問いを発すること

科学は、問いを発して、問題を解くことで発展してきました。

 

2025年4月25日に政府は、トランプ関税への対策で「緊急対応パッケージ」を決定しました。対策は1)相談体制の整備、2)企業の資金繰り支援の強化、3)雇用維持と人材育成、4)国内の消費喚起、5)産業構造の転換と競争力強化、の5本柱です。

 

企業支援については、5月以降、中小企業向けの融資について金利引き下げの対象を広げることを検討すること、「雇用調整助成金」の支給要件の緩和を検討すること、納税を猶予すること、などが含まれました。

 

他方、個人への支援策では、先般、石破首相が発表した1リットルあたり10円のガソリン価格の引き下げ(コラム「政府はガソリン価格を10円引き下げ:家計の負担は年間4,000円軽減」、2025年4月23日)や夏季の電気・ガス料金の補助が含まれました。

 

木内登英氏は、今の段階で行うべきは、企業、家計が大きなショックに見舞われた際に備えるセーフティーネットであり、トランプ関税が与える経済への悪影響を打ち消すような景気対策ではないといいます。「2)企業の資金繰り支援の強化、3)雇用維持と人材育成」は、この条件にあてはまるが、「4)国内の消費喚起」のガソリン補助金は、不適切であるといいます。

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政府がトランプ関税対策で5本柱の『緊急対応パッケージ』を決定:セーフティーネットの強化が重要 2025/04/25 NRI 木内 登英

https://www.nri.com/jp/media/column/kiuchi/20250425_2.html

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木内登英氏は、問いを発していますが、問い発する人は少ないです。

 

そもそも、「5)産業構造の転換と競争力強化」は、トランプ関税に固有の対策ではありません。

 

木内登英氏の問いに、政府は答えていません。

 

つまり、問いを発する人が少ない上に、政府は問いに答えません。

 

これは、法度体制の段落の論理が蔓延していることを意味しています。

 

舞田敏彦氏は、次のように言っています。(筆者要約)

日本人のマスメディアに対する信頼度は高い。2017年から2022年に実施された『第7回・世界価値観調査』によると、日本人の66.6%が「テレビは信頼できる」、71.5%が「報道機関は信頼できる」と答えている。これは、アメリカ人の信頼率(順に22.6%、29.7%)と比べるとかなり高い。

 

マスメディアは無数の人々に情報を瞬時に伝えてくれるが、発信者がチョイスした情報が一方的に伝達されるので、思想統制の手段として使われる危険性がある。

 

「授業中、生徒の批判的思考を促す」と答えた中学校教育の割合は、日本以外が、65から95%であるのに対して、日本だけが、25%で圧倒的に低い。

 

日本の教育現場で「批判的思考」を促す教育が行われる割合は他国に比べて突出して低い。

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マスメディアへの信頼度が高い日本は「思想統制」されやすい国? 2025/03/26 舞田敏彦

https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2025/03/543501.php

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<日本の教育現場で「批判的思考」を促す教育が行われる割合は他国に比べて突出して低い>理由は、パラグラフの教育がなされていないためです。

日本の労働人口の減少率は年率で約0.5%から1.0%の範囲で推移しています

現在の日本の労働不足率は、業界や地域によって異なりますが、2.8%と推定されています。

中央大学と株式会社パーソル総合研究所は2024年10月17日に、「労働市場の未来推計2035」を発表しました。

それによると、2035年には、労働力不足は、1.85倍、つまり、5.18%になるといいます。

 

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労働市場の未来推計2035」を発表 2035年にかけて就業者数は増加するものの、1日あたり1,775万時間(384万人相当)の労働力が不足 2023年と比較すると労働力不足は約2倍深刻に

https://www.chuo-u.ac.jp/aboutus/communication/press/2024/10/76949/

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米グーグルは2025年4月25日、英国で実施した試験的な研究に関する報告書を公表し、管理業務に人工知能(AI)を活用することで、英国は4000億ポンド(5330億ドル)の利益を得る可能性があり、労働者がAI使用の訓練を受ければ、労働時間を年間平均122時間節減できるといいました。

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管理業務にAI導入で、年122時間労働節減も=グーグル研究 2025/04/25/ ロイター Paul Sandle

https://jp.reuters.com/life/JBEL524VCZNRRGOCIOUJQYKLE4-2025-04-25/

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イギリスの年間平均労働時間は1,524時間です。

 

122時間短縮できれば、8%減少になります。

 

日本の平均は1,611時間です。かりに、日本でもAIにより、122時間の短縮ができるとすれば、これは、7.5%に相当します。

 

つまり、2035年の労働力不足の5.18%は軽くクリアしています。

 

2023年にはリクルートワークスが、リクルートワークス研究所が「未来予測2040 労働供給制約社会がやってくる」を発表しています。

 

これらの予測は、トレンド予測であり、因果モデルではありません。

 

現在、AIとDXはほとんどつかわれていません。

 

つまり、AIとDXの活用は反事実になります。

 

科学技術の活用の多くは、反事実になります。

 

日本の労働人口の減少率は年率で約0.5%から1.0%の範囲で推移しています。

 

つまり、毎年1%以上の速度で、生産性を向上させていけば、労働力不足はおきません。

 

段落の論理では、政府が労働力不足がおきると言えば、権威の力で、データも論理もないままに、絶対命題になります。

 

1991から2020年の30年間に欧米6か国は1人あたり労働生産性を2から3倍に伸ばしましたが、日本は1割ほどしか伸びていません。

 

つまり、DXによって、労働時間を半分にすることができます。

 

Googleの122時間は、労働生産性のあがったイギリスの話です。

 

日本は、AIの活用以前に改善点が多くあります。

 

これを考えれば、労働時間は3分の1まで減らせるはずです。

 

あるいは、労働時間を3分の2にして、所得を2倍にすることが可能です。

 

エンジニアは、単位(数字のオーダー)に注目します。

 

金融緩和を続けても、労働時間を3分の2にして、所得を2倍にすることが可能とは思えません。

 

労働生産性が3倍になれば、金利をあげても、その影響は微々たるものです。

 

金利をあげられない原因は、労働生産性が向上しない点にあります。

 

大阪・関西万博では、パビリオンの情報収集から道案内、電子決済まで、スマートフォンのアプリで済ませることができますが、。アプリは機能ごとに異なり、それぞれダウンロードする必要がある。公式だけで、7つのアプリがあります。

 

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大阪万博でアプリ「乱立」、公式・協賛だけで7種類…万博協会「目的ごとに制作したら種類が多くなった」2025/05/05 読売新聞

https://news.yahoo.co.jp/articles/6bb83dfc5243dce890d9cc688a45aed963bd0091

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これは、DXによる労働生産性が向上しない例です。

 

これが日本の現状です。

 

つまり、賃金が上がらないという問題に対しては、次のような問いを発することができます。

 

年に1%以上の生産性を向上させるために、どのような政策が行われていますか。その政策効果のエビデンスはありますか。

 

「5)産業構造の転換と競争力強化」が問題視される原因は、生産性をあげる政策が行われていないためです。

 

国民とマスコミが、問いを発し、政府がそれに、真摯に答えて来ていれば、(パラグラフの論理が通用すれば)日本経済が、韓国と台湾に追い越されることはなかったはずです。

 

問題解決には、DXのような反事実が必須になります。

 

政府は、前例主義(無謬主義)で反事実を封印して、既得利権の維持ばかりをしています。

 

反事実の解決策は、現在は、存在しません。つまり、前例主義を打破する必要があります。

 

そのために、もっとも有効なツールは、問いになります。