消費税は簡単に上げられる(3)

4)就職氷河期世代

 

法度体制(封建制度)のメンタルモデルで考えれば、大臣のような偉い人は、万能で何でもできることになります。

 

一方、民主主義のメンタルモデルで考えれば、大臣のようなポストと能力の間には、直接的関係はありません。能力のある大臣も、能力のない大臣も、いることになります。

 

エマニュエル・トッド氏、中国とロシアのトップに比べて、アメリカ、イギリス、フランスのトップは、長期的なビジョンを描く能力が低いといいます。

 

これは、トッド氏が、法度体制(封建制度)のメンタルモデルに汚染されていないことを示しています。

 

パールは、「因果推論の科学」の中で、言語がなければ、「問う」ことはできす、推論はできないといいます。

 

つまり、法度体制(封建制度)のメンタルモデルを捨てれば、大臣は、「問う」ことができる言語を持っているかを点検すべきです。

 

言語をもっていない場合には、推論はできないので、議論は時間の無駄です。

 

そこには、バカの壁があるといえます。

 

さて、今回のテーマは、就職氷河期世代です。

 

内閣府が定義する就職氷河期世代は1974年から1983年に生まれた世代です。

 

この世代は1993年から2005年に学業卒業で社会に出た世代(高卒者ならば1975年から1985年ごろ、大卒者ならば1970年から1980年に生まれた人)です。

 

就職氷河期世代は、バブル経済がはじけた後のおおむね1993から2004年に学校を卒業し、就職活動をした世代に当たります。

 

 「ロスジェネ世代」(失われた世代)とも呼ばれ、現在は40、50代。全国に1700万から2000万人いるとされ、総人口の6分の1を占めます。

 

毎日新聞は、次のように伝えています。

 

 7月3日公示、20日投開票の参院選で注目される争点の一つに「就職氷河期世代」への対策がある。賃上げが十分に行き渡らず、将来への不安は若者にも波及。有権者の投票行動を左右するとみて、与野党が支援策を打ち出している。

 

 文部科学省の「学校基本調査」によると、大卒者の就職率は1991年は80%を超えていたが、バブル崩壊とともに下落。2000年から2005年は60%を割り込んだ。

 

 労働市場が冷え込み、アルバイトや派遣社員など非正規雇用の割合が急拡大した時期に重なる。

 

 正社員としてキャリアを積む機会を得られないまま子育てをしたり、親の介護が必要になったりしている人も多い。厚生年金の加入期間が短く、老後の低年金が危ぶまれるケースもある。

 

 賃上げの恩恵、他の世代より薄く

 

 他の世代と比べると、近年も賃上げの恩恵を受けていない傾向が指摘されている。

 

 第一生命経済研究所厚生労働省の「賃金構造基本統計調査」を分析したところ、2019から2024年の所定内給与(時間外手当などを除く)の増減率は、最も若い「20から24歳」が10・3%増でトップだった。

 

 30代は「30から34歳」が5・8%増、「35から39歳」が4・8%増と年代を重ねるにつれて増加率は縮小。40代は「40から44歳」が0・1%増、「45から49歳」が2・1%増と微増にとどまる。「50から54歳」に至っては3%減と減少に転じている。

 

 石破茂首相は6月の関係閣僚会議で、氷河期世代を対象とした国家公務員の中途採用試験の実施や、自治体による職業訓練、リスキリング(学び直し)などを後押しする方針を示した。

 

 野党も参院選公約で、賃上げをした企業への税制優遇などさまざまな支援策を打ち出している。

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参院選争点に「就職氷河期」対策 将来への不安、若者にも波及 2025/07/01 毎日新聞

https://news.yahoo.co.jp/articles/dda8daedf17a705f8ef98a4f9f58230e78822be0

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問題は、錯綜しています。

 

毎日新聞第一生命経済研究所のレポートは出典が示されていませんが、最近のものであれば、次の熊野英生氏のレポートと思われます。

 

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賃上げの世代間格差~成果分配よりも人材獲得~ 2025/03/26 第一生命経済研究所 熊野 英生

https://www.dlri.co.jp/report/macro/431233.html

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このレポートの主旨は、以下です。

「賃金構造基本統計調査」の詳細版で、2024年と2020年の間での賃上げ状況を調べてみた。年齢階層別にみて、50から54歳のところが相対的に伸び率が低かった。逆に、20歳代は賃上げ率が高い。大学院卒は、特に若年層の賃上げ率が高かった。企業はすでに賃金水準の高い年齢層はあまり上げず、人材確保を重視して若年層の賃金をより大きく引き上げている。

 

このレポートは、就職氷河期世代とは関係がありません。

 

石破茂首相は6月の関係閣僚会議で、氷河期世代を対象とした国家公務員の中途採用試験の実施や、自治体による職業訓練、リスキリング(学び直し)などを後押しする方針を示した>を読むと、新規に政策を行うように読めます。

 

しかし、日本語版のウィキペディア就職氷河期世代」には、次のように書かれています。

 

氷河期支援事業公務員採用枠日本では2019年の安倍内閣による「就職氷河期世代支援に関する行動計画2019」にもとづき、2020年度から日本政府と地方公共団体は新卒就活時に日本国内が不景気で採用抑制の煽りをうけた就職氷河期世代のみを受験可能対象とした公務員採用に取り組んでいる。2020年度以降から国家公務員で毎年150人以上を就職氷河期世代から採用することを目標に掲げたが、3年間で目標超えの500人以上が採用された。地方公務員で2020年度から2021年度で7,000人以上が、就職氷河期世代から採用された。日本政府は2023年度からの2年間を就職氷河期世代支援の「第2ステージ」と位置づけ、引き続き支援策を講じると発表している。

 

前回の対策では、7000人+500人ですから、大きく見積もっても8000人です。

 

ここでの疑問は、「問い」が、何かです。

 

何を解決するための政策でしょうか。

 

就職氷河期世代」の将来への不安が、老後の生活であれば、どれだけ、老後の資金が蓄えられるかが、課題になります。

 

つまり、老後の資金が不足すると思われる「就職氷河期世代」の人口が分母になります。

 

「ロスジェネ世代」は、1700万から2000万人います。

 

1991年は80%を超えていた大卒者の就職率は、2000年から2005年は60%を割り込みました。

 

差は20%あります。

 

仮に、差が10%、人口を2000万人とすれば、分母は、200万人になります。

 

前回の対策では、8000人が公務員になりました。

 

今回も8000人が公務員になれるかも知れません。

 

その場合に、この方法でカバーできる割合は、1%以下です。

 

つまり、実質的な効果は誤差の範囲です。

 

また、アベノミクスの間に、円安になり、円の価値は半減しました。

 

つまり、「就職氷河期世代」でない人の賃金も半額になっています。

 

更に、政府は、生産性をあげずに、賃金と物価の好循環というスタグフレーション政策を進めているので、物価が急上昇しています。

 

物価高は、インフレ税になるので、税収が上振れしています。これは、インフレ効果です。

 

というわけで、最初の<大臣は「問う」ことができる数的言語を持っているか>という問いに対する答えは、<大臣は「問う」ことができる数的言語を持っていない>になります。

 

言語がなければ、メンタルモデルの共有ができないので、議論は不可能です。

 

筆者は、ともかく、産業間労働移動ができるジョブ型雇用にしないと、労働生産性が上がらないので、スタートにもつけないと考えます。