FNNは次のように報道しています。
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石破首相は7日、官邸で自民党の小野寺政調会長と会談し、物価高対策、特に米価格高騰の問題について、政府が備蓄米の放出を含めて努力をしているが、まだ米価が下がった実感も出ていないとの認識の上で、「党としてしっかり政策をまとめて、政府と協力をして物価高対策をやってほしい」と指示した。
会談後、小野寺氏は米価対策について、「もうすでに農家の方々は出荷をされている。その上でなぜここまでなかなか米価が下がらないのかという中で、農水省が様々検討していると思うが、党としてもしっかり検証する必要がある」と語り、「まだ努力できるところ、改善できるところがあるのではないかということを党の中で議論していきたい」強調した。
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【速報】石破首相が自民幹部にコメ高騰・物価高対策を指示 「備蓄米放出後も米価下がった実感出ず」2025/05/07 FNN
https://news.yahoo.co.jp/articles/abdcc6ac9d6b7d3d9392d40d9d69a3f699c6025a
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これは、いつもの中身のない議論です。
指示を出しても、解決策がなければ、問題は解決しません。
簡単にできる解決策は、既に、実施済みです。
つまり、指示をだすことが、問題解決にならない曲面に来ています。
簡単にいえば、与党には、問題解決能力が不足していると理解できます。
稲垣公雄氏は、コメの価格を論じています。
筆者なりに論点を要約すると次になります。
第1は、「概算金」の問題です。
2024年産であれば、コメの刈り取り前の2024年7月から9月ごろに、JAが農家に対して提示する価格が「概算金」です。全国には約500のJAがあるが、基本的にこの価格はJAごと・品種ごとに異なります。
概算金は、現在の市場価格で、先物価格を指定することになります。需給バランスが改善しても、価格が下がらないメカニズムがあります。
また、JAは一般に、管内の農家全てに同じ単価を提示することを原則としている場合が多いです。
JA以外のコメの集荷業者の多くは、JAの概算金の決定を待ってから農家に買取価格を提示するので、全般的により良い条件を提示しやすい。結果的にJAは、JA以外の集荷業者に対して価格競争力を発揮できていないことが多い。つまり、JA以外のコメの集荷業者の買取価格は、更に下がりにくくなります。
第2は、主食用米から麦、大豆、飼料作物などへの転作を支援する「水田活用の直接支払交付金」です。
2000年代以降、全国に20haから30haぐらいの、専業農家として十分やっていける規模の農家が数多く出現し、大量の離農者の農地利用を引き受けることで、地域の農業を支えてきました。現在は、大規模農家ほど収入に占める「水田活用の直接支払交付金」の割合が高く、主食用米以外の、転作作物を多く作っています。
つまり、主食用米は、ビジネスとしては、成り立たなくなっています。
主食用米を安定してつくる技術をもっている大規模農家は、ほとんどいません。
第3に、農水省の需要と供給の見立てが誤っており、そもそも、需要に対する生産が十分にはできてなかった(2025年産もできない)可能性が高いことです。
2024年産の最終的な集出荷業者経由の集荷量はまだ確定していません(2023年産もまだ公式発表されておらず、2022年産は303万トンと集計されている)が、2024 年12月末時点での数量が215.7万トンであった。この数量が2023年12月時点では236.3万トンであったため、対前年同月比で20.6万トンのマイナスだったことがわかっています。
市場経済は、万能ではありませんが、価格情報に基づいて、需給調整が行われます。
市場経済を否定する計画経済の問題点は、判断の基準となる情報(データ)が得られないことが多い点にあります。
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『令和のコメ騒動』(1)コメ高騰の歴史に学ぶ、今後の見通し 2025/01/28 MRI 稲垣公雄
https://www.mri.co.jp/knowledge/column/20250128.html
『令和のコメ騒動』(2)コメ価格の一般的な決まり方 2025/01/28 MRI 稲垣公雄
https://www.mri.co.jp/knowledge/column/20250311.html
『令和のコメ騒動』(3)コメ価格高騰の構造と備蓄米放出の意味 2025/03/11 MRI 稲垣公雄
https://www.mri.co.jp/knowledge/column/20250311_2.html
『令和のコメ騒動』(4)令和のコメ騒動が暗示する政策課題の深層 2025/03/11 MRI 稲垣公雄
https://www.mri.co.jp/knowledge/column/20250311_3.html
米から麦、大豆、飼料への転作支援交付金を見直し 農水省、作物の生産性重視へ政策変更 2025/01/31 産経新聞
https://www.sankei.com/article/20250131-PFSIT6KFBZJEZFVVOR3RHLKZFE/
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山口正章氏は、政府の「消えた21万トン」はミスリードであるといいます。データがないので判断できないといい、考えられる交絡因子をあげています。
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米の流通状況等について 農林水産省
https://www.maff.go.jp/j/syouan/keikaku/soukatu/r6_kome_ryutu.html
コメ価格はいつ下がる?「令和のコメ騒動」の背景と今後の展望 野村證券ストラテジストが解説 2025/03/25 NRI 山口 正章
https://www.nomura.co.jp/wealthstyle/article/03/25/
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1994年はコメは不作でした。
その結果、1995年は、270万トンの不足になりました。
1994年の日本のコメの輸入量は、162万6千トンでした。
つまり、この計算が正しければ、輸入してもなおかつ、107万トンの不足があっても、価格はあまり上がらなかったことになります。
2025年は、1995年よりコメの消費がへっています。
とはいえ、50万トン程度の不足では、価格はあまり上がらないはずです。
21万トンで、コメの価格が上昇することはありえません。
十分なデータがないのですから、需給バランスが大きく不足していると考えるべきです。
50万トン以上の不足であれば、買戻し条件をつけた備蓄米20万トンの放出では、全く効果がないはずです。
大切なことは、問いです。
石破首相と小野寺政調会長の会談には、問いはありません。
「コメを安定供給するには、どうしたらよいか」という問いがぬけています。
「コメを安定供給するには、どうしたらよいか」という問いに対して、コメを輸入することは、正解のひとつです。
1995年には、実際に、輸入が行われました。
1995年と同様に、200万トン以上の不足が生じれば、コメを輸入しないかぎり、コメ不足は解消できません。
コメの輸入を封印する合理的な理由はありません。
2008年までは、コメ政策は、小規模な農民の農民票にむすびついていました。
この問題は、高齢化の進展によって、放棄されています。
何のための政策かという問いは全てに優先します。
官僚の説明は無謬主義です。
政策は、正しいという前提で、その説明にあうデータを探してきます。
無謬主義は、現状追認で、問題解決(反事実)を放棄した世界です。
仮に、コメの不足量が100万トンあったとすれば、輸入以外の手段で、問題を解決することはできません。
実際に、コメを輸入して、前向き研究で、介入にともなう価格の変動を調べれば、仮説の検証ができます。政策がエビデンスに基づく場合には、介入を伴う社会実験なしに、問題を解決することは困難です。
筆者は、輸入にこだわってはいませんが、不足量が大きな場合には、筆者には、他の手法が思いつきません。
ともかく、問題解決のできそうな手法について、社会実験をすれば、答えが見つかるはずです。