コメの価格をさげる方法(4)

キヤノングローバル戦略研究所の山下一仁研究主幹は、次のように言います。

JA農協は25年産米の集荷率を上げるため、農家に対して前年度より3から4割ほど高い概算金を提示した。これにより、26年産米が出回る来年秋までコメ価格は下がらないことが確定した。

JA農協が中心となった農政トライアングルから、食料・農業政策を解放するときが来た。

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残念ながら来年秋まで「5㎏4200円」が続きます…農水省とJA農協がいる限り「コメの値段は下がらない」そのワケ 2025/05/14 President

https://news.yahoo.co.jp/articles/381e0fb242f879f7a9d3317eddfeaecb8a2104c0

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経済誌「プレジデント」元編集長で作家の小倉健一氏は、次のように言います。

コメ高騰は、政府による農政の長年にわたる失敗と怠慢の帰結である。にもかかわらず、現政権の中枢から聞こえてくるのは、驚くべき責任転嫁の声ばかりだ。農水省への怒りを演出し、あたかも官僚機構こそが元凶であるかのように描き出すーーこれは政権による巧妙な情報操作であり、国民の怒りの矛先をずらすための意図的なスケープゴート化に他ならない。

 

フジテレビ系情報番組「サン!シャイン」(5月8日)に出演したジャーナリストの田崎史郎氏は、コメ高騰は、「明らかに農林水産省の失敗なんです。石破(茂)さんも農林水産省にものすごい怒っていて、それで昨日、自民党の小野寺(五典)政調会長を呼んで、コメの値段を下げるように党の方で考えてくれと言いました。農水省に言ってもなかなかやらないんです。備蓄米の放出も実は、官邸がやらせたんです。農水省が自主的にやったんじゃないんです」と、あたかも農水省抵抗勢力であり、官邸主導でようやく対策が動き出したかのような内幕を解説した。そして、「官邸内で農水省への不信感を持っている声」や、石破首相が「農水省の問題だってずっと分かっているんです」と明かしたとされる。

 

 これが事実だとすれば、石破政権、そして自民党の無責任体質は、もはや救いようのないレベルに達している。

 

自民党政権は、国際的な学術研究が示す補助金の弊害を無視し、非効率な政策を続け、農業の衰退を招いた。自民党政権は、「778%」という幻の関税率で国民と農家を欺き、国際的な批判を招き、適切な市場開放や競争力強化を怠ってきた。現在の石破政権を含む自民党政権は、備蓄米の放出という場当たり的な弥縫策しか打てず、根本的な解決策を示せていない。

まるでトカゲの尻尾切り。石破政権、今度は「コメ高騰は農水省のせい」本当に悪いのは「自民党」なのに… 2025/05/14 MINKABU 

https://news.yahoo.co.jp/articles/625c07a9022ff451c370dd612e7812106c7d159d

 

加谷 珪一氏は、次のようにいって特定の原因をあげていません。

今回の問題は、我々の主食であるコメや基幹産業である農業を今後どうしていくのか、その負担を誰が負うのかという議論を30年もの間放置してきたツケだと考えている。

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農水省とJAを叩いても「5kg2000円台の米」は二度と買えない…日本人の「米離れ」が招いた大きすぎる代償 2025/05/14 Pressident 加谷 珪一

https://news.yahoo.co.jp/articles/268593179f35a81d991bd5f5b05e88b18241f944

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加谷 珪一氏は、<「減反政策のせい」ではない>とも言いいますが、ここには、大規模農家に農地が集約されているという事実に対する誤認があります。

 

山下一仁氏は、コメの専門家でない人が間違った発言をしていると批判しています。

 

コメの制度は迷路のようになっているので、コメの制度について、山下一仁氏より精通している人はいないと思います。

 

しかし、こうした場合には、結論を出す前に、メンタルモデルの共有を図るべきです。

コメ高騰の議論で、共有すべきデータを公開することが、スタート視点です。

 

パラグラフの論理で検討をするのであれば、結論の違いは、使用するデータの違いか、使用する推論モデルの違いに、依存します。

 

共有すべきデータが公開されていれば、加谷 珪一氏が、推論を間違えることはなかったと思います。

 

こうした場合に、「コメの専門家でない人が間違った発言をしている」という苦言には、段落の論理があります。

 

山下一仁氏は、コメの制度には、精通していますが、そのデータだけでは、議論ができません。需給データが必須です。しかし、需給データは公開されていません。

 

小倉健一氏の言い方をすれば、「コメの需給データが公開されれば、政府は、失敗と怠慢の

農政を長年にわたり続けることができなかったため、政府は、コメの需給データを封印してきた」ことになります。行政の無謬主義、つまり、法度体制の維持のためには、データの封印は必須な条件になります。この点を理解しないと、データがないので、議論はからまわりになります。

 

山下一仁氏は、需給データを予測していますが、この予測は検証不可能です。

 

山下一仁氏の「JA農協が中心となった農政トライアングル」説は、データがないので、検証できません。

 

政府は、20年にわたり水田農家の規模拡大を進めてきました。

 

常識的に考えれば、規模拡大すれば、生産コストが下がるので、米価が下がり、国際競争力が増すはずです。しかし、そうなっていないので、加谷 珪一氏は、小規模農家が残っていると誤認しています。

 

現在でも、次のような誤認「経営耕地面積10ヘクタール未満が94.8%」があります。

 

専門家曰く、この50年で世界のコメの生産量は3.5倍に増えていますが、日本は半減しています。日本ではここ数十年、効率よく収穫量を増やす品種改良はタブーとされ、非効率な生産が続いているのです。その大きな原因は、日本の農家の大半が「零細農家」であること(経営耕地面積10ヘクタール未満が94.8%)。背景には「戦後の農地解放」「ここ20年から30年コメが余っていたので効率化を図る必要がなかった」などがあります。

 

国にも「農地バンク」という制度があります(2014年から本格実施)。農地を貸したい人が国に一度預け、国が農地を借りたい人に貸し付ける仲介をすることで、借りたい人たちが農地を大規模化できるシステムですが、実際にはまだ大きな動きがないのが現状です。

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コメ高騰の原因は生産効率の悪さ?「田植えしない」農家に聞く安くても儲かるコメ作りとは「5kg3000円でも利益出る」「100haを3人で運営」【解説】 20205/05/15 MBSNEWS

https://news.yahoo.co.jp/articles/645e77e68207a84fa000a0b43aee5a87ca231a27

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少し古い2020年までのデータ「全農業経営体について、経営耕地面積別の経営体数を見ると、全体的に減少傾向で推移していますが、最も大きな割合を占める0.5~1.0ha層の経営体数が大きく減少している一方で、10ha以上の層の経営体数は増加傾向」は、以下にあります。

 

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規模拡大 農林水産省

https://www.maff.go.jp/j/wpaper/w_maff/r3/r3_h/trend/part1/chap1/c1_1_04.html

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大規模農家は、水田面積を維持するために、主に、餌米をつくっています。餌米には、転作の補助金が支払われます。つまり、農家が大規模になると、補助金が増えるだけで、コメの生産コストは下がりません。これは、市場経済ではありません。この政策の目的は、補助金を確保することで、政治利権を確保することにあります。

 

山下一仁氏の「JA農協が中心となった農政トライアングル」説と、小倉健一氏の自民党政権説のどちらが正しいのでしょうか。

 

この2つの仮説は、共に、検証が不可能です。

 

小倉健一氏の自民党政権説は、田中システム説と等価です。

 

この2つの仮説の検証はできませんが、オッカムの剃刀をつかえば、小倉健一氏の自民党政権説が選ばれます。



山下一仁氏の「JA農協が中心となった農政トライアングル」説では、コメの高騰を説明できますが、それ以外の問題には使えません。

 

小倉健一氏の自民党政権説は、コメの高騰だけでなく、過去30年間、1人あたりGDPが増えなかったこと、工業の国際競争力が失われたことも説明できます。

 

簡単で、汎用性の高い仮説を使うべきであるという基準が、オッカムの剃刀です。



追記:

 

トランプ関税対策に驚くべき報道が入ってきました。

トランプ米政権の関税措置を巡り、日本政府内で日本車メーカーが米国で生産する自動車を日本に逆輸入する案が浮上したことが分かった。

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「米国産日本車」逆輸入案が浮上 トランプ関税撤廃へ米国の軟化狙う 2025/05/14 毎日新聞

https://news.yahoo.co.jp/articles/76073738946b1564780294b6bcdedca86f74a85c

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野口悠紀雄氏は、次のようにいいます。

1980年代初頭、アメリカは巨額の貿易赤字に直面していた。とくに、日本と西ドイツに対する赤字が大きかった。これを背景に、1985年9月に「プラザ合意」がなされた。

 

プラザ合意後のアメリカは、経済力を失い衰退した。その後、アメリカ経済を復活させたのは、製造業の復活ではなく、情報産業を中心とした新しい産業だった。

 

一方日本は、円高による輸出産業への影響を軽減するため、日本銀行が過度な金融緩和政策を行なった結果、バブル経済とバブル破綻による金融危機がもたらされた。

 

結局のところ、プラザ合意は、世界経済が抱えている問題を何ら解決するものではなかった。むしろ、状況を悪化させた。

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プラザ合意の現代版《マー・ア・ラーゴ合意》で日本経済は大混乱に…!いま危惧されている「最大の問題点」 2025/05/13 現代ビジネス 野口悠紀雄

https://gendai.media/articles/-/152037

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野口悠紀雄氏の指摘は、経済は利権では、動かないという事実です。

 

一方では、政府は、世界は利権で動いているというメンタルモデルで活動しています。

 

この2つのメンタルモデルの間には、地動説と天動説レベルのギャップがあります。