1)パラグラフの論理
問題を解決するために必要な要素は、「問い」、「データ」、「推論(レシピ、設計図、アルゴリズム)」です。これは、パラグラフの論理になります。
「データ」と「設計図」から、「結果(完成品)」が出来上がります。
「結果(完成品)」は、「問い」の近似解です。
パラグラフの論理では、「データ」と「推論」から「結論」を導き出します。
パラグラフの論理を、「データ」を原因として、結果導き出す推論になります。
これは、不完全ですが、因果推論に対応しています。
料理の例をあげます。
「問い」:世界一甘い焼き芋をつくるには、どうしたらよいか
「データ」:麦芽糖とデンプン量の多いサツマイモを準備する。糖度が高い「べにはるか」品種のなかで、麦芽糖とデンプン量の多い個体を抽出します。このノウハウがない場合には、品質管理がなされているブランドのサツマイモを準備します。大量に製造されているので、ベストな個体ではありませんが、少なくとも、外れの個体を除くことができます。
「推論(レシピ)」:デンプンを麦芽糖に転換する効率のもっとも高い調理法を設計します。単純に考えれば、複数のレシピを比較して、ベストなレシピを残します。これは、線形の世界の戦略です。
デンプンは、β-アミラーゼが温度(70から80℃)で活性化して、麦芽糖に変換するといわれています。
一方、サツマイモに含まれるペクチンは温度が低いと硬化します。ペクチンが硬化すると、デンプンの糖化が止まってしまいます。さつまいもの場合も80℃以上の加熱でペクチンは軟化するといわれています。
つまり、最適な温度は、「70から80℃」でなおかつ、80℃以上の温度、実在しない温度になります。
線形の世界は以下になります。
サツマイモ=>デンプンの糖化=>糖度の高い焼き芋
現実は、次の非線形の世界です。
サツマイモ=>ペクチンの軟化=>デンプンの糖化=>糖度の高い焼き芋
ペクチンは、直接は、糖度に関係しませんので、交絡因子または、媒介になります。
媒介は、高度な概念ですが、「因果推論の科学」の9章で説明されています。
さて、めでたく、レシピが選出できたとします。
このレシピで作られた焼き芋は、<「問い」:世界一甘い焼き芋>の近似解です。
よりよい素材が見つかる可能性がありますので、論理的には、結果は、<「問い」:世界一甘い焼き芋>ではありません。
糖度のデータを計測すれば、調理する度に、オリンピックのようにレコードホルダーは更新されます。
「世界一甘い焼き芋(近似解)」は、ジャムのようなねっちりした焼き芋になります。
伝統的なほくほくした栗のような食感の焼き芋ではありません。
ほくほく系の焼き芋が好みで、ねっちり系の焼き芋が好みでない人もいます。
「世界一甘い焼き芋(近似解)」は、誰もが好きな焼き芋ではありません。
このことは、<「問い」:(誰もが好きな)世界で一番美味しい焼き芋>には、答えが存在しないことを意味します。
端的には、(解決可能な)<「問い」が存在しない>と言います。
<「問い」:世界一甘い焼き芋>は、糖度計があれば、近似解の評価ができます。
解決可能な「問い」(科学的な「問い」)を発することが、問題解決のスタートになります。
「問い」を間違えると問題は解決しません。
2)段落の論理
段落の論理には、意味のある内容はなく、段落という形式だけがあります。
ここには、「問い」、「データ」、「推論(レシピ、設計図、アルゴリズム)」といった意味に関する要素はありません。
内容の価値は、発言者あるいは推薦者の身分によります。
段落の論理では、読者は、内容に共感(同調)することが求められます。
段落の論理には、推論がないので、反論(クリテキカルシンキング)はできません。
内容に、共感(同調)しない場合には、村八分になります。
同調しない場合には、その人は、空気が読めないとして、疎外されます。
段落の論理は、日本の学校教育の作文教育の中心になっています。
英語版のウィキペディアには、次のように書かれています。
<
いじめ(Hazing) – 誰かをグループに加入させるために行われる屈辱の儀式
いじめ(Bullying)-暴力、強制、中傷的な からかい、発言、脅迫などを用いて、一人または複数の相手を虐待したり、攻撃的に 支配したり、威嚇したりすること
>
段落の論理に同調しない人は、空気が読めないとして、村八分<いじめ(Hazing)>をうけます。
「空気が読めない」は、段落の論理を維持するための<いじめ(Hazing)>になっています。
段落の論理では、「問い」、「データ」、「推論」は封印されています。
「問い」にはならない、<世界で一番美味しい焼き芋>が、正当化されます。
内容の価値は、発言者あるいは推薦者の身分によります。
段落の論理では、<世界で一番美味しい焼き芋>は、発言者あるいは推薦者の身分で決まります。
有名シェフが推薦した、有名店で修業した、人気ランキングで上位にある、売り上げが多いといった「発言者あるいは推薦者の身分」が判断基準になっています。
これは、読者、または、視聴者が、段落の論理に洗脳されていることを示しています。
「有名店で修業した、人気ランキングで上位にある、売り上げが多い」は、成果主義です。
段落の論理では、成果主義が採用されますが、これは、パラグラフの論理では否定されます。
<「問い」:世界一甘い焼き芋>と、「有名店で修業した、人気ランキングで上位にある、売り上げが多い」の間には、推論(論理的なつながり)がありません。
3)科学とパラグラフの論理
パラグラフの論理では、「問い」と<結果(「問い」の近似解)>は区別されます。
パラグラフの論理の言語では、「問い」と<結果>は、区別できます。
段落の論理には、「問い」はなく、あるのは、<結果>だけです。
段落の論理では、「問い」と<結果>の、区別がありません。
「問い」:世界一甘い焼き芋を売っている焼き芋店はどこか。
この「問い」を解くことは容易です。
「データ」:焼き芋店で、焼き芋を購入して糖度データの計測値を得ます。
「推論」:データをソートして、糖度データが最大の焼き芋店を抽出します。
「結果(近似解)」:ソートの結果、1位になった店舗が、<「問い」:世界一甘い焼き芋を売っている焼き芋店>です。
焼き芋のデータには、バラツキがあります。調査する毎に、順位が入れ替わります。
統計的な補正は必要ですが、この推論で、「問い」の答えを得ることになります。
焼き芋店は、独自のレシピをもっています。
つまり、この推論は、焼き芋店の抽出だけでなく、レシピ(問題解決の方法)の抽出にも使えます。
段落の論理でも、「世界一甘い焼き芋を売っている焼き芋店はどこか」が、話題になることがあります。
段落の論理には、問題を解くプロセスがありません。
テレビでは、美味しい料理を食べる番組に人気があります。
その場合の美味しい料理の選定基準は、有名店で修業した、人気ランキングで上位にある、段落の論理によっています。
この方法では、客観的なランキングをつくることができません。つまり、レシピの評価ができません。
問題解決能力は、レシピによって異なります。
レシピの比較ができなければ、技術進歩は止まります。
オーブンレンジを購入すれば、焼き芋のレシピが付いてきます。
このレシピは、メーカーによって、全く異なります。
オーブンレンジのレシピは、段落の論理でできています。
科学的なパラグラフの論理で作られていません。
オーブンレンジのレシピが、パラグラフの論理でできていれば、メーカーによるレシピの違いは収束すると思われます。しかし、実際には、そのようになっていません。
これは、オーブンレンジのレシピに、「問い」がないことを示しています。