政党の終わり(6)

1)階級と宗教

 

選挙の結果が出る前の20日10時30分に、この原稿を書いています。

 

参議院選挙では、マスコミは、選挙は政策選択であると主張しています。

 

小選挙区制度を導入するとき、小沢一郎氏は、小選挙区になれば、イギリスのような二大政党制になると主張していました。

 

しかし、トッド氏は、「西洋の敗北」で、そのような主張を否定しています。

 

トッド氏は、イギリスが、2大政党制になった原因は、工場労働者階級の存在、または、宗教の違いが大きな要因であるといいます。経済のサービス化により、労働者階級はなくなりました。宗教は、ゾンビ状態から、宗教ゼロ状態に移行しました。その結果、現在残っているイギリスの2大政党制は、過去のレガシーの反映で、2大政党による政策の違いはほとんどなくなっています。労働党も、新自由主義になっています。

 

つまり、選挙は政策選択であるという主張には、ファクトがありません。

 

2)階級の創造

 

政府は、経済政策によって、日本に、労働者階級のような中小企業階級を創造しました。

 

もちろん中小企業は昔からあります。

 

中小企業の平均賃金は、大企業より低かったです。

 

しかし、「賃上げと景気の好循環」という所得移転政策によって、大企業と中小企業の賃金格差は拡大しています。

 

つまり、政府は、中小企業階級を創造したわけです。

 

トッド氏は、経済のサービス化には、製造業を破壊するリスクがあるといいます。

 

2025年までのデータをみれば、トッド氏の主張は正しいように見えます。

 

しかし、AIは、サービス経済の雇用を破壊しつつあります。

 

レイオフされた人材はどこに行くのか、筆者には、わかりません。

 

トッド氏は、新自由主義が、社会集団を破壊したといいます。

 

トッド氏は、新自由主義には、所得の再配分機能がないので、弱者の切り捨てになるといいます。

 

それは、正しいと思います。

 

しかし、仮に、2つの国に、似たような分野の企業があり、自由貿易で競争した場合、生産性の悪い企業は淘汰されます。

 

つまり、鎖国政策がとれるのであれば、新自由主義を拒否することは可能です。

 

鎖国政策がとれない場合には、産業構造の再編と生産性の向上を回避することはできません。

 

日本が先進国になれた理由は、自由貿易で競争して優位にたてたことが原因です。もちろん、その時には、朝鮮戦争と中国が鎖国政策をとっていたという幸運もありましたが、自由貿易で競争優位にたてなければ、先進国にはなれませんでした。

 

自由貿易の競争優位がなくなれば、日本経済は沈没します。

 

これが過去30年に起こった現象です。

 

産業構造の変化と生産性の向上がなかったことが、経済の停滞と賃金の低下の原因です。

 

中小企業階級を創造できた背景には、産業構造の固定化があります。

 

日本には、大きなベンチャーがありません。

 

イーロン・マスク氏は、南アフリカから、カナダ経由で、アメリカに入り、ベンチャーを成功させています。

 

こうした場合、反事実思考が有効です。

 

イーロン・マスク氏が、日本にきたら、ベンチャーを成功させることができたでしょうか。

 

恐らく、それは、不可能であったと思われます。

 

この推論で、不可能になった障害を見つけることが可能です。

 

障害を取り除けば、日本でも、ベンチャーが成功する確率が高くなります。

 

日本では、ベンチャーはつぶされています。

 

有権者は、産業構造の変化がおこると考えていません。

 

人気の就職先は、公務員と大企業です。

 

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「世界のトヨタよりも…」子や孫に入ってほしい勤め先、2位は国家公務員 家族に根強い“安定志向” 2025/06/05 まいどなニュース

https://nordot.app/1302769894015370238?c=899922300288598016

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トッド氏流に考えれば、人材が動かなければ、社会は変わりません。

 

トップ人材の大学生は、公務員と大企業を目指していません。

 

しかし、トップ人材の大学生は、日本企業に見切りをつけて、国際企業で働くことを希望しています。

 

まとめます。

 

中小企業階級の労働者は、中小企業階級が社会的に固定化された身分制度であると感じています。

 

3)反大衆的挑発

 

トッド氏は、「西洋の敗北」(p.241)で、次のように言います。

 

イギリスでは、高等教育を受けた人々は、大衆が嫌うような「多様性」、「少数民族」、「移民」(反大衆的挑発)をますます好むようになった。

 

大衆が、「移民」を嫌う理由は、簡単です。大衆は、「移民」による経済的なメリットを受けていないからです。

 

この原稿は、20日の10時30分に書いています。

 

20日の朝に読むことができるニュースは驚くべきものです。

経済同友会の夏セミナーは次のようにいっています。

 

新浪剛史代表幹事は「外国人は悪いと決めつけてはいけない」とした上で「人口減少や人手不足を乗り切るためには、外国人との共生を考える必要がある」と呼びかけた。

 

ロイヤルホールディングスの菊地唯夫会長が外国人労働者の増加について「最大の受益者は企業だ。企業が生活や教育支援だけではなく、家族への対応にも責任を果たすべきではないか」と語った。

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新浪氏「外国人と共生を」 経済同友会の夏セミナー 2025/07/19 KYODO

https://news.yahoo.co.jp/articles/b3cae2a5e7ed918c31e8942550ca03e031ff6d25

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ここには、中小企業階級に対する配慮はゼロです。この発言は、反大衆的挑発です。選挙では、中小企業階級を切り捨てた既存政党に入れるなといっています。

 

経済同友会は18日、長野県軽井沢町で夏季セミナーを開いた。新浪剛史代表幹事は参院選で物価高対策が争点になっていることに絡み「インフレが思ったよりも根強く、国民全体で一番頭の痛いものになっている」と指摘。

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実質賃金目減りに危機感表明 経済同友会セミナーで新浪剛史氏 2025/07/18 KYODO

https://news.yahoo.co.jp/articles/f01289ff25676eca140e4ba4292656f13b13afb5

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これも、反大衆的挑発です。生産性を上げずに、大企業の賃金をあげれば、実質賃金は下がります。さらに、中小企業の労働者から、大企業の労働者への所得移転が起きます。

 

現在起きている現象は、経済学の教科書に書いてある通りのシナリオです、

 

政府、経団連経済同友会は、実質賃金を下げる政策をすすめています。

 

それに対して、「国民全体で一番頭の痛いもの」というのは、反大衆的挑発です。

 

中小企業階級は、この政策に賛成していません。

 

「国民全体で一番頭の痛いもの」は、責任転嫁になります。

 

同じセミナーで、「言論空間がおかしい」という反大衆的挑発も出ています。

 

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「言論空間がおかしい」 SNS選挙巡り警鐘 経済同友会セミナー 2025/07/19 毎日新聞

https://news.yahoo.co.jp/articles/a769d4fd1f2019ca6c2dbb37016f1e675c80a0e1

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政府とマスコミは、中小企業階級の存在を無視した報道を繰り返しています。

 

したがって、中小企業階級は、政府とマスコミを信頼していません。

 

トッド氏流に言えば、「多様性」も、よく使われる言葉です。

 

しかし、欧米企業に比べれば、日本企業の幹部には、外国人はほとんどいません。

 

海外のファンドによる日本企業の買収では、ガバナンスの問題が指摘されています。

 

中小企業階級は、日本企業の幹部は、欧米企業の幹部より能力がかなり劣ると考えています。

 

マスコミの報道は、ファクトをしめさず、有識者(利害関係者)の意見を引用するだけです。

 

現在の「言論空間はまとも」ではありません。

 

「言論空間がおかしい」という発言は、情報操作が出来なくなって困っていると聞こえます。

 

そもそも、SNSを優先的に使う人は、マスコミの報道が信じられない、あるいは、マスコミも報道は、中小企業階級を無視していると感じている人と思われます。

 

そのような人に、「言論空間がおかしい」といえば、反大衆的挑発です。

 

選挙では、中小企業階級を切り捨てた既存政党に入れるなといっています。

 

沖縄タイムズは、外国人問題に関して、ファクトチェックをしています。

 

内閣府の2024年度年次経済財政報告によれば、残業代や賞与を含む年収を比較したところ、外国人労働者の年収は日本人より28.3%低かった。産業や地域、個人の属性の影響を除いても7.1%低い。

 

 内閣府は「同じ工場でも日本人が責任ある立場を任される一方で外国人が単純労働に就く場合も多い。また技能実習生は転職に制限があるため日本人より給与交渉がしにくく、年収には差がある状態だ」と話す。

 

 そのため「外国人労働者の賃金が低い」は全体として正確。厚生労働省の毎月勤労統計調査によれば、国内の給与の伸び率は10年近く0~1%台で推移しており、「日本人の給与が上がっていない」も正確だ。

 

 一方、両者の因果関係について内閣府は「外国人労働者は建設や製造、清掃など、日本人労働者が就きたがらない職種に就いており、労働市場が違うため、日本人の賃金が外国人につられてしまうことは考えにくい」と否定した。

 

 よって、日本人労働者の給与が上がらない原因が外国人労働者の低賃金にあるとする言説は「不正確」と判定した。NPO「ファクトチェック・イニシアティブ」(FIJ)の基準で「正確な部分と不正確な部分が交じっていて、全体として正確性が欠如している」言説を指す。

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【ファクトチェック】参院選沖縄の候補者「外国人の低賃金が原因で給料が上がりにくい」 因果関係が不明で「不正確」2025/07/18 沖縄タイムズ

https://news.jp/i/1318690975046861164?c=899922300288598016

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この記事は、2つの点に問題があります。

 

第1に、ファクトが相関、エビデンスが因果です。

 

ファクトチェックでは、因果については何も言えません。

 

つまり、この記事は、科学的に間違っています。

 

第2に、外国人問題が、取り上げられる理由は、次の2点です。

 

第1点は、外国人によって給与が下がっているのではないかという疑問です。

 

第2点は、外国人によって、生活環境が悪化しているのではないかという疑問です。

 

第2点には、インバウンド問題をみれば、明らかなファクトがあります。

 

第1点は、「外国人によって給与が下がっているのではないか」という不安があります。

 

これは、体調が悪いが、病気ではないかという不安と同じようなものです。

 

病気の場合には、患者は、医者に、「病気ではないので大丈夫」か、「病気だから、この治療をすべき」かの答えを期待しています。

 

医者が、「このデータでは、病気かどうかわかりません」といえば、患者は、その医師に見捨てられたと感じます。

 

外国人問題で、求められていることは、「このデータではわかりません」という回答ではありません。

 

そのような回答をすれば、中小企業階級は、マスコミは、中小企業階級を見捨てていると感じます。

 

マスコミは、選挙では、中小企業階級を切り捨てた既存政党に入れるなといっています。



4)まとめ

 

選挙の論点は政策ではありません。

 

そもそも、政治家が、まともな政策論争ができていないことは、大衆が理解しています。

 

選挙の論点は、「中小企業階級を切り捨てた既存政党に入れるべきではない」のではないかという点にあります。

 

マスコミと財界は、反大衆的挑発をして、「中小企業階級を切り捨てた既存政党に入れるべきではない」というメッセ―を発信しています。