1)視点の整理
消費税減税の議論が出ています。
問題を整理してみます。
議論の前提が必要になります。
<1>議論は、データと論理にもとづく必要があります。
<2>反例は、例外にとどまる可能性があります。サンプリングに注意が必要です。
<3>利害関係者の発言は、透明性がないので、2次的な参考に止めるべきです。
<3>を補足します。
現在の政治システムには、田中内閣がつくったキャッシュバックシステム(田中システム)が組み込まれています。
このルールは、美濃部都政、ファノンの橋の哲学、レーニン主義に遡ることができます。
田中システムの主題は、弱者救済です。弱者救済の実態は、経済合理性を無視した利権の配分構造の維持です。
田中システムでは、税収をプールして、利権に基づいて、補助金として、キャッシュバックします。このキャッシュバックが、選挙の票に結びついています。
たとえば、「消費税は、社会保障制度を支える財源」であるという主張があります。
この主張に従えば、年金・医療費などの社会保障給付が減少する場合には、給付の減少を避けるために、消費性増税が必要になりましたという説明になるはずです。
政府は、インフレに乗じて、実際には、給付を減らすシステムを導入しています。
税金には色が付いていませんので、消費税は、産業振興、利用されない公共施設、博覧会の赤字の補填などにもつぎ込まれます。
産業振興、公共施設、博覧会は、補助金と公共事業の利権が付いています。
政治家は、当選のために利権を優先して、社会保障給付を後回しにします。
これは、法治主義ですが、人権を無視しているので、法の支配に反しています。
法の支配に基づけば、予算(歳出)の優先順位をつければ、人権無視が解消されます。
もちろん、そのようなガイドラインがあると利権が消滅してしまいます。
なので、田中システムの主題は、弱者救済ですが、実際には、キャッシュバック優先になっています。
世の中には、利権がつきものだから、田中システムを気にする必要はないという意見もあります。
しかし、1972年にできた田中システムは、年功型雇用に組み込まれ、若年層の搾取と、国債の積み上げというマジックの上に政治を組み立てました。これは、一種のねずみ講です。
経団連は、<新時代の「日本的経営」>として、若年層搾取の制度化を目指し、小泉政権で完成します。
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日本経営者団体連盟 1995/05 『新時代の「日本的経営」――挑戦すべき方向とその具体策』,日本経団連出版,210p.
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新時代の「日本的経営」とは、第1身分に文系のブランド大学卒業生、第2身分に理系の大学卒業生のエンジニア、その下に、非正規雇用がいる身分制度を指します。
因果推論の科学では、反事実は、事実と同じ客観的事実です。歴史を改変して、過去を振り返ることは、同じ間違いを繰り返さない反省に必要なプロセスです。
人間の知性は、年功型雇用である<新時代の「日本的経営」>が制度化されず、ジョブ型雇用が普及している日本社会(反事実)を考えることができます。
「サピエンス全史」の著者のハラリ氏は、「存在しないものを創造する力」が、人類の「認知革命」の鍵であったといいます。
1990年代の日本が、アメリカのようなジョブ型社会に移行していれば、新卒一括採用ではなく、能力に基づく給与になっていたはずです。就職して3年もたてば、能力に対して満額のレベルの給与が得られるはずです。
1990年代の日本が、アメリカのようなジョブ型社会に移行していれば、人口減少はおこらなかったことがわかります。
こう考えると、「利権がつきものだから、田中システムを気にする必要はない」という意見は、問題の深刻さを無視しているように思われます。
田中システムは、配分可能な補助金財源に、依存しています。
税金で、原資を得て、ピンハネをして、補助金として、キャッシュバックします。
こうすれば、資金の回転率が下がりますので、経済成長が確実に低下します。
税金を戻すより、最初からとらないことを原則にしないと、経済が壊れます。
最近では、「給付金でまくなら最初から取るな」と言う主張が増えています。
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選挙のための"給付金バラマキ"を国民は望んでいない…石破政権は「消費減税」を本当に拒み通せるのか 2025/05/07 President 小田 尚
https://news.yahoo.co.jp/articles/498cb6f89adfefd552ab882053e67fe22898e7ee?page=1
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しかし、それでは、利権がなくなるので、政府は、補助金はやめられないといいます。
「給付金でまくなら最初から取るな」という主張には、田中システムを崩壊させる威力があります。
2)記事の解読
2-1)「新しい資本主義」
KYODOは次のように、伝えています。
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自民党の新しい資本主義実行本部(岸田文雄本部長)が、現状の物価高に追いついていない公的補助を引き上げるよう政府に要請することが8日、分かった。支給額が長年据え置かれた給付金などがないか各省庁に総点検を求め、物価変動に合わせて定期的に見直せるルール作りも促す。
同日開かれた会合で提言案を示した。近く正式決定して政府に提出し、6月にまとめる経済財政運営指針「骨太方針」や成長戦略への反映を目指す。
提言は、据え置かれた給付金や減税の基準額を「デフレ時代に固定化された旧弊」として問題視し、速やかな改定を要求した。例えば、交通事故で家族を亡くした子供への育成給付金の支給額が40年以上変わらないことや、企業がマイカー通勤費用を補助する際に社員の所得税を軽減するための非課税限度額が10年以上据え置かれていることなどを挙げた。
国や自治体が地方の中小企業に道路整備を発注したり物品を購入したりする際に、物価上昇に対応して賃上げ原資を確保できるようにする必要性も強調した。
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自民、物価高に合う公的補助提言 給付金上げ「新しい資本主義」2025/05/08 KYODO
https://news.yahoo.co.jp/articles/31b473d8874a154e76e5e857e231196c38c75f9b
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これは、補助金(利権)の確保を最優先するという指示が出されたという報道です。
「戻すなら、最初からとらない原則」でみれば、減税する余地があります。
2-3)【消費税減税】「中身は若者いじめだよ」
集英社は、次ように伝えています。
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消費税を減税すれば、高齢者や外国人の観光客など「他の税や保険料をあまり負担していない層」が相対的に得をしやすく、結果的に社会保障を支える現役世代が、その分を別の形で補うことになりかねないのではないかと指摘されている。
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【消費税減税】「中身は若者いじめだよ」得するのは高齢者と外国人観光客だけ? “現役世代が損する”との指摘が相次ぐ”優しい減税”の正体 2025/05/04 集英社
https://news.yahoo.co.jp/articles/1ff6d3cbe076186cece44fb4df48b68294f30a23?page=1
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発言者が、利害関係者である可能性が高いです。
「若者いじめ」は、1972年の田中内閣から継続している田中システムの根幹をなしています。
この点を無視した議論はナンセンスです。
「若者いじめ」の解消を本当に考えているのであれば、人権無所の年功型t雇用の解消を提案しているはずです。
田中システムでは、税金には色が付いていませんので、消費税は、産業振興、利用されない公共施設、博覧会の赤字の補填などにもつぎ込まれます。議論は、この点を無視しています。
消費税は、産業振興、利用されない公共施設、博覧会の赤字の補填などにもつぎ込まれることを無視した議論は、<2>のサンプリングバイアスになります。
2-3)消費税減税は「低所得者支援という意味では効率性に乏しい」
産経新聞は、次のように伝えています。
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加藤勝信財務相は9日の閣議後の記者会見で、消費税について「全世代型社会保障制度を支える重要な財源に位置付けられる」と指摘し、税率の引き下げは適当ではないとの政府の考えを強調した。
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加藤勝信財務相、消費税減税は「低所得者支援という意味では効率性に乏しい」 2025/05/9 産経新聞
https://news.yahoo.co.jp/articles/7513b1c789decc7a6ee316d5a965a18c38919a74
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この議論も、<2>のサンプリングバイアスをつかっています。
この発言は、田中システムの利権の発生源である補助機の税源を確保したいという意図があります。
消費税減税が「低所得者支援という意味では効率性に乏しい」ことは、消費減税を中止する理由にはなりません。
強い薬をのむときには、副作用を軽減する薬を併用することがあります。
消費税減税に副作用がある場合には、副作用軽減対策をすることで問題は回避されます。
3)まとめ
ここまで、書いて、<1>が、書かれた記事はありませんでした。
データに基づく議論はありませんでした。
ほとんど、指摘している人はいませんが、田中システムとDX、特に、AIは、相いれません。
政治家と官僚に任せるより、政策は、AIにまかせた方が上手くいきます。
その理由は、簡単で、AIは、利権に縛られないからです。
帰納法で、今まで利権があったので、今後も利権があると推測することは可能です。
利権は、経済成長を阻害しています。
因果モデルで書けば次になります。
利権(原因)=>経済成長の阻害(結果)
ここで、AIが、交絡因子になります。
一見すると、今後も、利権による経済成長の阻害効果は、今までと同じレベルになるように見えるかもしれません。
しかし、高度な生成AIが、2年前に登場しました。
生成AIを使えば、年率10%の生産性向上も夢ではなくなりました。
交絡因子が大きく変化すれば、得られる結果は、全く異なったものになります。
アメリカ、中国、場合によっては、東南アジアの国が、生成AIを使って、年率10%の生産性向上をする中で、利権を温存すれば、生産性の国際比較で、壊滅的な差が生じてしまいます。