コメの価格をさげる方法(3)

1)最近の動向

 

 農林水産省が2025年5月12日に発表した全国のスーパーで販売するコメ5キロの平均価格は税込み4214円と、前の週より19円下がりました。18週ぶりに、コメの価格が下落しました。とはいえ、いぜんとして高止まりです。

 

2)JAと政府の主張

 

全国農業協同組合中央会JA全中)の山野徹会長は13日の定例記者会見で、現状のコメの価格について「決して高いとは思っていない」との認識を示しました。

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コメ価格「決して高くない」 政府備蓄米の効果と評価 JA全中会長 2025/05/13 時事通信

https://news.yahoo.co.jp/articles/5becd7a0ff0a94907b23e6355ed43e7ab0a9b56c

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コメの市場価格の高騰が続く中、米産地のJA全農山形が地元紙などに掲出した「それでもお米は高いと感じますか?」というメッセージを含む意見広告が「消費者の心理を逆なでする」などとして、SNS(交流サイト)上で物議を醸している。

 

JA全農山形の意見広告は4月、見開きの全面カラー広告として地元紙に掲載した。「今日のあたりまえが、未来へもつながるように」と題した内容で、「ごはんお茶碗1杯の価格は約49円」と紹介し、「菓子パン約231円、カップ麺約187円、ハンバーガーは約231円」と比較した上で、「それでもお米は高いと感じますか?」と提起。「未来につなげる持続可能な価格を、皆さんも一緒に考えてもらえませんか?」と訴えている。

 

この広告について、SNSでは、「米価を下げる努力を放棄して米価を正当化しようとしている」「米価を釣り上げている元凶のくせに」などの批判的な投稿が相次いでいる。

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「それでもお米は高いと感じますか」広告物議 JA全農山形「適正価格考えるきっかけに」 2025/05/13 産経新聞

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2025年4月24日、日本農業新聞の電子版は「【どうするのか? 崩壊寸前 食料安保】米の安定供給は長期的視点で JA松本ハイランド組合長 田中均氏」との記事を配信しました。

 

デイリー新潮は、この記事が炎上したという説明をしています。

「寄稿で田中氏が最も訴えたかったのは、コメの需給調整にはバッファ(ゆとり)が必要であり、安定供給のためには税金で農家の所得を補償することも検討すべきということでしょう。それ自体は検討に値する提言だと思います。ところが田中氏はコメの価格が高すぎるという見解には否定的な立場で、《今だけ値段が下がりさえすればいいという消費者目線だけではことは解決しない》と書きました。しかし関東や関西の都市部でコメは消費税込み5キロ5000円台突破が常態化しています。税と社会保障の重い負担に苦しむなか、『コメが高すぎて買えない』という切実な悩みを抱える消費者から異論が殺到したわけです」

ご飯より安いパン

 

 特にネット上で炎上したのが、田中氏が「コメは高くない」と主張するために持ち出した「コメ1杯とコンビニのサンドウィッチの価格比較」だ。

 

「田中氏は寄稿の中で、5キロ4000円のコメは1杯50円。これに対してコンビニのサンドウィッチは300円から350円だと指摘し、《ごはん1杯いくらなのか分かって「高い」といっているのだろうか》と問題提起しました。しかし、そもそも都市圏で5キロ4000円台のコメは見かけません。GW中に都心のスーパーを調べましたが、相変わらず備蓄米は影も形もなく、主流は4600円台。税込だと5000円を超えます。時たま奇跡のように5キロ税込4000円台の、備蓄米ではない複数原料米が店頭に並ぶことがありますが、わずか1日で売り切れてしまいます」(同・記者)

 

 ましてコンビニのサンドウィッチには具材の仕入れ値を筆頭に、様々なコストが上乗せされている。Xでは《自宅で炊くご飯とコンビニ販売のサンドイッチを直接比較する無意味さを解って言っているとしたら詐欺師同然》、《日本の農業が駄目になるのも分かる気がする》、《こんなん火に油で国民から敵視されるだけだよ? 》──と批判が相次いでいる。

 

 さらに田中氏が最新の状況を知らないと批判されても仕方がないのは、今では「ごはん1杯の値段はパン1枚より高くなった」ことが明らかになっているからだ。

 

三菱総合研究所は昨年4月、コメと食パンの価格を比較しました。当時、コシヒカリは5キロ2292円で売られていました。そこから《お茶碗1杯=150グラム》のコメは約30円だったそうです。一方、4枚切りの食パンは1枚42円。6枚切りは1枚が28円で、2枚だと56円でした。コメはパンよりリーズナブルだったことが分かります。ところが今年2月の5キロ4363円で計算すると、茶碗1杯は57円。4枚切りパン1枚は48円、6枚切り1枚は32円と、場合によってはパンのほうが安いことが分かったのです」

 

 さらに三菱総合研究所はパスタだと4枚切りパン1枚よりさらに安いことを明らかにしている。

 

 江藤拓農林水産大臣は4月25日に大臣会見で、「行政は、価格にコミットするというのは正しくありません。この経済の中において、物の値段は米に限らず、工業製品も含めて、市場で決まるというのが大原則です」との考えを示しました。

 

もし江藤農水相が本気で『コメは市場原理に任せるべき』と主張しているのなら外国米の関税をゼロにして市場を開放し、国産と海外産のコメをフェアに戦わせるべきでしょう。消費者は安いコメを買える一方、日本のコメ農家は廃業が相次ぐはずです。しかし、それこそが市場原理を尊重する自由放任経済の基本です。ところが江藤農水相はコメの自給率を上げる考えも示していますから滅茶苦茶です。国民に向かって発するメッセージとしては完全に論理が破綻していると言わざるを得ません」(同・記者)

 

 ちなみに会見ではTBSの記者が「コメの卸業者の組合を取材したが、コメが不足している」と悲鳴を上げていると質問した。

 

 すると江藤農水相は「我々は、推測に基づいて言っているわけではありません。多分、御社よりもきめ細やかに調査をかけています」とTBSの記者に対してずいぶんと挑発的な態度を示した。

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コメ不足の深刻化で「おしん」の“大根めし”に脚光…いつまで経っても備蓄米が流通しない原因は「人事異動」や「トラック不足」なのか 2025/05/13 デイリー新潮

https://www.dailyshincho.jp/article/2025/05130603/?utm_source=yahoo&utm_medium=http&utm_campaign=link_back&ui_medium=http&ui_source=yahoo&ui_campaign=link_back

 

「ごはん1杯はコンビニのサンドウィッチより安い」と主張のJA組合長が炎上…「江藤農水相」は「コメの価格は市場が決めるべき」との態度を崩さず 2025/05/13 デイリー新潮

https://news.yahoo.co.jp/articles/68990732b008ce9988abc76347fdc4f0272c623e

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BSS山陰放送は、生産農家の話を報じています。

合同会社清水川 庄倉三保子さん

「気になってみるんですけど、(30キロ)2万4000円くらいするでしょ?本当にびっくりですけど、そんだけの値段には上げられないです。いろいろな法人で違ってくると思うけど、うちは30キロ9000円とか9500円で出しているんです」

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「農家は安い金額で出しているので、なぜあんな値段になるのか不思議」コメ17週連続値上がりに…農家困惑「うちは30キロ9000円とかで出している…」 複雑な思いの中、田植えへ 2025/05/08 BSS山陰放送

https://news.yahoo.co.jp/articles/fe31bce89f7392b355c1e2f76035dd654632dcef

カリフォルニア米の輸入が始まります。

イオンは、6月6日から、米カリフォルニア産の中粒種「カルローズ」(商品名「かろやか」)を、4キロ・グラム入り税込み2894円で、都市部を中心に約600店で販売します。ミニマムアクセスと呼ばれる無関税枠を超えるため、1キロあたり341円の関税がかかっています。

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イオンが「カリフォルニア産100%」のコメ、4キロ2894円…6月6日から販売 2025/05/13  読売新聞

https://news.yahoo.co.jp/articles/b976ac2e6063392e0cdb109185cb9dabfd0fe88c

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トランプ関税も始まります。

自民党 森山幹事長

「我が国の米政策を見ますと、主食米を需要に合った生産にするために工夫をして、いろんな政策を打ってきました。我が国で生産が足りないということはあり得ないのだと思います」

 

自民党の森山幹事長はきょう午前の会見で、関税交渉をめぐり、アメリカからのコメの輸入を拡大する案についてこのように述べたうえで、不作の年などでは生産調整が重要だと指摘しつつも、「足りないから輸入するという話にはならない」と強調しました。

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自民・森山幹事長 アメリカからのコメの輸入拡大に重ねて慎重な考え 「我が国で生産が足りないということはあり得ない」2025/05/13  TBS

https://news.yahoo.co.jp/articles/99bddb166d5832fbe9e89c6d5423de69baa15777

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3)問題の整理

 

問題点は、大きく2つに分かれます。

 

第1は、データの問題です。

 

利害関係者が、根拠となるデータを示さないで行った発言は、基本的に、フェイクですから、報道すべきではありません。

 

パールは、「因果推論の科学」で、テレビで、20人が、このダイエット法には効果がありましたという宣伝は、前向き研究ではないので、サンプリングバイアスがある間違った推論であると説明しています。

 

日本のテレビの体験談のコマーシャルには、「あくまで、個人の意見です」というテロップが付きます。

 

データを示さない政府の発表の統計学的な信頼性は、体験談のコマーシャルと変わりませんので、「あくまで、個人の意見です」というテロップを付けるべきです。

 

江藤農水相は「我々は、推測に基づいて言っているわけではありません。多分、御社よりもきめ細やかに調査をかけています」とTBSの記者に言っています。

 

しかし、政府はデータを公開していません。

 

JAは、コメの平均価格は高くないといいます。

 

この主張は、統計学の言葉を含んでいないので科学的に間違いです。

 

平均値には、分布の情報がありません。また、一般に、正規分布近似は成り立たないので、平均値は代表値になりません。

 

高いコメがあってもまいません。その結果、平均価額が高くなることも問題ではありません。しかし、収入の少ない人が、価格の低いコメを購入するという選択肢がなければ、生活に困窮します。政府は、餌米をつくるために、膨大な補助金を出しています。現在の予算の使い方を変えれば、一部は価格の低いコメを流通させることが可能です。しかし、そうした検討はなされていません。

 

JAは、収入の低い人に、高品質ではないが、安価なコメを供給するという役割を無視しています。もうからないことには、関心がないのです。補助金政策を止めて、市場原理が働けば、品質によって価格が変わります。現在の政策は、税金を使って、収入の低い人をイジメていることになります。

 

政府は、平均値を提示するだけで、もとのデータを公開していませんので、議論ができません。

 

森山幹事長は、「我が国で生産が足りないということはあり得ない」といいますが、その根拠となるデータを示していません。

 

データを無視すれば、どんな主張も可能です。それは、カルトになります。

 

第2点は、農業政策の目的が消失していることです。

 

農家の手取りがどれだけ増えたかというデータが公開されていません。

 

現在の政策が、農家支援になっているというエビデンスはありません。

 

コメ5キロの平均価格は税込み4214円は、イオンのカリフォルニア米の5キロ3618円より、16%高いです。

 

データが公開されていないので、コメの価格分布がわかりませんが、現在の価格水準では、高いコメは売れなくなります。価格を気にしないで、コメを購入する富裕層もいますが、高齢者が多いので、購入量は少ないと思われます。

 

日本のコメの価格が下がれば、1キロあたり341円の関税をはらったら売れません。価格が高止まりする保証がないので、今まで、輸入米を探す小売りはいませんでした。しかし、政府の天下り先であるJAがキャンペーンをすれば、今後も、コメの価格が下がらないと政府が認めていることになります。そうなると、輸入米を探す小売りが増えます。

 

森山幹事長は、コメの税率を1キロあたり341円より下げなければ、コメの輸入が増えないという前提で話をしていますが。イオンの事例のように、前提は崩れています。

 

仮に、コメの価格がさがらず、コメの消費の50%が輸入米になった場合を考えます。

 

その場合には、なんのために1キロあたり341円の関税をかけているのか、なんのために、膨大な農業補助金をつぎ込んでいるのか、政策の目的が消失してしまいます。

 

農業の生産性は低いです。

 

6次産業化といって、補助金をつぎ込んで、農業法人をサポートしても、そこで働いている人の年収は、300万円程度です。6次産業化は、1人あたりGDPを引き下げる政策になります。

 

海外から、燃料、飼料、肥料などを輸入して、国内で、農産物を生産することと、農産物を移入することは、どちらも、購入のための外貨が必要になるので、同じ安全保障の問題になります。リスク評価は、統計学の言葉がないと、推論ができません。

 

財務省が2025年5月12日に発表した2024年度の国際収支統計(速報)で、海外とのモノやサービスの取引などの状況を示す「経常収支」の黒字額が前年度比16.1%増の30兆3771億円となり、2年連続で過去最大を更新しました。

 

 海外投資で生じる利子や配当金などの「第1次所得収支」の黒字幅は、11.7%増の41兆7114億円でした。

 

 モノの輸出額から輸入額を差し引いた「貿易収支」は、4兆480億円の赤字です。

 

 モノ以外の取引を示す「サービス収支」は、2兆5767億円の赤字です。

 

おそらく、10年以内に、自動車の輸出が縮小して、貿易収支とサービス収支の赤字が膨らみます。

 

海外から、海外から、燃料、飼料、肥料などを輸入する外貨は、「第1次所得収支」しかありません。

 

これがなくなると、海外から、海外から、燃料、飼料、肥料などを輸入できなくなります。

 

外貨が少なくなってくれば、外貨を効率的に使う方が、安全保障が高くなります。

 

つまり、食料を自給する政策は、食料を輸入する政策より、極めてリスクが高くなります。

 

この議論は、確率統計の数的言語がなければ、考えることができません。

 

いまのままでは、政府と議論することはできません。