イラン・イスラエル危機(5)

1)アメリカの参戦

 

トランプ米大統領は21日、イランの核施設3カ所を空爆したとSNSに投稿しました。イスラエルによるイランへの軍事作戦から距離を置いてきたが、方針を転換して直接的な攻撃に踏み切りました。イランをめぐる中東情勢は重大局面に突入しました。

 

トランプ氏は米東部時間21日午後10時(日本時間22日午前11時)から国民向けに演説して、「イランの主要な核濃縮施設は完全に破壊された」と強調しました。イランが和平協議に応じなければ「さらなる攻撃を仕掛ける」と明言した。

 

しかし、戦果の確認には、24時間程度が必要なので、この時点の評価は、フライングです。

 

攻撃対象は中部ナタンズ、フォルドゥ、イスファハンの核施設です。米FOXニュースによれば、地中深くにあるフォルドゥの施設への攻撃には地下貫通型爆弾「バンカーバスター」が6発使われ、それ以外の施設には、巡航ミサイル「トマホーク」30発を撃ち込まれました。

 

トランプ氏はSNSで「大きな成功を収めた。偉大な米国の兵士たちよ、おめでとう。今こそ平和の時だ」と表明。「イランは今すぐに戦争終結に同意しなければならない」と述べる一方、米国が報復攻撃を受ければ「強大な力で迎え撃つ」と投稿しました。

 

イランは反発し、ロイター通信によると、国営テレビは「この地域にいる全ての米市民・軍が標的となった」との見解を伝えました。

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米、核施設空爆 トランプ氏「成功」強調―イラン報復へ、中東緊迫 2025/06/22 時事通信

https://www.jiji.com/jc/article?k=2025062200166&g=int

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トッド氏の「西洋の敗北」の「米国と欧州(G7)は自滅した」状況になりました。

 

トッド氏の「西洋の敗北」で、ウクライナに関して「ロシアは米国に対して軍事的優位に立っている」といいました。

 

イランについていえば、「中国は米国に対して軍事的優位に立っている」といえると思います。

 

中国製部品がないと、米軍の装備は維持できないので、戦争にはなりません。

 

相互依存性が高くて、戦争ができない状態は、国連憲章(後述)でいえば、理想の状態になります。

 

イスラエルは、イランのミサイル能力に集中しています。

 

イスラエルに向けたイランのドローン攻撃は、100%打ち落とされています。

 

しかし、問題は、その手段とコストです。

 

ドローンは、非常に安価です。ドローン攻撃を100%打ち落とすことができても、その費用が、ドローンの製作費用以上であれば、コスト負担に耐えられなくなります。

 

ドローンに生物兵器を搭載すれば、うち落としても、ウイルス等の拡散を防止できません。

 

人工的に改変したウイルスは、条約違反ですが、害虫や雑草などありふれたものをばら撒くことは可能です。

 

日本では、アライグマやキョンの農業被害がありますが、農業被害を起こすことのできる動植物は多数あります。

 

国連のアントニオ・グテーレス事務総長は 土曜日、テヘランとテルアビブの間で8日間にわたる致命的な攻撃と反撃が行われた後、米国 がイランの核施設3カ所を爆撃したことを「危険なエスカレーション」と評しました。

 

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UN chief ‘gravely alarmed’ by US bombing of Iranian nuclear sites

https://news.un.org/en/story/2025/06/1164741

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軍事制裁は、憎悪の連鎖を生み出すだけで、問題を解決することはできません。

 

国連は、第2次世界大戦の憎悪の連鎖を断ち切る目的で作られています。

 

第1条

国際連合の目的は次のとおりです。

 

1.国際の平和と安全を維持し、そのために、平和に対する脅威の予防と除去、侵略行為やその他の平和の破壊の鎮圧のための効果的な集団的措置をとり、平和の破壊につながるおそれのある国際紛争や事態の調整や解決を平和的手段によって、正義と国際法の原則に従って行う。

 

2.人民の同権及び自決の原則の尊重を基礎として諸国間の友好関係を発展させ、並びに世界平和を強化するために他の適当な措置をとること。

 

3.経済的、社会的、文化的、または人道的な性格を持つ国際問題を解決するために、また、人種、性別、言語、宗教による差別なくすべての人々の人権と基本的自由の尊重を促進し奨励するために、国際協力を達成すること。

 

4.これらの共通の目的を達成するために各国の行動を調和させる中心となること。

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United Nations Charter

https://www.un.org/en/about-us/un-charter

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ロイターは、米のイラン攻撃に対する各国首脳の反応をまとめています。

 

賛成は、イスラエルのネタニヤフ首相だけです。

 

オーストラリア政府は、大臣ではなく、報道官がグレーの反応です。

 

それ以外は、非難です。

 

残念ながら、欧州の反応は載っていません。

 

非難が多い理由は、簡単です。非難しておかなければ、仮に、自国が侵略された時に、味方になってくれる国がなくなります。

賛成

イスラエルのネタニヤフ首相

 

非難

国連のグテレス事務総長

ベネズエラのジル外相

ニュージーランド(NZ)のピーターズ外相

メキシコ外務省

キューバのディアスカネル大統領

 

グレー

オーストラリア政府報道官

イランの核・弾道ミサイル計画は世界の平和と安全に対する脅威だと、われわれはかねてより明確に訴えてきた。今こそ平和の時だとする米大統領の発言に留意する。この地域の安全保障状況は非常に不安定だ。引き続き、緊張緩和、対話、そして外交を呼びかけていく。

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米のイラン攻撃、各国首脳の反応 イスラエル首相「おめでとう」2025/06/22 ロイター

https://jp.reuters.com/world/us/XM3QY6L4O5MIDLV64XUYSFYEYE-2025-06-22/

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NHKは、次のように報道しています。

 

アメリカのトランプ大統領がイランの核施設3か所に攻撃を行ったと発表したことを受けて、石破総理大臣は22日午後に総理大臣公邸で、関係省庁の幹部から最新の情報について報告を受けることにしています。その上で、日本政府としての対応を協議するものとみられます。

 

石破政権の幹部は、NHKの取材に対し「中東情勢がさらに深刻になるのではないかと懸念している。今回は民間人を巻き込むような攻撃ではないとは思うが、外務省を中心に邦人保護に万全を期さなければならない」と述べました。

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石破首相 午後に関係省庁と対応協議へ 米のイラン攻撃受け 2025/06/22 NHK

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20250622/k10014841221000.html

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つまり、日本政府は、米のイラン攻撃に対する正式なコメントを発していません。

 

これは、外交政策としては、異常な状態です。

 

かつての日本の外交は、国連中心主義でした。

 

そのラインで考えれば、国連の外交政策を支持するというコメントを出すことは可能です。



=>追記参照

 

2)見落とし

 

アメリカのニュースは、You tubeでみることができます。

 

試験的ですが、日本語の字幕、日本語の音声(自動翻訳)が使えます。

 

つまり、海外については、情報の古い日本のマスコミは不要です。

 

次のニュースの見落としに気づきました。

 

6月18日のNews Nationです。

 

News Nationは、イラン周辺のアメリカ軍基地衛星写真から、アメリカ軍が臨戦態勢にあることを説明しています。

 

そして、そのデータを見せて、イアン・ブレマー氏に、コメントを求めています。

 

6月18日の時点で、イアン・ブレマー氏は、「トランプ氏はイラン攻撃を承認するだろう」といっています。



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NewsNation トランプ大統領はイランへの攻撃を承認するだろう:イアン・ブレーマー 2025/06/18

https://www.youtube.com/shorts/IMCVhecUzH4

 

ユーラシア・グループの社長兼創設者であるイアン・ブレマー氏が#CUOMOに出演し、イスラエルとイランの紛争の今後の展開について自身の見解を語りました。詳細はこちら:https://www.newsnationnow.com/cuomo-show/trump-authorize-attacks-iran-bremmer/

 

トランプ氏はイラン攻撃を承認するだろう:イアン・ブレマー

 

ブレマー氏はイラン攻撃は賢明ではないと考えている

それでもなお、トランプ氏が自ら窮地に追い込まれていることを懸念している

フォルドゥには、イランで最も安全な核施設がある

 

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イラン周辺のアメリカ軍基地衛星写真から、6月18日には、アメリカの参戦の確率が非常に高いと考えている人がいました。

 

トランプ大統領が、トランプ氏が、イラン攻撃を承認した後であることを知っていれば、トランプ大統領の、Truth Socialの次の投稿も、随分異なった印象を与えます。

 

ドナルド・Jトランプ

 

@realDonaldTrump

マルコ・ルビオ国務長官と共に、コンゴ民主共和国ルワンダ共和国の間で、他のほとんどの戦争よりも激しい流血と死で知られ、数十年にわたって続いた戦争において、素晴らしい条約を締結できたことを大変嬉しく思います。ルワンダコンゴの代表は月曜日にワシントンを訪れ、条約に署名する予定です。今日はアフリカにとって、そして率直に言って、世界にとって素晴らしい日です!私はこれによってノーベル平和賞を受賞することはないだろうし、インドとパキスタンの戦争を止めたとしてもノーベル平和賞を受賞することはないだろうし、セルビアコソボの戦争を止めたとしてもノーベル平和賞を受賞することはないだろうし、エジプトとエチオピアの平和を維持したとしてもノーベル平和賞を受賞することはないだろう(エチオピアが建設した巨大ダムは、アメリカ合衆国の愚かな資金提供によって、ナイル川流入する水を大幅に減少させている)、中東でアブラハム合意を行ったとしてもノーベル平和賞を受賞することはないだろう。この合意は、すべてがうまく行けば、さらに多くの国々が署名し、中東を「時代」で初めて統一することになるだろう。いや、ロシア/ウクライナイスラエル/イランを含め、私が何をしても、結果がどうであれ、ノーベル平和賞は受賞しないだろうが、国民は知っているし、私にとってはそれがすべてだ!

2025年6月21日 午前6時58分

 

トランプ氏は、イラン攻撃を承認したので、「私が何をしても、結果がどうであれ、ノーベル平和賞は受賞しないだろう」と読めます。発言には、「私は、イラン攻撃を承認したよ」と暗示する目的があったと思われます。

 

 

追記:

 

記事を書いて、アップしてから、追加のニュースがありました。

 

石破首相は22日、アメリカがイランの核施設を攻撃したと発表したことについて、公邸で記者団に対し、「我が国としては、事態を早期に沈静化することが、まずは何よりも重要であると考えている。同時にイランの核兵器開発は阻止されなければならない」と述べた。

 

その上で、「現在、事実関係を確認中だ。重大な関心を持って、状況の推移を注視している」と述べた。

 

アメリカの攻撃を支持するかどうかについて問われた石破首相は、「これから政府内できちんと議論する。しかるべき時にお答えする」と述べるにとどめた。

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【速報】石破首相「事態の早期沈静化が重要。イランの核兵器開発は阻止されなければならない。重大な関心を持って注視」アメリカのイラン核施設攻撃 2025/06/22 FNN

https://news.yahoo.co.jp/articles/3cae56e1641238a726e01a501d816752c973a2f7

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結局、アメリカの攻撃に対しては、賛成か、反対かを、明確にしていません。

 

AL JAZEERAも、各国の立場を紹介しています。



賛成

イスラエル

米国の団体AIPAC(米イスラエル公共問題委員会)

 

非難(反対)

 

イラン

国連

ハマス

サウジアラビア

米国民主党

中国

ニュージーランド

メキシコ

ベネズエラ

米国の団体CAIR(米イスラム関係評議会)

 

グレー(中立)

イギリス

オーストラリア

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World reacts to US attacks on Iran 2025/06/22 AL JAZEERA

https://www.aljazeera.com/news/2025/6/22/everlasting-consequences-world-reacts-to-us-attacks-on-iran

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イギリスについて補足します。

 

6月21日の早朝、ミズーリ州ホワイトマン空軍基地から飛び立った精鋭のB-2ステルス爆撃機の一団はイランに向かいました。

 

英国ディフェンス・ジャーナル紙のGeorge Allison氏は、次のようにいいます。

 

 

米空軍のB-2ステルス爆撃機は、8機のKC-135ストラトタンカーによる空中給油支援を受けてミズーリ州ホワイトマン空軍基地から出発した。

 

航空機はインド洋にある米軍の戦略的基地であるディエゴガルシア島に向かっているとみられる。

 

飛行追跡データによると、カンザス州上空で4機ずつの2つの空中給油機グループが爆撃機と合流していた。B-2機は「MYTEE21」というコールサインを使用していたが、これは以前ステルス爆撃機の任務で使用されていたものだ。

 

この動きは、欧州と中東に向けた米軍資産の広範な再配置計画の一環として行われた。ここ数週間、戦闘機、タンカー、偵察機を含む数十機の米軍航空機がこの地域に展開している。また、米海軍の超大型空母2隻も、他の海空軍部隊と共に前方展開している。

 

B-2爆撃機は長距離攻撃任務用に設計されており、通常兵器と核兵器の両方を搭載可能です。地下施設など、厳重に防御された標的への侵入を目的として特別に設計された唯一のアメリカ軍航空機です。

 

ミッションを支援する8機のタンカーの存在は、長距離作戦を示唆している。国防総省は目的地や目標を公式に確認していないものの、飛行の規模と調整は、事前に計画された展開を示唆している。

 

現時点では、差し迫った攻撃の兆候は見られない。しかし、イランの核開発計画と地域における米国の姿勢をめぐる現在の緊張を考えると、今回の行動のタイミングは重要である。

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American B-2 stealth bombers deploy amid Iran tensions 2025/06/21 ukdj George Allison

https://ukdefencejournal.org.uk/american-b-2-stealth-bombers-deploy-amid-iran-tensions/

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問題は、B-2爆撃機が、どこで、給油を受けるかです。

 

上記の記事には、次のコメントがついています。

 

2025年6月21日 午前9時01分

 

最新の衛星画像でB2がディエゴガルシア島から消えたことが示されていたので、私は希望を持ち始めました。



フォルドゥの地下施設に対しB2爆撃機6機が計12発のGBU57で攻撃したといわれています。

 

George Allison氏のB-2爆撃機が、6機の内の何機かはわかりません。

 

ただし、KC-135ストラトタンカーが8機なので、6機全部ではないと思います。

 

B-2爆撃機は、KC-135ストラトタンカーによる給油をうけることができますが、利権性からするとディエゴガルシア(Diego Garcia)島の基地を使います。

 

BBCは次のようにいいます。

この 小さなインド洋の熱帯の島の基地は、 英国と米国が共同で運営し、現在は近隣のモーリシャスから借り受けているが、その規模とは釣り合わないほどの戦略的重要性を持っている。

 

イランから2,300マイル(3,700キロ)離れたこの基地は、米空軍のB2スピリット重爆撃機潜在的な中継基地となっている。

 

これらは、GBU-57大型貫通爆弾(MOP)を搭載できる世界で唯一の航空機です。この重量3万ポンド(13.6トン)の怪物は「バンカーバスター」と呼ばれることもありますが、これは控えめな評価です。ペトレイアス退役陸軍大将は今週、これを「マウンテンバスター」と呼びました。これは、イランのフォルドにある疑わしい核濃縮施設の地下深くを貫通できる唯一の兵器と考えられています。

 

米国がディエゴガルシア島を利用する場合、英国の許可が必要となる。リチャード・ハーマー司法長官は、英国軍の介入は法の枠内で行われるためには、純粋に防衛的な性質のものに限られると英国政府に助言したと報じられている。

 

B2爆撃機の航続距離はミズーリ州の米空軍基地からイランまでの距離とほぼ同じ約7,000マイルで、空中給油を行えば、米国は希望すればディエゴガルシア島を使わずにフォード島を爆撃することもできる。

 

ブローバック

 

イランは、自国を攻撃する国、あるいは攻撃を可能にしたと判断する国には報復措置を取ると何度も示唆しており、これは「ブローバックBlowback」と呼ばれることもある。

 

標的リストのトップは、地域各地の米軍基地と海上の海軍艦艇となるだろう。

 

しかし、英国が、例えばイランのフォルド核施設への攻撃のために、米空軍にディエゴガルシア島の基地の使用を許可した場合、その報復には英国も含まれることはほぼ確実だ。

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英国はイラン・イスラエル紛争に巻き込まれるのでしょうか?

Is the UK about to get dragged into Iran-Israel conflict? 2026/06/19 BBC Frank Gardner

https://www.bbc.com/news/articles/c36x1d071k8o

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つまり、B2爆撃機が、ディエゴガルシア島を利用する場合、英国は、事前にその情報を持っていることになります。

 

アメリカが参戦すると言ったかは不明ですが、B2爆撃機が、来ることをイギリスはしっています。なので、イギリスは、片足をアメリカ軍サイドに置いていることになります。