1)選挙当日
カッツ氏の発言を引用します。
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家計から大企業へ所得が移る
さらに、社会保障給付費は高齢者1人当たり290万円から210万円に減少し、物価変動を考慮すると30%もの大幅な減少となっている。さらに悪いことに、家計にかかる税負担(消費税、所得税、社会保険料)は、税引き前所得の16%から23%へと増加している。自民党は、国民への増税と企業への減税を同時に進めることで、事実上、家計から企業、特に大企業へと所得を移転させているのだ。
消費税は過去35年間で着実に上昇し、現在では消費者の可処分所得の9%を奪っている。対照的に、1990年代初頭には、企業は利益の45~50%を税金として政府に納めていた。それが今ではわずか15~18%にまで低下している。
自民党は、こうした度重なる法人税減税を正当化するために、次のような誤った主張を繰り返す。「減税すれば、企業は余った利益で投資を増やすだろう。そうすればGDPが増加し、税収が増えるだけでなく、労働者の需要が高まり、賃金上昇につながる」と。
経済産業省の中堅官僚の中には、上司が認めないとしても、内心ではこの主張の誤りを認めている者もいる。岸田文雄前首相が防衛費倍増のために法人税減税の一部撤回を示唆した際、経済産業省のある幹部は私に、経済産業省の最優先事項は岸田氏の計画を阻止することだと明言した。
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「消費税で家計が疲弊し、企業は利益を貯め込む」知日派ジャーナリストが嘆く日本の残念な状況 2025/05/20 東洋経済 リチャード・カッツ
https://toyokeizai.net/articles/-/877659
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ポイントは、次の部分です。
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自民党は、度重なる法人税減税を正当化するために、「減税すれば、企業は余った利益で投資を増やすだろう。そうすればGDPが増加し、税収が増えるだけでなく、労働者の需要が高まり、賃金上昇につながる」と誤った主張を繰り返した。
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つまり、有権者は、自民党の主張を、信じられなくなっています。
カッツ氏の主張は仮説なので、間違いの可能性があります。
しかし、政府は、「減税すれば、企業は余った利益で投資を増やすだろう。そうすればGDPが増加し、税収が増えるだけでなく、労働者の需要が高まり、賃金上昇につながる」という仮説を検証していません。明らかな事実は、大企業の内部留保が増えたが、有効な投資先を見つけられていないこと、家計から企業への所得移転が発生したことです。
また、「減税すれば、企業は余った利益で投資を増やすだろう。そうすればGDPが増加し、税収が増えるだけでなく、労働者の需要が高まり、賃金上昇につながる」という主張には、問い(評価関数)がありません。仮に、賃金上昇が評価関数であれば、減税政策は、他の代替可能な政策と比較され、優位性が認められてから採用される手順を踏みます。つまり、この主張は、段落の論理で、仮説を採択する基準は、共感の有無だけです。
大企業が、有効な投資先を見つけられていないことは、技術レベルの低下を意味します。この問題は、詳細に検討する必要がありますが、エンジニアの技術レベルが低下しています。大学入試に、文系があり、数学が必須でない国は、日本だけです。公式を暗記するレベルの教育では、新製品を開発できるエンジニアを養成できません。
トッド氏は、「西洋の敗北」(p.241)で、次のようにいいます。
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ブレグジット以降、イギリスでは、高等教育を受けた人々は、大衆が嫌うような事柄をますます好むようになった。「多様性」、「少数民族」、そして「移民」である。
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「多様性」、「少数民族」、そして「移民」は、大衆(多数派の貧困層)の賃金をあげません。より安い賃金で働く、労働者が労働市場に参入すれば、大衆の賃金が下がります。なので、大衆は、これらの政策に反対します。
日本でも同じことが起きています。「多様性」と「外国人労働者」は、大衆(多数派の貧困層)の賃金を下げる要因になります。したがって、「日本人ファースト」の主張が、大衆に支持されます。
「多様性」と「外国人労働者」をうけいれれば、企業の利益は増え、税収が増えるでしょう。しかし、法人税減税を正当化する論理に見るように、企業の利益と税収からの所得移転は起きないことを大衆は理解しています。
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バラマキだけの政党、ポピュリズムに流される有権者~政策選択が機能しない参議院選挙に市場は「日本の財政危機」を危惧し始めている 2025/07/15 現代ビジネス 野口悠紀雄
https://gendai.media/articles/-/154814
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英語版のウィキペディアの「ポピュリズム(populism)」には、次のように書かれています。
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ポピュリズムは、しばしばエリート層とみなされる層に対抗して「庶民」という概念を強調する様々な政治的立場を指す、議論の多い概念である 。 反体制・反政治感情としばしば結びつけられる。この用語は19世紀後半に生まれ、それ以来様々な政治家、政党、運動に適用され、しばしば軽蔑的な意味合いを帯びてきた。政治学やその他の社会科学では、ポピュリズムの様々な定義が用いられており、この用語自体を否定すべきだと主張する学者もいる。
語源と用語
「ポピュリズム」という用語は長らく誤訳の対象となり、広範かつしばしば矛盾する一連の運動や信念を形容するために用いられてきた。その用法は大陸や文脈を跨いでおり、多くの学者はそれを曖昧で過度に拡大解釈された概念、政治的言説で広く言及されるものの、定義が一貫しておらず、十分に理解されていない概念と特徴づけている。こうした背景から、多くの研究がメディア、政治、学術研究におけるこの用語の使用と普及を調査し、これらの分野間の相互影響を強調し、この概念の進化する意味を形作ってきた意味の変化を辿ってきた。
ポピュリストの誇大宣伝と学術的議論
学者たちは1990年代初頭までにポピュリズムが西側諸国の民主主義国家で繰り返し見られる特徴になりつつあることをすでに指摘していたが、この用語は2016年の政治的激変、特にドナルド・トランプ大統領の当選と英国の欧州連合離脱投票を受けて、前例のない世界的な注目を集めた。どちらの出来事もポピュリスト感情の表出と広く解釈され、この概念への国民の関心が再び高まった。この注目の高まりを反映して、ケンブリッジ辞典は「ポピュリズム」を2017年の年間最優秀語に選んだ。
このいわゆる「ポピュリスト的誇大宣伝」は、学界にも見られる。1950年から1960年にかけてはポピュリズムに関する出版物はおよそ160件だったが、1990年から2000年にかけてはその数は1,500件以上に増加した。 2000年から2015年にかけて、 Web of Scienceのカタログによると、タイトルまたは概要に「ポピュリズム」という用語を含む学術論文や書籍は、年間平均95件だった。2016年にはその数は266件、2017年には488件、そして2018年には615件にまで増加した。
この用語を取り巻く概念的な曖昧さは、政治的および学術的な関心の高まりによってさらに悪化し、「ポピュリズム」を分析カテゴリーとして完全に放棄すべきだと提唱する学者もいる。特に、ポピュリズムと極右のナショナリズムがしばしば混同されることは、歴史上の自称ポピュリストの精神を誤って表現しているとして批判を浴びている。また、人種差別主義者や権威主義的な政治主体が「人民」を代表すると主張することで正当性を求める婉曲表現を与えているとも批判されている 。
一方、この概念は政治分析において依然として不可欠なものであり、捨て去ることはできないと主張する者もいる。彼らは、「ポピュリズム」が明確に定義されれば、幅広い政治主体、特に主流政治の周辺で活動する主体を理解するための貴重なツールとなり得ると主張する。
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日本語版のウィキペディアの「ポピュリズム」は、段落の論理で書かれているので、論理的に理解することは不可能です。
<ポピュリズムは、しばしばエリート層とみなされる層に対抗して「庶民」という概念を強調する様々な政治的立場を指す、議論の多い概念>が最大公約数と思われます。
選挙では、得票数がすべてをきめるので、庶民、あるいは、トッド氏の大衆の理解を得る必要があります。
選挙の公約は、政治的なエリート層が作成します。
選挙の票を補助金で買うような公約を作ることもできます。
一方では、所得を向上させるような公約をつくることもできます。
庶民は、公約(政策)をつくることはできません。
庶民は、良い公約(政策)を選択することが困難です。
つまり、エリート層が、よい公約(政策)をつくり、公約を庶民にわかりやすく説明するという前提がなければ、民主主義は成立しません。
「ポピュリズム」には、問題点が多くあります。
この用語の使用を避けて、野口悠紀雄氏の主張を要約すれば、次になるでしょう。
「政治的エリート層が、よい公約(政策)をつくり、わかりやすく説明するという機能(有効な政策の原則)が麻痺している」
有効な政策の原則は、科学的な概念です。つまり、この原則の前提には、有効な政策は検証可能であるとういう前提があります。
検証が困難な課題もあります。その場合でも、科学的な推論(議論)のプロセスが機能している必要があります。
しかし、野口悠紀雄氏が、たびたび、日銀の政策を批判しているように、有効な政策の原則は成り立っていません。
「法人税を減税すれば、賃金上昇につながる」という公約は間違いでした。
これは、トリクルダウン効果と呼ばれることもありますが、制度設計図に書かれていない効果を期待することは、不合理です。
この論理は、与野党だけでなく、野党の既成政党も採択しています。
まちがった法人税減税の公約を検証して、改善することなく、同じような財政破綻ストーリーを繰り返しています。財政破綻ストーリーも、法人税の減税ストーリーと同じようにインチキであると考える有権者がいるはずです。
これは、財政破綻しないという意味ではありません。「政府の主張を真に受ければ、財政破綻しない」というストーリーがインチキで、いずれにしても財政破綻するだろうという推論です。政府の制度の設計図には、財政破綻しないメカニズムが書き込まれていません。だから、アベノミクスで、国債が積みあがりました。リフレ派の識者には、政府の資産は、実施はもっと多いという人もいます。それは、本当かもしれませんが、国債が積みあがっているという事実には変わりはありません。
政府が本当に財政破綻を回避したいのであれば、歳出を制限する法案をつくっているはずです。政府がそうしない理由は、政府は、財政破綻を回避するつもりがないからです。政府に、財政破綻願望があれば、有権者は、それをとめることは困難です。
生産性が上がらない原因は、トッド氏のいうように技術者の不在にあります。その場合には、金融緩和は生産性の向上にはなりません。
つまり、既成政党の政策公約に対する信頼はなくなりました。
2)新自由主義
トッド氏は、新自由主義に批判的です。
これは、新自由主義は、ニヒリズムを内包しているという主張です。
野口悠紀雄氏の<政策選択が機能しない参議院選挙に市場は「日本の財政危機」を危惧し始めている>という主張には、新自由主義には、「財政破綻を回避するメカニズムが含まれている」という期待があります。
一方、トッド氏は、新自由主義には、「財政破綻を回避するメカニズムが含まれていない」、つまり、民主主義の設計図を書き換えない限り、「財政破綻を回避するメカニズム」は期待できないと考えています。
一方、ロシアは、社会主義の崩壊のあとの混乱期を経て、「財政破綻を回避するメカニズム」を獲得したと考えています。ロシアは、鉱物資源があり、食料の自給を達成しています。つまり、鎖国状態になっても、経済が破綻することはありません。
野口悠紀雄氏は、「生産性向上やデジタル化促進の構造対策が重要」であるといいます。
しかし、過去30年、日本経済では、「「生産性向上とデジタル化」は進みませんでした。これは、日本流の新自由主義の設計図には、「生産性向上とデジタル化」が含まれていなかったことを示しています。
日本流の新自由主義の設計図には、「生産性向上とデジタル化」が含まれていない場合、「生産性向上やデジタル化促進の構造対策」を期待することは、現実を無視していることになります。
実現不可能なことを期待すべきではありません。
「生産性向上とデジタル化」というジョブは、いくつかのモジュールに分かれます。
トッド氏の主張では、最も重要なモジュールは、エンジニアの人材です。日本では、エンジニアの所得は低く、医師、弁護士、金融業界の所得が高くなっています。日本の義務教育は、分数のできない大学生を量産しています。俗に、753と言われるので、数学ができる高校生の割合は、30%でしょう。この30%のうち、成績上位者は、医師、金融業界に流れます。つまり、エンジニア人材のモジュールは機能していません。
シュンペーターは「創造的破壊」といいましたが、この理論には、技術の言葉が欠けています。「創造的破壊」をしても、エンジニアがいなければ、何もおきないことは自明です。しかし、シュンペーターは、技術の言葉を持たないので、こんな単純なことも推論が出来ていません。
パールの表現がさき、情報取得があとというパラダイムは強力です。このパラダイムを使うと、権威に惑わされることなく、「創造的破壊」の限界がわかります。
新自由主義(近代経済学のパラダイム)には、市場の効率性以外の公準が含まれていません。平等性の公準、集団(国家経済)の持続性の公準は含まれていません。
したがって、演繹法で考えれば、シャローステートが変わらなければ、「財政破綻を回避できる」(国家経済の持続性の公準)と推論することはできません。
有権者の推論は、極めて合理的です。
3)LGBT法
トッド氏は、LGBT法を批判しています。
その理由は、LGBT法は、生物学的な間違い(科学の否定)であるということです。
生物の遺伝子のコードは遺伝病などの場合、一部にパッチをあてることができませんが、遺伝子全体を書き換えることはできません。つまり、遺伝子で決まった性は、変更不可能です。
トッド氏は、「西洋の敗北」(2023年9月30日執筆完了)で、日本でLGBT法が成立した2023年6月16日を取り上げています。この日は、日本の政治から、科学がなくなった日になります。その中で、トッド氏は、LGBT法に目立った反対をしたのは、「参政党」だけであったと述べています。
LGBT法は、生物学を無視したカルトです。
法人税の減税ストーリーはカルトでした。
財政破綻は回避できるという財政破綻ストーリーも、カルトである可能性があります。
少なくとも、政党の規約に、カルトを否定する条項が含まれていなければ、財政破綻は回避できるという財政破綻ストーリーが、カルトでないと主張することはできません。