1)移民問題
参政党が移民問題をテーマに取り上げて、参議院選挙で得票を伸ばしました。
それに伴って、移民政策が議論になっています。
2)問い
最初に議論の空回りを避けるために問いを整理します。
ある政策が、国民に与える影響は、所得階層、産業の違い、年齢、性別、能力によって異なります。
簡単に言えば、国民の数だけことなった問いが存在します。
現在は、コンピュータを使って、個人に対して、政策効果を説明することが可能です。
たとえば、「消費税率が変わった場合に、家計にどのような変化がおきるか」、「コメの価格が変化した場合に、家計に与える影響」を説明できます。
現時点では、この説明は不完全ですが、例えば、マイナンバーを使って納税するようになれば、前年度のデータを使って、所得と消費が前年度と同じであれば、政策があたえる経済的な影響を、各世帯に説明することができます。
支払いをスマホ決済で行い、銀行口座に紐づいた家計簿データのデータ書式(表現)の規格が決まっていれば、こうしたアプリサービスをすることは、技術的には難しくありません。
ところが、政治経済学は、この責任を放棄しています。
希望する全世帯に、経済政策の影響を説明することが、本来の政治の責任ですが、政治はこうした責任を放棄しています。
年金政策についても、プランAとプランBの違いを、各世帯ごとに説明することが可能です。
こうした正確な情報があれば、有権者は、適切な選挙投票が可能になります。
このような情報提供の責任を放棄した学者が、ポピュリズムという差別用語を使っています。
全世帯に情報を与えることが本来の問いですが、簡略化した問いをかんがえることもできます。
簡略化の方法には、複数の選択が可能ですが、例えば、次のような区分も可能です。
CL1(クラス1):企業の経営者、幹部公務員、自民党の献金グループです。
CL2:公務員と準ずる団体職員(大学を含む)、立憲民主党の支持団体です。
CL3:大企業の社員、国民民主党の支持団体です。
CL4:中小企業の社員。
CL5:非正規社員、自営業など、組織に属さない人。
CL6:年金生活者など働いていない人
農家は、CL1とCL5に属しますが、高齢化と規模拡大によって、CL5の農家はほとんどなくなりました。
日本では、補助金政策によって、オランダ病が広がりました。
補助金をうけるCL1、CL2、CL3のグループと、補助金を受け取らないCL4、CL5グループの間に、分断が起きました。中間層が消滅しました。
補助金をうけるCL1、CL2、CL3のグループは、オランダ病になって技術的な優位性を失いました。
勤労者のなかで、CL1、CL2、CL3の占める割合は、30%です。
勤労者のなかで、CL4、CL5の占める割合は、70%です。
年金受給者のデータは以下です。
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- 総労働力人口(令和5年):約 6,925万人
- うち 65歳以上:約 931万人
- 65~69歳:394万人
- 70歳以上:537万人
- 高齢者の就業率は上昇傾向で、60代後半でも多くの人が働いています。
- 65~69歳男性:就業率 61.6%
- 65~69歳女性:就業率 43.1%
- 公的年金受給者総数(令和6年度):約 4,000万人前後と推定されます
区分 人数(概数) 備考 |
勤労者(全体) 約6,925万人 15歳以上の労働力人口 |
高齢勤労者(65歳以上) 約931万人 高齢者の就業者数 |
年金受給者 約4,000万人 老齢・障害・遺族年金含む |
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年金受給かつ働いている人を70歳以上と仮定すれば、537万人になります。
残りの3500万人のうち、年金外所得のある人の割合を500万人と見積もって、CL6で、年金以外に所得のない人が3000万人います。
総労働人口の70%は、C4とC5に属し、4900万になります。
この2つを合計すると7900万人になります。7900万人のうち、資産があって、資産を売れば、食べるのに困らない人もいるとおもいますが、少なめに見積もっても全人口の半分、6000万人の生活は、楽ではないはずです。
この6000万人は、C4、C5、C6に属しています。
従来の政党の政策は、C4、C5、C6の人にコミットしていません。
参政党と国民民主党は、C4、C5、C6の人にコミットしました。
参政党の政策には、首をかしげるものもあります。
しかし、参政党を支持する人は、参政党が、C4、C5、C6の人にコミットしたから支持をしているのであって、政策を選択していません。
政策は、将来変わる可能性もあります。問題は、政策ではなく、C4、C5、C6の人にコミットすることです。
問いは、C1からC6の階層が政策によって、どのような影響を受けるかという問題に、個別に答えることです。
3)移民問題
日本経済研究センターと日本経済新聞社が、経済学者を対象にその時々の経済政策などに対する評価を聞く「エコノミクスパネル」の第7回調査では、外国人政策に関して尋ねました。
その結果、移民は、「日本人の生活水準向上に寄与」するという回答をした経済学者が8割でした。財政改善に寄与すると答えた経済学者も、66%いました。
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外国人増加、「日本人の生活水準向上に寄与」が8割 2025/07/30 日本経済研究センター
https://www.jcer.or.jp/policy-proposals/20250730.html
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このアンケートは、問いを無視しています。
トッド氏は、移民政策の成功例として、ドイツを取り上げています。
ドイツの人口の推移は以下です。
総人口 ドイツ国籍人口 外国国籍人口
2011年 8032万人 7398万人 634万人
2022年 8435万人 7203万人 1223万人
トッド氏は、ドイツは、人口が増加し、貿易黒字を積み上げ、失業率も低いので、今後も移民を受け入れても大きな問題は生じないと思われます。
この背景には、ドイツのエンジニア人口があります。
ただし、有権者が、そのことを希望するかは、別です。
一方、エンジニア人口が少なく、貿易赤字を抱えるイギリスとフランスでは、移民の経済効果は小さくなります。
トッド氏は、イギリスの中流階級の例として、大学の研究者は、給与は据え置かれ、年金は30%カットされ、2023年の夏には6%のインフレに見舞われています。
イギリスとフランスでは、ドイツのような移民の経済効果はありません。
イギリスとフランスの移民政策は、破綻しています。
特に、低所得層の労働者にしわ寄せが集中しています。
日本は、使えるエンジニアが減少しています。
2025年5月に、日本が海外に持つ資産から負債を差し引いた「対外純資産」は、去年末時点で533兆円余りと6年連続で過去最高となったものの、ドイツに抜かれ1990年末以来、34年ぶりに世界2位となりました。
つまり、移民を受け入れても、ドイツタイプではなく、イギリス、フランスタイプになります。
一旦、移民を受け入れると、かえってもらうことは困難になります。急いでかえってもらわなくとも何とかなっているドイツは例外で、アメリカを含めて、その他の国では、制御不可能になっています。
ドイツのように失業率が低ければ問題は表面化しませんが、失業率が上がれば、仕事の取り合いになり、賃金が最低賃金に収斂します。
C4、C5、C6の人は、移民と仕事の取り合いになる可能性があります。
こうした、日本経済研究センターのアンケートは、こうして、参政党と国民民主党への投票を促します。
「日本人の生活水準向上に寄与」には、C4、C5、C6の人の生活水準がよくなるという根拠がありません。
円安は、企業の業績をあげましたが、家計から、企業への所得移転を生み出しました。
円安は、C4、C5、C6の人の生活水準を下げました。これは、ファクトです。
同様に、移民の受け入れが、C4、C5、C6の人の生活水準を下げる可能性があります。
日本経済研究センターのアンケートは、経済学者(利害関係者)の意見であって、根拠となるデータがありません。
しかも、「財政改善に寄与すると答えて」います。
これは、明らかにザイム真理教です。
ザイム真理教のメカニズムは、周知になりましたので、ザイム真理教を振り回して、C4、C5、C6の人の生活水準にコミットしなければ、自民党と立憲民主党は、縮小します。
なお、以上の検討では、海外との比較が無意味になる交絡因子の年功型雇用は、考慮していません。
また、トレンド予測を真に受けて労働力不足になると考えている経済学者が多くいますが、トレンドは因果ではありません。
Aiを使えば、国会議員を含めて、公務員の8割は不要になります。
経済学者にとって、生産性と付加価値か、統計データの数値でしかありません。そこには、技術の言語がありません。
2025年に、マイクロソフトは、人員削減を行いました。人間をAIに置き換えることで、生産性があがりました。この生産性は、人間の作業のAI代替性の技術の言葉に裏打ちされています。経済学者は、過去のデータを分析することはできますが、個別の企業で何が起きるかという問題を考える言語を持っていません。
4)自滅の論理
時事通信は次のように伝えています。
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自民、立憲民主両党など与野党6党(自民、立民党、日本維新の会、国民民主党、公明党、共産党)の国対委員長が30日、国会内で会談し、ガソリン税の暫定税率廃止について「今年中のできるだけ早い時期に実施する」とした合意文書を交わした。
会談後、自民の坂本哲志国対委員長は記者団の取材に対し、秋の臨時国会で暫定税率廃止法案を審議し、成立させる考えを示した。「参院選で民意が明確になった。それに従い政策作りをしていく」とも語った。
野党8党がガソリンの暫定税率の廃止を目指す中、加藤財務大臣は年間1兆5000億円の税収が減ることへの対応が必要だと指摘しました。
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ガソリン減税、年内実施で合意 与野党6党、秋の法案成立目指す 2025/07//20 時事通信
https://news.yahoo.co.jp/articles/268da5fad0ac352f259406c1da6f34b0de1ecc42
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これは信じられない報道です。
パブロフの犬のように、有権者は、自民党と立民党の得票が減れば、ガソリンの暫定税率の廃止が実現することを学習します。
この学習結果から、有権者は、自民党と立民党の得票が減れば、消費税の減税が実現することを理解しています。
つまり、この方法は、自滅のルートになります。
加藤財務大臣はザイム真理教を繰り返しています。
しかし、財源問題は存在しません。
法人税の増税、補助金の削減などの歳出の削減で、財源を捻出することができます。
データに基づいて、事業の効率性を評価する手法を作り、優先順位のルールをつくれば、問題は解決できます。
そこで、最優先すべきは、問いの設定になります。
藤野英人は、次のようにいいます。
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今回、国民民主党や参政党など新興政党が躍進したのは、既存の政党の枠組みへの国民からの「ノー」であり、このままいけば3年間で与党が崩壊する。
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政権が不安定だと「株価は上がる」?...参院選・与党大敗も「株価が急上昇」したシンプルな理由 2025/07/30 Newsweel 藤野英人
https://www.newsweekjapan.jp/fujino/2025/07/post-30.php
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5)インバウンドの交絡因子
交絡因子の例として、インバウンドをあげておきます。
ヨーロッパでは、スペインでインバウンド排斥運動が起きてます。
スペインには、砂漠や乾燥地が多く、観光客と住民が共生できないためと言われています。
日本は、山が多く、居住可能なエリアは、標高200m以下に集中しています。
フランス、アメリカ、タイなどの平地の多い国では、インバウンドや海外資本による不動産の価格上昇の影響は小さくなりますが、日本は、スペインタイプになります。
更に、地価については、標高200m以下でも過疎地域では、継続的な居住が困難になりつつあり、不動産の価値の目減りが明らかです。
つまり、人口が減少しても、不動産の価値が今後も維持可能なエリアは、大都市圏にほぼ限定されます。
イギリスの労働党政権が富裕層優遇税制を打ち切った結果、ロンドンを中心に、1万6500人の富裕層が流出しました。
これは、ロンドンとそれ以外の地域の格差が大きいためで、日本も同じ問題を抱えています。
このように交絡因子を無視して、海外の成功例をコピーする政策には、妥当性がありません。