1)移民に対する問い
問題を議論する場合には、問いは、サッカーのゴールポストになります。
問いのない議論は無意味です。また、問い(ゴールポスト)を動かしてはいけません。
移民問題に対する問いは、「移民を受け入れても問題が生じないか」です。
もう一つの問いは、「移民は非可逆プロセスであるか」です。
これは、簡単に言えば、いったん移民を受け入れると、返ってもらえない可能性が高いことを意味します。
高度人材には、このリスクはありません。
しかし、単純労働者には、このリスクがあります。
今まで、日本は、移民を受け入れない政策をとってきました。
欧米では、ドイツを例外として移民政策は破綻しています。
破綻している理由は以下であると思われます。
R1:単純労働者に帰国してもらうことは非常に困難です。
R2:単純労働者の毎年の新規受け入れ制限が機能しなくなりました。
R3:宗教と家族制度の違いに基づく軋轢があります。
R4:多数の外国人がいったん国内に居住すると、人道的な配慮の限界を超えてしまいます。人道的な配慮では、社会コストが膨れ上がり、耐えられません。
2)問いの所在
原則(法の支配)では日本は、外国人の単純労働者を受け入れません。
ところが、日本では、法の支配を無視した法治主義が広まっています。
外国人技能研修生という名前の単純労働者の受け入れる法律をつくれば、「日本は、外国人の単純労働者を受け入れない」という原則を無視できると考える人がいます。
これは、合法ですが、法の支配に反します。
単純労働者を受け入れれば、賃金が下がります。
たとえば、現在は、外国人の単純労働者の賃金が安いので、その仕事をする日本人がいないので、外国人労働者が必要であるという人がいます。
この主張は、因果関係を無視した間違いです。
最低賃金をあげないために、外国人単純労働者を受け入れました。
外国人単純労働者がいなければ、最低賃金があがっています。
その場合には、日本人が働いているか、DXが進んでいるはずです。
円安は、家計から、企業への所得移転を生みます。
その結果、名目上の企業の業績は過去最高を更新しています。
しかし、貿易黒字はなく、円安が内需を破壊しています。
トッド氏は、エンジニアがいない国は、経済的に滅びるといいます。
これは、1959年に、スノーが、「2つの文化と科学革命」で述べた主張です。
日本のエンジニアは、数と質が暴落しています。
つまり、お先は真っ暗です。
外国人単純労働者を受け入れれば、問題が発生します。
その対応コストは、企業ではなく、税金で対応することになります。
つまり、外国人単純労働者を受け入れれば、見かけ上は、企業業績がよくなりますが、これは、税金(家計)から、企業への所得移転になります。
「外国人単純労働者を受け入れるべきか」という議論なしに、外国人技能研修生制度によっって、外国人労働者が増加しているので、三権分立の法の支配でかんがえれば、デーィプ・ステートが暗躍しています。
3)実態

図1は、外国籍人口と技能研修生の人数を示しています。外国籍人口は1月1日の住民台帳によります。ここでは、技能研修生のデータに合わせて、2025年1月1日の人口は、2024年分にするように、1年ずらして整理しています。

図2は、外国籍人口の増分です。
2024年末時点の確定値: 法務省の「令和6年末現在における在留外国人数について」によると、技能実習の在留資格を持つ外国人は、456,595人でした。これは、前年比で52,039人増加しています。
2025年の値は、この2倍を使っています。
図2を見れば、問題の中心は、外国籍人口よりも、技能研修生人数にあることがわかります。2024年からの増加は、尋常ではありません。
3)利害関係者の発言
マスコミには、利害関係者の発言であふれています。
日本の外国籍人口の割合は、ドイツより低いので問題がないという利害関係者もいます。
この発言は、外国籍人口の割合がドイツよりはるかに低いイタリアとフランスで移民問題が生じていることから目を逸らせせています。
問題は、比率ではなく、外国籍人口規模です。
日本は、総人口が大きいので、同じ外国籍人口がても、比率でみれば、ドイツ、フランス、イタリアよりは低くなります。
外国籍人口の比率と、移民問題の間には、直接の関係はありません。
こうした発言は、問いのすり替えです。
外国籍人口の大きさが、イタリアと同じレベルになれば、同様の問題が発生する可能性があります。
在留外国人がこの15年で約1.8倍に増えたにもかかわらず、外国人の犯罪検挙人数はほぼ横ばいで推移している。在留外国人全体に占める犯罪者の割合はむしろ低下しているので、外国籍人口の増加には、問題がないと主張する人もいます。
このデータには、日本人の犯罪検挙人数はが参照されていません。犯罪検挙の基準は、かわりますので、日本人を基準にした正規化が必要になります。日本人の場合、高齢者が増えれば、アクティブでなくなるので、その影響で、犯罪検挙数が、減少すると思われます。当たり前ですが、人がいなければ、犯罪は起こせないので、人口減少は、犯罪数の減少になります。
2022年末時点で、日本に在留する外国人のうち、不法残留者(オーバーステイ)は約7万人です。そのうち、技能実習生出身者が占める割合は約半数とも言われており、約3万人〜4万人程度が技能実習制度からの離脱者と推定されています。
2022年の外国人技能研修生数は、327,624人です。
3万人は、この1割にあたります。
技能実習制度からの離脱者は犯罪に走る可能性の高いグループです。
離脱者は、安定した収入を持ちません。移民を認めない法律の下では、正規の単純労働はありませんので、犯罪に走らないと期待することは困難です。
ヴィズマーラ恵子氏は、イタリアでは、「ロマ系、移民、低所得層の女性」には、スリを生存のための手段とするメカニズムがあると説明しています。
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ロマ系、移民、低所得層の女性たちは、教育の機会も少なく、社会から見放され、犯罪グループに取り込まれていく。彼女たちにとって、スリは生存のための手段であり、同時に組織に搾取される対象でもある。
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イタリア「妊婦スリ」法改正の現実 - 制度は変わったが街角の安全は? 2025/08/10 ヴィズマーラ恵子
https://www.newsweekjapan.jp/worldvoice/vismoglie/2025/08/--.php
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技能研修生の犯罪リスクは、在留外国人の犯罪リスクより桁違いに高くなります。
技能研修生による犯罪を防止するためには、技能研修生かドロップアウトとした場合には、確実に本国に送り返すシステムが必要ですが、それがありません。
2025年8月の技能研修生は50万人を超えています。10%をハイリスクグループとすれば、5万人のハイリスクグループを抱えています。5万人を本国に返送するには、膨大なコストがかかります。そのコストは、本来は、受け入れ企業が負担すべきものです。そのコストを地方自治体に負担させることで、見かけ上の安い賃金が成り立っています。
トータルコストは、日本人の賃金をあげ、DXをすすめる方が少なく、犯罪の発生確率も低く押さえられます。
技能実習制度は破綻しています。
技能実習制度が破綻していることを隠蔽して、外国人労働者が必要であるという主張は詭弁です。
社会構造を考えれば、スリ等の軽犯罪の増加は確実に起きます。
30年かけて、確実におきる少子化と年金問題を放置してきた政府は、今度は軽犯罪の増加に向って邁進しています。
4)人余りの時代
2025年になってマイクロソフトは、10%以上社員を解雇しました。
これは、知的労働が、人余り時代に突入したことを示しています。
この社会的インパクトは、膨大ですが、まともな分析がなされていません。
AIの性能は、毎月向上していますので、1年前の性能で行った予測は、1年後には使えません。
AIが、知的労働を代替すれば、知的労働がなくなるわけではありませんが、知的労働の人余りは、不可避です。
通訳、アート、文学、法律など多くの分野で人余りが生じます。
マイクロソフトの様に、レイオフをしない企業は比較生産性の低下によって、淘汰されると思われます。
さて、残された聖域は、肉体労働です。
最近では、人型ロボットに新製品が毎月のように出ています。
2年後に人型ロボットが75%の雇用を代替するという予測もあります。
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AIどころではない……2年後に人型ロボット「爆発的普及」で75%の雇用が終了 2025/08/12 ビジネス+IT
https://news.yahoo.co.jp/articles/c5b12bc95cc00e7f30f0dc4a27f57902a8aff960
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2年は、短すぎるかもしれませんが、仮に、5年後に、人型ロボットが75%の雇用を代替する場合、外国人単純労働者は、どのように処遇するのでしょうか。
更にいえば、日本人の単純労働者は、どのように処遇するのでしょうか。
パールは、「因果推論の科学」のなかで、進化の過程で、人類は、今まで他の動物ではなかった超絶的進化をとげた。「因果推論の科学」(AIの科学)は、超絶的進化をモデル化したいといいます。
すくなくとも、部分的には、AIが、人型ロボットを開発する時代に突入しています。人型ロボットの改良が、超絶的なスピードで進む可能性があります。
5)人口データの不在
日本には、人口データがありません。
人口データを時系列で分析評価している人がいれば、AIにきけば、そのデータを引用するはずです。
ところが、日本の人口データをAIに聞いても、まともなデータが得られません。
聞くたびに、ことなったデータが紹介されます。
複数の人口関連データがある場合、比較整合をとって、調整済みのデータを作る必要があります。
日本には、そのようなデータがありません。
温暖化研究の進歩によって、世界中のデジタル植生マップが毎月更新されています。
しかし、日本の毎月の人口のデジタルマップはありません。
お盆では、人が移動します。この時期では、毎月ではなく、毎日のマップが必要になりますが、そのようなデータはありません。
少子化が問題になって長いですが、議論は、こうしたデータなしに行われてきました。
これが、今回、日本人の人口について述べなかった理由です。