イラン・イスラエル危機(4)

1)トランプ大統領ノーベル平和賞

 

BBCのリーズ・ドゥーセット氏は、「イラン・イスラエル危機の最終局面の輪郭は、危険で予測不可能な対立の行方と、予測不可能なアメリカ大統領によって形作られる」といいました。

 

キーパーソンはトランプ大統領です。

 

1-1)トランプ大統領20日の記者会見

 

読売新聞は、次のように伝えています。

米国のトランプ大統領は6月20日、これまで世界各地の紛争を仲介してきたなどと記者団に訴え、「4、5回はノーベル平和賞をもらうべきだった」と述べた。トランプ氏は、かつて安倍元首相にノーベル賞委員会に自身を推薦するよう依頼するなど、同賞に強いこだわりを持っていると言われています。

トランプ氏が紛争仲介を自賛「4、5回は平和賞もらえた」…リベラル派だけが受賞すると不満 2025/06/21 読売新聞

https://www.yomiuri.co.jp/world/20250621-OYT1T50065/



1-2)パキスタン政府のノーベル平和賞推薦

 

NHKは次のように報道しています。

パキスタン政府は、先月のインドとの軍事行動の応酬をめぐり、アメリカのトランプ大統領が停戦の仲介役を果たしたとして、ノーベル平和賞に推薦することを決めました。

推薦理由はトランプ大統領について、「卓越した政治手腕を発揮して急速に悪化する情勢を緩和し、停戦を実現した。何百万もの人々に壊滅的な結果をもたらしたであろう、核保有国どうしの広範な紛争を回避した」としています。

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パキスタン政府 トランプ大統領ノーベル平和賞に推薦決定 2025/06/21 NHK

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20250621/k10014840911000.html

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トランプ大統領は、Truth Socialに次のように投稿しています。

 

ドナルド・Jトランプ

 

@realDonaldTrump

マルコ・ルビオ国務長官と共に、コンゴ民主共和国ルワンダ共和国の間で、他のほとんどの戦争よりも激しい流血と死で知られ、数十年にわたって続いた戦争において、素晴らしい条約を締結できたことを大変嬉しく思います。ルワンダコンゴの代表は月曜日にワシントンを訪れ、条約に署名する予定です。今日はアフリカにとって、そして率直に言って、世界にとって素晴らしい日です!私はこれによってノーベル平和賞を受賞することはないだろうし、インドとパキスタンの戦争を止めたとしてもノーベル平和賞を受賞することはないだろうし、セルビアコソボの戦争を止めたとしてもノーベル平和賞を受賞することはないだろうし、エジプトとエチオピアの平和を維持したとしてもノーベル平和賞を受賞することはないだろう(エチオピアが建設した巨大ダムは、アメリカ合衆国の愚かな資金提供によって、ナイル川流入する水を大幅に減少させている)、中東でアブラハム合意を行ったとしてもノーベル平和賞を受賞することはないだろう。この合意は、すべてがうまく行けば、さらに多くの国々が署名し、中東を「時代」で初めて統一することになるだろう。いや、ロシア/ウクライナイスラエル/イランを含め、私が何をしても、結果がどうであれ、ノーベル平和賞は受賞しないだろうが、国民は知っているし、私にとってはそれがすべてだ!

2025年6月21日 午前6時58分

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https://truthsocial.com/@realDonaldTrump/posts/114717932061341718

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1-3)遠藤誉氏の分析

 

遠藤誉氏は次のように分析しています。

先のインド・パキスタン戦争で、「トランプが停戦をさせた」ような話が出ていたが、実はインドが使ったフランス製の戦闘機が、パキスタンが使った中国製の戦闘機に惨敗している。

 

ところが習近平はこれを逆手に取って、「インド・パキスタン戦争を中止させたのはトランプだ」として、パキスタンに「トランプにノーベル平和賞を!」という売り込みで、「ノーベル平和賞受賞候補者」に持ち込んで、トランプによるイラン攻撃を阻止させようと企てているようなのだ。

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習近平の奇策か パキスタンを使い「トランプをノーベル平和賞候補」に推薦してイラン攻撃を阻止させる?2025/06/21 中国グローバル問題研究所 遠藤誉

https://grici.or.jp/6409

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つまり、習近平氏は、トランプ大統領に向かって、ノーベル平和賞が欲しければ、イラン・イスラエル危機から手を引いて、和平に持ち込めと言っています。

 

ジョン・フェン氏の分析では、イラン・イスラエル危機が拡大すると、当事国を除いて、もっとも大きなダメージを受ける国は、中国であると推測されています。

 

中国は、公式には、イランの原油を輸入していないことになっていますが、実際には、マレーシアを経由してロンダリングした原油を輸入していると推測されています。

 

現在、イランの石油施設は、攻撃の対象ではありませんが、イランの石油施設が破壊されれば、中国経済に大きなダメージを与えます。

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イランとイスラエルの戦争、米国より中国の「ダメージが大きい」理由...世界経済への影響を分析 2025/06/20 Newsweek ジョン・フェン

https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2025/06/557213.php 

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ロイターは、ノーベル平和賞候補推薦の動きはトランプ大統領にイラン攻撃を再考させる可能性があるといいますが、一方のインドは、停戦を受け入れたとはいっていません。

 

   まとめ 

 

    インド・パキスタン停戦におけるトランプ氏の役割に対する指名

    トランプ大統領は平和構築の努力が認められていないと不満を漏らしている

    この動きはトランプ大統領にイラン攻撃を再考させる可能性がある - アナリスト

 

パキスタンの一部アナリストは、今回の動きによりトランプ大統領イスラエルに加わり、イランの核施設を攻撃する可能性を再考する可能性があると指摘した。

 

政府はノーベル平和賞の候補者を推薦することができます。ワシントンからの反応はすぐにはありませんでした。インド政府の報道官はコメント要請に応じませんでした。

 

トランプ大統領の姿勢は、中国への対抗勢力としてインドを支持してきた南アジアにおける米国の政策を覆し、トランプ大統領とインドのナレンドラ・モディ首相とのこれまで親密だった関係に疑問を投げかけている。

 

先週カナダで行われたG7サミットで予定されていたトランプ大統領とモディ首相の会談は、トランプ大統領が早退したため実現しなかったが、その後両者は電話で話し、インド政府によると、モディ首相はパキスタンとの紛争について「インドは仲裁を受け入れておらず、今後も受け入れるつもりはない」と述べたという。

 

パキスタン議会の上院防衛委員会の元委員長ムシャヒド・フセイン氏は、トランプ大統領を平和賞に指名することは正当であると示唆した。

 

しかし、この動きはパキスタンで広く歓迎されたわけではなかった。同国では、トランプ氏がイスラエルのガザ戦争を支持したことで国民の感情が刺激されている。

 

ガザ地区におけるイスラエルパトロンであり、イラン攻撃の応援団長であるトランプは、いかなる賞にも値しない」と、パキスタンの著名な政治トークショー司会者タラット・フセインはXへの投稿で述べた。「数ヶ月後に彼が再びモディ首相の両頬にキスを始めたらどうなるだろうか?」

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Pakistan to nominate Trump for Nobel Peace Prize 2025/06/21 Reuter Saeed Shah

https://www.reuters.com/world/asia-pacific/pakistan-nominate-trump-nobel-peace-prize-2025-06-21/

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New York Postは、次のように、Truth Socialの記事と同じ内容を伝えています。

ドナルド・トランプ大統領は金曜日、自身とマルコ・ルビオ国務長官ルワンダコンゴの間で「素晴らしい」条約を締結したと発表しました。大統領は、ルワンダコンゴの代表が月曜日にワシントンにいて文書に署名すると述べました。

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Trump and Rubio secure Rwanda-Congo peace treaty amid Pakistan’s Nobel Prize nomination 2025/06/21 New York Post  Alexandra Koch, Fox News

https://nypost.com/2025/06/21/us-news/trump-rubio-secure-rwanda-congo-peace-treaty-after-pakistan-nominates-trump-for-2026-nobel-peace-prize/

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1-4)不明な点

 

以上の遠藤誉氏の分析で、大きな流れは確認できます。

 

ただし、それでも、疑問が残ります。あまりにも、タイミングが出来すぎています。

 

トランプ大統領は、パキスタン政府のノーベル平和賞推薦を事前に知っていたので、Truth Socialに「私が何をしようとも、私はノーベル平和賞を受賞しません」と書いたのではないでしょうか。

タイミングの一致は、偶然では、説明できない気がします。

 

遠藤誉氏は、次のようにいいます。

インドは1機が2.18億ドルという高い価格でフランスの軍用機「ラファール」を調達しているが、パキスタンは1機4000万ドル程度の低価格で中国の軍用機「殲10ce」を購入していると言われている。これまで世界の評価では、ラファールは4.5世代の戦闘機で、殲10c(輸出用は殲10ce)はそれより遥かに性能が悪い戦闘機とされてきた。ところが、初めての戦闘で、殲10ceは全く傷を受けることなくラファールを3機も撃墜したことが、軍事分野で大きな話題になった。中国は実戦で軍用機を使ったことがないので、中国にとっても初めての実戦経験になったわけだ。

 

もっとも、インドは撃墜されたことを認めず、あくまでもインドが勝利したことと主張し、Operation Sindoorの勝利を10日間祝う活動を今やったほどだ。どうやらフランスの軍事評論家は、ラファールの性能が悪いのではなく、あくまでもインド軍の操縦レベルが低かったのだと主張したようだが、あやふやなまま、戦争は終わった。

つまり、ラファールでは、戦争にならないらしいのです。

 

パキスタン政府は、先月のインドとの軍事行動の応酬をめぐり、アメリカのトランプ大統領が停戦の仲介役を果たしたとして、ノーベル平和賞に推薦しています。

 

一方、インドは、トランプ大統領が停戦の仲介役を受け入れたとはいっていません。

 

つまり、トランプ大統領が、パキスタンとインドとの軍事行動の応酬で、平和賞を受賞するためには、インドのモディ首相が、インドは、アメリカのトランプ大統領が停戦の仲介役を受け入れたといってくれる必要があります。

 

トランプ大統領の思考は、ディールです。モディ首相が、停戦の仲介役を受け入れたというのであれば、アメリカの戦闘機をインドへ輸出するかも知れません。