3)進化の超絶的スピードアップ
1980年代の人工知能の研究は。行き詰りました。
データが十分にあって、確定論の結論を得ることはできないことがわかります。
不完全なデータから、ベストな推論をする方法を数学的に解くことは困難です。
そこで、人工知能学者は、人類の進化に注目します。
現人類は、他の人類に圧勝して生き残りました。
現人類の推論の方法には、人工知能を解く鍵があると仮定する人工知能学者が増えてきます。
パールは、「因果推論の科学」(p.13)で、次のようにいいます。
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因果推論の分野では、人間の脳を、原因と結果を扱うためにこれまで作られた道具の中では最高のものであると仮定する。
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人類の進化の研究者の中には、5万年前に、人類が急速に進化したと考えている人がいます。
パールは、「因果推論の科学」(p.61)で、ハラリを引用しています。
パールは、「因果推論の科学」(p.47)で、進化と工学を比べて、「進化の超絶的なスピードアップ(super-evolutionary speedup)」が、なぜできたかという疑問を提示しています。
パールは、「進化の超絶的なスピードアップ」の原因は、因果推論のメンタルモデルに基づく、反事実的推論にあったと考えています。
さて、「進化と工学を比べる」という主張には、人工知能が、現人類と同じような「進化の超絶的なスピード」を達成できれば、人工知能は賢くできるという意味があります。
英語版のウィキペディアの「人類の進化(Human evolution)」には、次のように書かれています。
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約5万年前から、人類の文化は急速に進化し始めました。行動的近代化への移行は、考古学的記録に近代的な行動や大型動物の狩猟の特徴的な兆候が突如現れたことから、「大躍進(Great Leap Forward)」、あるいは「後期旧石器時代革命(Upper Palaeolithic Revolution)」と表現されることもあります。アフリカにも、より古い時代の行動的近代化の証拠が見られ、抽象的なイメージ(abstract imagery)、より広範な生存戦略(widened subsistence strategies)、より洗練された道具や武器(more sophisticated tools and weapons)、その他の「近代的な」行動("modern" behaviors)に関する古い証拠が見られます。近年、多くの学者が、近代化への移行は以前考えられていたよりも早く起こったと主張しています。
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パールは、「因果推論の科学」(p.51)で、次のようにいいます。
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チューリングは、認知システムを「人間か、それ以外か」の2つのカテゴリーに分類することを目指したが、私たち(パール)の場合は、認知システムを「関連付け(相関)、介入、反事実」の3つの階層にわける。
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パールは、「進化の超絶的スピードアップ」は、反事実によって起きたと考えています。
パールは、「因果推論の科学」(p.63)で、次のようにいいます。
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2段目の「介入」から3段目の「反事実」に上がるために必要になるのが、因果関係に基づく世界のモデルだ。これを「理論」と呼ぶこともあれば、(その正しさに絶対の自信がある場合には)「自然法則」と呼ぶこともある。簡単にまとめれば、3段目に必要なのは、物事に対する「理解」ということになるだろう。物事を理解することは、分野を問わず、あらゆる科学者にとって「聖杯」のようなものである。物事を理解すれば、私たちは、実際に見ていない世界で何が起きるかを予測することもできる。それだけではない。自然法則を知れば、その中からどれかを選んで意図的に破ることもできる。それによって、現実世界とは矛盾する別の世界を作ることができるのだ。
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力学の法則を理解していれば、ハレー彗星のような巨大な彗星が、地球に衝突するか(実際に見ていない世界で何が起きるか)を予測できます。
新しい薬の効果を理解していれば、薬を飲めば、病気が治るかを予測できます。
エビデンスに基づく、因果モデルが得られ、因果関係に基づく世界のモデルを理解していれば、「実際に見ていない世界で何が起きるかを予測すること」ができます。
3-1)政策の効果
国は、バブル経済崩壊後の雇用環境が特に厳しかった1993年から2004年ごろに就職活動を行った人たちを「就職氷河期世代」として、昨年度までの5年間、集中的に就労支援をしてきました。
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就職氷河期世代 “年齢重ねても賃金上がらず 年金に不安” 2025/04/18 NHK
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20250418/k10014783011000.html
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パールは、認知システムをチューリングの「人間か、それ以外か」の2つのカテゴリーに分類するのではなく、「関連付け、介入、反事実」の3つの階層にわけべきといいます。
この方法では、国の「就職氷河期世代」対策が、「関連付け、介入、反事実」どの階層に相当するかを調べます。
対策が、反事実の階層に達していれば、国は問題の理解ができているので、政策の効果を予測することが可能です。国は、効果のある政策を考える能力があります。
対策が、反事実のレベルに達してなければ、国は、「就職氷河期世代」問題を理解できていないので、対策を考える能力が不足していることになります。
これは、意外に感じるかもしれませんが、物理法則や新薬の効果の例を考えれば、至極当然の考えかたです。
同様に考えれば、失われた30年も、少子化対策も、政府が、問題を理解していなかったので、問題が解決できなかったことが分かります。
力学の法則が理解できていない人と、彗星が、地球に衝突するか否かの議論はできません。
新薬の二重盲検テストが理解できていない人と、新薬に効果があるか否かの議論はできません。
政府が、問題を理解していれば、少子化が進むことは分かったはずです。
少子化がとまらなかった理由は、政府が、少子化問題を理解していなかったためと思われます。
力学の法則が理解できていれば、彗星が、地球に衝突する場合には、その予測には、非常に高いリアリティがあります。
力学の法則が理解できていなければ、彗星が、地球に衝突する場合でも、その予測には、リアリティがありまません。
漁業資源の環境学が理解できていれば、TACを大きく設定すれば、「彗星が、地球に衝突する」ような悲惨な状態になるという予測に高いリアリティを感じます。
TACが大きく設定される原因は、漁業資源の環境学が理解できていないことにあります。
「関連付け、介入、反事実」の3つの階層にわけてみて、議論が、反事実のレベルに達していない場合には、発言者は、理解ができていないので、因果関係に基づく世界のモデルの共有ができていません。つまり、バカの壁があります。この場合には、問題解決はできません。