2030年問題(4)

1)トランプ大統領の骨太の方針

 

政府が経済財政諮問会議で「経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)」を提出する計画です。

 

読者は、「骨太の方針」のニュースを聞いた時に、どのような疑問をもったでしょうか。



1-1)トランプ関税

 

Newsweekは、次のように伝えています。

米国際貿易裁判所は5月28日、トランプ大統領が「解放の日」と位置付けて4月2日に発表した貿易相手国に対する関税を差し止めた。対米貿易黒字を抱える国々からの輸入品に全面的に課税することは大統領の権限を逸脱しているとの判断を示した。

 

米国憲法は議会に他国との通商を規制する独占的な権限を与えており、米経済を守る大統領の緊急権限によってこれが覆されることはないとした。

 

トランプ政権はこれを受け、直ちに控訴した。

 

この判断は2件の訴訟で下された。1件は超党派のリバティ・ジャスティス・センターが関税対象国から製品を輸入している米国の中小企業5社を代表して起こした訴訟。もう1件は米国内13州が訴えていた。

 

関税を巡り、少なくとも5件の訴訟が係争中となっている。

 

ミラー大統領次席補佐官は裁判所を非難し、「司法クーデターは制御不能だ」とソーシャルメディアに投稿した。

 

オレゴン州の訴訟を主導している民主党のダン・レイフィールド司法長官は、トランプ氏の関税は違法かつ無謀で、経済にとって壊滅的だと指摘。「今回の判断はわれわれの法律が重要であり、貿易に関する決定は大統領の気まぐれで行われるべきではないことを再確認するものだ」と述べた。

 

トランプ大統領は、国家非常事態における「異常な」脅威に対処することを目的とした国際緊急経済権限法(IEEPA)に基づき、関税を導入する広範な権限を持つと主張している。

 

トランプ氏は4月2日、貿易赤字は国家非常事態だとし、全ての輸入品に一律10%の関税を課すことを正当化。米国が抱える貿易赤字が大きい国、特に中国に対してはより高い税率を課した。



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アメリカの裁判所がトランプ関税を差し止め...「大統領の権限を逸脱している」 トランプ政権は控訴 2025/05/29 Newsweek 

https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2025/05/553506.php

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論点は次にあります。

米国憲法は議会に他国との通商を規制する独占的な権限を与えており、米経済を守る大統領の緊急権限によってこれが覆されることはないとした。

 

国との通商を規制する独占的な権限は、議会にあり、大統領にはありません。

 

三権分立では、政策を決定する権限は、議会にあります。

 

ただし、例外として、戦争などの緊急事態においては、大統領が短期的に政策を決定する権限をもちます。

 

トランプ大統領は、<国家非常事態における「異常な」脅威に対処することを目的とした国際緊急経済権限法(IEEPA)に基づき、関税を導入する広範な権限を持つ>と主張しています。

 

論点は、現状が、国際緊急経済権限法の適用に該当するかという点にあります。

 

その判断は、司法(裁判所)が行います。



1-2)ハーバード大学

 

トーマス・ギフト氏は、次のようにいいます。

米ハーバード大学への締め付けを強化しているトランプ米政権は、助成金の支給停止や総額1億ドルに上るハーバード大学と政府機関の契約打ち切りに加え、留学生の受け入れ資格を取り消すという前代未聞の措置に出た。

 

これに対し大学側は即座に訴訟を起こし、連邦地裁は政権の措置の一時差し止めとその延長を命じた。

 

長い歴史を通じて、ハーバードをはじめアメリカが誇る数々の高等教育機関は留学生を積極的に受け入れてきた。留学生はアメリカに大きな利益をもたらしてきた。

 

留学生、特にOECD(経済協力開発機構)未加盟の途上国の出身者は、アメリカの名門大学を卒業すると、帰国後に母国の政治的なリーダーになるケースが多い。

 

リベリアのエレン・サーリーフ元大統領はハーバード大学ケネディ行政大学院で学び、帰国後は選挙で選ばれたアフリカ初の女性国家元首として2006〜18年に政権を運営。女性の活躍を支援し、非暴力による民主化推進と平和構築の業績を評価され、11年にノーベル平和賞を授与された。

 

注目すべきは、留学生がもたらす経済効果だ。アメリカの名門大学を卒業し、そのままアメリカに残る留学生は起業家になるか、テック大手などの企業の最先端分野で活躍し、アメリカの労働市場における優秀な人材の不足を補う。

 

米企業の上層部には留学生としてアメリカに来た人が大勢いる。南アフリカ出身でペンシルベニア大学で学んだテスラのイーロン・マスクCEOもその1人。マイクロソフトのサトヤ・ナデラCEOは、シカゴ大学でMBAを取得した元インド人留学生だ。

 

全米政策財団の報告書が示すように、アメリカの大学で学んだ元留学生は企業価値10億ドル以上の米企業の創業者の約25%を占めている。

 

さらに全米国際教育者協会(NAFSA)のデータによれば、アメリカの大学の留学生は「23〜24年度にアメリカに438億ドルの経済効果をもたらし、37万8000人余りの雇用を支えた」という。

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世界もあきれ果てる「ハーバード潰し」...トランプが失墜させる「アメリカン・ブランド」と、その代償とは? 2025/06/03 Newsweek トーマス・ギフト

https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2025/06/554302.php

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サム・ポトリッキオ氏は、次のように言います。

 

トランプ米大統領はコロンビア大学を屈服させたが、ハーバードは勇気を持って要求を拒否した。

 

トランプ政権はハーバードに対し、反ユダヤ主義の助長や中国共産党と共謀し、「安全でないキャンパス環境」を維持しているという理由で留学生の受け入れ資格を剝奪した。裁判所がすぐに差し止め命令を出さなかった場合、7000人近い留学生(全学生数の約27%)が移籍を余儀なくされていた。

 

全てのビザ発給を一時停止するというトランプ政権の決定は、ハーバードとの対決で一歩後退を余儀なくされた後、政府の力を誇示して威嚇するための「はったり」である可能性が高い。米国際教育連盟は留学生がいなくなれば「彼らが米経済にもたらす438億ドルと年間40万人近いアメリカ人の雇用を失うことになる」と指摘している。

 

トランプ政権は留学制度を混乱させる巨大な権力を持っている。だがハーバード卒業式のエネルギーと、国際交流の優位性を示すデータから判断して、この戦いは大学側が勝つ公算が大きい。ただし、留学希望者が以前と同様にアメリカに魅力を感じるかどうかは別問題だ。

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「アメリカ留学が夢」の時代は終わった...ハーバードVSトランプ政権で米留学は「冬の時代」に 2025/06/07 Newsweek サム・ポトリッキオ

https://www.newsweekjapan.jp/sam/2025/06/post-145_1.php

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ポトリッキオ氏は、<トランプ政権は留学制度を混乱させる巨大な権力を持っているが、この戦いは大学側が勝つ公算が大きい>といいます。

 

争点は、トランプ政権に、ビザ発給を一時停止する権限があるかという点にあります。

 

ビザ発給の一時停止の具体的な条件は、法律には明記されていないと思われます。

 

その場合には、判断の根拠の妥当性が問題になります。

 

トランプ政権は、ビザ発給の一時停止が、アメリカの国益になると主張しています。

 

ハーバード大学は、ビザ発給の一時停止が、アメリカの国益を損ねると主張しています。

 

留学生は、アメリカ国民ではありませんし、ビザが発給されなければ、アメリカ国内に居住することもできません。

 

なので、この問題は、関税問題より複雑です。

 

1-3)減税法案

 

NHKは、次のように報道しています。

トランプ大統領肝いりの「大きく美しい1つの法案」は政権1期目に実施した個人の所得減税の恒久化や飲食店の従業員が受けとるチップや残業代への課税の免除などが盛り込まれていて、先月22日に議会下院を通過しています。

 

これについて実業家のイーロン・マスク氏は3日、SNSのXに「申し訳ないがもうがまんできない。この大規模で、ひどすぎる、バラマキの法案は極めて不快な冒とくだ」と投稿しました。

 

そして「すでに巨額になっている財政赤字をさらに激増させアメリカ国民に耐えがたいほどの借金を背負わせることになる」と強い言葉で批判しました。

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マスク氏 トランプ大統領の減税法案を批判 2025/06/04 NHK

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20250604/k10014825161000.html

 

1-4)法の支配

 

江藤前農林水産大臣は、備蓄米を競争入札にかけました。

 

小泉農林水産大臣は、備蓄米を随意契約しました。

 

この2つの政策は、全く異なっています。

 

この2つの政策は、共に、合法であるとは思えません。

 

三権分立では、政策を決定するのは、議会であって行政ではありません。

 

コメの価格上昇は、1年以上前から続いています。

 

どうして、国会は、この問題を解決するための法案を議論しなかったのでしょうか。

 

石破茂首相は6月6日の衆院予算委員会で、備蓄米が枯渇した場合の対応を問われ、コメの安定供給に「あらゆる手法を考えなければならない」と述べ、緊急輸入の可能性を排除しませんでした。

 

しかし、コメの緊急輸入は、国会議論を経ずに、行政の裁量権で行うことができるのでしょうか。

 

恐ろしいことに、野党の議員は、国会での検討を放棄しています。

 

トランプ大統領は、関税政策、大学のビザ政策、減税政策について、骨太の方針を出しました。

 

トランプ大統領の骨太の方針は、批判の対象になり、その法的根拠をめぐって、訴訟がおきています。

 

マスク氏は、富裕層なので、現在法案で、利益を得ますが、減税法案は、持続可能ではないとして反対しています。

 

政府は、今まで、骨太の方針を提出してきました。

 

この骨太の方針(設計図)に従って、日本経済は破壊され、先進国からすべり落ちてしまいました。

 

トランプ大統領の骨太の方針が、国会の議決に優先するのは、緊急事態の時だけです。トランプ大統領は、骨太の方針が継続的に使えるとは思っていません。

 

日本政府の骨太の方針は、緊急事態ではなく、常時、適用されています。つまり、日本政府の骨太の方針は、憲法違反であり、法の支配を逸脱しています。

 

民主主義国家のアメリカでは、政府が、憲法を無視して、日本のような常時適用のための骨太の方針を提案しても、骨太の方針には、裁判所から執行停止命令が出るはずです。

 

トランプ大統領の骨太の方針は、経済を破壊して、インフレを引き起こし、株価を低下させました。

 

トランプ大統領の骨太の方針は、緊急事態にしか通用しないので、アメリカは、近い将来には、この状態から脱却します。

 

ポトリッキオ氏が心配しているように、大きな後遺症が残るとは思いますが、時間が経てば病原(トランプ大統領の骨太の方針)はなくなります。

 

過去30年、日本政府の骨太の方針は、日本経済を破壊し、所得を減少させ、貧困を拡大して、人口減少を引き起こしました。



マスク氏は、トランプ大統領の骨太の方針に反対しています。

 

マスク氏は、2022年5月に、「出生率が死亡率を上回るような変化がない限り、日本はいずれ存在しなくなるだろう」と述べました。

 

マスク氏は2024年6月にも、「抜本的な対策をしなければ日本や他の多くの国は消滅するだろう」と述べました。

 

経団連は、「新時代の日本的経営」によって、日本政府の骨太の方針の下書きを作っています。

 

骨太の方針を良く読めば、そこには、人口減少のメカニズムが組み込まれています。

 

マスク氏が、日本の経営者であれば、日本政府の骨太の方針には、反対したと思われます。

 

今回の日本政府の骨太の方針には、スタグフレーションを引き起こすとはっきり書かれています。

 

日本政府の骨太の方針は、トランプ大統領の骨太の方針とは異なり、時間が経っても病原(骨太の方針)はなくなりません。

 

段落の論理と帰納法に「汚染」されている人は、骨太の方針という設計図が目に入りません。

 

国会で議論すべきは、政策の設計図である骨太の方針です。

 

三権分立では、骨太の方針を作成するのは、国会の権限であって、内閣の権限ではありません。

 

政府は、何かあると「有識者会議」にはかるといいますが、国会ではなく。「有識者会議」が政策を実質的に決定する方法は、憲法違反であり、法の支配を逸脱しています。

 

現在の国会は、能力不足かもしれません。

 

その場合には、国会をサポートする機関を拡充したり、データベースを作成したり、世界のシンクタンクを活用する予算を確保すべきです。

 

統計関連の機関は、中立性を考えれば、国会の下に移動する方法もあります。

 

現在の国会は、能力不足であっても、国会本来の役割を放棄してはいけません。

 

「有識者会議」には、利権の調整能力がありますが、「問い」を発する言語を持たないので、問題解決について、推論することができません。

 

この構造が変わらない限りは、問題は解決しません。

 

補足:

 

6月24日から、iPhoneにマイナンバーカード機能が搭載されます。

 

セキュリティ、プライバシー、情報公開の基本原則は、今のところ不明です。

 

また、国会でも、議論されていません。

 

多くの場合には、枠組みの法律を作って、実際の運用は、行政に丸投げ(行政の裁量権次第)しています。

 

これは、三権分立ではありません。