1)「問い」がなければ、答えられない
コメの価格とコメの需給は異なる変数です。
備蓄米を放出すれば、コメの価格が下がるという主張は、コメの需給バランスが原因で、価格が結果であるという信念を示しています。
政府は、価格上昇の原因は、需給バランスには、問題がないという主張を繰り返してきました。
この仮説が成り立つための条件は、次の2つです。
第1は、需給バランスの根拠となるデータを公開する必要があります。
この場合には。データの信頼性(分布)のデータが必要になります。
平均値ではなく、生の観測データを公開する必要があります。
計算間違いがある可能性もあります。
需要のデータは、推定方法と検証方法を明らかにする必要があります。
需給バランスのデータは、ベイズ統計で考えれば、事前確率に相当します。
需給バランスがとれていれば、コメの価格はあがらないはずです。
需要のデータは、スプライン関数を使ったトレンドモデルです。
需要が減少するモデルですが、2023年で既に、過少推定になっています。
つまり、ベイズモデルを使っていれば、2024年の需要量は、減少ではなく、増加していたと思われます。
実際に、コメの価格が上がりましたので、この情報を使って、ベイズ更新を行い、事後確率を求めるべきです。
2)オペレーションルールの問題

図1は、政府のコメの需給状況の説明図です。
この図には、民間備蓄がありません。
備蓄米を放出するのであれば、民間備蓄のレベルを見て、民間備蓄量のレベルが下がった段階で放出するというオペレーションルールが合理的です。
年間の需給バランスでは、何月に放出すべきかの判断はできません。
民間備蓄量は、直接観測できない状態変量です。
これは、状態空間法を使って表すことができます。
つまり、状態空間法を使って「問い」が書かれていれば、政府の備蓄米の管理は、妥当であったかという「答え」を出すことができます。
「問い」が書かれていなければ、議論は空回りして、「答え」を出すことができません。
政府の第1の責任は、妥当な備蓄米の管理ができたかではなく、「妥当な備蓄米の管理と花にか」という「問い」を発する能力があったかという点になります。
3)2024年のオペレーション
2025年になって、4回の備蓄米の放出が行われました。
これに、目がいって、備蓄米の管理は、備蓄米の放出にあると考える人が多くなっています。
しかし、備蓄米の管理とは、第1に、新米を購入しないことです。
第1回目の入札では、10万トンの2024年産のコメが放出されています。
しかし、2024年産の10万トンのコメの購入をしなければ、同じ効果があります。
現在の方法では、購入して、倉庫にストックしたコメを放出しています。
そもそも、購入しなければ、無駄なコストは発生しませんし、購入、貯蔵、放出に伴うタイムラグも発生しません。
2024年産のコメは、8月から10月にかけて収穫されます。
政府は、2024年産の備蓄米を2024年3月に購入しています。
2024年3月には、2024年産のコメは、まだ、収穫されていません。
備蓄米はその年のコメが生産される前に、政府があらかじめ生産者などから買い付けます。
20204年の買い入れ予定枠は、20万5509トンでした。
買い入れ価格は市場価格を勘案しています。コメ卸などが「政府に買い入れてもらうよりも一般取引のほうが高く売れる」と判断すれば、入札は少なくなります。
2024年産の1回目入札の落札率は3%、2回目終了時点の落札率は63%、3回目終了時点の落札率は79%にとどまりました。
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政府備蓄米、24年産3回目落札率79% 先高観やや後退 2024/03/06 日本経済新聞
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB068770W4A300C2000000/
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つまり、2024年の3月時点で、コメ卸は、需給バランスが崩れているので、コメの価格が上昇すると判断していました。
政府は、コメの需給バランスが崩れていないと判断しています。
その後のコメの値動きをみれば、コメ卸の判断が正しく、政府の判断が間違っていたと言えます。
しかし、2025年になっても、政府は、コメの需給バランスが崩れていないとの主張を繰り返していました。
2024年産の1回目入札の落札率3%は、市場がコメ価格が上昇すると判断していたことを示しています。この段階で、2回目以降の備蓄米の購入を中止していれば、実質、20万トンが放出されたことになります。

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『令和のコメ騒動』(1)コメ高騰の歴史に学ぶ、今後の見通し 2025/01/28 MRI 稲垣公雄
https://www.mri.co.jp/knowledge/column/20250128.html
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図2は、稲垣公雄氏が、総務省「小売物価統計調査」(東京都区部小売価格)を基に作成した図です。
収穫が始まる8月以前に、コメの価格は高騰しています。
つまり、7月までに、3月に購入した先物を販売していれば、20万トンの備蓄米の放出ができます。
図2の異常な価格上昇をみれば、3月に購入した先物の販売は、各段難しい判断ではありません。
なぜ、それができなかったのでしょうか。
政府は、状態空間法をつかった需給バランスの「問い」をつくることができませんでした。

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政府備蓄米の運営について
https://www.maff.go.jp/j/council/seisaku/syokuryo/190327/attach/pdf/index-23.pdf
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図3は、需給調整の取り組みの説明をしています。
2018年(平成30年)に、減反政策は、廃止となっています。
つまり、図3の年次以降には、構造変化があるので、図3の傾向が使えない可能性があります。
とはいえ、減反政策をしても、常に、生産過剰であったコメが、H27からH29には、計画以下になっているのは、生産現場の構造変化があったことを予測させます。
トレンドは因果ではないので、構造変化は無視されています。