イラン・イスラエル危機(3)

1)新しいステージ

 

今回も、関連情報の引用です。内容は、抄録です。

 

1-1)フォルドの核施設とアメリカの参戦

 

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イラン・ナタンズ核施設の遠心分離機「破壊された可能性が高い」とIAEA イスラエルの攻撃で 2025/06/17 BBC

https://www.bbc.com/japanese/articles/cm2030mkmmdo

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国際原子力機関IAEA)のラファエル・グロッシ事務局長は16日、イラン中部ナタンズにある地下ウラン濃縮施設の遠心分離機について、13日に行われたイスラエルの攻撃によって「完全に破壊されたとまでは言えないまでも、深刻な損傷を受けた」可能性が高いとBBCに語った。

グロッシ事務局長はまた、13日に行われた別の攻撃により、イスファハン核技術センターにある4棟の建屋が破壊されたと明らかにした。破壊されたのは、中央化学研究所、ウラン転換施設、テヘラン研究炉向けの燃料製造施設、そしてUF6を金属化する建設中の施設。

グロッシ事務局長はBBCに対し、「イスファハンにも地下空間が存在するが、そこには影響が及んでいないようだ」と語った。

 

また、フォルドの核施設については、「損傷があったとしても極めて限定的だ」と述べた。



解説:

ラファエル・グロッシ事務局長の説明では、フォルドの核施設は残っています。



<<イラン攻撃への関与で真っ二つに割れるトランプ支持層 2025/06/18 Newsweek 冷泉彰彦 

https://www.newsweekjapan.jp/reizei/2025/06/post-1395.php

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フォルドゥ基地を破壊するには、大型の3万ポンド(13.6トン)のバンカーバスターでないと不可能です。3万ポンドのバンカーバスターを運んで投下できるのは、アメリカのB2爆撃機だけであり、この2つをイスラエル保有していません。つまり、アメリカが参戦しなければ、フォルドゥ基地を破壊できません。

 

共和党のクラシックな軍事タカ派の中には、イランの核開発の動きに対して、アメリカが実力で破壊すべきという意見が根強くあります。例えば、議会共和党の重鎮であるリンゼー・グラハム上院議員は、この際「(大型の)バンカーバスターを供与すべきだ」と明言しています。

その一方で、MAGA(アメリカを再び偉大に)運動で知られるコアなトランプ氏の支持者には、根強い「不介入主義」があります。他国のトラブルにはアメリカは関与する必要はないという強い孤立主義であり、アフガニスタン戦争やイラク戦争も強く否定する考え方です。

 

解説:

 

冷泉彰彦氏の説明は次の3点です。

 

第1に、 フォルドの核施設の破壊には、アメリカのB2爆撃機と3万ポンド(13.6トン)のバンカーバスターが必要であり、これを使うことは、アメリカが参戦することになる。

 

第2に、トランプ政権内には、軍事タカ派と「不介入主義」派がいて、対立を深めている。

 

第3に、トランプ大統領は、強硬論(軍事タカ派)へと徐々に傾いているようにみえる。



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米のイラン攻撃、数日内の可能性に政権高官備える-週末シナリオも 2025/06/19 Boolmberg Stephanie Lai、Saleha Mohsin、Catherine Lucey、Josh Wingrove

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2025-06-19/SY2WHSDWLU6800?srnd=cojp-v2

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米当局者らは、数日以内にイランに攻撃する可能性に備えている。事情に詳しい複数の関係者が明らかにしたもので、米国がイランとの直接的な軍事衝突に向けた体制整備を進めている兆候となる。

 

  匿名を条件に語った同関係者によると、状況が変わる可能性はある。週末に攻撃するシナリオを指摘する向きもある。関係者1人によると、複数の連邦機関の上層部も攻撃の準備を始めているという。

 

ホワイトハウスの当局者はあらゆる選択肢が引き続き議論の対象となっていると述べた。

 

  米当局者がイラン攻撃の可能性に備えていると伝えられたことを受け、アジア株の指標は一時0.7%下落した。

 

  トランプ氏の姿勢は、核問題でのイランとの合意に向け外交交渉を働きかけていた1週間前からの方針転換となる。

 

解説:

 

この記事も、トランプ大統領は、強硬論(軍事タカ派)へと徐々に傾いているようにみえるといいます。

 

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トランプ氏、イラン攻撃計画を承認 最終指示は保留 2025/06/19 WSJ

https://jp.wsj.com/articles/trump-privately-approved-attack-plans-for-iran-but-has-withheld-final-order-d54cbdb6?mod=hp_lead_pos1

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攻撃の可能性をちらつかせてイランに核開発を放棄させたい意向。

 

ドナルド・トランプ米大統領が上級補佐官らに対し、イラン攻撃計画をすでに承認したと17日夜に伝えていたことが分かった。事情に詳しい関係者ら3人が明らかにした。だがイラン政府が核開発プログラムを放棄するか見極めるため最終命令は保留されている。

 

解説:

 

この記事は、トランプ大統領は、強硬論(軍事タカ派)へと徐々に傾いているとまでは、言い切れないといいます。

 

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アングル:トランプ氏支持層、イラン問題で深刻な亀裂 MAGA離反の恐れも 2025/-6/19 ロイター Steve Holland, Jeff Mason

https://jp.reuters.com/economy/EGMFLW6DRBNRZN7M5PSVWO2YUU-2025-06-19/

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米国がイランへの軍事攻撃に動くべきかどうかを巡り、トランプ大統領の支持層に深刻な亀裂が生じ始めた。これまでトランプ氏を強力に応援してきた米国第一主義運動「MAGA」(米国を再び偉大に)推進派の中から、イランに対する軍事介入に猛反対する声が出てきているからだ。

 

解説:

 

この記事は、イラン・イスラエル危機によって、トランプ政権が分裂するリスクを述べています。

 

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米国のイラン攻撃は「パンドラの箱」開ける恐れ 専門家が警鐘 20205/06/19 CNN

https://www.cnn.co.jp/usa/35234476.html

A US strike on Iran could open a ‘Pandora’s box’ in the Middle East, experts warn 20205/06/18 CNN

https://edition.cnn.com/2025/06/18/middleeast/us-iran-pandoras-box-intl

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協議に詳しい2人の当局者によると、トランプ氏は米軍の資産を使ってイランの核施設を攻撃することに前向きになりつつあり、外交的解決に難色を示している。

 

イランの専門家は、米国によるイラン攻撃は、イラクアフガニスタンでの戦争よりもさらに困難な泥沼に引きずり込まれる恐れがあると警告する。それはトランプ氏の任期中、長期にわたって続き、イスラエルの要請に応じたことで米国の人命と資源に多大な犠牲を強いる対立となる可能性がある。

 

ワシントンのクインシー研究所執行副所長、トリタ・パルシ氏はCNNに対し、「米国によるいかなる攻撃も、イランによる地域内の米軍基地への全面攻撃、ひいては米イラン間の全面戦争を招く」と語った。

 

パルシ氏は、イランは米国との長期戦に耐えられないかもしれないが、米国にとっても容易な戦争にはならないとの見方を示す。

 

それは、イランが非常に大きな国であり、米国がイランの反撃能力を奪うには極めて多くの標的を攻撃しなければならないからだ。パルシ氏はトランプ陣営内でイランとの戦争に対する広範な支持が得られていないうちに、こうした事態が発生するだろうと指摘した。

 

欧州外交評議会の上級政策研究員、エリー・ゲランマイエ氏はCNNに対し、米国のイラン攻撃は「パンドラの箱」を開け、「トランプ大統領の残りの任期を食いつぶす可能性が高い」と話す。

 

パンドラの箱を開けてしまえば、事態がどうなるか全く分からない」「トランプ氏は過去にイランとの戦争の瀬戸際から引いたことがある。彼には今回もそうする力がある」(ゲランマイエ氏)

 

解説:

 

<米国のイラン攻撃は「パンドラの箱」を開け、「トランプ大統領の残りの任期を食いつぶす可能性が高い」>が、最大の論点です。

 

パンドラの箱という表現はエリー・ゲランマイ氏が、最初ではあります。

 

6月14日のNBCで取り上げられています。

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How Israel's Iran strikes might open 'Pandora's box' for the region — and the U.S. 2025/06/14 NBC Alexander Smith

https://www.nbcnews.com/world/iran/israel-attack-iran-middle-east-us-pandora-box-strikes-retaliation-rcna212798

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英国の防衛・安全保障シンクタンク、王立統合安全保障研究所の上級研究員ブルク・オズチェリク氏によると、その潜在的な影響を過大評価するのは難しいという。

 

パンドラの箱は大きく開かれてしまった」と彼女は電子メールで送ったブリーフィングで述べた。「次に何が起こるかが、今後何年にもわたる地域の安全保障秩序を決定づけることになるかもしれない」

 

ブルク・オズチェリク氏ですが、Xの発言を読むことができます。

 

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Burg Ozcelik

https://x.com/BurcuAOzcelik/status/1934537762209722520 2025/06/16

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イランの状況は非常に複雑であり、政権交代のシナリオについては長きにわたり議論が続いています。過度に一般化したり、結論を急いだり、「政権交代」のシナリオを主張したりすることは、イランの地域、州、そして準州レベルでの内紛や不安定化をいかに引き起こす可能性があるかを考慮することなく、避けるべきです。 

 

注目すべき重要な点は、1) 誰がイランの要職や意思決定に影響力を行使し、外交的に緊張緩和を交渉し、その後の事態を収拾できるか、そして 2) イスラエルがイランの軍事目標と核計画に対して複数の標的を狙った戦略的奇襲作戦を開始することを可能にしたイランの情報機関の失策をめぐり、主要機関で内部精査が行われることによる結果と波及効果である。 

 

明らかなのは、テヘランが現在、可能な限り強い言葉で政権の存続を優先していることである。これは、この敵対行為の段階を終結させ、交渉に復帰するための有効な出口は何かという疑問を提起する。現段階では、そのような道筋は遠いように思われ、どちらの側も譲歩したり方針転換したりする確かな意思を示していない。

 

解説:

ポイントは、<イスラエルがイランの軍事目標と核計画に対して複数の標的を狙った戦略的奇襲作戦を開始することを可能にしたイランの情報機関の失策をめぐり、主要機関で内部精査が行われることによる結果と波及効果>です。イラン内に、イスラエルのスパイがいる可能性があります。簡単に言えば、イスラエルは、既に、スパイを撤退させているかも知れませんが、今後は、今までの同じレベルのイランの内部情報を得ることができなくなると思われます。

 

なお、バンカーバスターは不要という主張もありますが、説得力は弱いです。

 

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イスラエル、米バンカーバスターなくてもイランのフォルド核施設無力化は可能」 2025/06/19 中央日報

https://news.yahoo.co.jp/articles/9a7b7e142808f9e4997877697b19b5ea97611285

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英国の地政学的リスク分析会社シビルラインの最高経営責任者(CEO)ジャスティン・クロムフ氏は18日(現地時間)、英日刊テレグラフのインタビューで、イスラエルはフォルドが招く脅威を緩和する計画もなくこの戦いに入ったとし、想像しがたいと明らかにした。

 

続いて「フォルドを無力化するためには先端米国武器を動員することが唯一の方法だが、イスラエルが接近地点、換気口、電力供給装置を精密打撃すれば該当施設の稼働に重大な影響を及ぼすことが可能という意見が増えている」と述べた。

 

広範囲な攻撃でなく外科手術のような精密打撃でフォルド核施設の遠心分離機の稼働を事実上不可能にできるとテレグラフは伝えたが、こうした作戦が及ぼす被害は一時的という指摘も提起されている。

 

戦略国際問題研究所(CSIS)のランボ研究員は「イスラエルがフォルド核施設を一時的に稼働不可能に攻撃することはあっても、永久的な被害を与えるには米国の支援が必要だ」と指摘した。

 

ランボ研究員は進入トンネルや換気口は短期間で修理が可能であり、攻撃が施設の完全な閉鎖に十分であるかは判断しにくいと評価した。



1-2)イランの核兵器

 

次の記事は、作戦会議の結果です。

 

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トランプ氏、作戦司令室で開いた会合終了-イラン巡る計画は謎のまま 2025/06/19 Boomberg

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2025-06-18/SY230EDWRGG000?srnd=cojp-v2

 

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トランプ米大統領は18日、中東情勢を巡りホワイトハウスのシチュエーションルーム(作戦司令室)で国家安全保障会議(NSC)当局者らとの会合を開いた。トランプ氏は米国がイスラエルによる対イラン軍事攻撃に加わるかどうか検討を重ねている。

ただホワイトハウスは、イラン核計画の破壊を目的とした攻撃への参加を大統領が決めたかどうかについて、ほとんど手掛かりを示していない。

米紙ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)が事情に詳しい関係者を引用して報じたところでは、トランプ氏は今週早い時期にイランを標的とした軍事攻撃計画を承認したが、イラン側が米国の要求に応じるかどうか見極めるため、最終的な承認は保留した。

 

トランプ氏は大統領執務室で「何をすべきかについて考えがある」と発言。「特に戦争のような状況が変わる場合には、直前になって最終判断を下したい」と述べた。

 

イランのアラグチ外相はSNSへの投稿で、同国として引き続き「外交にコミットしている」とし、核兵器保有しようとしたことはなく、これからもそれを求めないと表明した。トランプ氏も過去何週間にもわたり、外交的解決が望ましいとしてきたが、イラン外相が示した方針では、トランプ氏が攻撃を思いとどまるには不十分な可能性がある。

 

トランプ氏は、イランが核兵器保有するまで「あと数週間」だったと指摘した。この見解は、米国の一部の情報機関の分析よりも断定的となっている。

 

米国が同盟国に非公式に伝えている立場は、全般にトランプ氏の公の発言と一致しており、イランが降伏しなければ攻撃に加わると脅していると、西側諸国の政府関係者2人が明かした。これらの関係者によれば、行動は18日夜にも、今後24時間以内に実行される可能性があるという。関係者はいずれも匿名を条件に語った。

 

トランプ氏のあいまいな発言は、深刻化するイスラエルとイランの対立に新たな緊張を加えている。中東での米国の戦争に反対する姿勢を過去10年にわたって訴えてきた同氏は、米国がこの紛争に関与すべきかどうか支持者の間の意見対立に直面している。

 

解説:

<イラン巡る計画は謎のまま>なので、情報はありません。

 

イランのアラグチ外相は「核兵器保有しようとしたことはなく、これからもそれを求めないと表明」しています。

 

イラク戦争では、アメリカはイラク大量破壊兵器を隠し持っていると主張して、先制攻撃を主張します。

 

しかし、結局、大量破壊兵器はありませんでした。

 

イランのアラグチ外相の「核兵器保有しようとしたことはなく、これからもそれを求めないと表明」が真実であれば、イランは、濡れ衣を着せられていることになります。

 

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イランの核開発はどこまで進んでいたのか イスラエル、核物質「兵器化」主張も実態は不明 2025/06/18 産経新聞

https://news.yahoo.co.jp/articles/5cecad15ce6b89702b389a727ff2ed1bb4231377

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イスラエルの主張、疑問視する向きも

 

イスラエル軍は13日、「イランの核兵器獲得秘密計画」と題した資料を公表し、イランがウラン濃縮以外にも核物質の「兵器化」を進めていたとする議論を展開した。

 

資料では、イランが①ウランの濃縮②核兵器を起爆する中性子発生装置の開発③核兵器に必要なプラスチック製爆発物の製造ラインの再開-を進めてきたとしている。

 

一方、英誌エコノミストは、軍が公表した一連の資料では証拠が明確ではないとして、信頼性に疑問を呈している。

 

実際、米国のギャバード国家情報長官は今年3月、議会への報告で「イランは核兵器を製造しておらず、ハメネイ師も核兵器計画を承認していない」と明言している。米CNNテレビも米情報機関関係者の話として、イランは積極的に核兵器の開発に取り組んでいなかったと報じている。

 

解説:

産経新聞は、イスラエルのイランの核物質「兵器化」の主張もデータがなく、実態は不明であるといいます。

 

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【解説】 イランはどれくらい核兵器保有に近づいているのか 2025/06/19 BBC

https://www.bbc.com/japanese/articles/c86g9442gy5o

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解説:

 

BBCの記事は、動画なので、文字はありません。

要点は、産経新聞と同じで、イランの核物質「兵器化」の主張もデータがなく、実態は不明であるということです。

 

BBCは、更に踏み込んで、イスラエルは、公式には認めていないが、核兵器を所有してる可能性が高いといいます。つまり、イスラエルの主張は、イスラエルは、核兵器を持ってもよいが、イランは核兵器を持ってはいけないという、ダブルスタンダードであるといいます。

 

1990年以降、イスラエルは、核兵器を持っていると考えている専門家が多いです。

 

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イスラエルの核戦力一覧 長崎大学

https://www.recna.nagasaki-u.ac.jp/recna/nuclear1/nuclear_list_bn/nuclear_list_201806/israel201806

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1-3)根拠の役割

 

イラク戦争では、アメリカはイラク大量破壊兵器を隠し持っていると主張して、先制攻撃を主張します。

 

しかし、結局、大量破壊兵器はありませんでした。

 

これは、アメリカは、戦争がはじめられさえすれば、その理由は何でもよかったことを示しています。

 

この推論の方法は、日本でもみられます。

 

土居丈朗氏は、次のようにいいます。

 

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与党が与党であるための「PB黒字化」、”骨太”で先送りしたが旗印は下ろさず...コロナ禍前までの「債務残高引き下げ」時期も暗示されている 2025/06/17 東洋経済 土居 丈朗

https://toyokeizai.net/articles/-/884862?display=b

 

政権にとって基礎的財政収支黒字化が重要な訳 2020/08/11 東洋経済 土居 丈朗

https://toyokeizai.net/articles/-/367834

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これまで、骨太方針では、2006年に基礎的財政収支プライマリーバランス:PB)を2011年度までに黒字化するという目標を掲げて以来、財政健全化目標を骨太方針で明記して、時の政権がその収支改善に取り組むということを続けてきた。

 

しかし、一度も黒字化目標は達成できずに今日まで来た。

 

PB黒字化という目標を裏付けとして、どの歳出を増やし、どの歳出を減らすかという生殺与奪の権を政権が握り、政権基盤を固める手段として与党が与党であるためにわが国で用いられてきた。

 

PB黒字化目標は、予算要求する側からは憎いものかもしれないが、政権の求心力を必要とする側からすれば破棄できない旗印といえる。

 

要するに、<どの歳出を増やし、どの歳出を減らすかという生殺与奪の権を政権が握り、政権基盤を固める手段として与党が与党である>ことができれば、根拠は何でかまわなかったことになります。

 

こう考えれば、基礎的財政収支の黒字化目標は、一度も達成できずに今日まで来たことがわかります。

 

基礎的財政収支が黒字化すれば、「どの歳出を増やし、どの歳出を減らすかという生殺与奪の権利」を放棄する必要があります。黒字分は、フリーハンドになるからです。

 

これは、イラクに、大量破壊兵器がなかったことと同じ論理構造です。

 

そもそも、三権分立では、内閣が予算(法案)をつくるべきではありません。

 

内閣が、予算案を作成した場合、国会は、予算案を大幅に修正する権利をもつ必要があります。

 

基礎的財政収支黒字化は、これをブロックする根拠になっています。

 

問題は、基礎的財政収支黒字化ではなく、国会(立法府)が予算案をつくることです。

 

1-4)危機の状況のまとめ

 

6月19日現在で、危機の状況を最もよくまとめた記事は、BBCのリーズ・ドゥーセット氏のものです。

 

全文を読むことを推奨します。自動翻訳でも、十分意味が通じます。

 

ドゥーセット氏は、パラグラフの論理で考えますので、記事は、「問い」と「答え」でできています。

 

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【解説】 イスラエルの作戦、何を目指しているのか? 2029/06/19 BBC リーズ・ドゥーセット国際担当主任編集委員

https://www.bbc.com/japanese/articles/crl08k67plro

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Q1:ネタニヤフ氏が攻撃初日の13日未明に宣言したように、「現在のイスラム政権の核と弾道ミサイルの脅威」を終わらせることが、最終目的なのだろうか。

A1:英シンクタンク「チャタムハウス(王立国際問題研究所)」で中東・北アフリカプログラムのディレクターを務めるサナム・ヴァキル博士は、「体制転換は、短期の激しい紛争で実現するのは難しそうだ。イランの核開発計画を大きく後退させることは、難しいかもしれないが、ある程度は実現可能だ」といいます。

 

Q2:アメリカとイランの協議を終わらせることも含まれているのだろうか。この協議では、アメリカが厳しい制裁を解除するのと引き換えに、イランは核開発計画を抑制するという、新たな合意が検討されてきた。

 

A2:欧州外交問題評議会の中東・北アフリカプログラムのエリー・ゲランマイヤ副代表は、「イスラエルのこれまでなかった規模の攻撃は、トランプ大統領がイランの核開発計画の封じ込めで合意に至る可能性をつぶすために行われた」と話します。



Q3:ネタニヤフ氏がイランの人々に向けて発した「自由実現の道を切り開く」というメッセージは、イランにおける宗教指導者の支配を終わらせるという、さらに大きな目的を暗示したものなのだろうか。

 

A3:米ジョンズ・ホプキンス大学高等国際関係大学院のヴァリ・ナスル教授(中東研究・国際問題)は、今年出した著書「Iran's Grand Strategy」で、「イランはイスラエルが、イランの国家としての能力や軍の機構を徹底的に低下させ、イランとイスラエルのパワーバランスを決定的な形で変え、できればイランを総体的に転覆させたいと望んでいると考えている」といいます。

ナスル氏は、現在のイラン社会の雰囲気について、「非常に不人気だった将軍4、5人が殺された当初は、人々はほっとしたかもしれない。だが今では、自分たちの集合住宅が攻撃され、民間人が殺され、国のエネルギーと電気のインフラが攻撃を受けている。イラン国民の大半が、自分たちの国を爆撃している侵略者を支持し、それを解放とみなすようになる、などといったシナリオは考えられない」といいます。

ネタニヤフ氏の発言は、より広範な標的をほのめかし続けている。

 

英誌エコノミストイスラエル特派員で、ネタニヤフ氏の伝記を著したアンシェル・フェファー氏は、「イスラエル情報機関の一致した考えは、イランの体制崩壊の予測や工作は無意味だということだ。スパイの長官らとは違い、ネタニヤフはイランの体制崩壊の予測や工作を実際に信じている可能性が高い。彼はいま、チャーチル的なムードの中にいる」といいます。

 

結論:

 

結局のところ、この最終局面の輪郭は、危険で予測不可能な対立の行方と、予測不可能なアメリカ大統領によって形作られることになる。

 

アメリカ中東プロジェクトの代表で元イスラエル政府顧問のダニエル・レヴィ氏は「成功か失敗かは、アメリカを引きずり込めるかどうかで圧倒的に決まる。アメリカだけが、結末と着地点を決定することで、近い将来、これをタイムリーに終結に導くことができる」とみている。

 

解説:

 

最終局面の輪郭は、予測不可能なアメリカ大統領によって形作られる。

 

1-5)各国への影響

 

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コラム:イラン・イスラエル紛争で揺らぐ中国の中東戦略 2025/06/19 ロイター Ka Sing Chan

https://jp.reuters.com/opinion/forex-forum/OFOC7OHGANNY3ETSBMKTE5AJ2A-2025-06-18/

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中国にとって、イランは単なる原油供給国以上の存在だ。イラン産原油を大幅な割引価格で輸入する恩恵を受けるだけでなく、2021年に締結した4000億ドル(約58兆円)の協定に基づき、イランへの戦略的なインフラ投資を増やしてきた。イランの体制が著しく弱体化または体制転換が起きた場合、中国は中東における重要な外交的影響力を失う。

イランの原油輸出抑制を図る米国の制裁にもかかわらず、イランは中国にとってますます重要な供給国となっている。中国税関のデータによると、主要な積み替え拠点であるマレーシアから中国への原油輸送量は、2021年から3倍に増加し昨年は7000万トンに達した。これはロシア、サウジアラビアに次ぐ規模だ。

 

さらに、イランは地理的に習近平国家主席が掲げる「一帯一路」構想で重要な戦略的役割を担い、2023年の時点で、対イランの海外直接投資60億ドル相当の3%を中国が占めている。

 

イランは2023年に中国が主導する地域協力組織「上海協力機構(SCO)」に加盟した。創設メンバーであるインドは14日、イスラエルの攻撃を糾弾するSCOの声明に異例の反論を行った。

 

解説:

中国にとって、イラン産原油を大幅な割引価格で輸入する恩恵を受けられなくなるだけでなく、イランへの戦略的なインフラ投資にもダメージが生じます



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ベトナム・ドン、最安値更新-中東情勢緊迫でアジア資産売り 2025/06/10 Bloomnerg Karl Lester M Yap、Linh Vu Nguyen

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2025-06-19/SY32ZZDWRGG000?srnd=cojp-v2

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19日の外国為替市場でアジア通貨が売られ、ベトナム・ドンが対ドルで最安値を記録した。

 

べトナムもマイナスのダメージを受けています。

 

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ウクライナ戦争に重大な変化もたらすイスラエルのイラン空爆、ロシアの無人機生産が激減へ 2025/06/19 JBPress 西村 金一

https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/88975

https://news.yahoo.co.jp/articles/b6bdb5963bceb5f50f997ed6f8609752bb46612e

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ロシアは、2024年8月から、ミサイル攻撃をより安価な無人機(ドローン)攻撃に切り替えている。

 

ロシアの無人機部品の調達先は、イランと中国だと言われている。

 

イランは、イスラエルへの反撃にミサイルや無人機をできるかぎり多く必要としている。

 

このような状況では、イランはロシアに部品を供給する余力はない。逆に、ロシアから支援を受けたいのがイランである。

 

イスラエルとイランが急転直下、停戦の話をまとめたとしても、イランにとりミサイルや無人機の増産は必須である。

 

当面は、ロシアに輸出できる余力はないだろう。

 

したがって今後、イランから無人機の部品の供給が急速に減少するのは間違いない。また、ロシアの無人機生産工場もウクライナの長距離大型ドローンで攻撃を受けている。

 

解説:

ロシアは、ドローンの部品の供給に問題を抱えています。

 

ドナルド・トランプ米大統領は18日、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領によるイスラエル・イラン紛争の仲裁の申し出を拒絶し、プーチン氏はまずウクライナにおける自国の戦争を終結させるべきだと述べました。

 

ようするに、ドローンがなければ、ウクライナ戦争にまけるだろうという主張です。

 

1-6)日本の影響

 

残念ながら、日本の影響を分析している記事は、少ないです。木内登英氏は、継続的に記事を書いていますが、テーマは原油価格です。

 

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中東情勢の緊迫化と金融市場の動揺:シナリオ別日本経済への影響試算 2025/06/13 NRI 木内 登英

https://www.nri.com/jp/media/column/kiuchi/20250613_2.html

 

中東情勢の一段の緊迫化を受けて石破首相がガソリン価格安定化策の実施を表明 2025/06/19 NRI 木内 登英

https://www.nri.com/jp/media/column/kiuchi/20250619_2.html

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ロシアでは、イラン製のドローンの部品の入手が困難になりました。ロシアはウクライナ戦争に負けるのでしょうか。

 

それとも、中国が、ロシアに、ドローンの部品を供給するのでしょうか。

 

インドのモディ首相は、中国に釘をさしましたが、効くでしょうか。

 

トランプ大統領は、関税によって、分断を拡大しました。

 

イスラエルのイラン攻撃は、分断を更に拡大しています。

 

中国には、イスラエルと対立する意図はありません。しかし、危機が、中国経済にダメージを与えるとなると、旗色を明確にする必要が出てきます。

 

世界大戦がおきる条件は、各国が旗色を明確にせざるを得ない立場に追い込まれていくときです。

 

日本は、ロシアの天然ガスが入手できなくなるかも知れません。

 

中国と対立すれば、中国のレアアースが入手できなくなるかも知れません。

 

中国は、レアアースの輸出禁止を過去にしたことがあります。

 

しかし、同じ政策でも、世界が分断に向かっているときには、効果が全く異なります。

 

遠藤誉氏は、2024年10月に、G7とBRICSを比較しています。

中露を軸とした「BRICS+」の狙い G7を超えて「米一極支配からの脱出」を図る 2024/10/30 中国グローバル問題研究所 遠藤誉

https://grici.or.jp/5725

 

BRICSは、ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ、イラン、エジプト、UAEエチオピアの9カ国からなります。BRICSは、パレスチナを独立国家として承認しています。

 

BRICSの世界人口比は45%、G7の世界人口比は約10%に過ぎません。

 

GDPに関してはG7の方が大きいものの、購買力平価GDPに関してはBRICSの方が大きいです。

 

2025年1月に、インドネシアは、BRICSに正式加盟(10番目の加盟国)しています。

 

インドネシアパレスチナと正式な国交を結んでいます。実際、インドネシアパレスチナの独立を強く支持しており、ジャカルタにはパレスチナ大使館も設置されています。

 

この時点で、BRICSGDPは、G7を超えた可能性があります。

 

2025年6月14日、ベトナム外務省は、ベトナムが新興経済国グループ「BRICS」のパートナー国に正式承認されたことを明らかにしています。ベトナムは、ベラルーシボリビアキューバカザフスタン、マレーシア、タイ、ウガンダウズベキスタン、ナイジェリアに続く10か国目のBRICSパートナー国となりました。

 

なお、BRICSに、新加盟4か国(イラン、エジプト、UAEエチオピア)が加わった時には、それまでのBRICSと区別するために、BRICS+という名称が使われましたが、現在では、BRICSに名称が統一されています。

 

エマニュエル・トッド氏の「西洋の敗北」のシナリオで考えると、中国が、ロシアに、ドローンの部品を供給する可能性が高いと思われます。

 

中国は、イスラエルが勝った場合とイランが残る場合を比較するはずです。

 

そこで、中国が、イスラエルを支持する理由を見つけることは困難です。

 

現在は、イスラエルは、アメリカの代理戦争になっています。

 

今後、アメリカが参戦すれば、パンドラの箱(分断の世界)は、完全にあいてしまいます。

 

こうしてみると、G7のイスラエル支持決議は、歴史的な転換点になってしまうリスクがあります。

 

G7で、日本は、敗北する「西洋」グループであることを明示しています。