日米関税交渉で合意、相互関税15%(3)

1)中国、メキシコ、カナダ

 

トランプ・ディールが、成功する(安定的な解に収束する)条件は、中国、メキシコ、カナダの貿易合意ができることです。

 

この3カ国以外の貿易合意は、成功する(安定的な解に収束する)条件ではありません。

 

この3カ国の貿易合意ができたあとで、それ以外の国との貿易合意は、再度、調整されます。

 

関税率を全ての国に対して一律に揚げる場合には、輸入と輸出の国別のフローに大きな変化が起きません。

 

これは、消費税をあげても、貿易相手の国が変わらないことに対応しています。

 

しかし、これでは、ディールになりません。

 

トランプ大統領は、関税によって、特定の国との貿易のフローを調整できるという前提で、ディールをしかけています。

 

貿易量の多い国は、中国、メキシコ、カナダです。流れの本流はここにあります。支流をいじっても、貿易は大きくは変わりません。

 

既に述べたように、この3カ国は、2つのタイプに分かれます。

 

メキシコとカナダは、輸出と輸入が共に多いです。

 

これは、輸入を制限すれば、輸出も減ることを意味します。

 

特に、メキシコの人件費は、アメリカより安いので問題が大きくなります。

 

簡単に言えば、製品の輸入を通じて安い人件費が輸入されます。

 

メキシコとアメリカの製品の人件費の差額分だけ、関税をかければ、メキシコで製造するメリットがなくなり、アメリカ国内で製造する方が合理的になります。

 

ただし、この前提には、アメリカで労働者が確保できるという前提があります。



GM、フォード、クライスラーの親会社ステランティスは、米国部品の含有率によっては、メキシコやカナダから輸入する車に最大25%の関税を支払っているのに対し、日本やイギリスで製造された、米国部品の含有率が低い車は15%という低い関税が課されることになったからだ。つまり、米国の部品が使われていない日本からの輸入車が、米国の部品が多数使われているカナダやメキシコから輸入される米国車よりも低い関税で輸入できてしまうのはアンフェアだという。

<<

トランプ氏が対日自動車関税も15%に 全米自動車労働組合が激怒! そのワケとは? 2025/07/24  飯塚真紀子

https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/9b0c2c5e8fba4582b6828e8bbc3c4d3c91112acc

>>

 

この報道では、アメリカの自動車メーカーは、メキシコの関税が高いので、米国部品が輸出できないといっています。

 

関税の目的が、メキシコから、アメリカ国内に生産拠点を移設することにありますので、米国部品が輸出できないのは、当然です。

 

米国部品を輸出するためには、メキシコで製造した自動車を輸入する必要があります。この場合には、関税率は低い方がよいことになります。

 

つまり、メキシコとカナダの貿易合意が、実現可能とは思えません。



さらに、中国との貿易合意は、より実現不可能に思われます。、

 

2)トランプ氏の勘違い

 

トランプ氏は7月24日、ワシントンD.C.にある連邦準備制度FRB)本部の建設現場で、「他の国も金を出せば関税を下げることができるのか」という質問に対し、「そうだ。私は他の国も金を出して関税を下げること(buy it down)を認めるつもりだ」と答えた。

トランプ氏は、日本が約束した投資について貸付のようなものではなく「サイニングボーナス(signing bonus、契約締結時の支度金」とし、日本が前払いで出したと主張した。

 

トランプ氏は「日本は我々に5500億ドルを支払い、関税を若干引き下げた」と述べ、「そして日本は自国の経済(市場)をすべて開放することに同意した。それは簡単なことではなかった」と語った。

 

続けて「経済開放は、日本が支払った5500億ドルよりも価値がある。だから経済開放と前払金を合わせて、我々は(関税率を)15%に引き下げた」とし「日本の関税率は約28%だったが、“関税の引き下げ”を購入したということだ」と説明した。

<<

トランプ氏「他の国も日本のように金を出せば関税を引き下げる」2025/07/25 中央日報

https://news.yahoo.co.jp/articles/66e40e56dc052875b2ce766608f343fd1fd989a9

>>

 

トランプ氏は、基本的な勘違いをしています。

 

トッド氏は、「西洋の敗北」(p.207)で、次のようにいいます。

アメリカという中心によって周辺地域が体系的に搾取されるという関係がある。2021年、アメリカの対EU貿易赤字は、2200億ドルだった。そこに、対スイスの400億ドル、対日本の600億ドル、対韓国の300億ドル、対台湾の400億ドルを加え、対ノルウェーの4億ドルを引くと、アメリカの対同盟国(保護国及び属国)の貿易赤字は3930億ドルとなり、対中国の貿易赤字3500億ドルを上回っている。

 

アメリカ圏では、対カナダは400億ドルの赤字、対イギリスは、50億ドルの黒字、対オーストラリアは、140億ドルの黒字、対ニュージーランドは、10億ドルの黒字である。

 

トッド氏は、対アメリカの貿易赤字は、アメリカが周辺地域を体系的に搾取している現れであると考えています。

 

トランプ氏は、対アメリカの貿易赤字は、アメリカが周辺地域から搾取されていることであると考えています。

 

アメリカの貿易赤字は、継続的に赤字です。それが可能な理由は、ドルをすれば、外貨になるためです。

 

例えば、日本が継続的に国際収支の赤字を続けると、外貨(ドル)がなくなり、輸入ができなくなります。

 

アメリカが貿易赤字を解消するには、関税をかける必要はありません。輸入をやめればよいだけです。

 

5500億ドルの投資がなくても、アメリカは、輸入代金の支払いに困ることはありません。

 

おそらく、5500億ドルの投資は、ほとんどが焦げ付くはずです。

 

次回は、この点を考えます。