1)コメの備蓄政策
コメの備蓄管理の方法は、2種類しかありません。
第1は、生産過剰では、買い入れ、不作で放出します。
第2は、ダム方式で、備蓄量分の倉庫を借りあげます。
例えば、100万トン分の倉庫を借り上げます。
不作でない年には、毎年、前年に購入した100万トンのコメを放出して、新米を100万トン購入します。
プラスマイナスゼロになりますので、この方法では、市場の需給バランスに影響がありません。
不作の年には、前年に購入した100万トンのコメを放出して、新米の購入量を100万トンより減らします。
1995年のルールは以下の通りです。
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食糧法の発足時(1995年)のコメの備蓄制度の備蓄水準は、作況指数を元に計算しています。
ステップ1:戦後の不作(作況98以下)の平均92
ステップ2:総需要量1000万トンx(1-0.92)x2=160万トン=>150万トン
※生産調整が始まったS46-H4の作況指数の標準偏差5(50万トン相当)
食糧法発足時における備蓄運営は、それまで以前の平均的な不作が2年連続しても円滑な供給が行えるよう、150万トンを基本として、豊凶等による需要変動に対応し得るよう、一定の幅(プラスマイナス50万トン)をもって運用することとされた。
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150万トンの算出根拠はダム方式です。
「豊凶等による需要変動に対応し得るよう、一定の幅(プラスマイナス50万トン)をもって運用」は、需給バランス方式です。
この2つは、全く異なるアルゴリズムになり、共存はできません。
仮に、「一定の幅(プラスマイナス50万トン)をもつ需給バランス方式であれば、備蓄量は、100万トンで十分です。2年連続不作シナリオの場合、50万トンの放出が2年続くので、100万トンあれば十分です。
需要変動方式では、150万トンは不要になります。

図1は、「米をめぐる参考資料」から、引用しています。
資料には、データはなく、データの出典もありません。
米穀機構では、一部のデータが公開されていますが、この中の「7.水稲の作付面積、収量、収穫量の推移」の収穫量と図1の生産量は一致しません。
総需要量のデータも見つかりませんでした。
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米をめぐる参考資料 H7.5 農林水産省
https://www.maff.go.jp/j/seisan/kikaku/kome_siryou.html
米穀機構
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さて、筆者は、既存のデータを分析しません。
これは、パールの言語がなければ、「問い」を発することができないという立場になります。
統計学(確率)の言語がなかったので、1995年のコメの備蓄制度には、何を解決したいのかという「問い」がありません。
1995年のコメの備蓄制度は、1993年の冷害が原因になっています。
これから、不作時のコメを放出できる備蓄制度を作りたいという動機が分かります。
そこで、仮に100万トンのコメをダム方式で、備蓄した場合を考えます。
この備蓄システムは、どの程度(確率)の冷害に対応できるでしょうか。
実は、この「問い」に答えるためには、どの条件を基準にして、コメの放出を開始するのかというデータと条件(アルゴリズム)が必要になります。
パール流に言えば、「100万トンのコメをダム方式で、備蓄した場合、どの程度(確率)の冷害に対応できるか」は、まだ、「問い」になっていないと言えます。
需給バランスの評価自体が、難しい問題を抱えています。
コメの収穫は、年に1回ですが、需給バランスは、少なくとも、月単位で変化します。
一般には、新米が出始める8月まえの7月に、民間在庫が最少になると思われます。
そうすると、7月の需給ギャップを予測して、事前に放出量を決めるべきかも知れません。
このような疑問を持って、図1を眺めてみます。
ダム方式であれば、最大貯蔵量は、100万トンまたは、150万トンで頭打ちになるはずです。
1993年の冷害をうけて、1994年に200万トンのコメを輸入しています。
1993年の作況指数は74です。作況指数が収量に比例すると考えれば、260万トンの不足になります。作況指数90で、100万トンです。
通常は、100万トンで十分です。
平均的な不作が2年連続する確率は、過大です。
図1をみると、期末在庫は以下のとおりです。
年 期末在庫100万トン
1994 0
1995 118
1996 224
1997 267
1998 297
1999 233
2000 276
2001 190
2002 166
2003 163
ダム方式の場合の期末在庫は以下のとおりです。
年 期末在庫100万トン
1994 0
1995 100
1996 100
1997 100
1998 100
1999 100
2000 100
2001 100
2002 100
2003 100
1998年の作況指数は、98です。この場合、単純に考えれば、1999年に、20万トン放出を行い、1999年の期末在庫は、80万トンになります。
しかし、「ステップ1:戦後の不作(作況98以下)の平均92」にみるように、過去のデータを見ると、政府は、作況指数98は、誤差の範囲(不作ではない)と考えています。
例えば、作況指数98の場合でも、放出ではなく、買い入れをしています。
1994年から2024年の間で、作況指数が、98未満の年は、2003年の90と2006年の96だけです。
これに対する備蓄米の運用は、1年遅れの2004年と2007年になります。
図1は、コメの備蓄米制度は、冷害対策ではなく、利権を優先した減反の緩和政策になっていたことを示しています。
赤字が拡大したことで、コメの備蓄制度は、表見的には、財務省からクレームがきます。しかし、落としどころは、与党の議員がきめています。
1995年のコメの備蓄制度の法案に、備蓄のアルゴリズムが書かれていれば、政治圧力の影響を受けません。例えば、備蓄の最大が100万トンと記載されていれば、問題は生じません。これが、法の支配になります。
実際には、1995年のコメの備蓄制度の法案には、数字とアルゴリズムは書かれていません。
法案に、数字とアルゴリズムを書かない理由は、官僚と政治家の裁量権を残すためです。
このように、法律ではなく、裁量権に基づいて行政を進める方法は、法治主義ですが、法の支配がないと言えます。
企業は、天下りを受け入れないと裁量権の範囲で意地悪をされる可能性があります。
企業は、与党の政治家に献金しないと裁量権の範囲で意地悪をされる可能性があります。
もしも、法案に数字とアルゴリズムが書かれていれば、企業は、裁量権によって、意地悪をされる可能性はありません。
もしも、法案に数字とアルゴリズムが書かれていれば、法案の遂行は、AIで十分になります。この場合は、アルゴリズムに基づく推論ですから、AIが間違いをおかす可能性は、ゼロです。
財務省は、表向きは、赤字が拡大したとクレームを付けますが、落としどころは、政治家が決めるので、実は了解しています。

ダム方式で、コメの備蓄管理をする場合を考えます。
オペレーションの中心は、不作で、コメが不足する場合に、コメを放出することです。
この放出は、新米の購入を減らすアルゴリズムになります。
前年度購入したコメは、玉突きで、100%販売しますので、追加で放出することはできません。
さて、図2では、1995年から2010年の15年間のデータをプロットしています。
作況指数は、需給バランスではありませんが、政府は、作況指数をコメの需給バランスの代替指標に使っています。
図1のコメの生産と需要のデータが手に入らなかったので、ここでも、その方法を踏襲します。
なお、豊作と不作の境界は、作況指数98を使っています。
「不作+放出」は、図の左下のゾーンになります。
2003年の作況指数90の翌年の2004年には、備蓄米の効果がありました。
「豊作+買入」は、図の右上のゾーンになります。
ただし、ダム方式の場合には、買入は、市場の需給バランスに影響しないように、ゆっくり行います。
2004年の作況指数は98でしたので、2005年の買入は、ゼロか誤差の範囲の20万トンが妥当な量になります。実際に、2005年の買入は、差し引き24万トンでしたので、妥当な水準になっています。
右上のBのデータは、ダム方式であれば、購入する必要のないコメでした。
右下は、「豊作+放出」のゾーンで、2001年のデータは、ここにきます。この年は、統計の1年の区切りを10月末から、6月末に変更しています。
2001年のデータが、アノマリーになるのは、統計の集計方法の変更に伴う見かけの効果であって問題ではありません。
2004年と2001年のデータの間に、作況指数98で、60万トンの放出データAがあります。これは、前年期末の備蓄量が、297万トンと1995年以降で最大になったため、備蓄量を減らすオペレーションが行われたためです。
図1に戻ります。
2004年(H16)の不作のあと、備蓄米の水準を100万トン未満にする運用ガイドラインが使われています。
2013年(H25)以降は、91万トンになっています。
これは、「原則21万トン程度×5年間程度→100万トン程度」の計算です。ただし、新米については、備蓄ではなく、播種前契約による買入です。
5年持越し後は、飼料用等として売却します。
つまり、2013年以降は、備蓄米を不作時に市場に戻すプロセスがなくなっています。
簡単にいえば、2012年に、不作対策としての備蓄米制度は、終了しています。それ以降は、コメの備蓄制度は、コメの生産を20万トン増やすだけの機能しか残っていません。
2018年(平成30年)に、減反政策は、廃止となります。廃止後に、45の道府県のうち14道県は増産方針を打ち出しています。
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政府備蓄米の運営について
https://www.maff.go.jp/j/council/seisaku/syokuryo/190327/attach/pdf/index-23.pdf
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2018年に、効果のない備蓄米制度を廃止すれば、税金の無駄を省く選択ができました。
コメを備蓄して、放出する場合、基本は、1年前のコメです。新米か、新米でないかの選択になります。
5年保管した場合の安全性には問題があります。
パスタや油の賞味期限も、5年はありません。
5年保管することは、備蓄米が、人間の食用として、市場に供出される可能性がないことを担保する為です。
農業関係の官僚と政治家、さらに財務省も、2012年に、コメの備蓄制度が終わってしまったことを理解しているはずです。
2)「問い」と言語
繰り返しますが、「問い」を発するには、言語が必要です。ストックとフローの確率変動を記述する言語は、ブラックショールズ方程式を記述するような確率微分法方程式になります。100歩ゆずっても、確率なしには、何も記述できません。
エクセルで、平均値を振り回しても、「問い」を発することはできません。
15年間で、備蓄米が効果を発揮したのは、1度だけです。その他の14年間は、備蓄米制度は、減反緩和の特効薬になっていました。
その結果、備蓄米制度は、2012年に、事実上、終わっています。
農業関係の官僚と政治家は、資料を見る限り、確率の数式で、「問い」を発していません。
確率の言語をもっていませんでした。確率の言語をもっていなければ、何が起こるかを理解できません。
小惑星が地球に衝突すれば、人類は滅亡するかもしれません。しかし、そのリスクについて、「問い」を発して、予測するためには、力学の言語が必要になります。
石破茂首相(自民党総裁)と公明党の斉藤鉄夫代表、立憲民主党の野田佳彦代表は2025年5月27日、国会内で会談し、年金制度改革関連法案に基礎年金の底上げ策を盛り込む立憲の修正案に正式合意しました。
この政策は、選挙対策(利権優先)であることは理解できます。
しかし、財源問題は、検討されていません。
財源問題は、増税ではなく、無駄な支出の削減でも可能です。
財源問題の「問い」を発するには、確率微分法方程式が必要になります。確率微分法方程式の言葉がないと、小惑星が地球に衝突する時のように、財政システムかクラッシュした場合のリスクを理解することができません。
この問題は、1972年の田中内閣から、50年間繰り返されています。財政がクラッシュするリスクとリターンは、確率微分法方程式を解けば計算できます。「問い」が確率微分方程式で書かれていれば、こうした状態にはなりませんでした。
ダリオ・アモデイ氏は、次のようにいいます。
「世界で最もクレイジーな秘密のひとつがそこにあります。これ(AIモデル)が国家の運命を決めることになるのです」
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AIモデル「Claude」で“善良なる天才”の国をつくる、Anthropicの挑戦 2025/05/25 Wired
https://wired.jp/article/sz-anthropic-benevolent-artificial-intelligence/
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Wiredは、次のように伝えています。
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Google DeepMindは5月14日(米国時間)最新のAIプロジェクト「AlphaEvolve」を発表している。このプロジェクトは、GeminiのAIモデルのコーディング能力に加え、新しいアルゴリズムの有効性を検証する手法、それから斬新な設計を生み出す先進的な手法を組み合わせている。
そしてAlphaEvolveは複数の計算分野において、より効率的なアルゴリズムを考案した。具体的には、行列の計算において56年間使われてきた「シュトラッセンのアルゴリズム」を上回る新たな手法を開発した。結果を得るために必要な計算回数を減らし、計算効率を高める手法である。
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Google DeepMindの新AIエージェント「AlphaEvolve」が示す、アルゴリズム設計の未来 2025/05/26 Wired
https://wired.jp/article/google-deepminds-ai-agent-dreams-up-algorithms-beyond-human-expertise/
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年金問題とコメの備蓄米問題は、数学の言語で、「問い」が書ければ、DeepMindに、解いてもらうことが可能です。
5月23日のロイターは次のように伝えています。
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米実業家イーロン・マスク氏が率いる政府効率化省(DOGE)のチームが、情報分析のために対話型AI(人工知能)「グロック」の利用を拡大している。関係者3人が明らかにした。
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マスク氏のDOGE、米政府で「グロック」利用拡大 利益相反の恐れも 2025/05/26 ロイター Marisa Taylor
https://jp.reuters.com/world/us/UOHJCRTKGBPOFEJPSOOA5SKH64-2025-05-26/
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農水省は価格の情報収集などにより力を入れるため、5月26日にも「コメのプロジェクトチーム」を立ち上げています。
このチームの当面の課題は、随意契約であると思われます。
1995年の備蓄米制度のスタートの時にも、「コメの備蓄制度のプロジェクトチーム」を立ち上げたと思われます。
しかし、チームに確率の言語を理解する人がいなかったか、政治家と官僚のトップが、確率の言語を理解できなかったかのどちらかが原因で、現在のようなコメの備蓄米制度になったと思われます。簡単に言えば、利権以外を理解する言語をもっていなかったことが原因であると思われます。
霞が関は、30年経っても、何も変わっていません。
アメリカのホワイトハウスから、日本の霞が関に移動するには、タイムマシンが必要になっています。