を進めていることを理解する必要があります。本当に強硬な交渉です。ロシアが提示した条件を受け入れ、いかなる柔軟性も示さないウクライナの指導者にとって、極めて困難な状況になるでしょう。(言葉は慎重に選びますが)

 

さて、ウクライナのエリート層が期待しているのは、アメリカとヨーロッパ諸国を説得して、ウクライナの将来に向けた意味のある安全保障を保証させることです。そして、欧米諸国がウクライナを支援し続け、将来のある時点でロシアが弱体化し、ウクライナが欧米の支援を受けて、ロシアから失った領土を取り戻せるようになることを期待しています。これが彼らの大きな希望です。ですから、エリート層は我慢の限界を超えようとしています。そして、ゼレンスキー氏の発言にはまさにそれが反映されています。

 

しかし、エイミー、あなた自身に問いかけなければならないのは、ウクライナが戦場で敗北を続け、国内の支持が薄れていく中で、この戦争でウクライナはどうなるのかということです。ウクライナはいずれ崩壊するだろうと考える人もいるでしょう。歴史的証拠から見て、そうなる可能性が高いでしょう。

 

フアン・ゴンザレスミアシャイマー教授、いくつか驚くべき事実をお聞きしたいのですが。1990年代初頭にソ連が崩壊し、ウクライナが独立した当時、ウクライナの人口は5,200万人でした。ロシアとの戦争が始まる頃には、人口はすでに4,000万人にまで減少していました。そして今日、国外流出や難民の増加、そして高い死亡率と低い出生率の継続を考慮すると、現在のウクライナの人口は約2,800万人と推定されています。これは一国として驚くべき人口減少です。ウクライナソ連崩壊以来、本質的に崩壊しつつある国なのでしょうか?

 

ジョン・ ミアシャイマー:この点について2点述べさせてください。まず第一に、ウクライナの状況を説明する際に「人口統計上の死のスパイラル(demographic death spiral)」という言葉が使われることがあります。つまり、ウクライナは「人口統計上の死のスパイラル」にあるということです。この言葉について考えてみてください。まさに人口統計上の死のスパイラルです。そして、この戦争は膨大な数のウクライナ人の命を奪いました。さらに、膨大な数のウクライナ人が国を離れ、その多くは二度と戻ってこないだろうと私は推測します。つまり、人口統計の観点から見て、これは大惨事なのです。

 

エイミー・ グッドマン:時間はたったの30秒です。

 

ジョン・ ミアシャイマー:二点目は、ウクライナも最終的には機能不全の残存国家となるでしょう。これは甚大な被害をもたらすでしょう。

 

エイミー・ グッドマン: 15秒で、この事件をどう終わらせるべきだと思いますか?

 

ジョン・ ミアシャイマーウクライナはロシアに譲歩し、戦争を終わらせるためにあらゆる手段を講じるべきだと思います。彼らが戦い続けたとしても、より良い条件は得られないでしょう。

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John Mearsheimer vs. Matt Duss: A Debate on Trump-Putin Summit, Ukraine, Russia & Paths to Peace 2025/08/15 Democracy Now

https://www.democracynow.org/2025/8/15/matt_duss_john_mearsheimer_debate_ukraine

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6-2)The Singju Post

 

The Singju Postの記事の一部引用です。

 

ジョン・ミアシャイマー教授:これは主に影の芝居だと思います。プーチン大統領トランプ大統領の間でこの戦争の終結につながる合意が成立するとしたら、両者の立場はあまりにもかけ離れているため、それが可能だとは思えません。

 

ロシアは、ウクライナが断固として拒否し、欧州諸国が断固として拒否し、トランプ氏周辺の多くの人々が断固として拒否する、交渉の余地のない一連の要求を突きつけています。ですから、ロシアの要求を受け入れるという証拠を一切示していないトランプ氏が、どのようにして何らかの意味のある合意に達することができるのか、全く見通しが立ちません。つまり、ここで行われているのは、ただのシャドーボクシングの応酬だけです。全く意味がありません。

 

ジョン・ミアシャイマー教授:トランプのやり方はご存知でしょう。ある瞬間はこう言って、次の瞬間には正反対のことを言います。昨日、彼が欧州諸国に語った内容に関する報道を読めば、停戦を推進するつもりだと言っていたのに、今日は停戦ではなく、真の合意に関心があると言っています。彼は戦争を終わらせたいのです。選択肢は二つのうちどちらか一つだけです。

 

彼はある日はこう言って、次の日は違うことを言います。ですから、今回の会談に臨む彼の立場がどうなるかは誰にも分かりません。しかし、事実は、彼がロシアの主要な要求に決して同意しないということです。そして、彼がそれらの要求に同意するまで、プーチン大統領トランプ大統領の間で意味のある合意は得られないでしょう。

 

そして、それで話が終わるわけではないことを理解する必要があります。なぜなら、このゲームには二人以上のプレイヤーがいるからです。残りの二人はウクライナとヨーロッパです。たとえトランプとプーチンが合意したとしても、残りの二人は二人がまとめた合意に同意しないでしょう。

 

ジョン・ミアシャイマー教授:制裁に関しては、先ほど申し上げたように、そしてあなたの番組や他の多くの場所で多くの人が言っているように、それは意味のあるカードではありません。ところで、私たちがまだ話していないのは、ロシアが今、戦場で本格的に勝利しているという事実です。そこで起こっていることを見ると、これはプーチン大統領の立場に有利に働くだけで、明日のトランプ大統領の立場には有利に働かないのです。

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Prof. John Mearsheimer: Will Putin Outfox Trump? (Transcript)  2025/08/15 The Singju Post

https://singjupost.com/prof-john-mearsheimer-will-putin-outfox-trump-transcript/#:~:text=Read%20the%20full%20transcript%20of%20prominent%20American%20scholar,on%20%E2%80%9CWill%20Putin%20Outfox%20Trump?%E2%80%9D,%20August%2014,%202025.

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6-3)人口減少のスパイラル

 

なお、「人口統計上の死のスパイラル(demographic death spiral)」は、単に「人口減少のスパイラル」と呼ばれることもあります。

 

「The Econonaut! 」は、アメリカが、「人口減少のスパイラル」に突入しているといいます。

 

ニューヨーク・タイムズ紙は、社会保障の加入者数が昨年の同時期に比べて13%増加したと報じている。

 

今会計年度、社会保障給付の申請者はこれまでに27万6000人増加し、前年比13%増加しました。不安が原因のようです。

 

当社の追跡調査によると、社会保障への加入者数はなんと43万6000人増加しました。今週後半にグラフを公開する予定です。

 

アメリカ全土の多くの州で深刻な人口減少が起こっています。ペンシルベニア州では、ペンシルベニア州立大学が、主に地域の人口不足に起因する入学者数の減少により、州内のキャンパスを閉鎖しています。

 

Pennlive.comより:

 

ペンシルベニア州立大学が20のコモンウェルスキャンパスのうち7つを閉鎖するという衝撃的な勧告を出したのは、同大学が拠点を置くペンシルベニア州のより大きな衰退を反映しているに過ぎない。

 

ペンシルベニア州は広範囲にわたって人口減少に直面しており、特に農村部で顕著な減少が見られます。ペンシルベニア州の67郡のうち41郡で人口が大幅に減少しており、農村部では2050年までに総人口の5.8%が減少すると予測されています。一方、都市部ではわずかに増加する(4.1%増)と予測されています」と報告書は述べています。

 

入学者数の減少の影響で、かつては活気にあふれた大学町が今や不況の町となり、それに代わるものがすぐに見つかるものは何もない。

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2025年の人口動態の現実 2025/05/21 El The Econonaut! Capitan

https://econonaut.com/2025/05/21/demographic-realities-2025/

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日本は、「人口減少のスパイラル」で、アメリカとウクライナの中間にあります。

 

これは、スパイラルなので、非線形現象です。線形予測は、使えません。