1)和平の方程式 2025年6月25日12時05分作成
1-1)失敗の原因
パールは、「因果推論の科学」で、「問い」がなければ、推論ができないといいます。
イラン・イスラエル危機で、多くの専門家は、過去のデータを引用して推論します。
この推論の方法は、帰納法であり、過去のデータと今回の状況のパターンマッチングをします。
生成AIの推論は、基本的にパターンマチングです。
たとえば、対戦の時系列データが1000セットあったとします。
1セットの時系列データは、ある現在時刻TNを設定すれば、過去のデータと将来のデータに分割できます。
6月13日に始まったイラン・イスラエル危機では、時系列データが発生しています。
このデータの現在までのデータのベクトルを過去の対戦ベクトルと呼ぶことにします。
課題は、将来の対戦ベクトルを推定することです。
対戦の1000セットのデータについて、現在時刻TNを変化させて、過去の対戦ベクトルにもっともパターンマッチングする対戦の時系列データを抽出します。
抽出された時系列でデータについて、マッチングの近似度に合わせた重みをつけて将来のデータを合成すれば、将来の対戦ベクトルを予測することができます。
明示されていませんが、専門家の推論は、このようなものと思われます。
この方法の欠点は、推論は、学習データ(対戦の時系列データ1000セット)に、依存するという点です。
学習データに停戦が実現されてデータがほとんど含まれていない場合には、将来の対戦ベクトルは、戦争が継続することになります。
過去の歴史のデータの中で停戦が実現されたケースは、レアケースです。
したがって、実際に、生成AIモデルをつくって予測するまでもなく、この方法では、戦争が続くという予測になることがわかります。
これは、帰納法の致命的な欠陥です。
問題を解決する(平和を実現する)ためには、停戦の実現が必要です。
しかし、停戦の実現は、多くの場合、反事実です。
帰納法は、反事実を扱えないので、問題を解決できません。
この問題は、過去の対策が失敗しているすべての政策にあてはまります。
日本の少子化問題、経済成長問題、賃金が下がり続ける問題などでは、過去30年のデータは、失敗のデータです。
有識者と呼ばれる人は、帰納法の大家で、過去30年の失敗のデータに精通しています。
しかし、失敗の経験データは、問題解決の役には立ちません。
それでは、成功の体験データは役に立つでしょうか。
実は、成功の体験データも、交絡因子が変化すると役に立ちません。
ガソリンエンジンの成功体験は、EVの世界では通用しません。
中国という競争相手(交絡因子)がなかった、1990年頃までの日本経済の成功体験は、中国が世界貿易の中心になった2010年以降では、使えません。
帰納法を使っている「失敗の本質」は、その手法自体が、失敗の原因になります。
1-2)「問い」を立てること
パール流に考えれば、「問い」を立てることができれば、問題解決に向かって前進することができます。
イラン・イスラエル危機を考えます。
ここで、仮に、停戦が実現した場合を想定します。
「停戦が実現した場合には、どのような条件が成立しているでしょうか」
これが、「問い」です。
「停戦の設計図には、どのような条件が含まれているか」と言い換えることもできます。
イラン・イスラエル危機は、イスラエルが、一方的に戦争をしかけています。
イランには、実効のある武器は、ほとんど残っていません。
つまり、イスラエルが攻撃を中止すれば、停戦が実現します。
イスラエルが攻撃を中止しても、イランが攻撃を継続することは考えられません。
イスラエルが、イランに戦争をする理由は、イランには、核兵器を作りつつあるので、それを阻止する必要があるというものです。
イランが、核兵器を作りつつあるという状況がなくなれば、イスラエルが戦争を継続する根拠はなくなります。
ここで、重要なことは、「イランが、核兵器を作りつつあるという事実」ではなく、「イスラエルが戦争を継続する根拠」がなくなれば、停戦が実現することです。
「イランが、核兵器を作りつつあるという事実」の確認は、非常に困難です。
一方、「イスラエルが戦争を継続する根拠」をなくすことは、遥かに容易です。
イスラエルは、イランの核兵器製造を防止するために、アメリカにGBU-57大型貫通爆弾(MOP)を使うことを要請していました。
アメリカが、MOPを使った時点で、イスラエルには、「戦争を継続する根拠」がなくなります。なぜなら、MOP以上に有効な、「イランが、核兵器を作りつつあるという事実」を破壊する手段はないからです。
イランは、停戦に合意しています。
イスラエルは、イランから新たなミサイルが発射されたと報告している。イスラエル国防軍は「脅威を阻止するために防衛システムが稼働している」と述べています。
イスラエルは、戦争を継続したがっています。
トランプ大統領がカタールの米軍基地へのミサイル発射について「早期に通知」してくれたイランに感謝の意を表したと報じました。
トランプ大統領は、2週間の猶予を無視して、MOPを使いました。
イランは、表面的には、MOPを批判しています。
しかし、MOPの使用は、事前にイランに通報されていた可能性もあります。
「停戦と引き換えに、MOPを使用することは可能か」といった打診がなされた可能性があります。
ネタニヤフ首相は、イランの政権転覆をするまで、攻撃を止めないと言いました。
停戦に必要な条件は、ネタニヤフ政権が交代することです。
イランには、政権交代が必要かもしれません。
仮に、それを認めても、ミサイルで多数の死者を出す方法を使うべきではありません。
もっとよい手段があります。
トランプ政権には、優秀なブレインがいて、今回のシナリオを作成したと思います。
トランプ大統領は、イスラエルも和平に賛成したといっています。
筆者は、現時点では。イスラエルは賛成していないと思います。
トランプ大統領は、イスラエルが和平以外の選択ができないように、追い込んでいます。