1)確率
AIが間違いをすると非難する人がいますが、人間も間違いをします。
コマツは、採掘現場に、自動運転の大型トラックを随分前から提供しています。
採掘現場には、人はほとんどいませんので、事故は、脱輪等になります。
こうした事故の確率は、自動運転の方が、人間より低くなっています。
パールの「因果推論の科学(p.74)」では、「天然痘のワクチンがヨーロッパに初めて導入された時に、当時のデータでは、天然痘そのものでなくなる人より、天然痘の予防接種で亡くなる人の方が多いことがわかっていた」という事例が紹介されています。確率を考えなければ、天然痘のワクチンは接種すべきでないことになります。
この問題は、コロナウイルスのワクチンでもおこり、ワクチン接種をしない人がいました。
つまり、確率が理解できないと、まともな日常生活を送ることができません。
義務教育の目的は、まともな日常生活をおくるために必要な知識を身につけさせることです。
計測誤差とテストをうける生徒の勘違いもあるので、理解度が、100%にはなりませんが、100%を目指す必要があります。
欧米では、習得できない場合には、教科単位で、留年して再履修します。これは、習得できずに卒業すれば、社会生活を送るうえで、圧倒的な不利になることを回避する目的があります。
ところが、学力問題に関する検討は、帰納法を使って、過去のデータを振りまわす人が多いです。
問題は、平均点の変動ではなく、どうして、100%に近づけるかという点にあります。
学力観といった形而上学は、役に立ちません。
確率が理解できなければ、論理的に正しい推論ができないのです。
EBM等の意思決定は確率に基づきます。
ベイジアンネットワークに基づくAIは、確率を使って推論します。
つまり、確率が理解できなければ、AIに負けてしまいます。
そこで、焦点を確率に絞ってみます。
そうすると、確率の概念の前に、分数が理解できている必要があります。
2)教員の質
東京財団政策研究所ウェビナーでは、次のような議論がなされました。
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「教職の制度設計の再構築」が問題になってはいるものの、躍起になっているのは文科省や教育委員会など直接の利害関係組織だけ。教員のなり手が不足すれば、当然、質も下がり、日本の存亡にもかかわる、ということを政財界が理解しているようには見えません。切迫感が乏しいのです。それは国の全国学力テストだけでなく、PISA、TIMSSなどの国際調査が、日本の子どもたちの学力に問題がない、ということを示しているからでしょう。
ところが現実社会はそう語っていません。「読み・書き・そろばん」という基礎学力に課題があるのは、小中高校の児童生徒だけでなく、大学生でも同様。企業でも問題視され、社員対象の学力テストを実施している企業も現れています。
根底にあるのは、公立小・中学校の教員の「学力不足」です。教員の学力テストを実施した例はないけれど、大学全入時代や教員採用試験の実態から、教員の「読み・書き・そろばん」能力に大きな問題があることは、当然の結果と言えるでしょう。
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【開催報告】「1/2+1/3=2/5 ~分数ができない大人~」東京財団政策研究所ウェビナー 2023/03/31 東京財団
https://www.tkfd.or.jp/research/detail.php?id=4220
【第11回】½+⅓=⅖ 〜分数ができない大人〜[前編](東京財団政策研究所ウェビナー)
https://kyoikutsushin.jp/webiken/webiken11-01.html
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ここで指摘しているように、「PISA、TIMSSなどの国際調査が、日本の子どもたちの学力に問題がない、ということを示している」ことは、義務教育の学力とは関係がありません。
舞田敏彦氏は、次のようにいいます。
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教員就職者の37.9%が偏差値50未満の私大卒となっている。
教員就職者の出身大学・学部のランクは、全学生でみた場合よりも、低いほうに偏っている。教員の不人気もあり、最近では学力が同世代の中央値にも満たない人が教壇に立つことも多くなっているだろう。「倍率が高かった20年前であれば採用されなかったような人が、教壇に立っている」。こういう声が現場でも聞かれる(「『できていないんです』泣き始めた新人教員 大量採用時代、育成に苦悩」西日本新聞2021年9月12日)。
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教職不人気で加速する「教員の学力低下」の深刻度 2025/02/05 Newsweek 舞田敏彦
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2025/02/535925.php
学力調査の結果は、
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筆者には、偏差値で差別をする意図はありません。しかし、私大卒では、数学の入学試験がない場合が多いですし、偏差値50未満の私大卒では、なおさら、数学の入学試験がない場合が多いです。
つまり、分数と確率が理解できていない人の割合が高いです。
3)分数の理解
「全国学力・学習状況調査」のデータは、次で、入手できます。
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教育課程研究センター「全国学力・学習状況調査」
https://www.nier.go.jp/kaihatsu/zenkokugakuryoku.html
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令和4年度数学の「2(3)」の問題を取り上げます。
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りんごの果汁が20%ふくまれている飲み物が500mL あります。
この飲み物を2人で等しく分けると、1人分は250mL になります。
250mL の飲み物にふくまれている果汁の割合について、次のようにまとめます。
250mL は、500mL の 1/2 の量です。
このとき、 (ア)
上の(ア) にあてはまる文を、下の 1 から 3 までの中から1つ選んで、その番号を書きましょう。
1 飲み物の量が 1/2 になると、果汁の割合も 1/2 になります。
2 飲み物の量が 1/2 になると、果汁の割合は2倍になります。
3 飲み物の量が 1/2 になっても、果汁の割合は変わりません。
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解説には、正答率21.6%、未回答1.0%と書かれれいます。
東京財団政策研究所ウェビナーではあるパネラーが次のように発言しています。
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この問題の正答率は21.6%でした。約1/5です。ジュースを二つに分けても、果汁の割合は変わらない。果汁の割合、つまり味は変わらないと正しく認識しているのが21.6%ということです。味が変わらないことは誰だって分かるんですが、それを算数の言葉、数学の言葉に直せないのがこんなにいると理解したらいいと思います。
一番多い誤答が1で67.7%、飲み物の量が1/2になると果汁の割合も1/2になると考えてしまったのです。
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「2(3)」の問題は、3択です。
つまり、分数を全く理解していない場合の正答率の期待値は、33.3%です。
正答率が、21.6%でしたので、この問題からは、教育効果があったというファクトは得られなかったということになります。
3択問題では、教育効果を判定することは困難です。
確率を無視すれば、リスクゼロになります。
しかし、エラーは不可避なので、リスクゼロはコストがふえるだけで、安全性はあがりません。
専門家は、「ゼロリスクを目指す危険性」を指摘してきました。
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https://www.env.go.jp/chemi/entaku/kaigi07/shiryo/yasui/yasui.pdf
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専門家は、確率を理解しています。
専門家は、一般国民も、確率を理解できるという前提で、話をします。
しかし、分数が理解できなければ、確率は理解できません。
確率が理解できる人の割合は、どれくらいいるのでしょうか。
アメリカでは、高等学校の教育で、確率の理解が重視されています。
日本でも、最近は、確率統計の数学がカリキュラムに入っています。
しかし、分数が理解できなければ、確率は理解できません。
橘玲氏は、「テクノリバタリアン」で、確率による推論を人間的でなく冷たく感じるといいます。
橘玲氏は、投資家でもあるので、確率は理解しています。
それにもかかわらず、確率に基づく意思決定に異議を唱えています。
占い師のように、将来なにが起こるかを予測できる人はいません。
合理的な推論は、確率に基づきます。
筆者は、意味不明なキーワードがならんだ学力観は理解できません。
一方、国民が、確率を理解できない国は、経済が破綻すると断言できます。